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SSDを冷却せよ! 転送速度10000MB/sを超えるPCIe 5.0対応SSD用のヒートシンクをCOMPUTEXでチェック
2023年後半以降は,PCI Express(以下,PCIe)接続対応M.2 SSDの転送速度が,最大10000MB/sを超える。徐々にだが,すでに製品化が始まっており,すでに販売されているものもあるが,2023年第3四半期から第4四半期にかけて,普及に弾みがつきそうだ。高速なSSDを使えると,OSの起動が速くなるのはもちろんのこと,ゲームの起動やプレイ中のデータ読み出しも高速で快適になる。ゲーマーにとっても,高性能なSSDは重要なパーツである。
COMPUTEX 2023の会場では,オーバー10000MB/sのM.2 SSDと,その冷却システムの展示が行われていたので,まとめて紹介しよう。
SSD向け簡易液冷を推進するTeam Group
内蔵用のM.2 SSDが高速化する背景は,PCIeの規格世代がひとつあがって,これまで主流だったPCIe 4.0から,さらに高速なPCIe 5.0への移行が進むからだ。IntelプラットフォームもAMDプラットフォームも,PCIe 5.0対応スロットの搭載がすでに始まっており,主にグラフィックスカード用のスロットで,PCIe 5.0 x16が採用されている。
内蔵SSD向けのM.2スロットの場合,AMDのRyzen 7000シリーズ用ハイエンドチップセット「AMD X670」や「AMD B650」シリーズが,PCIe 5.0 x4に対応している。一方,Intelプラットフォームでは,ワークステーション環境だけがストレージのPCIe 5.0 x4に対応しているという状況だ。
COMPUTEX 2023では,今秋以降の展開という注釈付きであるが,ASRockとGIGA-BYTE TECHNOLOGYから,PCIe 5.0 x16とPCIe 5.0 x4が同時に利用できるIntel Z790チップセット搭載マザーボードの新製品がいくつか発表となった。今後は他社製品も含めて,PCIe 5.0 x4に対応するM.2 SSDのニーズと普及が拡大していくことは,間違いないだろう。
現在,市場で購入可能か,まもなく購入可能になるPCIe 5.0対応のM.2 SSDは,CFD販売の「PG5NFZ」,Micron Technologyの「Crucial T700」,そしてMSIの「SPATIUM M570」などがある。CFD製は,小型空冷ファンを標準装備しているが,ほかの2製品はそれなりの大きさで存在感のあるヒートシンクが取り付けられている。しかし,COMPUTEXで展示されているPCIe 5.0対応のM.2 SSDは,それよりもさらに大がかりな冷却対策を採用していた。
とくに積極的だったのはTeam Groupだ。メモリモジュールやSSD,SDカードなどを中心に取り扱うブランドで,国内市場でも以前から展開している。
COMPUTEXでは,最大転送速度の異なるPCIe 5.0 x4対応のM.2 SSD「T-FORCE CARDEA Z5」(以下,Z5)を2製品展示していた。細かな仕様の違いは,コントローラやキャッシュメモリ搭載状況などによるものと思われるが,現時点で仕様の詳細は未公表だ。
Z5は,NANDメモリやコントローラに熱伝導率が高いとされるグラフェンシートを貼っているが,フルスペックを叩き出すには,これに加えて大型のヒートシンク,あるいは簡易液冷装置の利用が必須だと言う。
Team Groupは,形状が異なる大型のヒートシンクを3モデルを用意しており,そのうちひとつは超小型の空冷ファンを備えている。基本的には,SSDとヒートシンクはセットで販売する見通しだが,ニーズがあればヒートシンクのみの販売も検討するということだった。
そして,Team Groupが本命とするのが,M.2 SSD向けの簡易液冷装置だ。仕組みはCPU向けに普及している簡易液冷のオールインワンクーラーと同じで,SSDに貼り付ける液冷ヘッダと,冷媒を循環させるポンプおよびラジエータ,そしてラジエータを冷却するケースファンで構成される。
簡易液冷のAIOは2モデルが用意されており,ひとつはM.2 SSDのみに対応する「SIREN GD 120S」で,もう1モデルはCPU用とM.2 SSD用という2つの液冷ヘッダが付いた「SIREN DUO 360」だ。
展示会場にあったデモ機は,2台のM.2 SSDをそれぞれの簡易液冷で冷却していたが,PC内部に2つのラジエータと計5本のチューブが並んでいる様子は,なかなか壮観だ。
ちなみに,CPUの簡易液冷クーラーではデンマークのAsetekと協業して,日本市場におけるCPU簡易液冷AIOの展開を積極的に行うとのことだった。
パッシブと小型ファン付きアクティブクーラーを披露するMSI
ひと足早くパッシブなヒートシンクのついた「SPATIUM M570」を販売しているMSIは,同社ブースで「SPATIUM M570 Pro FROZER」と「SPATIUM M570 Pro FROZER+」の2モデルを展示していた。
前者はヒートパイプと放熱板を大型化したもので,後者は小型ファンを内蔵することで放熱を行う。デモ機では,2枚のM.2 SSDによるRAID 0の構成で,最大20000MB/sの転送速度を叩き出していた。ただ,これはあくまでも技術デモであり,RAID 0構成での販売予定はないという。
GIGABYTE,ADATA,PatriotのSSDおよび関連製品
GIGABYTEは展示会場近くのプライベートブースで,2種類のPCIe 5.0 x4マザーボードを披露していた。先述したとおり,2023秋以降の発売を予定しており,展示はライティングのための通電のみで非可動デモとなっている。いずれも,ヒートシンクの取り付けにネジやドライバーが不要な簡易着脱方式を採用している。
ハイエンドモデルの「Z790 AORUS XTREAME X」は大型のSSD用ヒートシンクを標準搭載している。ヒートシンクがマザーボード側の付属品となっているので,SSDは別途購入が必要だ。
普及モデルの「Z790 AORUS MASTER X」も,PCIe5.0 x4のM.2 SSDスロットを備えるが,こちらはヒートシンクを兼ねる金属製カバーでの放熱という一般的な構造となっていた。
2023年1月に行われたCES 2023で,PCIe 5.0 x4対応M.2 SSDのプロトタイプを披露したADATAは,2機種を製品化する見通しだ。
ひとつは,やや大きめのヒートシンクを備える製品「LEGEND 970」だ。
もう一方は,ヒートシンク部分と液冷ユニットを一体化して,ラジエータこそ備えないものの,封入された液体によって冷却を行う構造を採用した「Project NeonStorm」である。後者は,もう少し開発に期間を要するということで,2024年の発売を目指すとしている。
メモリやストレージを中心に取り扱うPatriotも,2種類のPCIe 5.0 x4対応M2.SSDを展示していた。
ひとつはグローバル市場ではすでに販売中の小型空冷ファンを内蔵する製品「Viper PV 553」だ。Phisonのコントローラを採用しており,キャッシュメモリ用のDRAMも搭載する。
もう一方は開発中で,コントローラとNANDが直接見える状態で展示されていた。新興のMAXIO製コントローラに採用しており,キャッシュメモリ用DRAMは搭載しない。加えてアクティブやパッシブな放熱構造なしで10000MB/sの転送速度を実現すると言うが,こちらはコールドモックのため真相は謎である。
いずれの製品も,発売はそれなりに先で,改良やブラッシュアップが行われる見通しだ。いずれにせよ,2023年の第3四半期以降にデスクトップPCを新調する場合には,PCIe 5.0 x4対応のM.2 SSDは,重要な選択肢のひとつとなり得る。今のうちからアンテナの感度を高めておこう。
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