連載
手首の痛みに耐えかねてトラックボール「Pro Fit Ergo Vertical」を買ったら,快適すぎて3台も買った話(「買い物Surfer」第7回)
9年もの眠り(さぼりとも言う)から突如目覚めた不定期連載「買い物Surfer」。編集部のスタッフが,最近個人的に購入したモノを読者に見せびらかして悦に入るという,誰得企画である。IT系の媒体でよくある「自腹レビュー」の一種であるが,この手の企画に対して,「なんでわざわざ自腹をアピールするの?」と思う人もいるようだ。
それは,自慢したいからである。「こんなイイもの買ったぜ!」と自慢したい,あるいは「こんなトホホなもの買っちまったよ〜」と自虐したい。幸せはお裾分けしたいし,転んでもタダでは起きたくないという思いが,編集者を自腹レビューに走らせるのだ。
と,どうでもいい前置きはともかく,買い物Surfer第7回で取り上げるのは,およそPCゲーマーが使いそうもないPC周辺機器の1つ,トラックボールだ。
筆者は以前からトラックボールを愛用しており,好きが高じてこんな記事まで作っている。仕事はもちろん,ゲームをプレイするときも使うのはトラックボールだ。というか,我が家のデスクに,マウスを転がせるようなスペースはない。
そんな筆者が,最近気に入って3台も買ったのが,トラックボールの老舗ブランドであるKensingtonの製品「Pro Fit Ergo Vertical Wired Trackball」(以下,Pro Fit Ergo Vertical)である。税込のお値段は,おおよそ7000円前後だ。
本製品の何をそんなに気に入ったのか。簡単に紹介したい。
ゲーマーに贈る「トラックボールのススメ」。使い方の基本からゲームに適したトラックボール選びまでを解説してみる
PCゲーム用のポインティングデバイスといえば,マウスで決まりというご時世だが,世の中には「トラックボール」というデバイスもある。「ゲームはトラックボールのほうが操作しやすい」と主張するトラックボール愛好家の筆者が,現在市販されているトラックボール6製品をゲーマー目線でチェックしてみた。
60度の傾斜とボタン配置がいい
今回の主役であるPro Fit Ergo Verticalのワイヤードモデルは,ボールを親指で操作する「親指タイプ」のトラックボールだ。
写真を見ても分かるとおり,本製品最大の特徴は,60度も傾斜したボディ形状にある。一般的なトラックボールは,マウスのように上から手を被せるような姿勢で扱うが,Pro Fit Ergo Verticalは,斜め横から手を添えるような姿勢で扱えるので,手首や腕,肩が疲れにくいというのがKensingtonの主張だ。マウスでも,ボディを斜めに傾けた形状にして疲れにくいと謳う製品があるので,相応の根拠はあるのだろう。
ボタンの配置は,傾斜した右側面に左右メインボタンと,チルトおよびセンタークリック機能付きスクロールホイールがあり,左メインボタン脇に2つ,左側面のエッジに3つのサイドボタンという10ボタン構成だ。トラックボールとしては,かなりボタン数が多いのもポイントである。
また,これらのうち,サイドボタンの手前側1つを除いた9つは,Kensingtonのトラックボール向けソフト「KensingtonWorks」を使って,機能割り当てを変更可能だ。
傾いたボディは,一般的なマウスやトラックボールのイメージからかけ離れているので,使いにくそうに見えるかもしれない。しかし,実際に手を添えて使ってみると,これが実によく馴染む。サイドボタンが,右親指で押しやすい位置にあるのもいい。一番手前のサイドボタンは,やや押しにくい位置にあるが,DPI切り替え専用のボタンなので,実害はあまりない。
ゲーマー向け特化の製品ではないので,「ゲームに最適!」というポイントはないし,スイッチの耐久性も未公開なのだが,ボディの傾斜具合とボタン配置がしっくりと来るので,ゲーム用途でも活躍してくれている。
きっかけは右手首の関節炎
さて,筆者がPro Fit Ergo Verticalを買うきっかけとなったのは,昨年の秋,右手首に水が少量貯まって関節炎になってしまったことだ。
しかし関節炎になったあとは,MX ERGOを傾けた姿勢で使っても手首が痛むのだ。そのため,日中は右手首にサポーターを着けた状態でトラックボールを使い,それでも痛むようなら,寝る前に貼り薬を貼って寝るという生活を数ヵ月続けていた。とはいえ,毎日サポーターを着けてトラックボールを使うのは面倒だ。そこで,ボディの傾斜が60度というPro Fit Ergo Verticalであれば,痛みにくいのではないかと考えた。
しかし残念なことに,筆者が購入したPro Fit Ergo Verticalのワイヤレスモデルは,ボールの転がり具合がスムーズでなく,使っていて非常にストレスが溜まるものだった。当時は,ボールの転がり具合に不満を訴えるユーザーがほかにもいたので,初期モデルでは共通の傾向だったのかもしれない。そんな理由で,せっかく買ったワイヤレスモデルも物置送りになってしまった。
ただ,Pro Fit Ergo Verticalの形状は気に入っていたし,手首への負担も少なそうである。そこで,ワイヤードモデルの実勢価格が7000円前後まで下がっていたこともあり,「物は試し」とばかりにワイヤードモデルを購入したわけだ。
結果は大正解。Pro Fit Ergo Verticalのワイヤードモデルを使い始めてから,サポーターをつけなくても手首が痛むことはなくなった。ワイヤレスの初期モデルとは異なり,ボールの転がり具合もスムーズで,まったく問題はない。あまりに馴染むので,追加で2台購入して,自宅のゲームPCと仕事用ノートPCでそれぞれ1台ずつ,さらに編集部でも使えるように3台体制で運用中である。ワイヤレスモデルも,もう1度試してみたいところだ。
ゲーム用途では問題もあるPro Fit Ergo Vertical
さて,ここまではPro Fit Ergo Verticalの良い点を述べてきた。実際,よくできたトラックボールではある。ただ,ゲーム用途においては,1つ困ったことがある。それは,左側面の追加サイドボタンが使えないゲームがあること。設定ソフトウェアのKensingtonWorksで,任意のキーをサイドボタンに割り当ても,プレイ中はまったく反応しないゲームがあるのだ。
ちなみに,ロジクールのMX ERGOと設定ソフト「Logicool Options」の組み合わせなら,ボール右横にあるサイドボタンに割り当てた機能をどのゲームでも利用できた。KensingtonWorksの改良で,Logicool Optionsのようにどのゲームでも使えるようになるかもしれない。
ゲーム用途で気になる点はあるものの,Pro Fit Ergo Verticalは親指型トラックボールの中ではかなり使いやすく,手首への負担も少ない製品だと思うので,トラックボールに興味のある人は試してほしい。
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KensingtonのPro Fit Ergo Vertical製品情報ページ
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