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もう「ゲームで遅い」とは言わせない? 新型SoC「Kirin 980」をHuaweiが発表。搭載製品「Mate 20」は10月16日に発表と予告
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印刷2018/09/04 00:00

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もう「ゲームで遅い」とは言わせない? 新型SoC「Kirin 980」をHuaweiが発表。搭載製品「Mate 20」は10月16日に発表と予告

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 ドイツ時間2018年8月31日,Huawei Technologies(以下,Huawei)は,家電総合展示会「IFA 2018」で行った基調講演で,同社傘下の半導体設計企業HiSilicon Technologiesが開発したハイエンド市場向け新型SoC(System-on-a-Chip)「Kirin 980」を発表した。
 この発表は,Huaweiのデバイス部門社長を務めるRichard Yu(リチャード・ユー)氏が行ったもので,Kirin 980を採用するフラッグシップシリーズ「HUAWEI Mate」の新製品を,2018年10月16日にロンドンで発表することも明らかにしている。

Kirin 980の概要
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Kirin 980初の搭載製品となるMate 20シリーズは,10月16日にイギリス・ロンドンで発表の予定
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 IFAの講演で新型SoCを発表し,それを搭載する最新フラッグシップスマートフォンを後日の独自イベントで発表するという宣伝方法は,2017年にHuaweiが行ったものとまったく同じである。
 2017年の場合,AI処理専用ユニット「NPU」を統合して話題を呼んだSoC「Kirin 970」を2017年8月末に始まった「IFA 2017」に合わせて発表。続く2017年10月にドイツ・ミュンヘンで行ったイベントで,最初の搭載スマートフォンとなるHUAWEI Mate 10シリーズを発表するという流れだった。
 なお,Kirin 970は2018年3月発表のHUAWEI P20シリーズでも採用しているので,今回のKirin 980も同様に,HuaweiのフラッグシップモデルであるMateシリーズとPシリーズの両方で採用となる可能性が高そうだ。


世界初ラッシュの新型SoC Kirin 980


 いずれも「自社調べ」という注釈はつくもものの,Kirin 980は,世界初づくしのSoCだ。Yu氏が挙げたKirin 980の“世界初”は,以下に示した6種類もある。

  • 7nmプロセス技術で製造
  • Arm製CPU IPコア「Cortex-A76
  • AI処理専用ユニットNPUを2基統合した「Dual NPU」
  • Arm製GPU IPコア「Mali-G76
  • LTE Cat.21対応で帯域幅最大1.4Gbpsのモデム
  • LPDDR4X 2133MHzのサポート

Kirin 980における6つの“世界初”
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 Huaweiが実施したベンチマークテストによると,競合となるQualcomm製「Snapdragon 845 Mobile Platform」(以下,Snapdragon 845)と比べても,より高性能で,より省電力を実現しているという。
 とくに興味深いのは,CPUコアの構成だ。ArmアーキテクチャのCPUを使うハイエンドSoCの場合,高性能コア(big)と高効率コア(LITTLE)を計8基組み合わせた「big.LITTLE」構成を採用するものが多い。その場合,bigとLITTLEの構成は,4対4となるのが一般的だ。ところがKirin 980の場合,bigを2基,LITTLEを4基に加えて,「Middle」と称するCPUコアを2基という,新しい構成を採用したのである。
 bigとMiddleは,いずれもCortex-A76を用いているが,big側のCPUコアは最大動作クロックが2.6GHzで,Middle側は同1.92GHzと分けて差別化しているという。一方,LITTLEの部分は「Cortex-A55」で,最大動作クロックは1.8GHzとのことだ。

big×2,Middle×2,LITTLE×4で構成する新しいCPU構成を採用
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 big,Middle,LITTLEの3種類でCPUを構成したのは,アプリケーションのワークロードごとに必要なCPUコアの組み合わせを柔軟に変えて,性能と消費電力のバランスを取るためである。たとえば,音楽を再生し続けるだけなら,LITTLE側を1個動かすので足りるが,SNSアプリを使うときは,Middle×1,LITTLE×3程度まで動かすCPUコアを増やす。処理負荷の高いゲームになると,全CPUコアを稼動させるといった具合だ。

処理ごとに稼働するCPUコアが異なる様子をイメージしたスライド。一番背の高い2つのブロックがbig,それに続く高さの2ブロックがMiddle,一番背が低い4ブロックがLITTLE。bigとMiddleを分けて省電力化を実現する
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アプリケーションの種類別にCPUコアの組み合わせを示したスライド。軽い処理負荷のゲーム(Light-Load Gaming)ではLITTLE×4だけで済むが,処理負荷が極めて重いゲームでは,8コアすべてを動かして対応する
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 既存SoCとの性能比較としてYu氏は,アプリケーションの起動にかかる時間を計測したグラフを例に挙げた。ミリ秒単位の差ではあるが,メジャーなSNSアプリの起動は,いずれもKirin 980がSnapdragon 845を上回るということだ。

SNSアプリの起動時間では,Snapdragon 845を上回る速さを実現
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ゲーム性能でもSnapdragon 845に匹敵?


 さて,一般的なアプリケーションにおける性能が優れているのは分かった。だが,4Gamer読者にとって重要なのは,「ゲームの性能はどうなんだ?」という点だろう。
 現行世代のSoCである「Kirin 970」は,総合的にはハイエンドと呼べる性能を有するものの,ことゲームにおいては,競合のハイエンド市場向けSnapdragon 800番台に比べて遅いという評価が一般的だった(関連記事)。ゲームにおける性能差は,採用するGPUの性能に起因するもので,Huaweiもその問題を十分に認識している。

 そこでKirin 980では,グラフィックス性能においてSnapdragon 845に比肩しうる性能を目指して,Arm製の最新GPU IPコアとなるMali-G76を採用してきた。

Kirin 970とKirin 980のスペックや性能比較
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Mali-G76搭載のKirin 980と,Mali-G72搭載のKirin 970の性能比較グラフ(左)。性能は46%,電力効率は178%も向上したという。右の写真は,Kirin 980とSnapdragon 845(※グラフ中ではS845)の性能をゲームで比較したグラフ。平均フレームレートは上回る一方で,1フレームあたりの平均消費電力は,Kirin 980のほうが少ないという
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 Huaweiによる比較では,実ゲームでのフレームレートにおいて,Snapdragon 845を上回る性能を見せたという。

ゲームにおけるフレームレートの比較。左のKirin 980は平均フレームレートが59.34fpsで,フレームレートの落ち込みも少ない。一方,Snapdragon 845は,平均フレームレートこそ50.78fpsであるものの,シーンによってはfpsが大きく落ち込み,写真では39fpsまで下がっていたという
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Kirin 980とSnapdragon 845の性能比較グラフに,GPU Turbo使用時に結果を加えたグラフ。フレームレートは若干向上し,消費電力はさらに減るとのこと
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 またHuaweiでは,2018年春から,「GPU Turbo」というソフトウェア機能により,Kirinのゲーム性能を向上させる対策を行っているそうだ。
 GPU Turbo機能は,既存のHuawei製デバイスから順次に実装しているそうで,Kirin 970搭載のHUAWEI Mate 10シリーズを皮切りに,直近ではグローバル市場向けのHUAWEI P20シリーズ向けに提供を始めたとのこと。10月に発表となるKirin 980搭載のMateシリーズは,最初から実装した状態で出荷されるようだ。

Kirin 980の仕様や性能をSnapdragon 845と比較したレーダーチャート。全般的にSnapdragon 845を上回るものの「GPU Benchmark」だけは届かないのだが(左),GPU Turboを有効にすることで,全項目で上回ったという(右)
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 なお,GPU Turbo機能は,国内市場向けの既存製品への提供も行われるだろう。ただ,セキュリティパッチと合わせたシステムアップデートとして配信するそうなので,国内における配信時期がいつになるかは不明である。


NPUのデュアル化により,映像のリアルタイム認識も可能に


 Kirin 970ではAI処理用のNPUを導入することで,SoCのエッジAI性能をアピールしたHuaweiだが,Kirin 980はその路線をさらに強化して,NPUを2基搭載したそうだ。これまでのNPUは,主に写真における画像認識に注目が集まったものだが,デュアル化による性能向上によって,映像における動態認識にも使えるようになったとのこと。
 講演のデモでは,リアルタイムで複数の人間の動きを検出したり,走るランナーを横から撮影した映像から人物と背景を完全に分離して,リアルタイムに別の背景を合成する様子が披露された。

エッジAIの処理ユニットであるNPUを2基内蔵(左)。Kirin 970で注目を集めた写真の画像認識から,動画の画像認識へと拡張して,複数の人間とその動きをリアルタイムに検出することも可能に(右)
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リアルタイムに人と背景を区別して,人物だけを切り出し(左),別撮りの背景に重ねてレンダリングする(右)。これをスマートフォンでやってしまうのがDual NPUの威力というわけだ
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Dual ISPの採用で,画像処理能力はKirin 970比で大きく伸びた
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 NPUのデュアル化に歩調を合わせたわけではないかもしれないが,SoCに統合する映像処理プロセッサ(Image Signal Processor,ISP)もデュアル化したという。これによりKirin 980は,高精細な画像処理を高速にこなせるようになり,Snapdragon 845の内蔵ISP「Spectra 280 ISP」では,性能面で処理しきれずにつぶれてしまうようなディテールまで,きちんと画像化できると,Yu氏は主張していた。

Snapdragon 845のISPでは処理しきれずにつぶれてしまうような部分も,Kirin 980なら画像化できるというスライド
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 モデム関連の特徴については,スライドで紹介しておこう。

Kirin 980の統合型モデムが備える機能(左)。4×4 MIMO,5キャリアアグリゲーション対応など,最新の機能を備える。加えて,世界初というLTE Cat.21(カテゴリー21)にも対応し,下り最大通信速度は1.4Gbpsに達した
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高速鉄道や地下鉄など,移動中の通信ではハンドオーバーが必要な状況でも,スムーズで途切れの少ないデータ通信が可能なので,ゲームへの影響を最小限に抑えられるという(左)。Huawei純正の5G対応モデム「Balong 5000」と組み合わせれば,5Gにも対応するとのこと
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P20シリーズの新色登場

P20 Proには革張りのラグジュアリーモデルも


Kirin 970を搭載するMate 10シリーズとP20シリーズは,いずれも1000万台を超える出荷台数を達成
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 基調講演では,既存スマートフォンのバリエーションモデルに関する発表もあった。
 その1つが,世界的に売れ行き好調というHUAWEI P20シリーズのカラーバリエーションモデルの投入である。1つはオーロラをテーマにした「Morpho Aurora」で,もう1つが真珠貝をイメージした「Pearl White」の2モデルがラインナップに加わるという。

P20シリーズの新たなカラーバリエーションとして,白系の「Pearl White」と青系の「Morpho Aurora」を追加。価格は据え置きで9月5日から出荷開始
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 加えて,HUAWEI P20 Pro(以下,P20 Pro)には,背面パネルにイタリアンレザーを採用したラグジュアリーモデル「Genuine Leather」を2モデル追加する。レザー素材に合わせて,フレーム部分の色も従来のステンレスカラーから,皮の色調に合ったものに変更したとのこと。

 P20 Proのカラーバリエーションモデルの製品仕様は,メインメモリ容量6GB,内蔵ストレージ容量128GBで既存製品と変わらないが,ラグジュアリーモデルでは,メインメモリ容量8GB,内蔵ストレージ容量256GBに増量してあるのものも特徴だ。価格は999ユーロ(税別,約12万8900円)と,さすがにお高い。
 なお,新色やラグジュアリーモデルは,いずれも世界市場向けの製品なので,国内市場で販売するかどうかは不明である。

背面がイタリアンレザー仕様になるGenuine Leatherは,メインメモリ容量やストレージ容量も強化。カラーは「Elegant Black」と「Golden Brown」の2色。こちらも9月5日より出荷開始の予定だ
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 新たな一般消費者向けデバイスとして販売するのが,Huawei初のスマートスピーカー「HUAWEI AI Cube」(以下,AI Cube)だ。
 Amazon.comの音声アシスタントサービス「Alexa」対応に対応するスマートスピーカーは珍しくもないが,AI CubeはHuawei製品らしくLTE接続機能とルーター機能を内蔵して,スマートホームのWAN接続とLAN接続を,これ1台で完結させられるのが特徴だ。日本のように光ファイバーでのインターネット接続が整備済みの地域ならともかく,そうでない国や地域では,セルラー(携帯電話系)通信機能付きのルーターはニーズがあるという話だった。

4Gルーター機能付きのスマートスピーカーAI Cube
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 ほかにも「HUAWEI Locator」という,GPS搭載のいわゆる「失せ物探しデバイス」も発表となっている。
 この種の製品はすでに多数存在するが,それらはBluetoothを利用して位置情報をサーバーと交換するものが大半だ。それに対してHUAWEI Locatorは,デバイス自体にセルラー機能を持たせているのが特徴だ。日本ではすでに使っていない2Gや,「NB-IoT」(ナローバンドIoT)の仕組みを使って,定期的にきわめて小さなパケットを送受信する仕組みで,取り付けたデバイスの位置情報をアップロードする。
 このまま日本で展開するのは難しいだろうが,5G化後も見据えた長期的な意味では,注目すべきデバイスのひとつになるだろう。

既存の失せ物探しデバイスとは,アプローチが異なるHUAWEI Locator(左)。「戻ってくればラッキー」というイメージの既存製品に対し,見失ったアイテムを取り戻せることが前提だ。SOSボタンやエマージェンシーコールなどの機能も備えるので,子供に持たせるセキュリティデバイスとしても使える
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HuaweiのKirin 980製品情報ページ(英語)

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