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次期OS「Android N」の新機能や,モバイルVRの新プラットフォーム「Daydream」に注目集まる。Google I/O 2016基調講演レポート
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印刷2016/05/20 15:25

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次期OS「Android N」の新機能や,モバイルVRの新プラットフォーム「Daydream」に注目集まる。Google I/O 2016基調講演レポート

Google I/O 2016の基調講演会場。この種のイベントでは珍しいことに,野外イベントホールを利用していた
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 北米時間2016年5月18日,Googleは,米国・サンフランシコにて,開発者向けイベント「Google I/O 2016」を開催した。Google I/Oは毎年恒例のイベントで,とくに初日午前に行われる基調講演では,開発中の次期Androidや,今後登場するGoogleの製品や技術が発表されるため,開発者以外からも注目を集めるものとなっている。
 そこで本稿では,基調講演で発表された内容の中から,ゲーマーにも関係のある話題2つ,次期Android OSである開発コードネーム「Android N」と,VRプラットフォーム「Daydream」の概要をレポートしたい。


Android Nの開発コードネームは……現在募集中!?


 まずは,Android Nの話題から。
 2016年夏に登場予定であるAndroid Nは,すでに開発者向けのプレビュー版が公開中で,今回のイベントに合わせて,新バージョンの公開も始まっている。

Android Nの開発コードネーム募集ページ。「N」で始まるお菓子の名前を募集している
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 ちなみに,Googleは,Android OSの開発コードネームとして,アルファベット順にお菓子の名前を採用するのが通例となっている。Android 5.xは「Lollipop」(ロリポップ)だし,Android 6.xは「Marshmallow」(マシュマロ)といった具合だ。では「N」の開発コードネームとなるお菓子が何か気になるところだが,社内で適当なアイデアが思いつかなかったのだろうか。なんとGoogleは,Android Nの開発コードネームを公募するという,ちょっと聞いたことがない試みを初めている。日本語での応募ページもあるので,「N」で始まる適当なお菓子の名前を思いついた人は,応募してみるといいかもしれない。

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 本題に戻ろう。すでにプレビュー版が提供中ということもあってか,今回の基調講演では,Android Nの主要なポイントだけに絞った紹介が行われた。そのポイントとは,「Performance」(性能)と「Security」(セキュリティ),そして「Productivity」(生産性)の3点だ。

 Performanceの項目で説明されたのは,グラフィックスAPI「Vulkan」への対応と,アプリケーション実行環境「ART」の強化がある。

 Vulkanについては,4Gamerでは何度も紹介しているので,詳細は割愛するが,簡単にいえば,GPUへの直接アクセスを可能にして,低オーバーヘッドでマルチコアを効率的に活用できるという特徴を持つローレベルのグラフィックスAPIだ。
 Android NがVulkanを正式サポートすることで,ゲーム開発者はVulkanを使ったAndroid向けゲームの開発をしやすくなる。Vulkanを使えば,今までのグラフィックスAPIであった「OpenGL ES 3.x」を使った場合よりも,高いフレームレートでグラフィックス表示を行えるゲームが開発可能になるというわけだ。
 対応ゲームが登場してくればの話になるとはいえ,ゲーマーにとって,Android Nの一番重要な利点になる,といっても過言ではないかもしれない。

Vulkanを使ったゲームのイメージ。Vulkanを利用するゲームが増えれば,Android用ゲームのグラフィックスが,今までよりもリッチかつ快適になりそうだ
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 もう1つの項目であるART(Android Run Time)とは,Javaによる仮想コードで作られたAndroidアプリを実行する仕組みのことだ。導入されたのはAndroid 4.4だったが,Android 5.0から正式採用となった機能である。
 Android 4.4までは,アプリケーションの起動時に,仮想コードからバイナリコード(=CPUが実際に処理できる形態)へと変換(コンパイル)するJust In Time(以下,JIT)方式のコンパイラ「Dalvik」が使われていた。一方,Android 5.0のARTでは,Ahead of Time(以下,AOT)方式のコンパイラとなり,アプリのインストール時に仮想コードをバイナリコードへと変換する仕組みに変更されたという経緯がある。
 ARTの方式は,アプリの起動時間を短縮したり,実行速度が向上したりといった利点があるのだが,一方でインストールに要する時間が長くなるという問題も抱えていたのだ。

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 それがAndroid NのARTでは,JIT方式コンパイラ機能が追加され,インストールにかかる時間を短縮する方向に変更された。Googleによれば,この改良によって,アプリのインストール時間は75%高速化され,変換後のバイナリコードは,サイズが50%小さくなったという。
 とはいえ,単にAndroid 4.4時代に戻ったわけではない。アプリのプリコンパイルは,端末が充電中かつアイドル状態のタイミングを見計らって,自動で行われるようになったのだ。それに加えて,プリコンパイル時にアプリの実行中に収集した「プロファイル情報」をもとに,バイナリコードの最適化を行うので,従来のARTよりもアプリの実行速度が向上するという。

実行中に集めたプロファイル情報を元に最適化を行うため,Android 6.0(Marshmallow)に対して,最大6倍の高速化も可能になるという
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 また,インストールにかかる時間が短縮されたことで,Android OS自体のアップデートに要する時間も短縮されたそうだ。Android 6.0以降では,OSのアップデート直後に「アプリを最適化している」といったメッセージが表示されたあと,長い時間をかけてもう一度アプリの変換処理を行っていた。これがなくなるわけである。


Android Nでは標準でマルチウインドウ動作が可能に


 セキュリティの改良点では,「ファイルベースの暗号化」「メディアフレームワークの強化」「シームレスアップデート」という3点が取り上げられた。順に説明していこう。

使っていない人も多いと思うが,Androidでのストレージ暗号化は,「設定」→「セキュリティ」から可能
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 これまでのAndroidでは,ストレージの暗号化を行うと,内蔵ストレージ全体が暗号化され,起動時に復号化(※暗号を解除すること)する仕組みをとっていた。これがAndroid Nになると,ファイルごとに暗号化の有無を制御できるようになる。
 この仕様によってなにができるようになるのかという例として挙げられたのが,「シームレスアップデート」という機能だ。ファイルベースの暗号化機能と,前述したARTの改良を組み合わせて実現したもので,Android OSのアップデート中にも,一部の機能やアプリを利用できるようにする新しいシステムアップデート機能である。

 Android 6.0までは,ストレージ全体をまとめて暗号化,復号化していたため,システムアップデートのインストール作業は,専用のファームウェアで行われていた。それゆえに,インストール中に電話がかかってきても出られないし,SMSや通知も受け取ることができない。
 しかし,シームレスアップデートが利用できると,Androidのアップデート作業の大部分をAndroid自体で行えるようになる。そのため,アップデートのインストール中にも電話やSMS,アラームといった中断すると問題が出るアプリを制限付きながら利用できるようになるのだ。
 このときに,ファイルベースの暗号化機能が使われるという。ストレージ内の特別な領域に,重要なアプリの動作に必要なファイルを置いておき,これらを暗号化して保護するそうだ。アップデートのインストール中には,一切の機能が使えなかった今までのAndroidに比べれば,使い勝手が向上するといえよう。

 最後の生産性に関わる機能としては,「マルチウインドウ」「通知機能の強化」,そして「絵文字の改良」がある。順に説明していこう。

画面を上下に2分割して,2つのアプリを同時に表示している様子
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 複数のアプリを同時に表示するマルチウインドウ機能が,Android Nでは標準機能になる。画面を上下,または左右に分割して,複数のアプリを表示する機能だ。同種の機能は,端末メーカーが独自の方式で実装していることもあったが,OS標準機能になれば,端末を問わずに利用できるようになるだろう。
 ちなみに,テレビに接続して使うAndroidデバイスである「Android TV」では,バックグラウンドで動作している動画再生アプリなどを子画面で表示する「Picture-in-Picture」機能も利用できるようになるとのこと。

Android Nを導入したAndroid TVデバイスでは,子画面(画面右上)でビデオを再生したまま,他のアプリを実行できる
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 通知機能の強化では,通知カードに直接入力したりできるようになるという。たとえば,ショートメッセージ系アプリの場合,着信したメッセージの通知カードに,メッセージを書き込んで返信することが可能になる。

アプリを起動せず,通知カードに表示されたメッセージに直接返信することが可能に
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 絵文字の改良は,人間を表現する絵文字のバリエーションなどを増やすものだ。Unicode 9.0以降で実装された絵文字の変更に対応したものである。

新しい絵文字。人種の多様性に対応すべく,顔や手の絵文字では肌の色が異なるバリエーションが用意された
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 Android Nの改良点はほかにも多々あるが,すでにプレビュー版で実装済みの機能も多いためか,今回は,比較的あっさりとした紹介になっていたように思う。


Google自社開発のVRデバイス「Daydream」


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 Android N以上に基調講演で注目を集めたのが,Google製のモバイルVRプラットフォーム「Daydream」だ(関連記事)。
 Daydreamは,段ボール製の簡易VRヘッドマウントディスプレイ(以下,HMD)「Google Cardboard」と同じく,スマートフォンを組み込んで表示装置兼コンピュータとして使うVR HMDであるが,段ボールではないちゃんとしたゴーグル型HMDと,専用のワイヤレスモーションコントローラをセットにしたものとなっている。
 Android N側にも,Daydream対応のVR機能が標準で組み込まれるという。

Daydreamはスマートフォンを組み込んで使うVR HMDで,コントローラやOS側の機能も用意している
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Daydream Ready Smartphoneの要件
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 核となるスマートフォン側の対応ハードウェア要件も設定され,要件を満たした「Daydream Ready Smartphone」が,今後登場するという。これは,Daydreamを動作させるために必要なセンサーやディスプレイ,SoCなどの条件を定めたもの。対応スマートフォンは,Samsung ElectronicsやHTC,LG ElectronicsやASUSTeK Computerなどから登場予定とのこと。
 なお,要件を満たせば,既存のスマートフォンでもDaydream Ready Smartphoneを名乗れる場合もあり,Google製スマートフォンでは,「Nexus 6P」が対応デバイスに挙げられている(関連リンク)。

Daydream Ready Smartphoneには,世界的なスマートフォンメーカー各社が名乗りを上げている
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 一方のDaydream用のモーションコントローラは,ボタンに加えて,動きや姿勢などを検出可能なセンサーを内蔵するリモコン型のコントローラである。要は,VR HMD用のWiiリモコン的なデバイスだ。
 スマートフォンを組み込んで使う簡易VR HMDでは,画面をタッチ操作できないので,どうやってアプリを操作するのかが問題なっていた。しかし,Daydreamでモーションコントローラが定義されたことにより,操作の問題は解決に向かうかもしれない。

Daydream用のモーションコントローラは,Wiiリモコンのようにモーションを検出できる
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 Daydreamではハードウェアだけでなく,ソフトウェア面も定義している。たとえばアプリの起動などに使うホーム画面も,VR専用のものを実装しており,ユーザーはVR HMD本体の動きやモーションコントローラの操作によって,ホーム画面からVRアプリやVRコンテンツ視聴を選択するというわけだ。

DaydreamのVRホーム画面。モーションコントローラを使ってアプリを選択する
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Google純正アプリもVR対応を予告している
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 VR対応ゲームやコンテンツもサードパーティから登場予定だ。Google自身も,マップアプリの機能である「Street View」のVR対応を行うほか,フォトアプリやYouTubeアプリで,VRコンテンツを利用できるようにするとのこと。
 スマートフォンのカメラを使って,ユーザーが360度ビデオを作成できるような仕組みも登場するようだ。

Daydream対応VRゲーム開発に名乗りを上げた10社。大手パブリシャでは,Electronic ArtsとUBI Entertainmentの名前がある
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ゲーム以外のVRアプリ・コンテンツでは,ストリーミングビデオやニュース,スポーツコンテンツなどが登場する予定
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 Oculus VRの技術をベースにしたSamsung Electronicsの「Gear VR」が先行していたモバイルVRの分野は,GoogleがDaydreamを発表したことによって,さらに盛り上がっていくのではないだろうか。

Google I/O 2016 公式Webページ(英語,動画が流れる場合があります)

Daydream 公式Webページ(英語)

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    Daydream

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