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[TGS 2013]“見る”だけでゲームを操作できる時代がすぐそこに? スウェーデンから来た最先端の視線入力技術を体験してみた
なお,スウェーデンパビリオンで聞いた同国のゲーム産業に関するレポートも別途掲載しているので,興味のある人はこちらも参照してほしい。
[TGS 2013]初出展のスウェーデンパビリオンで知る,日本とスウェーデンのゲーム産業における意外な距離感
ユーザーの「視線」が入力装置に
視線入力技術とは何かを簡単に説明すると,「自分が画面のどこを見ているか」をコンピュータが読み取り,それを「入力」として扱う技術である。スウェーデンパビリオンで展示されていた技術を開発したのは,Tobii Technology(以下,Tobii)という企業で,本社は同国首都ストックホルムにあり,東京にも現地法人を持っている。
ユーザーの視線が画面のどこを見ているのかを探知する技術は,Web業界では以前から注目されてきていた。ユーザーが便利に使える=利用頻度が上がる可能性があるWebページを構築するには,ユーザーが画面のどこに注目していて,画面が切り替わったときには,まずどこに注目するのか,これを細かく分析することは,大きな意味を持つからだ。
だが,視線を追う「アイトラッキング」技術と,それによってPCをコントロールする「アイコントロール」技術の応用範囲は,これだけにとどまらない。いくつかの例を下に挙げておこう。
●眠気を検知する
●医療分野での利用
手術中にコンピュータを使う場合,コンピュータを操作する部分も当然消毒されていなければならないが,高度な電子機器の消毒が厄介な作業になるのは論を待たない。視線入力であれば,手を触れることなく操作が可能になる。
●障害の克服
指先を動かすことすら困難な障害を負った場合でも,視線入力によってPCを操作し,さまざまなコミュニケーションや活動が可能となる。
話を戻すと,実際にブースでは以下のデモを通じて,Tobiiの視線入力技術を体験できた。
●簡単なゲーム
地球に隕石が迫ってくるので,隕石を見てそれを破壊するというゲーム。
●地図アプリ
●テレビのチャンネル切り替え
●テキストリーダー
●フォトビューワー
●アイコンのオン/オフ
新しいインタフェースによる新しいゲームへの期待
1つめは「眼鏡をかけていても使えるのか?」という疑問。2つめは「でもお高いんでしょう?」という疑問。そして最後は,「長時間使うとなったら,キーボードとマウスのほうが使いやすいのではないか?」という疑問だ。
まず1つめだが,眼鏡をかけていても問題なく使用できた。眼鏡人口の多い日本でも安心である。デモに使われていたシステムは医療分野向けに開発されたものではないのだが,外科手術で視線入力を用いる場合,医師が眼鏡やゴーグルをかけていることもあるわけで,眼鏡越しに使えなければ話にならない。
だが,実はこの視線入力システム,すでに小型化を含めた量産への準備が整っているとのこと。TobiiにはIntelの投資事業部門であるIntel Capitalも出資しており,「ノートPCやタブレットにこの視線入力システムが搭載される未来も,そう遠くない見込み」だそうだ。
最後の問題については,こればかりは長時間使ってみないとなんとも言えない。また,仮にPC向けが安価に量産された場合でも,初期の製品にはいろいろと使いにくいところもあるだろうと予測できる。先進的な入力デバイスとは,そういうものだからだ。今では誰もが当たり前のように使っているタッチパネルだって,大昔はもっと精度の低いものだった。
ブースでインストラクターを務めていたTobiiの日本法人であるトビー・テクノロジー・ジャパン営業企画部の大竹賢司氏は,「PCのインタフェースは,一般の人には難解な面がある」と指摘する。
PCに慣れ親しんだ人にとって,キーボードとマウスは当たり前に使える機器であるが,万人にとってそうだというものではない。「手先が器用」といわれる人でも,マウスをうまく使えなかったり,タッチパネルをうまく操作できなかったりすることは,さほど珍しくない。
今は手足のようにキーボードとマウスを使いこなしている人も,事故や病によって,それができなくなる可能性は常にある。
視線入力技術が,PCやゲーム機,タブレットやスマートフォンなどのデジタル機器とゲームをどのように変化させるのか,今後も注目していきたい。
なお,東京都江東区にある日本科学未来館にて,10月2日から10月18日まで開催予定のイベント「イノベーティブ・スウェーデン」に,Tobiiの視線入力機器が出展されるとのこと。興味ある方は足を運んでみてはいかがだろうか。
Tobii Technology 日本語公式Webサイト
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