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[TGS 2013]“見る”だけでゲームを操作できる時代がすぐそこに? スウェーデンから来た最先端の視線入力技術を体験してみた
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印刷2013/09/27 16:10

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[TGS 2013]“見る”だけでゲームを操作できる時代がすぐそこに? スウェーデンから来た最先端の視線入力技術を体験してみた

画像集#001のサムネイル/[TGS 2013]“見る”だけでゲームを操作できる時代がすぐそこに? スウェーデンから来た最先端の視線入力技術を体験してみた
 東京ゲームショウ2013で出展されていた海外ブースのなかでも,筆者が注目していたのはスウェーデンパビリオンだった。その理由は“スウェーデン=Paradox Interactive”という単純な図式が頭にあったからなのだが,実際にブースを訪れてみると,そこにはちょっと驚くような未来が展示されていた。ここでは,そのなかでもとくにインパクトがあった,ゲームに応用できる「視線入力技術」を紹介したい。
 なお,スウェーデンパビリオンで聞いた同国のゲーム産業に関するレポートも別途掲載しているので,興味のある人はこちらも参照してほしい。

[TGS 2013]初出展のスウェーデンパビリオンで知る,日本とスウェーデンのゲーム産業における意外な距離感



ユーザーの「視線」が入力装置に


 視線入力技術とは何かを簡単に説明すると,「自分が画面のどこを見ているか」をコンピュータが読み取り,それを「入力」として扱う技術である。スウェーデンパビリオンで展示されていた技術を開発したのは,Tobii Technology(以下,Tobii)という企業で,本社は同国首都ストックホルムにあり,東京にも現地法人を持っている。

 ユーザーの視線が画面のどこを見ているのかを探知する技術は,Web業界では以前から注目されてきていた。ユーザーが便利に使える=利用頻度が上がる可能性があるWebページを構築するには,ユーザーが画面のどこに注目していて,画面が切り替わったときには,まずどこに注目するのか,これを細かく分析することは,大きな意味を持つからだ。
 だが,視線を追う「アイトラッキング」技術と,それによってPCをコントロールする「アイコントロール」技術の応用範囲は,これだけにとどまらない。いくつかの例を下に挙げておこう。

●眠気を検知する
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 まぶたの動きや視線の方向を分析することで,ユーザーの眠気を検知することも可能になる。これは危険な居眠り運転の防止に役立つ。また同時に,視線入力を使えば,運転中にハンドルから手を放すことなく可能な操作を,増やすこともできる。

●医療分野での利用
 手術中にコンピュータを使う場合,コンピュータを操作する部分も当然消毒されていなければならないが,高度な電子機器の消毒が厄介な作業になるのは論を待たない。視線入力であれば,手を触れることなく操作が可能になる。

●障害の克服
 指先を動かすことすら困難な障害を負った場合でも,視線入力によってPCを操作し,さまざまなコミュニケーションや活動が可能となる。

 話を戻すと,実際にブースでは以下のデモを通じて,Tobiiの視線入力技術を体験できた。

ブースで使われていた視線入力システム「Tobii X2-30 Eye Tracker」のサンプル機器
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●簡単なゲーム
 地球に隕石が迫ってくるので,隕石を見てそれを破壊するというゲーム。

●地図アプリ
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 画面全体は霧がかかったような低解像度の地図だが,視線が向いている場所だけが,スポットライト的に解像度が上がるというデモ。ブースでのサンプルは分かりやすくするために,視線がある部分とそうでない部分で極端な差をつけていたが,「人間が一度に見ている範囲は,実はそれほど広くない」とことを利用して,高解像度で表示する面積と解像度の調整を正しく行えば,地図アプリやデータ量の軽量化が可能となる。

●テレビのチャンネル切り替え
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 サムネイルで並んだ番組の中から,見たい番組を「見れば」チャンネルが変わるというUIのデモ。実に直感的で分かりやすいデモである。

●テキストリーダー
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 見た目は普通のテキストリーダーだが,文章の上のほうを見ると上にスクロールし,下のほうを見ると下方にスクロールする。画面の左右を見ると,別のテキストに表示を切り替えられる。電子書籍や書類を読むときに役立ちそうだ。

●フォトビューワー
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 これも見た目はよくあるフォトビューワーだが,視線入力によって写真を選択して拡大するといった操作が行える。

●アイコンのオン/オフ
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 電球アイコンを「見る」たびに,電球のスイッチがオン/オフされる。



新しいインタフェースによる新しいゲームへの期待


TobiiのWebサイトにある,ゲームに視線入力を使うイメージ画像。このページには,サスペンスもののアドベンチャーゲームや,サッカーゲーム,フライトシューティングゲームでの使用をイメージしたイラストも掲載されている
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 このように,さまざまなアプリケーションで便利に使える視線入力システムだが,ここまで読んだ人の頭には,3つくらいの疑問が湧き上がるのではないかと思う。
 1つめは「眼鏡をかけていても使えるのか?」という疑問。2つめは「でもお高いんでしょう?」という疑問。そして最後は,「長時間使うとなったら,キーボードとマウスのほうが使いやすいのではないか?」という疑問だ。

 まず1つめだが,眼鏡をかけていても問題なく使用できた。眼鏡人口の多い日本でも安心である。デモに使われていたシステムは医療分野向けに開発されたものではないのだが,外科手術で視線入力を用いる場合,医師が眼鏡やゴーグルをかけていることもあるわけで,眼鏡越しに使えなければ話にならない。

これはTobiiと4tiitoo社による,ノートPCのヒンジ部分に取り付けた視線入力機器により,「Minecraft」をプレイするというデモのイメージ写真だ
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 2つめについては,現状では「お高いです」と回答せざるを得ない。ちなみに,今回ブースに展示されていたシステムは「100万円」とのこと。文句なくお高い。
 だが,実はこの視線入力システム,すでに小型化を含めた量産への準備が整っているとのこと。TobiiにはIntelの投資事業部門であるIntel Capitalも出資しており,「ノートPCやタブレットにこの視線入力システムが搭載される未来も,そう遠くない見込み」だそうだ。

 最後の問題については,こればかりは長時間使ってみないとなんとも言えない。また,仮にPC向けが安価に量産された場合でも,初期の製品にはいろいろと使いにくいところもあるだろうと予測できる。先進的な入力デバイスとは,そういうものだからだ。今では誰もが当たり前のように使っているタッチパネルだって,大昔はもっと精度の低いものだった。

 ブースでインストラクターを務めていたTobiiの日本法人であるトビー・テクノロジー・ジャパン営業企画部の大竹賢司氏は,「PCのインタフェースは,一般の人には難解な面がある」と指摘する。
 PCに慣れ親しんだ人にとって,キーボードとマウスは当たり前に使える機器であるが,万人にとってそうだというものではない。「手先が器用」といわれる人でも,マウスをうまく使えなかったり,タッチパネルをうまく操作できなかったりすることは,さほど珍しくない。
 今は手足のようにキーボードとマウスを使いこなしている人も,事故や病によって,それができなくなる可能性は常にある。

こちらは開発者向けの「Tobii REX Developer Edition」を,液晶ディスプレイに取り付けたもので,「バトルフィールド 3」のようなゲームを視線入力でプレイできるというイメージ写真である
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 視線入力という技術が,PCの使い勝手に関するハードルを下げてくれるであろうことは,想像に難くない。また,ゲームの歴史を考えてみても,新しいインタフェースは常に,新しいゲームを生んできた。視線でコンピュータを制御するという未来は,それほど遠くはなさそうな距離まで近づいている。
 視線入力技術が,PCやゲーム機,タブレットやスマートフォンなどのデジタル機器とゲームをどのように変化させるのか,今後も注目していきたい。

 なお,東京都江東区にある日本科学未来館にて,10月2日から10月18日まで開催予定のイベント「イノベーティブ・スウェーデン」に,Tobiiの視線入力機器が出展されるとのこと。興味ある方は足を運んでみてはいかがだろうか。

Tobii Technology 日本語公式Webサイト

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