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伊藤忠ケーブルシステムのブースで,「ゲームプレイヤーを守る技術」に触れた[TGS2024]
同社が展示していたのは,イギリスのCambridge Research Systemsが開発したソフトウェア「HardingFPA」シリーズ。これは,光過敏性発作(Photosensitive Epilepsy,以下PSE)の危険性をチェックするものだ。
PSEは光の明滅や揺らぎ,視覚的パターンといった演出をきっかけに身体的な異常反応が引き起こされる病気で,4000人に1人以上の確率で発症すると言われている。
日本では1997年に放映されたテレビアニメで多くの発症者が出た事件が有名だが,そのときに使用された演出の1つが,画面を激しく点滅させる「パカパカ」と呼ばれる手法で,HardingFPAの日本での通称は「パカパカチェッカー」になっているという。
HardingFPAは動画ファイルを解析して,PSE発症を防ぐためのガイドラインに適合しているかをチェックする。下の画像で左上に常時表示されているのが動画ファイルの映像で,右が危険度を表すグラフだ。
グラフが「失格」のラインを超えてしまったら,その時点でガイドライン不適合となる。また,「警告」のゾーンに一定時間以上留まっているようなものも,同じく不適合と判断されるとのことだ。
大きな判定基準としては,「画面が点滅する頻度」「画面に占める赤色の割合」「空間の歪みや渦巻きなどの模様」がある。画面が激しく点滅し,赤色が多く,渦を巻いているような映像はPSE発症の可能性が高くなるわけだ。
ガイドラインの内容は地域のほか,放送や映像作品といったジャンルによっても若干の違いがある。プラットフォームごとにガイドラインを用意しているケースや,開発会社側で独自に規制を設けているケースもあるとのこと。いずれにしろ,ゲームをリリースするには,こうしたガイドラインや規制をクリアしているかチェックする必要があるわけだ。
ところで,放送や映像作品の場合,視聴者が見るものは基本的にすべて同じ映像なので,一度HardingFPAを通せば安全性を確認できるのは分かる。だが,ゲームの場合は時間が長くなるうえ,プレイ内容によって映像が千差万別になるので,安全性を完全にチェックするのは難しそうだ。そのあたりについて,どうしているのかをブースの担当者に聞いてみたところ,やはり「危険度が高そうなところ」を選んでチェックするかたちが多いようだ。
HardingFPAには,動画ファイルの解析だけではなく,入力される映像をリアルタイムで判定できる製品もあるので,実際にプレイしながら危険性を確認する使い方もされているという。
HardingFPAは,すでに日本の大手ゲーム企業への納入実績が多数ある。今回東京ゲームショウに出展した目的としては,中小のデベロッパへの認知度を高めることがあるそうだ。
前述したように,ガイドラインへの適合がリリースの条件となっているため,プラットフォーマーのチェックに通らないとデベロッパには修正作業が発生する。場合によっては何度も差し戻されるとのことで,そのコストは軽視できないようだ。HardingFPAを使えば,事前に自分たちでもチェックできるので,負担を軽減できるというわけだ。
HardingFPAは,ゲームをプレイしているだけだと気づけないが,実は重要な役割を果たしているソフトウェアだ。こういった“縁の下の力持ち”的存在は,ほかにもたくさんあるのかもしれない。
Cambridge Research SystemsのHardingFPA製品情報ページ
伊藤忠ケーブルシステム公式Webサイト
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