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[GDC 2019]Amazon Gamesのイルジャ・ロッテーリ氏が語る「次なる偉大なeスポーツタイトルを生み出すための10のルール」
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印刷2019/03/21 21:03

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[GDC 2019]Amazon Gamesのイルジャ・ロッテーリ氏が語る「次なる偉大なeスポーツタイトルを生み出すための10のルール」

Amazon Gamesでeスポーツ部門を率いるロッテーリ氏。Wizards of the Coast,Blizzard Entertainment,Riot Gamesなどで古くからeスポーツシーンに関わってきた
画像集 No.002のサムネイル画像 / [GDC 2019]Amazon Gamesのイルジャ・ロッテーリ氏が語る「次なる偉大なeスポーツタイトルを生み出すための10のルール」
 GDC 2019に,Amazon Gamesでeスポーツ部門を統括するイルジャ・ロッテーリ氏が登壇し,「次なる偉大なeスポーツタイトルを生み出すための10のルール」(10 Rules to Build the Next Great Esport Game)というタイトルの講義を行った。

 ロッテーリ氏は“コンペティティブ・ゲーマー”として,25年以上の経歴を誇る人物だ。イタリア北東部のバルカン半島に差し掛かる古都トリエステで生まれた氏は「マジック・ザ・ギャザリング」のイタリア王者になったのを機に,Wizards of the Coastに雇用され,デジタル版の開発や「ポケモン」,「ダンジョンズ&ドラゴンズ」といったIPの管理に関わるようになった経歴を持つ。

 その後,Blizzard Entertainmentにおいては,当時韓国を中心とした各地域のプロモーターが仲介していた「Starcraft II」のプロトーナメントを「World Championship Series」にまとめ,Riot Gamesでは,大学生向けのエヴァンジェリストとして活動したのち,2年ほど前にAmazon Gamesに雇用されたという。Amazonと言えば,Twitchを傘下に収め,eスポーツシーンでもプレゼンスを示しているが,現在ロッテーリ氏自身が同社で何をしているのかは詳しく語られていない。いずれにせよ,ゲーム業界全体を見ても,これほどeスポーツ関連の事業に携わってきた人物は,それほど多くはないだろう。

ルール#1:プレイヤーの体験のためにゲームを作るべし


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 そんなロッテーリ氏が,まず最初に引用したのが,ほかならぬAmazonの創業者であり,世界でもっともお金持ちとして知られるジェフ・ベゾス氏の言葉で,「我ーは競争に執着しているのではなく,顧客に執着しているのだ。まず顧客のことを考えることから始め,そこから逆流していく(のが我ーのやり方である)」というものだ。
 「入社して気付いたのは,Amazonの雇用者たち全員がこの価値観を共有している」と語るロッテーリ氏。そしてこの価値観はeスポーツの開発にも言えると断言する。

 ゲームのコアとなる部分はゲーム開発者のアイディアと能力に委ねられているが,その周囲に加えられていくメタゲームや,Twitchで特定のゲーマーの応援,Redditなどでのファン同士の議論,コスプレを楽しんだり,eスポーツトーナメントの会場に足を運ぶ,といった“総合的なゲーム体験”も,ゲームそのものと同じように敬意を払いながら開発していくべきだとロッテーリ氏は語る。「オンライン配信やソーシャルネットワークサービスなど,開発者が無料でファンにアプローチする方法はいくらでもあり,もはやそれを怠る言い訳は効かない」と説いていた。

ルール#2:ゲームエンジンはGaaS(サービスとしてのゲーム)として作るべし


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 ここで言うGaaS型のゲームエンジンとは,「新しいコンテンツ」をリリースし,「十分にゲーマーに楽しんでもらえる持続性」を生み出し,そこから「収益を上げられる」というものである。ROI(Return of Investment/投資利益率)という観点において,寿命はいずれやってくるゲームの費用対効果を事前に設定することは難しいが,実際に「League of Legends」や「Starcraft II」のように,10年を超えてサービスが続けられているゲームも存在するわけであり,その成功の方程式というのは今後も研究されていくべきであろう。

ルール#3:観戦するのを楽しいゲームにすべし


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 ロッテーリ氏によると,Amazon Gamesでは年齢や性別,さらにはゲームについての知識もバラバラなプレイヤーをテスターとして招待し,人気ゲームや誰も知らないゲームの対戦映像を見てもらい,さらにその上にコメントを付けた映像を見てもらいながらさまざまなデータを集計してきたという。その結果,以下の11の項目がチェックポイントとして挙げられたようだ。

1.何のために対戦しているのか理解できるか?
2.視聴者は,どれだけゲームについて知っていると対戦の状況を理解できるのか?
3.毎分,毎秒ごとに,次に起こるであろう出来事を予想できるかどうか?
4.ゲームは観る側に緊張感を生みだしているか?
5.誰が勝ちそうなのか,どうやったら勝機を見出せるのかが予想できるか?
6.それぞれの対戦相手の状況が異なることを理解できるか?
7.特定の出来事がプレイヤーの技量で発生したのか,運だったのか理解できるか?
8.混乱している状況の中で,どれだけのものを特定できるか?
9.対戦中に驚くようなことが発生しているのか判断できるか?
10.どれだけゲームやプレイヤーに共感できるか?
11.どれだけ自主的に参加しているのか感じられるか?

 これらはさらに,プライオリティの高い4つにまとめられ,「ゲームプレイへの理解」「ゲーム中の緊張感」「視聴する側の楽しさ」「ゲームに対する共感」を意識することが,eスポーツ向けゲームの開発には必要であると,ロッテーリ氏は訴えた。

ルール#4:ゲーマーレベルに合わせたピラミッド型のシステム構築をすべし


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 野球やサッカー,チェスやポーカーに至るまで,どんなゲームでもカジュアルなプレイを楽しんでいる人の層は厚く,「グラスルーツ(カジュアル)」「中間層」「挑戦者」「プロフェッショナル」というピラミッド型のプレイヤー層は自然に発生していく。eスポーツでは,これを疑似的に生み出していく必要があるが,上層部にアピールするのではなく,下層部分の楽しさをしっかりと作り込まなければ,決して人気の出るゲームにはならないとし,カジュアルプレイに参加するだけでも何らかの報いが得られるようなサービスを奨励していた。

ルール#5:テストし,ファンのフィードバックを受け,さらにまたテストすべし


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 Amazon Gamesの副社長であるマイク・フラジーニ氏は,部門の設立に際して,「ゲーム開発のタイミングと,テストに参加してくれているユーザーの嗜好の変化はズレているのではないだろうか」という仮説を打ち立て,開発者側の自己主張よりもユーザーのフィードバックを最優先するような社風を作り出したという。そのビジョンはゲームデザインばかりでなく,eスポーツとしてのサービスの組み立てにも利用されているとのことだ。

ルール#6:エコシステムとは協力し,逆流するのは避けるべし


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 ロッテーリ氏が過去に携わったBlizzard Entertainment,例えば「World of Warcraft」では,レベルアップしたキャラクターを販売するような“ゴールドファーマー”たちが跋扈したり,MODから生まれた「Defense of the Ancient」が他社に奪われたり,「Starcraft II」ではeスポーツトーナメントの機会をサードパーティに奪われるなど,パブリッシャの手の届かない部分で大きな利益を失ってきた。こうしたファンの動きを無視し続けるのか,その動向をしっかりと観察して次につなげていくのかは,成功と失敗の分かれ道になり得るとのことだ。

ルール#7:計画ではなく経験を自分のものとすべし


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 「マジック・ザ・ギャザリング」のゲームイベントは,毎日のように世界各地で行われ,年間にすると何千,何万という膨大な量のトーナメントが開催されている。サンフランシスコであれ,ナポリであれ,東京であれ,参加したいと思えば各地に赴き,参加料を払って対戦相手を見つければ,誰でもゲームに興じることができるというエコシステムが完成しているのだ。ルール#6と類似しているような気もするが,そうしたトーナメントをすべて管理するのではなく,育まれたゲーマーコミュニティ全体を取り込むようなマクロな視点での運営が望ましいという。

ルール#8:インゲームアイテムは,エコシステムを育むスケーラブルな資源であるべし


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 インゲームアイテムは,収益を得るための貴重なパイプラインの1つであると捉えるのではなく,コンテンツをユニークで流動的なものにし続ける資源として考えるべきだとロッテーリ氏は語る。何かのイベントで感謝の意を込めてインゲームアイテムをバラまくような企画を行い,コミュニティを育んでいくというのは,ゲームだけでなく,例えばTwitchやDiscordなどのコミュニティにも有用だという。

ルール#9:オンライン・オンリーの誘惑と戦うべし


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 オンライン・オンリーというのは,シングルプレイヤーコンテンツを組み込むというのではなく,トーナメントの開催やプレイヤーとのコミュニケーションを,オンラインだけで完結するような,安易なアプローチだけに腰を落ち着かせないということだ。つまり,オンラインだけのコミュニティではなく,現実的なプレイヤーたちの出会いの場を設けることが,eスポーツの人気に不可欠であるとロッテーリ氏は力説する。「League of Legends」のコンペティティブゲーマー層は,なんと35%ものプレイヤーが大学生であり,彼らは自主的にライブイベントを開催したり,トーナメント会場に押し掛けてくるコミュニティの原動力となっているという。

ルール#10:アジアを見るべし


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 欧米のゲーム開発会社には,広範囲にゲーマーが散らばるローカルなゲーム市場だけを意識しているところが少なくないという。ロッテーリ氏は,町角のどこにでもインターネットカフェがある韓国や中国の市場を無視してはいけないと語る。例えアジア市場への売り込みを想定していないとしても,そうした環境の中でどのようにeスポーツが楽しまれているのかを,頭の中で描くのではなく,実際に目で見ておくことは重要であると話していた。

 ロッテーリ氏は,まだ「eスポーツ」が楽しまれるようになって日は浅いものの,プレイヤーだけでなく観衆のエンゲージメントも非常に高く,今では野球やアメフトの関係者たちが,どのようにすれば若者層を取り込めるのかをeスポーツ市場での動向から学び取っているような状況であるという。ゲーマーたちが熱狂するeスポーツと言えば,「League of Legends」「Dota 2」「Counter-Strike: Global Offensive」「Fortnite」「Overwatch」「Hearthstone」など,一部のタイトルに偏っているようにも思えるが,ロッテーリ氏はまだまだ市場は広がっていくはずだと述べ,今回のセッションをまとめていた。
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