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[E3 2013]PS4について,今言えること――SCEワールドワイドスタジオプレジデント,吉田修平氏インタビュー
吉田氏には,PS4の発表時にもさまざまな疑問をぶつけ(関連記事),その後4月下旬にも話を聞いているが(関連記事),開示される情報が増えたことで,当然,答えられる内容も変わってくるだろう。E3 2013時点における氏のコメントを,以下のとおりお届けしたい。
399ドルのPS4からPlayStation Cameraが外れた理由
PlayStation Camera同梱版はあるのか
――よろしくお願いします。
いきなり価格の話からなんですが,今回,PS4の北米市場における価格が399ドルと発表されました。対するXbox Oneは499ドルです。もちろん100ドルの価格差は大きく,ユーザーからは歓迎の声が多く寄せられていますが,PS4には,2月の発表会では大きく訴求されていた2眼式の「PlayStation Camera」(以下,PS Camera)が同梱されません。
PS Cameraは単体で59ドルと発表されているので,両方合わせても458ドルです。これでもXbox Oneより低価格ですから,同梱させても良かった気もします。この“さらに下げる”という判断はどういう理由からなんでしょうか。
吉田修平氏(以下,吉田氏):
PS Cameraがあれば楽しくなるゲームは(サードパーティに)対応していただければと思いますし,一方で,PS Cameraがなくても楽しいゲームは多いはずです。ですので,無理にすべてのユーザーに買っていただく必要はないという判断をしたわけです。PS Cameraを標準搭載にしないことで,本体価格をより安価にすることもできますし。
――しかしDUALSHOCK 4には,搭載する「ライトバー」をPS Cameraに認識させて,プレイヤーの位置を認識したりする機能が搭載されています。また,2月の発表時にはPS Cameraの機能を効果的に活用するデモンストレーションも行われ,いかにもPS Cameraが標準機能になる,というような印象がありました。
吉田氏:
――GDC 2013におけるPS4のセッションでは,PS Cameraを活用したAR技術がデモンストレーションされました。小人みたいなロボットが,リビングルームの中にワンサカ出てくる表現はとても面白いもので,ああいうARゲーム表現がPS4で標準になるのかな,と思ったんですが。
最近では,スマートテレビをジェスチャーでコントロールするものも出てきていますし,Xbox Oneなどもそうした方向性を目指していますよね。
吉田氏:
SCEでは,PS4でPS Cameraを使うことによってもたらされる,新しい体験の映像を公開しています(※筆者注:下のムービーを参照)。それを見れば,PS4ではPS Cameraを使ってさまざまなことができるとお分かりいただけると思います。
ただ,ナチュラルユーザーインタフェースというのは過渡期のものであり,万能で何から何までできるわけではありません。個人的な意見ですが,あらゆることをナチュラルユーザーインタフェースで処理させるには,もう少し技術の成熟が必要なのではないかな,と考えています。
――ともあれ,PS CameraはPS4においてはオプションの周辺機器になるということですね。
吉田氏:
そうですね。PS4のPS Cameraは,言うならば,PlayStation 3のときの「PlayStation Eye」と同じ位置づけになります。
――それにしても,昨日のPS4のプレゼンテーションパートでは,びっくりするくらい,PlayStation Cameraが訴求されませんでした。
吉田氏:
昨日発表された本体価格のアナウンスが,PS Cameraが同梱されない本体基本セットのものですからね。あまりにもPS Cameraをアピールしすぎて,「同梱である」という印象を与えてしまわないように……という配慮があったのかもしれません。
――ということは,同梱版が出てくる可能性はあるのでしょうか。
吉田氏:
今回発表したのは,「PlayStation Cameraが同梱されていないものは399ドルで発売される」という事実だけです。それ以外のパッケージについては,あるともないとも明言は避けましたが,いずれにせよ,もう少しお待ちください。
日本での価格も,日本向けのタイトル戦略も,
「しかるべきタイミング」での公開になる
――今回のE3における発表はワールドワイド向けということで,日本向けのタイトルの紹介は限定的でした。日本向けのPS4ゲームタイトル戦略について教えてください。
吉田氏:
おっしゃるとおり今回はE3ということもあり,世界向けの発表となりました。日本に向けての情報発信はこのあと,しかるべきタイミングで行うことを予定しています。とはいえ,昨日のプレスカンファレンスでお目にかけた「DriveClub」「Killzone Shadow Fall」「Knack」は,すべて日本での発売を予定していますよ。
DriveClub |
Killzone Shadow Fall |
Mark Cernyは,初代PSで人気を博した「クラッシュ・バンディクー」のクリエイターです。あのころ「クラッシュ・バンディクー」に夢中になった方々には,ぜひプレイしてもらいたいですね。
――本体の発売時期についても,今回のE3プレスカンファレンスでは,北米とヨーロッパについてが明らかになりましたが,日本については伏せられたままでした。このあたりについても,追って発表があるということでしょうか。
吉田氏:
年末の発売に向けて製造が始まり,「最終的にどのくらい製造できるのか,日本での需要は最終的にどのくらい見込めるのか」がはっきり見えてくるにはもう少し時間がかかります。
北米とヨーロッパの発売時期に対して,日本が後なのか先なのか,それとも同時なのか……ということについては,いま言ったようなことが見えてきてから決定する予定です。しかし,遅くとも東京ゲームショウまでには発表ができる予定ではありますよ。
――今回のE3プレスカンファレンスでは,インディーズゲームについての紹介が数多くなされましたが,ああいったインディーズゲームがなかなか日本のユーザーには届けられていないことが残念です。
吉田氏:
まったくですね。「もっと日本のユーザーにも届けるように」と私も強くソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアに言っているんですが(笑)。最近ではPS4に限らず,PS Vitaでもこうしたインディーズゲームを展開していくための取り組みを進めています。
GDCなどに参加すると,インディーズゲームのエネルギーの強さを非常に感じますよね。斬新な発想のものもたくさんありますし,それらを日本のユーザーに届けたいという気持ちは強くあります。
勇者のくせにこなまいきだ。 |
僕は森世界の神になる |
我々としてはこれを,PS3とPS4,PS Vitaに展開していきたいと思っています。
――ところでXbox Oneは,メインプロセッサがPS4とほぼ兄弟のような構成で非常によく似ていますよね。PS3時代には,Xbox 360への移植展開のしやすさにも配慮した「PhyreEngine」が提供されました。ああいう取り組みは,引き続き行われるんでしょうか。
吉田氏:
ええ。PhyreEngineは,PS4とPS Vitaへの対応が進められています。とくに中小のスタジオにとっては,こうしたゲームエンジンの存在は重要になっていて,プレイステーションプラットフォームへの参入を促す存在となり得るので,引き続き,力を注いでいきますよ。
ネットワークサービスは
PS4が提供する機能の根幹にあたる
吉田氏:
PS3やPS Vitaにおけるネットワークサービスは,PSの4登場後も大きくは変わりません。
――ではなぜこのような,有料会員前提のネットワークサービスに移行するのでしょうか。
吉田氏:
ネットワークサービスは,PS4が提供する機能の根幹であり,今後も大きく成長していく部分だと考えています。ゲームプレイ映像をクラウド上で共有する「Share」機能をはじめ,タブレットやスマートフォンのようなモバイル機器を使った新しい遊びの提供など,PS4向けのネットワークサービスは,これまでのPS3やPS Vitaで提供していたものと比べて,かなり高度なものとなります。
これを,無料という形で提供していくにはコスト的に苦しいものがあるんです。設備投資額も大きくなりますし。こうした理由から,PS4特有のネットワークサービスをご利用いただく場合には,PlayStation Plusサービスにご加入いただく方針となりました。
――PS4のネットワークサービスは,有料会員であるPlayStation Plusのほかに,無料会員向けのサービスなどもありますか?
吉田氏:
メッセージのやりとりなど,対戦プレイ以外の会員同士のコミュニケーションなどは,無料アカウントの状態でも利用できます。
――「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア」や「The Elder Scrolls Online」のようなMMORPGをプレイする場合も,PlayStation Plusへの加入は必要なんでしょうか。
吉田氏:
もっとも,Free-to-Playのゲームなど,ゲームスタジオやパブリッシャごとの判断でPlayStation Plusへの加入を必要としないものが出てくることはあります。具体例を挙げれば,「Planetside 2」や「DC Universe Online」のPS4版は,PlayStation Plusへの加入を必要としません。
――ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼアのように,PS3版とPS4版がリリースされるような場合はどうでしょうか。
吉田氏:
各社の判断に委ねられます。ただし,PS3で提供していたオンラインパスの仕組みは,PlayStation Plusに置き換わります。
――PS4時代の新しいネットワークサービスとして開始が予告された,クラウドゲームサービスの進捗状況はどうでしょうか。
いい調子で開発が進められていますよ。まずはPS3のゲームをクラウドゲームサービスの形でPS3とPS4のユーザーに提供していく計画でして,現時点でのロードマップとしては,2014年に北米地域からスタートさせる予定です。
「どの国と地域で」「どのハードのゲームを」「いつから」という3軸の組み合わせで,計画を練っているところです。もちろん,その「どの国」には日本も含まれていますが,今はまだ具体的にお話しできる段階にはありません。
――PS3互換機能のないPS4に対して,PS3のゲームをクラウドゲームサービスの形で提供するというのが,プレイステーションプラットフォームにおけるクラウドの起点だったわけですが,将来的にはPS3以外のゲームもクラウドベースの形で提供していくのでしょうか。
吉田氏:
技術的には問題なく可能です。我々としては,「すべてのプレイステーションシリーズのゲームを,タブレットやスマートフォンなどの携帯端末を含むすべてのデバイスに提供する」ことが最終目的です。
ソフトの取り扱いに制限は設けず,オンライン認証システムも稼働させず,リージョンロックも行わない
――今回のプレスカンファレンスでは,中古問題についての言及がありましたが,ユーザーには,この発表が非常に良い方向に受け止められているようです。プレスカンファレンスでは「ソニーコール」が起こるほどすごい反響でしたね。
吉田氏:
中古ソフトに関しては,基本的にPS3のときと同じというスタンスです。つまり,ディスクベースのソフトは,その取り扱いに特別な制限事項や規制を設けません。
また,地域によってはネットワーク環境が良くないところもあるので,そうした地域を想定すると,一定時間ごとのオンライン認証システムを稼働させるのは難しいと考えています。このあたりのことは以前から決定していたことなので,競合他社の動向に対してリアクションしたものではありません。
この中古ソフト問題に関しては,私自身が公式ビデオに出演していますので,ぜひ見てくださいね!
――リージョンロック(別の地域のゲームを利用出来なくする機構)は搭載されますか?
吉田氏:
PS3と変わりません。つまり,海外のソフトを利用することはできます。しかしSCEとしては,それを大きくプロモーションする姿勢はありませんし,サービス的にもユーザーサポート的にも,自国のソフトをお使いいただくことを基本としております。
しかし,海外のソフトを使うことを阻害する仕組みの導入は行いません。
――では最後に,日本のファンに一言お願いします。
吉田氏:
そして,Mark Cerny監修,SCEジャパンスタジオ開発のKnackに,とくにご期待ください!
ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアのPS4製品ページ
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