テストレポート
持ち歩けるサイズ&高スペック&充実したゲーム機能を備えたAndroidタブレットなら「LAVIE Tab T9」が決定版だ
そんな状況で登場したNECパーソナルコンピュータ(以下,NEC PC)のAndroidタブレット「LAVIE Tab T9」の2024年モデルは,8.8インチサイズのディスプレイを搭載して約365gという持ち歩きに適したサイズ,重量でありながら,Qualcomm製のハイエンド市場向けSoC(System-on-a-Chip)「Snapdragon 8+ Gen 1」を搭載する高いスペックを備えたタブレット端末だ。
LAVIE Tab T9は,NEC PCの親会社であるLenovoが海外で販売しているゲーマー向けタブレット「Legion Y700」をベースにしたNEC PCモデルというべき製品で,Legion由来のゲーマー向け機能「ゲームアシスタント」も備えていることで,発表以来注目を集めている。
本稿では,4Gamerの編集長が私物で購入したLAVIE Tab T9の直販向け「NEC Direct限定モデル」(型番:PC-TAB09Q01)を使って,その性能とゲーマー向け機能の使い勝手を検証してみたい。
iPad miniよりやや大きいが,手に持った印象は変わらない
それでは,LAVIE Tab T9の外観から見ていこう。
冒頭でも触れたとおり,LAVIE Tab T9は8.8インチサイズの液晶パネルを備えたタブレット端末だ。ハイエンドクラスのタブレットで競合と言えるiPad mini 6は,8.3インチサイズなので,ディスプレイの対角サイズは0.5インチ(約1.27cm)しか変わらない。
ただ,LAVIE Tab T9は,ディスプレイ解像度が2560×1600ドット(横置き時,以下同)でアスペクト比16:10であるのに対して,iPad mini 6は,2266×1488ドットでアスペクト比3:2と,縦方向のサイズがだいぶ違う。並べて見ると,その違いは一目瞭然だ。
たとえば,電子書籍やマンガを読むときは,iPad mini 6のほうが無駄な余白が少ないので適するだろう。一方,スマートフォン向けのゲームは,アスペクト比16:9程度の横長画面を想定して作られたものが多いので,iPad mini 6では上下に余白が生じてしまうようなゲームでも,LAVIE Tab T9なら画面ほぼ全体を使って表示できるはずだ。
とはいえ,手にしたときのサイズ感は,iPad mini 6とほとんど変わらない。実測の本体重量は約352gで,iPad mini 6の約297gとは60g弱しか差がないので,手に持ったときに違いを感じにくいのも当然といったところか。
LAVIE Tab T9は,インタフェース部分にも使い勝手を良くする工夫が盛り込まれている。充電や機器接続に使えるUSB Type-Cポートが2つあるのだ。
筐体の下側面にあるポートは,USB 3.2 Gen 2 Type-Cポートで,DisplayPort Alternate Mode(以下,DP Altモード)にも対応しているので,USB Type-Cハブを接続したり,「XREAL Air」シリーズや「VITURE One」といったサングラス型ディスプレイを接続したりするのにも使える。
一方,右側面にあるUSB Type-Cポートは,USB 2.0までの対応で,基本的には充電用だ。USB 2.0 Type-Cポートで充電,電力供給しながら,USB 3.2 Gen 2 Type-Cポート経由でテレビやディスプレイにつなぐなんてことが,LAVIE Tab T9なら簡単にできるわけだ。
左右側面には,Dolby Atmos対応を謳うステレオスピーカーも内蔵しており,ゲームサウンドをきちんとステレオで再生できる。ちなみに,ヘッドセット接続用の3.5mmミニピンアナログ端子はない。
2022年のハイエンドスマホ並みのスペック。5Gや4G LTEには非対応
LAVIE Tab T9のスペックも確認しておこう。
性能面で最も重要なSoCは,冒頭で触れたとおり,QualcommのSnapdragon 8+ Gen 1(型番:SM8475P)を採用する。簡単に言えば,2022年のハイエンド市場向けSoCであり,当時のハイエンドスマートフォン,たとえば「Galaxy S22 Ultra」と,ほぼ同程度か,やや高い程度の性能を有すると考えていいだろう。
メインメモリ容量は,店頭販売モデルと直販限定モデルで異なり,前者は8GB,後者は12GBとなっている。ゲーム用途前提なら,メインメモリは多い方が望ましい。
また,内蔵ストレージ容量も,店頭販売モデルは128GB,直販限定モデルは256GBと異なっている。今どきのスマートフォン向けゲームは,10〜20GBくらいのデータサイズは当たり前となっているので,やはりゲーム用タブレットとして使うなら,容量の多い直販限定モデルを選びたいところだ。
先にも触れた8.8インチディスプレイは,解像度2560×1600ドット,アスペクト比16:10の液晶パネルを採用しており,デジタルシネマ向け色空間規格「DCI-P3」のカバー率98%,表示可能な色域も広い。最大リフレッシュレートは144Hz(=144fps)だ。スマートフォン向けゲームで,120〜144Hz表示が可能なゲームはあまりないが,ゲームだけでなくWebブラウザやメッセンジャーアプリのスクロール時にも滑らかな表示が期待できるので,あって損はない。
また,別売りにはなるが,専用スタイラスを使ったペン入力にも対応している。
ワイヤレス通信機能は,Wi-Fi 6E(IEEE 802.11ax)とBluetooth 5.3に対応する。5Gや4G LTEといった携帯電話系の通信機能には対応しない。持ち歩いて使うことを考えると,5G/4G LTE非対応は残念なところ。iPad mini Gen 6の場合,Wi-FiモデルとCellar(4G LTE対応)モデルの価格差が2万4000円なので,最終的な製品価格を考慮すると,致し方ないところか。
内蔵バッテリー容量は6550mAhで,バッテリー駆動時間は,Webブラウジング時に約10時間である。急速充電も可能で,約60分で満充電が可能であるという。
充電に関して面白い特徴は,「バイパス給電」という機能を備えていることだ。ゲームはバッテリー消費の激しいアプリなので,プレイ中はスマートフォンやタブレットを充電器につないでいるという人もいるだろう。ただ,バッテリーに使われているリチウムイオン充電池は,充電しながら放電(使用)すると,バッテリーそのものの寿命を縮めてしまう傾向にある。そのためLAVIE Tab T9では,充電器をつないだ状態で使っているときは,あえて充電を行わずに充電器からの電力でタブレットを動作させる機能があるのだ。それがバイパス給電である。
充電器をつないだままゲームをプレイしていても,バッテリーの劣化を気にする必要がないのは,ささやかだが重要な利点と言えよう。
LAVIE Tab T9の主なスペックを表にまとめておこう。
メーカー | NEC PC |
---|---|
OS | Android 13 |
ディスプレイパネル | 8.8インチ液晶 |
プロセッサ | Qualcomm製「Snapdragon 8+ Gen 1」 ・CPUコア:Kyro(最大3.2GHz) ・GPUコア:Adreno |
メインメモリ容量 | 8GB,12GB |
ストレージ | 128GB+microSD(最大128GB) |
アウトカメラ | 約1300万画素,200万画素 |
インカメラ | 約800万画素 |
無線LAN対応 | Wi-Fi 6E(IEEE 802.11ax) |
Bluetooth対応 | 5.3 |
バッテリー容量 | 6550mAh |
連続駆動時間 | 最大10時間 |
USBポート | USB 3.2 Gen 2 Type-C×1 |
公称本体サイズ | 208.5(W) |
公称本体重量 | 約365g |
ゲームパッドの割り当て機能もあるゲーマー向け機能の充実ぶり
サイズやスペックも魅力的なLAVIE Tab T9だが,本機をゲーマー向け製品たらしめているのは,充実したゲーマー向け機能の数々を備えることだ。
LAVIE Tab T9のゲーマー向け機能は,「ゲームアシスタント」にほぼまとめられている。ゲームアシスタントは,ゲームをプレイ中に画面左側から呼び出せるもので,ゲーム中だけの動作モード切り替えや,通知の抑制といったよくある機能だけでなく,スクリーンショットや動画の撮影,バイパス充電のオン/オフなども行える。
ゲームアシスタントの対象にするアプリは,Androidの「設定」にあるゲームアシスタントの項目で追加,削除できる。また,ディスプレイのフレームレートもここで変更可能だ。
CPU使用率やフレームレートを,画面上に常時表示しておく「フローティングディスプレイ」という機能もある。グラフィックス設定を調整できるゲームでは,画質とフレームレートのバランスを見るのに役立つだろう。
なかなか優秀なLAVIE Tab T9のゲームアシスタントであるが,本製品のゲーマー向け機能で,とくに評価したいのは,画面上の仮想ゲームパッドに,ゲームパッドのボタンやスティック操作を割り当てる「キーマッピング」機能を有する点だ。これまでは,一部のゲーマー向けAndroidスマートフォンや,これまた一部のAndroid向けゲームパッドくらいしか備えていない機能である。
国内の人気スマートフォン向けゲームは,ゲームパッド操作に対応していないものが多いが,LAVIE Tab T9であれば,そうしたゲームでもゲームパッドで操作できるのだ。割り当てられるのはゲームパッドだけでなく,キーボードやマウスを割り当てることも可能であるという。
キーマッピングの設定自体は,仮想ゲームパッドへのボタン割り当て機能としては,ごく普通のものだ。ゲームパッドのボタンで押したい仮想ボタンの上に「通常のキー」を,スティックやD-Padで操作したい仮想ボタンの上には「ステアリングホイール」を置いて,入力に使いたいボタンやスティックを押すだけである。もちろん,ゲームごとに異なる設定を割り当て可能だ。
ちなみに,ステアリングホイールは画面上に1つしか置けないのだが,「アンカーを表示」という機能を画面上に置くと,これが右アナログスティックの操作として認識されるので,「左アナログスティックで移動,右アナログスティックでカメラ操作」という設定も問題なく行える。
「ゲームパッドでプレイしたいスマホゲームがあるのに,ゲーム側が対応していない……」というもどかしい思いを感じたことのある人なら,LAVIE Tab T9の利点を理解できるだろう。
高画質の設定の「原神」や「PUBG MOBILE」も快適プレイ
さて,LAVIE Tab T9の仕様やゲーマー向け機能を一通り紹介したところで,実際の性能を簡単にテストしてみよう。まずは,筆者が所有しているiPad mini 6も使って,「3DMark」でグラフィックス性能テストを行った。テストに用いたのは,3DMarkのマルチプラットフォーム対応テストである「Wild Life Extreme」だ。
グラフ1は,LAVIE Tab T9およびiPad mini 6で計測したWild Life Extremeの測定結果だ。バッテリー残量は,どちらも90%以上ある状態で実行した。
見てのとおり,両製品のスコア差は1%もなく,ほぼ同じと言えよう。2021年モデルのiPad mini 6に対して,2023年のハイエンドモデルであるLAVIE Tab T9が同じスコアというのは,正直,少し物足りなく思える。ただ,見方を変えると,「iPad mini 6と同じくらいの性能を有する,携帯性に優れたAndroidタブレット」という点に価値があると言えなくもない。
次に,3DMarkの「Wild Life Extreme Stress Test」で,高負荷時動作の性能変動を確認してみた。
スマートフォンやタブレット端末では,高負荷で動作させ続けるとSoCが高温になってしまうので,それ以上温度が上がらないように,冷えるまでは性能に制限をかけて最高性能を引き出せなくなる「サーマルスロットリング」が発生することが珍しくない。Wild Life Extreme Stress Testは,Wild Life Extremeを20分間連続で実行することで,熱の影響によるスコアの変動がどれくらい生じるかを調べるものだ。変動が少ないほど,高い性能のままゲームをプレイできることを意味する。
その結果がグラフ2とグラフ3だ。まずグラフ2は,Wild Life Extreme Stress Test中の最大および最小スコアを示している。
スコアの最大値は,iPad mini 6のほうが高い。しかし,iPad mini 6は最小値も低い結果となった。それに比べると,LAVIE Tab T9のスコア最大値と最小値の差はかなり小さい。
グラフ3は,最大値と最小値の差をパーセントで示したものだ。
一目瞭然で,LAVIE Tab T9のほうが高負荷状態でも動作が安定しており,ほとんど性能のブレがない。iPad mini 6も8割以上となっているので,決して悪い結果ではないが,少なくともLAVIE Tab T9よりは,ゲームプレイ中に放熱の影響で性能が低下しやすい可能性はありそうだ。
ゲームでもLAVIE Tab T9の性能を確かめてみよう。まずはお馴染み「原神」を,グラフィックスの「画質」を「最高」に設定したうえで,「フレームレート」を「60」にした状態でプレイしてみた。
プレイの感触は,「実に快適」の一言。フローティングディスプレイでフレームレートを横目で見ながらプレイしていたが,ほとんどはゲーム側の上限である60fpsに貼り付いており,ボス戦のような比較的グラフィックス描画の重いシーンでも,50fpsを下回ることはなかった。
Android版原神は,ゲーム側がゲームパッドに対応していないのだが,LAVIE Tab T9であれば,キーマッピングを使ってゲームパッドでプレイできるので,感覚的にはPC版をプレイするのと変わらない快適さだ。
Android版「PUBG Mobile」も,LAVIE Tab T9でプレイしてみた。こちらはグラフィックス品質の設定で,「クオリティ」を「HDR」,フレームレートを左右する「フレーム設定」を「極限」にしてプレイしてみた。この場合,マルチプレイでも,ほとんど60fpsを下回ることはなく,極めて快適であることは原神と同様だ。
クオリティを「ウルトラHDR」(※エクストリームHDRは選択できなかった),フレーム設定を「ウルトラ」でプレイすると,おおむね40fps程度まで下がる。正直,タブレットの画面サイズでは見た目が顕著に変わるわけではないので,LAVIE Tab T9でPUBG Mobileをプレイするときは,フレームレート重視でクオリティはHDRを選ぶのが適切だろう。
持ち歩けるゲーム用Androidタブレットの決定版
長くなったがまとめに入ろう。LAVIE Tab T9は,持ち運びやすいサイズと重量,ハイエンドクラスのスペック,そして充実したゲーマー向け機能のすべてを備えたタブレットである。Androidゲームのプレイを目的としてタブレット端末を選ぶのであれば,本稿執筆時点では最も優れた選択肢と言って過言ではない。
単純にスペックだけであれば,Samsung Electronics製の「Galaxy Tab S9」シリーズという,さらに高スペックのタブレット端末がある。ただ,こちらは最小サイズでも11インチ級なので,持ち歩いて使うという点では,いささか難がある。カバンに入れて持ち歩き,電車の中や休憩時間にサッと取り出してゲームをプレイする。そんな用途に適するのは,LAVIE Tab T9のほうだろう。
キーマッピング機能で,ゲームパッド非対応のゲームもゲームパッドでプレイできるようになるのも実にいい。とくにアクション性の高いゲームは,LAVIE Tab T9とBluetoothゲームパッドの組み合わせで,仮想ゲームパッドよりも確実に快適なプレイができるはずだ。
USB Type-Cポートが2つあるのも評価できるポイントだ。一方で外部映像出力を使いながら,もう一方で充電できるため,据え置き型ゲーム機のように,LAVIE Tab T9にテレビやディスプレイとBluetoothゲームパッドをつないでゲームをプレイしていても,バッテリー切れの不安を感じることはないわけだ。
個人的には,ディスプレイ代わりにXREALのサングラス型ディスプレイ「XREAL Air 2」をLAVIE Tab T9につないでゲームをプレイすると,目の前の大画面+ゲームパッドでプレイできるので,Android端末ということを忘れてしまいそうになるほどの体験を楽しめた。
5Gや4G LTE非対応という点は残念であるが,それを除けば,LAVIE Tab T9は今手に入るゲーマー向けタブレットの決定版と言えるだろう。安価な製品ではないが,それだけの価値はあるはずだ。
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