テストレポート
ミドルクラスの価格で買えるハイエンドスマホ「POCO F4 GT」は,ゲームに最適化されたスマートフォンだった
Xiaomiによると,POCO F4 GTは,POCOブランドのフラグシップモデルであり,高い性能を求める「テクノロジー愛好家」に向けた製品とアピールしており,ゲーマー向け製品とは謳っていない。しかし,実際に使ってみると,POCO F4 GTにはゲームに対する工夫が数多く盛り込まれているのが分かった。そこで本稿では,POCO F4 GTのゲーム向け機能を中心に紹介する。
ゲームを強く意識した工夫を盛り込んだ本体
まずはPOCO F4 GTの外観から見ていこう。
POCO F4 GTは,約6.67インチサイズで解像度1080×2400ドット,アスペクト比9:20の有機ELディスプレイを搭載する大型のスマートフォンだ。本体サイズは,実測で約77(W)×162.5(D)×8.5(H)mmであった。6インチ台後半のディスプレイを搭載するスマートフォンとしては,ありふれたサイズと言えよう。一方,重量は実測で約211gもあり,少しずっしりとした手応えだ。
ディスプレイパネルは,四辺の端が若干盛り上がった2.5D加工を施してはいるものの,ほとんどフラットパネルといっていいだろう。ディスプレイパネルの四隅が丸められているのに加えて,パンチホール型のフロントカメラによって,表示領域が隠れてしまう点は気になるところだが,隠れる部分はわずかなので,ゲームのプレイで問題は生じにくい。
また,パネルの発色は自然なのだが,最大輝度が800nitとやや暗めで,日が強く当たる場所だとちょっと見えにくい。たとえば,位置情報ゲームのように屋外でも頻繁に使う場合に「見にくいな」と感じるようであれば,日陰に入るなどの工夫が必要かもしれない。
POCO F4 GTのディスプレイにおける最大リフレッシュレートは120Hzで,表示するコンテンツに合わせてリフレッシュレートを自動で調整する機能を備える。なお,タッチパネルのサンプリングレートは480Hzで,リズムゲームのようにタッチに対する応答性が重要なゲームにも十分対応できるスペックだ。
背面に目を向けると,カメラユニット付近にあるフラッシュライトが雷型になっていたり,中央に「X」に見える模様を描いたりと,外連味に溢れたデザインとなっている。
アウトカメラは,標準と広角,マクロの3眼構成だ。このうち,メインとなる標準カメラは,有効画素数約6400万画素の撮像センサーと組み合わせている。また,照明によるちらつきの影響を抑えるフリッカーセンサーも備えるという。
側面にも目を惹く要素が多い。左側面には,SIMカードスロットと音量調整ボタン,マイク孔が並ぶ。長辺側の側面にもマイク孔を備えるスマートフォンは珍しい。POCO F4 GTの場合は,縦持ちだけでなく,横持ちでも声を拾いやすいようにマイクを配置しているそうだ。
一方の右側面は,中央付近に[電源/スリープ]ボタンを,左右端に「マグネット式ポップアップトリガー」(以下,ポップアップトリガー)を搭載する。後段で詳しく説明するが,ゲームパッドのショルダーボタンのような感覚でゲームを操作できる物理ボタンだ。同じXiaomi傘下の「BlackShark」にも似たようなボタンを搭載しているので,見たことがある人もいるだろう。
上側面はスピーカー孔とマイク孔,下側面はスピーカー孔とマイク孔に加えて,USB Type-Cポートを搭載する。このスピーカー孔も横持ちを考慮した配置となっており,指で孔をふさぎにくい設計であるという。なお,3.5mmミニピンのヘッドセット端子はない。
冒頭でも触れたように,POCO F4 GTは,搭載SoCにSnapdragon 8 Gen 1を採用するのが特徴だ。Snapdragon 8 Gen 1搭載スマートフォンは,どの製品も熱対策としてこれまで以上に冷却機構を強化している。POCO F4 GTも,大型のベイパーチャンバーやグラファイトシートを用いることで,Snapdragon 8 Gen 1の熱に対応するとのことだ。
POCO F4 GTの主なスペックは表の通りだ。メインメモリ容量8GBで,内蔵ストレージ容量128GBの下位モデルと,メインメモリ容量12GBで,内蔵ストレージ容量256GBの上位モデルというラインナップとなる。
メーカー | Xiaomi Corporation |
---|---|
OS | Android 12 |
ディスプレイパネル | 約6.67インチ液晶, |
プロセッサ | Qualcomm製「Snapdragon 8 Gen 1」 ・CPUコア:Kryo(最大2.995GHz) ・GPUコア:Adreno |
メインメモリ容量 | 8GB,12GB |
ストレージ | 128GB,256GB |
アウトカメラ | 3眼式 ・標準:約6400万画素,F1.9 ・広角:約800万画素,F2.2,画角120度 ・マクロ:約200万画素,F2.4 |
インカメラ | 約2000万画素,F2.4 |
対応5Gバンド | n1/3/5/7/8/20/28/38/40/41/77/78 |
対応LTEバンド | 1/2/3/4/5/7/8/12/17/18/19/20/26 |
対応3Gバンド | 1/2/4/5/6/8/19 |
無線LAN対応 | Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax) |
Bluetooth対応 | 5.2 |
バッテリー容量 | 4700mAh |
待受時間 | 未公開 |
連続通話時間 | 未公開 |
USBポート | USB Type-C |
公称本体サイズ | 約76.7(W)×162.5(D)×8.5(H)mm |
公称本体重量 | 約210g |
本体カラー | ステルスブラック,ナイトシルバー,サイバーイエロー |
Xiaomi独自のゲーム向け機能「GAME TURBO」
続いては,POCO F4 GTが備えるXiaomi独自のゲーム機能「GAME TURBO」について見ていこう。
GAME TURBOは,ゲームタイトルに特化したランチャー機能に加えて,個別のゲームに対する動作設定やタッチパネルの調整などが行えるユーティリティだ。POCO F4 GTに限らず,Xiaomi製スマートフォンの多くが搭載している。
製品によっては,設定からGAME TURBOを有効化しないと起動できないものもあるようだが,試用機では標準で起動できた。起動直後のGAME TURBOは,ランチャー画面が表示されている。ちなみに,端末にインストールしたゲームは,自動で登録される仕組みだ。
画面最下段の中央にある「GPU設定」は,ランチャー上で選択中のゲームごとに,最大リフレッシュレートや解像度,画質の設定が可能だ。「デフォルト」「節電」「バランス」「高品質」という4つのプリセットが選択できる。
GPU設定のデフォルト。画質とフレームレートを優先した設定 |
節電はパフォーマンス(おそらく省電力)重視の設定だ |
バランスは,その名の通り画質とフレームレート,電力消費のバランスをとる |
高品質は最後の画質とフレームレートを実現する代わりに電力消費が大きい |
ユーザーが細かく調整する「カスタマイズ」も利用可能で,PCゲームのグラフィックス設定をカスタマイズするのに慣れている人には,こちらのほうが分かりやすいかもしれない。
ただし,GPU設定は,ゲームによって機能しないこともある。たとえば,GAME TURBOで最大リフレッシュレートを120Hzに設定しても,プレイするゲームの対応フレームレートが60fpsであれば,リフレッシュレートは60Hzに制限されるというわけだ。
一方の「追加設定」は,タッチパネルに関する項目で,スワイプやタッチの感度を調整可能だ。こちらも,プリセットとして,標準の「クラシックモード(デフォルト)」と,感度をかなり上げた「プロモード」の2種類を用意している。さらに各項目を個別で調整する「カスタマイズ」も用意している。
GAME TURBOの機能は,GAME TURBOアプリから選択したり変更したりするだけでなく,ゲームをプレイ中でも変更できるようになっている。ゲームの動作中に横持ち時の左端から中央に向かってスワイプすることで,設定メニューを呼び出せるのだ。
ゲームのプレイ中にも呼び出せる項目は以下のとおり。
- メモリを消去:バックグラウンドアプリが使用しているメモリを開放
- DND:Do not Disturbedモード。着信などの通知を抑制する
- スクリーンショット:スクリーンショットを撮影する
- 録画:表示している画面を録画する
- W-Fi:無線LAN機能のオンとオフを切り替え
- キャスト:外部ディスプレイに表示をミラーリングする
- 画面をオフにする:画面を暗くする
- 画面の彩度と明るさを調整(画像では「なし」):画面の色味や明るさを調整する
- 設定:GAME TURBOの設定を起動する
- ショルダーターボ:ポップアップトリガーへの操作割当
- ボイスチェンジャー:ボイスチェンジャーを起動する
メニュー最上部,GPU使用率やCPU使用率を表示している部分の横にある「バランス」をタップすると,SoCの動作モードを切り替えられる。標準設定の「バランス」は,端末の温度上昇と性能のバランスを取ったモードで,一方の「パフォーマンス」は,SoCの温度上昇を許容しつつ,最大クロックで動作させるというものだ。
また,メニューの左側にあるアイコンの列は,「フローティングウインドウ」機能で,アプリのアイコンをタップすると画面にそのアプリを子画面(ピクチャインピクチャ)として表示する。
POCO F4 GTのGAME TURBOには,ほかのXiaomi製スマートフォンにはない機能を搭載する。それが先述したポップアップトリガーへの機能割り当てだ。ゲーム内設定メニューの「ショルダーターボ」をタップすると,画面内に[L]と[R]という2つのアイコンが表示され,位置を自由に動かせる。任意の位置に動かして保存すると,それぞれの位置にある仮想ボタンをポップアップトリガーで入力できる仕組みだ。
ゲーマー向けを謳うスマートフォンでは,長辺側にショルダーボタンを搭載する製品は珍しくない。しかし,ポップアップトリガーのような物理ボタンではなく,タッチセンサー式という場合もある。とはいえ,物理ボタンのほうが押したときの感触が分かりやすく,ゲームをプレイするうえで有利に働く。そこでPOCO F4 GTのポップアップトリガーは,物理的に飛び出した状態にできるのだ。
POCO F4 GTのポップアップトリガーは,押し込んだときの感触こそ軽いが,押下感はしっかりとある。ただ,ストロークが浅めで連打はしやすくないため,割り当てる操作はよく考えたほうが良さそうだ。
なお,ポップアップトリガーは,ゲーム以外の用途にも使える。それぞれのトリガーに対して,カメラや録音アプリの起動などの操作を割り当てられる。
POCO F4 GTの性能を,ベンチとゲームで検証
今回は,POCO F4 GTの性能を確かめるために,「AnTuTu Benchmark v9.4」と「Geekbench 5」という2つのベンチマークソフトでテストを行った。
AnTuTu Benchmark v9.4の総合スコアは「988885」で,100万の大台まであと一歩といったところ。Snapdragon 8 Gen 1搭載製品の中には,SoCの熱を抑えるために性能を抑えているケースもあるが,POCO F4 GTではそうした措置は取られていないと思われる。
クロスプラットフォーム対応テストであるGeekbench 5のCPUテストでは,Single-Core Scoreが「1222」,Multi-Core Scoreが「3772」だった。こちらは,
なお,テスト中に筐体の背面を触ると,気になるくらいの熱を持っていた。とくにSoCを搭載する本体上側(横持ち時の左側)が熱い。ただし,テストのスコアを見る限り,温度が上昇したことによるサーマルスロットリングは発生していないようだ。
実際のゲームでPOCO F4 GTの動作を確かめてみた。まずは「原神」からだ。
グラフィックス品質を「最高」に,最大フレームレートを「60」に設定したところ,はじめはスムーズにプレイできていたのだが,30分ほど経過するとフレームレートが落ち込むのが分かる。本体の背面もそれなりに熱い。
POCO F4 GTは強力な冷却機構を内蔵しているとはいえ,グラフィックス負荷の高いゲームを長時間プレイするのは難しいようだ。安定してプレイしたい場合は,グラフィックスや最大フレームレートを控えめにする必要がある。あるいは,市販されている外部クーラーの利用を検討してもいいかもしれない。
続いては「Fortnite」をプレイした。Fortniteの場合,性能が低いデバイスでは,最大フレームレートが30fpsに制限されるのだが,POCO F4 GTはちゃんと60fpsの設定が可能なので,ほかのスマートフォンと比べて見劣りすることはない。
実際にゲームをプレイすると,かなりスムーズに動作するが,やはり相応に端末が熱くなる。ただ,今回は1マッチあたり15分前後で負けてしまうことが多かったためか,カメラを大きく操作するような場面を除いて,プレイ中にフレームレートが落ち込むことはなかった。
なお,POCO F4 GTで,ゲームをプレイしていて気がついたのは,内蔵スピーカーの音が予想以上に良いことだ。POCO F4 GTのスピーカーユニットは,ツイーターとウーファーを2基ずつ搭載しているという。出力が高いので,音量設定を下げた状態でも,ある程度の音量が確保できる。スマートフォンにしては,低音域も太めな印象だ。自宅など,音が出せる場所では,積極的に内蔵スピーカーを利用してもいいかもしれない。
手ごろに買える「ゲーマー向け」スマートフォン
GAME TURBOも比較的シンプルで分かりやすい機能がそろっており,思った以上に使える印象だ。
最近のハイエンド市場向けスマートフォンは,10万円台後半になることも珍しくない。しかし,これと比べるとPOCO F4 GTは,上位モデルでも8万円台半ばと非常に手ごろだ。トップクラスの性能を備えたスマートフォンを安価に入手したいゲーマーにとって,POCO F4 GTはうってつけの存在ではないだろうか。
XiaomiのPOCO F4 GT製品情報ページ
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