テストレポート
Huaweiのミドルクラススマートフォン「HUAWEI nova」テストレポート。持ちやすさは良好でゲームの動作もそこそこ
国内で販売中のスマートフォンは,
なお,Huaweiの直販サイトである「HUAWEI ONLINE STORE 楽天市場店」で確認したところ,novaの税込価格は4万1018円となっていた。同じSoCを搭載するASUSTeK Computer(以下,ASUS)の「ZenFone 3」(型番:ZE520KL)が,4万円前後の実勢価格で販売されているので,価格を合わせてきたと思われる。
手に馴染んで持ちやすいボディ形状が魅力的
5インチ液晶パネルを搭載する本体は,サイズが
とくに,Huaweiが「アーク形状」と称する,湾曲した背面はフラットとラウンドフォルムの中間にあるような印象で,手のひらに収まりやすく感じた。片手操作中心で使いたい人や,大画面よりも手に収まるコンパクトさを重視する人向けといったところか。
スペックは2016年後半のミドルクラススマートフォン相応
冒頭で述べたとおり,novaの搭載するSoCはSnapdragon 625。ARM製CPUコア「Cortex-A53」を8基とQualcomm製GPUコア「Adreno 506」を統合する,ミドルクラス市場向けプロセッサである(関連記事)。
メインメモリ容量は3GBで,多くはないが,少なすぎることもない。内蔵ストレージ容量は32GBで,別途,最大容量128GBのmicroSDXCカードにも対応する。内蔵バッテリー容量は3020mAhで,5インチ級としてはやや多めといったところか。
2枚のSIMカードを同時に使える「デュアルSIMデュアルスタンバイ」(DSDS)に対応するのも,最近のSIMロックフリー端末では定番と言える部分だ。
novaでもAndroid 7世代へのアップデートを予定しているそうなので,Android 6世代で打ち止めという心配はなさそうだ。
採用するホームアプリは,Huawei独自の「Emotion UI 4.1」。かつての国内メーカー端末でよくあった,妙なカスタマイズは加えられておらず,比較的Google純正に近い。そのまま使っても違和感を覚えない人が多いだろう。
グラフィックス性能は高くないものの,全般的な性能は良好
それでは,定番のベンチマークテストを実施して,novaの実力を調べてみよう。
なお,筆者が行うスマートフォンテストは,2017年からいくつか新しいアプリを導入している。詳細は「2017年の4Gamer的スマートフォン検証はこうなる」で触れているので,未見の人はこちらも参照してほしい。
今回実施したのは,グラフィックスベンチマークアプリ「3DMark」の「Sling Shot Unlimited」プリセットと,総合ベンチマークアプリ「PCMark for Android」の「Storage test」,CPUの動作クロックを見る「CPU-Z」,連打応答性を調べる「ぺしぺしIkina」の4種類。
これに加えて,今回はゲームのテストとして,定番の「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」(iOS / Android,以下 デレステ)と,Android版「艦隊これくしょん -艦これ-」によるテストも行う。
まずは3DMark Sling Shot Unlimitedから見ていこう。ここでは比較対象として,4GamerにあったNTTドコモ版「Galaxy S7 edge」と,筆者所有の「AXON 7」も用意した。ちなみに,比較対象はいずれも,SoCとして「Snapdragon 820」(MSM8996)を搭載するハイエンドスマートフォンなので,novaよりは高いスコアが出るはずだ。
実際に測定した結果はグラフ1のとおり。ハイエンドスマートフォンの2機種と比べるのは酷かもしれないが,4分の1以下のスコアしか出なかったことには,ちょっと驚いた。OpenGL ES 3.0世代のグラフィックスは,Snapdragon 625には荷が重いということだろうか。
ベンチマークテストに要した時間が,筆者の予想よりもだいぶ長く,1セットで約10分ほどもかかったのも気になるところだ。テストの動作時間が長いことから,いわゆる熱ダレを疑い,Sling Shot Unlimited実行中の温度推移を,3DMarkの「Monitoring data」で追ってみることにした。
結果が左下の写真だが,SoCの温度は30℃台半ばで安定して推移している。それほど大きな温度の上昇は起きなかったようだ。実際,背面を触っても,極端に発熱している部分は見当たらなかったので,Sling Shot Unlimitedのスコアは,novaの実力に起因するものである可能性が高いということになるだろう。
novaでのMonitoring data。赤線がSoCの温度グラフで,30℃台半ばで推移しているのが分かる |
AXON 7でのMonitoring dataも見たところ,32℃くらいから,徐々に30℃台半ばまで上がっていた |
結果は,novaのスコアが「4083」で,AXON 7のスコアは「3438」。novaのストレージ性能は総じて良好であり,ミドルクラス市場向けだからといって,性能の低いフラッシュメモリを使用しているわけではないと分かる。
アプリのインストールやベンチマークテストを行っている間に,CPU-ZでCPUコアの挙動も不定期で確認してみたが,すると,8基のCPUコアを2群に分けて動作クロックを制御するbig.LITTLE的な挙動ではなく,全CPUコアの動作クロックが揃って上下するのを確認できた。筆者がテストしてきたスマートフォンの中では,ちょっと珍しい動作だ。
GPUコアの動作も同時に確認していたのだが,アイドル時は動作クロックが320MHz固定で,3DMarkのように高負荷のアプリが動作するときには,上限の650MHzまで上昇するという挙動を確認している。こちらはGPUコアの制御はシンプルと言えよう。
ぺしぺしIkinaは,93〜96になるように連打して,1回めのテストでは「78」という結果になった。8タップめで飽和があり,それ以降も頻繁に飽和が発生するという,あまり思わしくない状況だ。そこで再テストしてみたところ,今度は「89」という良好なスコアになった。その後も6回ほど計測してみたのだが,スコアは76〜89の間でバラつき,飽和タイミングもまちまちという,よく分からない結果に終わる。
8タップめ以下で飽和することはなかったので,だいたいのゲームでは問題ないとは思うが,シビアなタイミングでの連打が必要になるゲームだと,厳しい可能性もあるだろう。
デレステは入力の取得ミスが気になる
艦これの動作は相応に快適
まず,チュートリアル時の判定は「3D標準」で,他のSnapdragon 625搭載機と変わらない。
3D標準で5回連続プレイをしてみたところ,もたつきらしい挙動はなかったが,それ以前に連続フリック(連結フリック)で取得ミスが目立つ印象だ。また,難易度「Master+」で必要なスライド操作でも,取得ミスが起きることがある。とくに,画面両端(※縦持ち時の上下端)に指が近づくほど取得ミスの発生確率が高くなり,しっかりと指を触れた状態でもミスになることがあった。一方,フリック入力の操作では,画面最下部の反応が気持ち鈍いかなという程度。いずれにしても,プレイ感が良好とは言えない。
一方,もう1つのテスト対象タイトルである艦これAndroid版は,そこそこ軽快に動作するという印象だ。動画を撮影したのでそれを確認してほしいが,遠征回しだけでなく普通のプレイであっても,これくらい動けば許容できるという人が多いのではないだろうか。
余談になるが,発表会でHuawei側は,novaのスペックで「ARゲームもOK」とアピールしていた。とはいっても,AR対応のカメラを搭載していたりするわけではないので,ここでいうARゲームとは,「Pokémon GO」のことだろう。
そこで,ポケストップが林立する負荷の高い場所で,ゲームの挙動をチェックしたかどうかを尋ねてみたのだが,説明員から「挙動を確認した」という回答は得られなかった。なので,せいぜいPokémon GOの起動確認をした程度の意味であって,実際に歩き回ってプレイした結果ではないと考えるのが妥当と思える。
処理負荷が高いタイトルは不安だが,流行りのゲームを軽く楽しむ程度ならアリ
ベンチマークパートで触れたように,ゲーム用途で使うスマートフォンとしてnovaを見た場合,高負荷時の入力取得漏れがどうしても気になった。個体差に当たっただけならいいのだが,高負荷時に生じる何らかのノイズが原因だとすると,どの製品でも発生する可能性は否定できない。ゲーム用途でnovaを検討している人は,可能なら店頭のデモ機で確認してみることをお勧めする。
ただ,4万円前後の価格帯でこのスペックは悪くない。デザインや持ちやすさも良好だ。ゲーム以外のアプリやSNS利用が中心で,ゲームは負荷の軽いものや,単純なタップのみで遊べるタイトルくらいという人なら,novaは選択肢に入れる価値ありというのが,今回のテストにおける結論である。
●HUAWEI novaの主なスペック
- メーカー:Huawei Technologies
- OS:Android 6.0(Nougat)
- ディスプレイパネル:5インチIPS液晶,解像度1080×1920ドット
- プロセッサ:Qualcomm製「Snapdragon 625」(MSM8953,CPUコア Cortex-A53×8,最大CPU動作クロック2GHz,Adreno 506 GPUコア)
- メインメモリ容量:3GB
- ストレージ:内蔵(容量32GB)+microSDXC(最大容量128GB)
- アウトカメラ:有効画素数約1200万画素
- インカメラ:有効画素数約800万画素
- バッテリー容量:3020mAh
- 対応LTEバンド:FDD-LTE 1/3/5/7/8/18/19/28,TD-LTE 38/40
- 対応3Gバンド:W-CDMA 1/5/6/8/19
- 待受時間:約720時間(フライトモード時)
- 連続通話時間:約22時間(WCDMA)
- 無線LAN対応:IEEE 802.11n(※5GHz帯非対応)
- Bluetooth対応:4.1
- USBポート:Type-C
- 本体公称サイズ:69.1(W)×141.2(D)×7.1(H)mm
- 本体公称重量:約146g
- 本体カラー:ミスティックシルバー,チタニウムグレイ,ローズゴールド
HuaweiのHUAWEI nova製品情報ページ
- 関連タイトル:
Android端末本体
- この記事のURL: