プレイレポート
[プレイレポ]35年ぶりとなるシリーズ完全新作の「ファミコン探偵倶楽部 笑み男」。不気味な都市伝説になぞらえた殺人事件に挑む
今回は,「笑み男」という都市伝説に酷似した殺人事件について,空木探偵事務所の助手である主人公が調査にあたり,数々の謎を解き明かしていくという筋書きだ。
「ファミコン探偵倶楽部 笑み男」公式サイト
35年の時を経て生み出された新たなミステリーは,一体どのようなものになっているのだろうか。本作をすべてプレイし,事件の全貌を見届けた筆者が紹介していこう。
なお,ネタバレには最大限配慮しているが,スクリーンショットなどでストーリーの一部分を予想できてしまう可能性があるので,本稿を読み進めるタイミングにはご注意いただきたい。
懐かしい時代のミステリーにマッチした
オーソドックスなシステムのアドベンチャー
ある朝に発見された男子中学生の死体。彼の遺体の頭には笑顔が描かれた紙袋が被せられていた。それは,18年前に起きた「連続少女殺人事件」の被害者と同じ姿だった。
警察からの要請を受け,捜査に乗り出した空木探偵事務所の3人。すると,18年前の件を含む一連の事件は,「笑み男(えみお)」という都市伝説の内容によく似ていることが分かってくる。奇怪な事件,それと酷似した都市伝説。犯人は,なぜそんなことをしたのだろう。謎が謎を呼ぶ殺人事件に,若き探偵助手である主人公が挑むことになる。
本作のシステムは,コマンド選択式のアドベンチャーだ。「聞く」「見る」「考える」など,その状況に適した選択肢を選び,捜査を進めていく。例えば「見る」は,その場の状況に合わせて用意された選択肢から見たい場所を選ぶほかにも,虫眼鏡型のポインタを動かし,画面内の気になる地点を調べることもできる。
各コマンドにはさらに枝分かれした選択肢があることが多く,「聞く」であれば,誰にどんなことを聞くか,ということまでを指定する。ときには,「選択肢の意味を柔軟に活用する」場面もあるのだが……。具体的にどういうことなのかは,ぜひ実際のプレイで体験してほしい。
捜査の過程で新たな疑問が生じたとき,集まった情報からさらに考察を深めたいとき,それから,なんだか状況がよく分からなくなってきたたときなどには,「考える」のコマンドが役に立つ。考えることで主人公が新たな行動を起こせるようになったり,膠着した状況が進んだりすることもある。
見て聞いて考えて,ときには誰かを呼び,必要があれば携帯電話で連絡をとる。本作のストーリーは選択によって分岐するわけではないが,真実を追い求めるプレイヤーの「こうしたい」という気持ちに選択をリンクさせ,捜査が進むように導かれるので,高い臨場感をもってプレイできる。「自分主体で捜査を進めている」という実感が得られるのだ。
捜査がある程度進むと,メニューに「推理する」というコマンドが現れる。プレイヤーにとって,捜査したことをまとめておさらいすることは,複雑に要素が絡み合う物語にしっかりついていくためにもありがたいパートだ。
推理パートで正しい選択ができなくても,とくにペナルティはないので安心してほしい。同じ事務所の助手である橘あゆみが主人公の推理に合いの手を入れてくれるのだが,彼女の人を傷付けないフォロー術は見事なので,わざと間違えて反応を見るのも楽しい。
おなじみの登場人物に加え新キャラクターも
演出面はより怖さや情感を感じさせるものに
「ファミコン探偵倶楽部」シリーズの最新作である本作。主人公をはじめとした空木探偵事務所の面々は,1作目からの出演メンバーだ。とくに「消えた後継者」の時点では17歳だった主人公と橘あゆみは今作では19歳となり,探偵事務所の助手として働いている。フルボイス,アニメーションの場面は多数あり,演出面も豪華になった。彼らの魅力がより一層伝わるようになったのではないだろうか。
捜査は,主人公視点とあゆみ視点の両方から進んでいく。これにより,事件の内容をより多角的に捉えられるだけでなく,主人公とあゆみの魅力的な人柄,人間関係や過去にも触れられるのだ。もちろん本作ですべてが説明されるわけではないが,本作から遊ぶプレイヤーもしっかり世界に入り込めるので,その点はまったく心配いらない。もし,彼らが過去に関わった事件を知りたくなったら,2021年にNintendo Swith向けにリメイクされた「ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者」や「ファミコン探偵倶楽部 うしろに立つ少女」をプレイしてみよう。
探偵助手コンビだけでなく,本作に登場する人物は皆魅力的。香福警察署の刑事で,周囲への当たりがやたらと厳しい久瀬純子,彼女とバディを組んで事件にあたるチャラい刑事の神原大輔,南第三中学校の新米教師で,暑苦しいがどこか憎めない福山 翼など,それぞれかなりの個性を持った面々だ。
本作は当然ミステリーものなので,登場人物の誰かが犯人という可能性が高い。彼らとの何気ないやりとりを楽しみながらも,それぞれの人物に対して怪しい点を常に探す。何を根拠にして,誰の言葉を信じるか。彼らの言葉や行動に振り回されながらあれこれと思考を巡らせるのも,ミステリーのだいご味だ。
昭和が終わり,平成が始まるころ。本作の舞台は,恐らくそんな時代だ。主人公達が使っているのはガラケーだし,喫茶店の流行メニューはティラミス。令和の今となってはレトロに感じられる小道具の数々もスパイスとして効いている。その懐かしい時代の質感が,より本作の怖さを引き立たせているのだ。
システムもまた,スタンダードなタイプのコマンド選択式アドベンチャーだが,選ぶべきメニューがさりげなく点滅することなど,プレイヤーの思考が迷宮入りしないような配慮もしっかりされており,サービス精神があちこちに感じられる。
当時の空気感を知らない若者だけでなく,当時を生きてきた世代にも,「ファミコン探偵倶楽部」の変わらない魅力をアップデートした本作は,きっと新鮮に映ることだろう。
「ファミコン探偵倶楽部 笑み男」公式サイト
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