インタビュー
[インタビュー]進化したバトルシステムとキャラクター表現で描かれる最終章。「FAIRY TAIL2」プロデューサーに聞く,その見どころ
2020年に発売された前作ゲーム「FAIRY TAIL」からはや4年。バトルシステムの変更などのさまざまな新要素を加え,原作最終章にあたる「アルバレス帝国編」を描ききるという本作だが,いったいどんなタイトルになるのか。プロデューサーの片岡 宏氏に話を聞いた。
「FAIRY TAIL2」公式サイト
強化されたキャラクター表現で描かれる「FAIRY TAIL」最終章
4Gamer:
前作から4年ぶりの続編となる「FAIRY TAIL2」ですが,なぜこのタイミングで発表されたのでしょうか。
片岡 宏氏(以下,片岡氏):
前作で描けなかった原作の最終章にあたる「アルバレス帝国編」を,ゲームでどう再現するかをずっと考えていました。その道筋がある程度見えてきたところで,講談社さんにお話をさせていただいたのですが,ちょうどアニメの「FAIRY TAIL 100年クエスト」の放映時期がある程度固まったところでして。
4Gamer:
なるほど,よいタイミングだったと。前作に「アルバレス帝国編」が含まれなかったのは,何か理由があったのですか?
片岡氏:
前作の制作を開始したときは,原作の「FAIRY TAIL」がまだ連載中だったんです。しっかり完結してから描きたかったので,それが今回の「2」につながった形ですね。
4Gamer:
では,今作の見所もその辺りになるでしょうか。
片岡氏:
そうですね。“妖精の尻尾(フェアリーテイル)最後の戦い”を完全な形で描くというのが今回のコンセプトです。ゼレフとアクノロギアという大ボスに加え,ゼレフを守る“スプリガン12(トゥエルブ)”全員との戦いを余すところなく描いています。いろいろな仕掛けや名場面をしっかりゲームに落とし込んであるので,ぜひ期待していてください。
4Gamer:
名場面というと,例えばイベントシーンとか?
片岡氏:
とくに注目してもらいたいのは,キャラクターのフェイシャル(表情)ですね。シリアスなストーリーを描ききるために,“通常よりさらに上の怒り”や“絶望”といった,前作にはなかった表情のバリエーションを追加しています。
またスプリガン12のメンバーについては,真の姿であったり,その能力を再現するために専用のモデルやモーションを用意しています。あとはイベント用の2Dスチル(一枚絵)もふんだんにあるのでお楽しみに。
4Gamer:
ボイスも収録し直しているのでしょうか。
片岡氏:
はい。メインストーリーはフルボイスです。収録には自分も立ち会いましたが,ボイスが入るとキャラクターの命が吹き込まれるというか。「FAIRY TAIL」のキャラクターを長年演じてこられたキャストの皆さんだけあって,その歴史というか,思い入れの深さを感じました。
4Gamer:
ゲームのボイス収録って,演者さんがアドリブを入れる余地があったりするものなんでしょうか。あるいは演技に合わせて,ゲームの演出を変更したりとか。
片岡氏:
アドリブとはちょっと違いますが,台詞のニュアンスやテンションなんかをキャストさん側から提案されることはあります。その場で講談社さんとも相談して,演技プランを決めていくんです。収録した迫力のある声を聞いて,開発スタッフ側が演出を頑張ったりするようなことも,ままある話です。
4Gamer:
なるほど……。では,ストーリーは原作をなぞるものになるんですね。
片岡氏:
基本的に原作どおりです。ただ原作者である真島ヒロ先生にご了承いただいたうえで,ゲーム用に流れや戦う順番などを変更した部分もあります。分かりやすいところでは,キャラクターが別行動するようなシーンがこれにあたります。ゲームでもすべての別行動を再現してしまうと,せっかく育てたキャラクターが使えなかったりと,自由度が狭まることになりかねませんので。
4Gamer:
前作をプレイしていない人,あるいは原作を知らない人がプレイしても楽しめますか。
片岡氏:
もちろんです。これまでのストーリーをキャラクター達が振り返るイベントがありますし,充実した用語解説もあるので,すぐに物語に入り込めるはずです。イベントスチルを閲覧できるギャラリーモードなどもあるので,幅広い層に楽しんでいただけると思います。
4Gamer:
ゲームをプレイしたあとに,アニメや原作コミックに手を出してみても,いいかもしれませんね。
片岡氏:
そうですね。理解度があがれば,より一層楽しめるのも確かなので。それに「2」から始めても楽しめるように作っていますが,発売までに原作コミックやアニメを見返したり,前作を遊んでいただくのもいいと思います。
クライマックスに合わせ変化したゲームシステムと,多彩なオリジナル要素
4Gamer:
ストーリー以外の部分についても聞かせてください。これまでに公開された情報によれば,今作ではバトルシステムに変更が加えられているとのこと。リアルタイム進行だそうですが,なぜバトルに手を加えることになったのでしょうか。
片岡氏:
前作のバトルシステムは,攻撃範囲や属性などを組み合わせた戦略をじっくり考えながら遊んでいただくプレイスタイルでした。しかしクライマックス感が増した今作では,バトルにおいてもより一層,激しい戦いを表現する必要があります。また,前作でいただいていた「もっとキャラクターを動かしたい」というご要望にも応えられるものとして採用したのが,今回のバトルシステムなんです。
4Gamer:
リアルタイム進行というと,アクションゲーム的な反射神経が求められるものを想像しますが,そうではないのでしょうか。
片岡氏:
そうではありません。攻撃やスキルといったコマンドがボタンに割り振られていて,それらをテンポよく押していく――弊社の作品で言うなら「アトリエ」シリーズ最新作「ライザのアトリエ3 〜終わりの錬金術士と秘密の鍵〜」に近いシステムです。そこにコンビネーションで攻撃をつなげていく爽快感が加わった感じですね。
4Gamer:
ああ,それは分かりやすい。しかし,前作とはかなり違いますね。
片岡氏:
前作のバトルが頭を使って考えるパズル的な面白さだったのに対し,今作はド派手な技をどんどんつなげていく爽快感を重視した作りになっているんです。それでいて,「ここは敵が多いから範囲攻撃だな」とか,「ここでこの技を使うと敵を崩せるな」といった状況判断や駆け引きの妙も楽しめるので,前作のバトルが好きだった人も,違和感なく楽しめると思います。
4Gamer:
ゲームの難度的にはどうなのでしょうか。前作の良さは,初心者でも遊びやすい間口の広さにあったと思うのですが。
片岡氏:
難易度は前作同様,いつでも切り換えられるようになっています。純粋にストーリーを楽しみたい人から,歯ごたえのある挑戦を求める人まで,幅広く楽しんでいただけると思います。
4Gamer:
「覚醒」や「モードチェンジ」,合体技の「ユニゾンレイド」といった要素は,今作にも登場しますよね。
片岡氏:
もちろんです。演出面もかなりパワーアップしているので期待していてください。
4Gamer:
分かりました。ではバトルシステム以外で大きく変化したポイントは何かありますか。
片岡氏:
フィールドがかなり広くなっていますので,そこは注目してほしいですね。前作では各エリアがワールドマップを介して接続される形式でしたが,今回は「マグノリア」の街を中心として,各エリアがシームレスにつながったマップ構成になっています。マグノリアの四方から敵が襲いかかってくる「アルバレス帝国編」を表現するために採用しました。
4Gamer:
フィールドの探索は,前作でもプレイの中核を占める要素でしたね。
片岡氏:
そうですね。今作でもフィールドの原作再現には力が入っています。オーガストを説得に行くときの特徴的な地形や,ラーケイドのいる岩山といった,原作ファンならの見覚えのある場所が,ゲーム中でも再現されているんです。あとはアジィール来襲後,撃墜された空中戦艦によって地形が変化するところや,“ユニバース・ワン”発動時の専用マップも見どころです。
4Gamer:
フィールドが広くなったことで,移動の手間が増えたりはしないものでしょうか。
片岡氏:
一度訪れた場所へは,ファストトラベルですぐに移動できますので安心してください。それにフィールドが広いのにはメリットもありまして。本作ではフィールドを移動中にキャラクター同士が会話を始めたりするんですが,これも大きな見どころになっています。
4Gamer:
会話ですか?
片岡氏:
ええ。多くは他愛のない雑談だったり,「FAIRY TAIL」らしい掛け合いだったりなんですが,これがあるとないとでは物語への没入感が違います。ゲーム用に台本を書き下ろしていますので,原作ファンにも楽しんでいただけると思います。
4Gamer:
ゲームのオリジナル要素といえば,本作では原作の戦いの後に,ゲームオリジナルのエピソードも楽しめるとのこと。これはどういったものになるのでしょうか。
片岡氏:
「アルバレス帝国編」の戦いが終わった後から,原作の最後にあたるルーシィの受賞パーティまでの間を描く,「隠されし秘境への鍵」というゲームオリジナルのシナリオを収録しています。複数のエピソードからなるシナリオで,フィールドも専用のものを用意していますので,ボリューム的にもかなり満足いただけるはずです。
4Gamer:
ゲームでしか体験できない物語があるというのは,原作ファンにとってもうれしいですね。
片岡氏:
オリジナルエピソードは前作にもありましたが,遊びに重きを置いた依頼中心のものだったんです。それが今作の「隠されし秘境への鍵」では,ストーリーの一部として組み込んだ形になりましたので,エピソードとしてしっかり楽しめるものになっています。またキャラクターの成長に応じて開放される,ゲーム書き下ろしの「キャラクターストーリー」もありますので,ぜひ最後まで遊んでもらえたらと思います。
4Gamer:
ちなみに真島ヒロ先生との監修のやりとりで,印象的なエピソードは何かありましたか。
片岡氏:
先生はファンの皆さんが何を喜ぶかを常に重視されていて,監修ではそれを基準としたアドバイスを多くいただきました。実際,先生の意見で追加された要素もたくさんありますし,そのどれもがファンの皆さんに向けたものになっていると感じます。
4Gamer:
先生はゲーム好きとしても知られていますし,ゲーマーの気持ちも分かっていそうですね。
片岡氏:
あとは単純に,先生に褒めていただけると開発チームのモチベーションが上がるので,それがありがたかったですね。本作では名場面など,ゲーム進行に合わせたスチルを多く用意していますが,最初に制作したナツとゼレフが対峙しているスチルは,先生にも大変喜んでいただけました。以降,スチル制作にはすごく力が入るようになりましたし,そのほかでも「期待しています!」といった励ましを多くいただけたので,その度に皆,俄然力が入っていました。
4Gamer:
それは楽しみです。最後に4Gamer読者に向けたメッセージをいただけますか。
片岡氏:
先ほどもお話ししたとおり,本作はファンの方はもちろん,原作「FAIRY TAIL」を知らない人でも,またアニメの「FAIRY TAIL 100年クエスト」でシリーズに始めて触れた人でも楽しめますし,ゲームに不慣れな人でも遊びやすい内容に仕上がっています。
さらに前作でいただいた「出ていないキャラクターや省略されたエピソードがあるのが残念」といったご意見にもに応えるべく,さまざまな改良も加えていますので,ゲーム初心者からコアな原作ファンまで,幅広い層に手に取ってもらえたら嬉しいですね。
4Gamer:
ありがとうございました。
真島ヒロ先生の監修の元,開発スタッフやキャスト陣が一丸となって作り上げたという「FAIRY TAIL2」。随所に散りばめられた原作再現はもちろんのこと,ゲームならではオリジナル要素もふんだんに用意されているようなので,12月12日の発売を楽しみにしておこう。
また,本作のパッケージ版の予約も開始している。通常版のほか,豪華特典が付属する「GUILD BOX」も同時発売予定なので,こちらもお見逃しなく。早期特典などの詳細はゲーム「FAIRY TAIL2」公式サイトをチェックしてほしい。
「FAIRY TAIL2」公式サイト
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(C)真島ヒロ・講談社/フェアリーテイル製作委員会・テレビ東京 (C)コーエーテクモゲームス
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