プレイレポート
[プレイレポ]SWERY×SUDA 51によるハードコアアクション「ホテル・バルセロナ」は,過去の自分と共闘するシステムやホラー映画愛が詰まった世界が魅力
凶悪な敵に対抗&楽しくリトライできるためのゲームシステムが充実
「ホテル・バルセロナ」は,グラスホッパー・マニファクチュアの須田剛一(SUDA 51)氏と,White Owlsの末弘秀孝(SWERY)氏のつながりから生まれたコラボタイトルだ。プレイヤーは,新米連邦保安官のジャスティーン・ベルシュタインを操作し,全米中の凶悪連続殺人犯が集められた豪華ホテル「HOTEL BARCELONA」でバトルを繰り広げていく。
今回プレイできたのは,製品版だとステージ1にあたるDiamond Lake Campsite。ホラー映画の定番スポット(?)として選ばれることの多い,サマーキャンプがステージ全体のテーマになっており,キャンプ場の森や湖,ロッジなどをモチーフにしたエリアを探索したり,野球道具に身を包んだシリアルキラー「ジェイコブとのボス戦を体験できた。
本作は死んでリトライしていく周回プレイが前提となっているため,ステージ1とはいえ敵の攻撃はかなり激しめだ。
ボスのジェイコブはもちろん,道中に出現するザコの攻撃力も高く,ゴリ押しでステージを進んでいくのは困難だ。敵の攻撃パターンを覚えつつ,回避やガードを使っていく立ち回りが要求される。
ただ本作には,そんな手ごわい敵に対抗するための手段が数多く盛り込まれている。まず本作の目玉と言えるシステムが「スラッシャーファントム」だ。これは,過去の周回でプレイヤーが操作したジャスティーンの動きをそっくりそのまま再現するというもの。
囮として敵を引き付けてくれるほか(敵はプレイヤーが操作するジャスティーンよりも,スラッシャーファントムの動きに釣られる),スラッシャーファントムの攻撃と敵の位置が噛み合えば,プレイヤーが操るジャスティーンの攻撃と同じようにダメージが入る。ステージの攻略に役立ったのはもちろん,過去の自分と連携プレイを行なうという,新鮮な体験が楽しめた。
スラッシャーファントムという独自のシステムが用意されているうえで,武器の変更や強化,スキルの強化といった,周回プレイ前提のアクションゲームでおなじみの強化要素も充実していた。
武器は近接武器(スカルベル,斧,ツイン丸鋸)と銃器(ハンドガン,ショットガン,火炎放射器)があり,カテゴリーによって攻撃力,モーション,リーチ,発生速度,攻撃後の隙などが明確に変化する。
スキルはジャスティーンの基礎能力(体力や銃弾の装填数など)を底上げできるほか,近接武器の攻撃手段を増やすスキルが複数用意されており,習得していくと格闘ゲームの空中コンボのような流れで敵をなぎ倒していけた。
開発中のステージ1を試遊しただけでも,プレイヤーを助けるアイデアがゲームシステムとして有機的に組み込まれていること,このゲームでしか体験できなさそうな“味”を感じられた。SWERY氏やSUDA 51氏の作るゲームのファンはもちろん,歯ごたえと独自性のあるアクションゲームをプレイしたいゲーマーにも注目してもらいたいタイトルだ。
続いて,試遊会場にて実施したSWERY氏へのミニインタビューの模様をお届けしよう。スラッシャーファントムをひらめいたきっかけやこだわったポイントなどを聞いている。
4Gamer:
よろしくお願いします。さっそくゲームを遊びましたが,さまざまな要素が詰め込まれているゲームだと感じました。中でもスラッシャーファントムは非常に独自性のあるシステムだと思いましたが,アイデアのきっかけを教えてください。
SWERY氏:
スラッシャーファントムに関しては,元々アクションRPGを作っているときに,経験値やスキルを覚えること以外で,何か新しい成長要素を作りたいとは須田さんと話していたんですよ。
それで「ホテル・バルセロナ」を作るとなったときに,ぼくから須田さんにスラッシャーファントムの原案を話したところ,それがうまくハマって今の形に昇華していきました。
4Gamer:
スラッシャーファントムを4体同時に動かすのは大変なように思うのですが,技術的な苦労はありましたか。
SWERY氏:
プログラマーに嫌な顔はされましたね(笑)。ステージを持ち越して動きを記憶しますので,例えばプレイヤーが乗ると落ちる足場にファントムが乗ったら,落ちる足場は反応するのか? みたいなルールを決めることが多くて,難しかったんです。そこは「絶対面白くなるから!」と言い続けてプログラマーにやってもらいました。
4Gamer:
主人公のジャスティーンを強化していく方法が多いので,プレイヤーとしては試行錯誤する面白さがあると思うのですが,要素が多いと作る側のバランス取りはそれだけ大変になります。強化要素の取捨選択はどう行いましたか。
SWERY氏:
AとBというアイデアがあった場合は,どちらの方が再挑戦してもらう際に向いている要素なのかを考えて選び,研鑽していった感じですね。「ホテル・バルセロナ」は,何度も再挑戦して遊んでもらいたいというループ性を軸にして,いろいろなアイデアを入れています。
チーム内でビルドを出すたびに,仕様を大きく変えたりすることもありました。例えば,スキルを覚えるための素材は,周回を重ねるごとに溜められるようにしていましたが,今は再挑戦前のセッティングで使いきれなかった素材は破棄されるようにしています。
これは,毎回なくなる方がやる気が出るし,素材が消えることで今取得できるスキルを積極的に覚えてくれることを期待した調整になります。
4Gamer:
ゴリ押しのプレイを否定しているといいますか,スキルを駆使したり,敵の攻撃パターンを覚えて戦いましょうというゲームデザインになっていますよね。同じエリアでも油断していると敵の種類や配置が違っていて,思わぬダメージを受けることもありました。
SWERY氏:
そうですね。ただ周回プレイを重ねて武器を強化していくと,割とゴリ押しでもいけるようにはなりますよ。その辺のバランス,アクションだけどRPGのように主人公は成長しているという実感を得られる作りにしています。
4Gamer:
キャラクターと自分の腕,両方が成長していることが実感できると。
SWERY氏:
システムを活用しないと楽しめないような壁は作っていないつもりです。バランス的には初期状態のジャスティーンでもクリアできるようにしていますし,ガード不能モードの実装など,縛りプレイを公式サポートするような設定も入れています。
クリアしていくとチェックがつくようにもなっているので,難しくしようと思えばいくらでもやれると思いますよ。
4Gamer:
プレイヤーが適切に感じる難度設定は国やユーザー層によって変わるので,調整するのが難しそうですね。
SWERY氏:
その解決策として,今回はイージーモードを用意しています。イージーモードは,「このゲームの話はしたいけど,難しそうで入っていけなさそう」という人でも楽しく遊べる難度にしています。
4Gamer:
理不尽に難しすぎるゲームとは思いませんでしたが,試遊でボスのジェイコブを倒せなかったのはちょっと尾を引いています(笑)。
SWERY氏:
ぼくもバランス調整を重ねて今のバージョンになって初めてプレイした時は,ボスを倒すのに2時間弱ぐらいかかりましたよ。いちユーザーとして遊んだ時は苦戦しました。
あとバランス調整で現在気にしている点としては,攻撃後の隙の長さですね。ここでストレスをどう感じるのかは国によってかなり違うので,悩みどころになっています。海外はモーションロックがかかった時点でダメって感じる人もいる,でもモーションロックがないとすごく粗い作りに見えるので。
4Gamer:
今日はスラッシャーファントムの動きが見たかったので,基本的にずっと同じルートを選んでジェイコブのいる部屋まで進んでいきましたが,ステージ内のどのルートを選んだかによって,出現する敵やステージの雰囲気もガラリと変わるのでしょうか。
SWERY氏:
はい。プレイしてもらったのはステージ1のキャンプ場でしたが,ステージ1だけでも森林だけじゃなくて湖の上を通ることもあります。アスレチックっぽい設備やキャビンみたいな室内をイメージしたステージもありますね。
4Gamer:
ビジュアルやデザイン面でこだわったポイントはありますか。
SWERY氏:
ハードコアに寄りすぎないようにしましたね。ぼくがやるとどうしてもそっちの方向に寄ってしまうので,今回はアートディレクションで別の方に入ってもらってもう少しアニメチックというか,わかりやすい感じにしています。
4Gamer:
難度設定と同じように,ゴア表現をどれぐらいのレベルに設定するかも日本と海外,あとはどの世代を狙うのかによってベストな解答が変わってきそうで難しいですよね。
SWERY氏:
今回グラフィックスまわりだと体が欠損したり,血がけっこう出たりもしますので,ゴア表現のON/OFF機能はつけています。でもゴア表現をOFFにするといっても,単純に見えなくするだけだと面白さがスポイルされてしまうだけなんですよね。
まだお見せはできないのですが,ゴア表現をOFFにしたら血の代わりにポップコーンが飛ぶようにしようと思っています。モードポップコーンみたいな(笑)。
4Gamer:
それは面白いですね。しかしビジュアルや演出面もそこまで作りこむとなると大変ですね。
SWERY氏:
そこはこだわっていきたいですよね。ホラー映画って愛の塊なので,ホラー映画をオマージュするなら愛を持たないとダメだと思うんですよ。
だから開発に入る際には,まず若いスタッフも含めて80年代のホラー映画を見るところから始めています。そこから今日の段階,遊べる状態まで持ってきたって感じですね。
4Gamer:
完成は見えてきた形ですか。
SWERY氏:
そうですね。今はバランス調整に力を入れている段階です。発売は2024年内ということにしていますが,インディーゲームとしてちょうどいい発売時期っていうのを模索しています。たとえば2024年の後半に出すにしても,「クリスマス商戦に絶対合わせないと!」ということはないと思うので。
4Gamer:
これから体験版を配信する予定はありますか。
SWERY氏:
今回プレイアブルでお見せすることができたので,体験版もふさわしい時期が来たら出せると思います。Steamのストアページも公開されましたので,「ホテル・バルセロナ」をウィッシュリストに入れておいてもらえれば,時が来れば体験版の告知も届くと思いますよ。
4Gamer:
体験版は待ち遠しいですね。いろいろな要素が盛り込まれているので,プレイする前と後では印象がガラリと変わりました。
SWERY氏:
いろいろな人から「いつも説明しにくいゲームを作ってるね」とは言われるんですよね(笑)。例えば,ベルトスクロールの横スクロールアクションで,100面あるみたいなゲームを作るという選択肢もアリですが,それは特に若い方が作っているジャンルですから,ぼくみたいなおじさんがそこに向き合うのは違うのかなと思っています。
アーケードゲームの感覚と,コンシューマゲームの使った時間はユーザーに還元しようという感覚,このふたつの感覚をバランスよく融合させたいですね。
4Gamer:
本日はありがとうございました。最後に読者や「ホテル・バルセロナ」を待っているユーザーに対してメッセージをいただければと思います。
SWERY氏:
最初は冗談みたいな始まり方をしたゲームなんですけど,須田さんもぼくもクリエイターということで,冗談を本当にしてしまいたいと一生懸命考えました。
面白いゲームに仕上がっていると思うので,まずはSteamのウィッシュリストに入れてもらって,続報をお待ちいただきたいと思います。引き続きよろしくお願いします。
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