インタビュー
[インタビュー]Switch版発売目前「陰キャラブコメ」AGF2025初出展。作者のじょせふ氏&スタッフK氏に聞く制作裏話
2025年10月で3周年を迎えた,攻略対象が“陰キャ”のみという恋愛風ノベルゲーム「陰キャラブコメ」(以下,陰ラブ)。2025年12月18日には,豪華声優陣によるフルボイス化と追加要素を盛り込んだ「陰キャラブコメ インシツマシマシ」のNintendo Switch版が発売予定だ。![]() |
今回,「陰ラブ」はAGF2025に初出展。人気企画である作者・じょせふ氏監修の“陰キャタイプ診断”「INKY(陰キャ)診断」をはじめ,ノベルティ配布や歴代グッズ展示など,作品の世界観を存分に味わえるブースが展開され,多くの来場者で賑わっていた。
すでにPC(Steam)版が展開中の「陰キャラブコメ インシツマシマシ」だが,プレイヤー待望のSwitch版を心待ちにする声も多い。会場では診断を楽しんだり,展示や等身大POPと写真を撮ったりと,来場者それぞれが“陰ラブの世界”を満喫していたのが印象的だった。
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そして何より,AGFの会場で,作者のじょせふ氏と,本作の展開に長く携わるスタッフのK氏に直接インタビューする機会を得た。
Switch版への想い,サブタイトル「インシツマシマシ」に込めた意図,そして“陰色の青春”がどのように形づくられていったのか――制作の背景に触れるお話をお届けする。
「陰ラブ」が形になるまで。
制作裏話とSwitch版への想いを聞く
4Gamer:
Nintendo Switch版がリリースされるということで,今のお気持ちをお聞かせください。
じょせふ氏:
「陰キャラブコメ」は,2022年にBOOTHというサイトで公開したのが最初です。当時は大学生で,ひとりでゲームを作っていました。それが3年後にはSwitch版「陰キャラブコメ インシツマシマシ」が発売されるとは思ってもいませんでした。個人制作の作品がここまで大きなプロジェクトになったのは,ひとえに会長さんのおかげです。
4Gamer:
「インシツマシマシ」というサブタイトルは,やはりあのラーメン店の……?
じょせふ氏:
はい。食べすぎ注意のあのお店ですね。追加要素を盛ったタイトルは,通常であればDX版などの名前が付けられるとは思いますが,ここはせっかくなので自分の作品の雰囲気や視座が伝わるようなタイトルにしようと思いました。
4Gamer:
「陰キャラブコメ」を制作されたきっかけについて,あらためてお聞かせいただけますか。
じょせふ氏:
いわゆる“陰キャ”と呼ばれるタイプを扱った作品は,どうしても迷惑な存在として誇張されるなど,暗い面ばかりが強調されがちだと感じていました。だからこそ,その奥にいるのは人間であることや,そんな彼らから出力される仕草や言葉の可愛さを描きたかったんです。
4Gamer:
登場キャラクターの個性には,多くの人が衝撃を受けたはずです。だいだいくんの,テキストが枠からはみ出るマシンガントークなど……。もちろん知っていくほどに“旨味”が出てくるキャラなのですが。
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スタッフK氏(以下,K氏):
衝撃ですよね。でもやっぱり,「陰ラブ」の顔といえば,だいだいくんですね。
じょせふ氏:
彼は,2022年に作品公式アカウントを作成したときから,「自作にとってのピカチュウにするぞ」と意気込んでいてですね。そう意識しながら宣伝をしていたので,無事作品にとってのピカチュウ枠になったかなと思います。
4Gamer:
実際にプレイして触れ合うと,より深みを感じるキャラクターでもありますね。クセが強すぎる彼の“そのまま”が愛しくなるというか。
K氏:
はい,最後の最後までプレイすると,さらに好きになっちゃいますね。最終的には共感できるというか。
4Gamer:
そういった“知れば知るほど愛しくなる”という点は,登場するすべてのキャラクターに当てはまりますよね。キャラへの愛着は,作品そのものへの興味にもつながっていると思います。
では,Switch版の発表後にはファンの皆さんからどんな反応が届いていますか。
K氏:
「Switch版を待っていた」という声がいちばん多いですね。発売予定をずっと追ってくださっていた方もいらっしゃいました。それだけ丁寧に見てくださる方がいるのは,本当に嬉しいことです。
4Gamer:
熱量の高いファンが多いのも「陰ラブ」らしいですよね。ファン同士で“推し”について語り合う方も多いと思うのですが,お二人の肌感として「このキャラはよく話題に上がる」という子はいますか。
じょせふ氏:
共感を得やすい描写は話題に上がりやすいなと思います。どのキャラもそれぞれ違う側面から共感を得て話題に上がるのですが,よく上がるのは番井かなと思います。
自分は自分を演じきっていると思いながらその実そうではない。そんな,繕いきれずにぽろっと出てしまう素朴な一面が共感を得やすいのではないかと思います。でも,真面目で優しい子ですね。
K氏:
番井さんの名前が挙がることはやっぱり多いですね。
ただ,アイドル衣装のグッズを出したときはashさんがダントツでした。恥ずかしがりつつも,ちゃんとアイドルしてくれているのが魅力なんですよね。
番井さんは“ちゃんとした下心がある”タイプで,そこが皆さんに刺さるんだと思います。一番,会長を追ってくれる存在ですし。
4Gamer:
確かに。でも,どのキャラクターにも,それぞれ違ったクセと魅力がありますよね。こんな質問をしておいてなんですが,魅力が多くて選びきれません(笑)。
それぞれのキャラクターに名(迷)シーンもかなり多いですし,セリフひとつひとつに忘れられない味わいや面白さがあります。
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K氏:
本当にすごいですよね。キャラクター設定から膨大なシナリオまで,彼女がひとりで作っているんです。
じょせふ氏:
イラストは,自分が思い描く絵柄を再現してくれる別の方にお願いすることもありますね。
4Gamer:
キャラクター表現については,ビジュアルだけでなく“声”の部分も気になります。ボイス収録には立ち会われたのでしょうか。
じょせふ氏:
立ち会っていました。意外なことに,一番噛まずに演じられていたのがだいだいくんを演じる室さんでした。
4Gamer:
素人目にも,だいだいくんの声を表現するのは相当難しそうだと思っていました。
じょせふ氏:
だいだいくんの声優さんはオーディションで決めさせていただいたのですが,室さんのだいだいくんは,テキストだけだとこちらの事情もお構いなく嫌なことをまくしたててくるように見える部分が,室さんの声でくっちゃかかってくると,なんか笑っちゃうというか,親近感が湧いてしまうというか。そこに良さを感じました。
私は収録に立ち会うのが人生で初めてで,恥ずかしながら,声優さんの違いというのはサイト上のボイスサンプルで聞く声質や演技の違いがすべてで,声優さんをされている年数などは特に関係がないのかなと思っていた節がありました。
今回スタジオでの収録に立ち会い,そうではない,サイト上のサンプルを聞くだけでは分からないこともあるのだと感じました。室さんはスタジオでも物腰が低く,非常に丁寧な方で,演技の安定感も凄まじく……。「またお会いしたい」という言葉がとても似合う方でした。
室さんの声優としてのキャリア年数ですとか,この安定感で数多の現場を支えられてきたのだろうということが分かる方でした。
K氏:
そうなんです。ashさんと会長の声優さんは指名で,ほかの3人はオーディションで選ばせていただきました。キャストの皆さんは納得の配役ですね。
じょせふ氏:
実は,オーディション前には「この人の声はこう」というイメージをあまり固めていなかったんです。声優の皆さんにボイスを録っていただき,その音声をもとに選考する形で。
今まですべて自分の中で完結していたキャラクターの印象が,「たしかにこんな声かも」と,外部からの刺激で揺さぶられ,確認していくという過程は新鮮でした。
4Gamer:
ボイス実装でキャラクターたちの魅力もさらに広がったと思います。そんな状態で迎えた今回のAGF出展ですが,どんな思いで参加されたのでしょうか。
K氏:
去年,私とじょせふでAGFを視察しに来ていたんです。来場者の多くは女性ですし,「陰キャラブコメ」を好きな方も,まだ知らない方も,たくさんいらっしゃるだろうと。ここで多くの方に知ってもらえる機会になればと思い,出展を決めました。
4Gamer:
イベントといえば,東京ゲームショウ2024(TGS 2024)での初出展も強烈でしたよね。だいだいくんの等身大POPが“バーン!”と出迎えてくれて,視線を奪われました。
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K氏:
今年のTGSにも出展させていただいたのですが,特に40〜50代の男性からの反応が印象的でした。「すごく面白い」「自分の学生生活を思い出して懐かしい」といった声を多くいただきましたね。
4Gamer:
幅広い層に刺さっているのが伝わります。今後,「陰ラブ」の単独イベントを開催する予定はありますか。
じょせふ氏:
たまにグッズのポップアップショップは開催しているんですが,それ以外はまだなくて。これから挑戦していきたいですね。
4Gamer:
イベント展開にも期待が高まりますね。では,もし「陰ラブ」とは別の題材でゲームを作るとしたら,どんなテーマやジャンルに挑戦してみたいですか。
じょせふ氏:
ジャンルとしてはノベル系になるとは思うんですが……。今は「陰ラブ」に集中していますので,そのあたりはおいおい考えていけたらと。
4Gamer:
「陰ラブ」の続編については,何か構想がありますか。
K氏:
続編,面白そうですよね。
4Gamer:
最近は節目ごとにifストーリーが公開されていますよね。直近だと,番井さん視点の……
じょせふ氏:
3周年記念ストーリーですね。
4Gamer:
キャラクターごとに変わる視点もすごく魅力的です。今回のストーリーも衝撃的でした。
じょせふ氏:
(ブースのディスプレイを見ながら)叡ゲ同のみんなが一緒に並んでいますけど,実際はそこそこドライな関係で。善にも悪にも容易に振れるような。見てくださっている方なら,その“距離感”はよくご存じだと思います。
K氏:
はい。「仲良くなさそうに立たせてほしい」と言われています(笑)。
4Gamer:
作品の裏側をいろいろとうかがいましたが,ここで少しお二人自身についてもお聞きしたいです。まずは,じょせふさんが,制作の気分転換や発想のきっかけにしている趣味はありますか。
じょせふ氏:
可愛いものを見るのが好きです。ポムポムプリンの横にいる,マフィンくんというハムスターとか。どこを見ているのか分からない,何にも考えていないような表情が好きですね。
最近はもちにゃみが好きです(もちにゃみポスト)。韓国のキャラクターのドライさと繕わなさが好きです。
4Gamer:
そんな日常の“癒やし”が制作の支えにもなっているんですね。では逆に,創作の刺激として今お二人が個人的に注目しているものがあれば教えてください。
じょせふ氏:
意識せずに過ごしていると,最低限の外出で終わる日も多く,日常生活での刺激の少なさには自分的にかなり危機感を抱いています。ですので最近は,習い事教室とか通ってみたいなと思っていて。
そうすると,家から習い事への道のり,最寄り駅の風景,建物の外観,受付の方の姿勢,教室の雰囲気。講師の方がどういう話をしているか,それを聞いて自分がどう思ったか。共感できたところや違和感を抱いたのはどこか。ムカついたのはどこか。同じく通っている人とのかかわりや会話――すべてが刺激になると思うんですね。
いろいろな教室に通いまくり,「陶芸ラブコメ」「英会話ラブコメ」「社交ダンスラブコメ」「認知症予防教室ラブコメ」を作ると。
60年後には自分より歯が多い人のことが好きになるよう恋愛観が変化しているのでしょうか。それとも嫉妬に狂って,嫉妬する自分を正当化しているでしょうか。
「嫉妬するということは,それだけ頭を使うということだから,周囲より認知機能が残っている証だ」とでもマウントをとりそうです。
そうやって,変わりゆく価値観を楽しみながら永遠に青春を燃やし続ければ,なんとかネタが枯渇せずに済むのかなと思います。
K氏:
私は「陰ラブ」に関わるようになってから,女性向けコンテンツがすごく気になるようになって,いろいろインプットしています。こういう大きなホールでのイベントも,それぞれ色があって楽しいですね。
4Gamer:
それでは最後に,Switch版を楽しみにしているファンの皆さんへメッセージをお願いします。
じょせふ氏:
「陰キャラブコメ インシツマシマシ」は,総再生時間が最低12時間以上という超大ボリュームでお届けしますので,ぜひ,ご自身のペースで楽しんでいただけたらと思います。
なかには「べつに恋愛はええか」と思われる方もいるかもしれませんが,本作はアトラクション的に楽しんでいただける作品かなと思っています。彼らとのかかわりをとおして「自分にもこんな過去や一面があったな」「自分ならこうやる!」など,いろいろ感情が動かされる場面もあるのではないかなと思います。
4Gamer:
ありがとうございました!
――2025年11月8日収録
(C)じょせふ Published by Phoenixx Inc.
4Gamer 女子部(仮)
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