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[インタビュー]まさに飛躍の年。「学園アイドルマスター」のここまでの歩みを,学マスプロデューサーの小美野氏に聞きまくる
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印刷2024/12/28 10:00

企画記事

[インタビュー]まさに飛躍の年。「学園アイドルマスター」のここまでの歩みを,学マスプロデューサーの小美野氏に聞きまくる

配信:バンダイナムコエンターテインメント
共同開発:QualiArts
画像集 No.001のサムネイル画像 / [インタビュー]まさに飛躍の年。「学園アイドルマスター」のここまでの歩みを,学マスプロデューサーの小美野氏に聞きまくる

 アイドル育成シミュレーション「学園アイドルマスター」iOS / Android。以下,学マス)は,「アイドルマスター」シリーズの完全新作で,初の“学園を舞台にした作品”だ。

 学マスは2024年5月16日の配信後,各ストアでランキング上位に食い込み,競合がひしめく市場で「Google Play ベスト オブ 2024」ベストゲーム賞を受賞するなど,飛ぶ鳥を落とす勢いの快進撃を見せた。

 私も配信日に遊んだときは,あまりのおもしろさに衝動のまま原稿を書き,前触れもなく編集に投げつけたものだ(編注:怒ったよ!)

画像集 No.044のサムネイル画像 / [インタビュー]まさに飛躍の年。「学園アイドルマスター」のここまでの歩みを,学マスプロデューサーの小美野氏に聞きまくる

 そして今回,ふつーの初星学園プロデューサー科の生徒として,世のクラスメイトたちになにか贈り物ができないかと,学マスを生んだプロデューサーの小美野日出文氏にインタビューを打診した。

 本稿では,スタートダッシュから飛躍したこれまでの反響や,バズワードを生み出しまくった国民的アイドルコミュについて聞くべく,イメトレしながらワクワクが止まらないままに実施したスタンドプレーの模様をお届けする。初星のプロデューサーには,ぜひ一読いただきたい。

「学園アイドルマスター」メインプロデューサーの小美野日出文氏
画像集 No.045のサムネイル画像 / [インタビュー]まさに飛躍の年。「学園アイドルマスター」のここまでの歩みを,学マスプロデューサーの小美野氏に聞きまくる

「学園アイドルマスター」ダウンロードページ

「学園アイドルマスター」ダウンロードページ



「アイドルマスターとしてちゃんと作る」


4Gamer:
 学マスのリリースから約半年,現状の手応えはいかがでしょう。

小美野日出文氏(以下,小美野氏)
 ありがたいことに,想定以上の反響をいただけています。ただ,今は手応えよりも,驚きとバタバタでいっぱいいっぱいですね。正直なところ,心情的にはここまでの評価をまだ飲み込みきれていないです。

4Gamer:
 ここまで注目されるとは思っていなかった?

小美野氏:
 開発内でも「目標は高く持とう!」と話はしていたので,まったく考えていないわけではなかったです。それでも,僕らが想定していたMAXの目標まで到達できてしまったことに,今は驚いている感じです。

4Gamer:
 それに伴い,社内外からの視線や期待には変化はありましたか。

小美野氏:
 社内外を問わず,あまり話したことのない人たちにお声がけいただける機会が増えました。いろんな人にお食事に誘っていただき,「学マスのあれはどうやったの?」とよく質問されています。
 これは僕にとってすごくありがたいことで,プラスの影響をたくさん受けている最中です。仕事以外では業界内でたくさん交流させていただいてきましたが,今後もさまざまな交流を広げられればと思っています。

画像集 No.047のサムネイル画像 / [インタビュー]まさに飛躍の年。「学園アイドルマスター」のここまでの歩みを,学マスプロデューサーの小美野氏に聞きまくる

4Gamer:
 そんな機会をも創出したのが学マスですが,小美野さんはヒットの理由をどのように分析されているのでしょう。

小美野氏:
 それもよく聞かれるのですが,ヒットの理由を分析するのってすごく難しいんです。ゲーム内容もプロモーションも原則,「マイナスになることしよう」と考える人たちはいないと思います。全員が「みんなに楽しんでほしい」の一心で作り,広めようとしているので,そのうちのどれが最も寄与した要因だったかを取り上げるのは,あんまり意味がないです。

4Gamer:
 世の中,ヒットの理由は概して「再現性がない」ものですしね。

小美野氏:
 そうですね。でも「失敗しない方法」はあると思ってます。先ほどお話ししたように,原則いいことと思ってやっているなかで,マイナスに働いている場合は分かりやすく目立ちます。そうなりかねない物事を事前に潰しておくのが,自分なりに継続してきたポリシーと言えます。
 現状も,皆さんからの反響はポジティブに受け止めつつ,勢いを維持するためには成功の分析より,失敗しない方法を意識しています。

4Gamer:
 ダメになりそうな要因に,具体例はありますか。

小美野氏:
 僕が重視したのは「コンセプトをしっかり守ること」ですね。ここがブレたら,いつでもダメになりかねなかったと考えています。
 僕らプロデューサーはプログラムも書けない,シナリオも書けない,絵も描けない,曲だって書けません。そのうえで求められる役割は,最初に「誰の」「どんなニーズに答える」「どんな特徴を持った」作品であるか,のコンセプトを練り上げて,クリエイターたちとビジョンを共有し,みんなの目線を合わせることだと思っています。
 例えばゲーム開発って,長いものだと4〜5年はかかります。その途上ではいろんな方面から新しいものが出てきて,流行して,影響されたみんなは自然と“新しいことにチャレンジしたくなる”んです。

4Gamer:
 創作者の性ですねえ。無理もない気はします。

小美野氏:
 そういうとき,刺激的な新しさに目を取られず,大本のコンセプトに立ち返り,「僕らがやりたいのはこれだったはずだ」と目線を整える。みんなが新鮮なアイデアを考えるなかでも,僕だけは常に,絶対に,コンセプトからブレないようにする。そこがブレていくと開発が遅れ,コストも上がり,本来必要のなかった仕事が増えていきます。
 常々チーム内では話していますが,「あったほうがいいレベルのものは,なくてもいい」と思っています。
 仮に,開発途上で新しい設計を取り入れるとしても,みんなの発想は自由でいいが,プロデューサーはコンセプトの枠に当てはめた精査を欠かさない。これが一番の失敗しない方法だと思っています。

4Gamer:
 分かりやすい説明です。

小美野氏:
 作品をヒットさせるのは,クリエイターみんなの力です。一方,僕らプロデューサーの仕事は,作品を失敗させないことです。
 そのためにもブレない“土台”を組み立てる。その上に建てる“建物”はクリエイターの感性にある程度は任せる。
 これが役割の違いなのかなと。

4Gamer:
 小美野さんは作品への責任感が強いんですね。

小美野氏:
 プロデューサーはみんな強いと思います。プロデューサーは関わるスタッフ,そしてユーザー,アイドルマスターで言うところのプロデューサーの皆さんに対して,きちんと向き合い,責任を取る必要があります。
 自分の仕事に誇りを持つという意味でも,責任感だけは投げ出さないようにがんばっているつもりです。

開発において「あっちも行きたいですわ!」は考えもの
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4Gamer:
 ヒットの要因かはともかく,リリース前には「生徒手帳」を配るなどのオフラインPRもやっていましたが,あれの狙いというのは。

小美野氏:
 生徒手帳は,当時の広報担当が「ピールオフ(広告面にノベルティを貼り,剥がして持ち帰ってもらうPR広告)をどうしてもやりたい!」と熱弁してきたから成立したプロモーションでした。
 これも僕のポリシーですが,開発でも施策でも「ロジック(理)か感情のどちらかが強ければやっていい」とチームに伝えています。どうしてもやりたい感情が強ければ,理がなくてもいい。逆に,やるべき理があればそれだけでいい。なので関係者はみんなアイデアをひねり出しつつ,ロジカルに説得してきたり,感情論で攻めてきたりしますね。

4Gamer:
 個々人の熱意も取り入れるからこそ,特別になれたと。

小美野氏:
 そのぶん現場のみんなは大変かと思います。自由に考えられるのと引き換えに,どちらかがなければ絶対に通さないので。
 実際の会議でも,僕は最初に理で詰めて,最終的に「結局やりたいの? やりたくないの?」と確認するプロセスを踏んでいます。そのとき理も感情もなかったものは繰り返しになりますが,絶対に通しません。

4Gamer:
 同じ「り」でも,利益の利の追求はどうなんでしょう。

小美野氏:
 ダメだと思います。利益は考えないという話ではなく,利益は結果です。目的があって,プロセスがあって,結果があります。結果から逆算したものは,逆算する過程で必ずねじ曲がります。
 僕はタイトルや当人にとっての目的意識を持ってほしいので,それが個人的な感情論であれ,順序立てた理論であれ,上流から下流に「ちゃんと説明できるものでないと認めない」と,みんなによく話しています。

4Gamer:
 とにかくゲームをマストに置いているんですね。
 ヒットの話だと,リリースから約2週間で100万ダウンロードを達成し,記念衣装の「チャイルドスモック」が提供されました。あのタイミングは当初の想定としては早かったですか。

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小美野氏:
 めちゃくちゃ早かったです(笑)。
 そもそも100万DLは年間目標でしたので。

4Gamer:
 予想よりもかなり早まったわけですね。

小美野氏:
 ちなみに,なぜチャイルドスモックを出したかについては,学マスでは「アイドルマスターがこれまでやってきたこと」を,いろいろなところで拾っていきたかったからです。
 ただし,学マス自体を多少なりとも支持していただける時期でないと,伝統を振りかざすみたいやり方はしないほうがいいだろうと考えていたので,かなり前倒しすることになったのは本当に想定外でした。

4Gamer:
 同時期には,新プロデュースアイドル「花海佑芽」も実装されました。作中の人柄のような遅刻実装でしたが,こちらの狙いは?

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小美野氏:
 佑芽は開発当初,配信から2か月後くらいに追加しようとしていましたが,QualiArtsさんから「昨今は最初の1か月が勝負なので,1か月以内になにかを出したいです」と相談され,前倒しにした形です。

4Gamer:
 わりとサプライズ実装でしたもんね。

小美野氏:
 一応,開発自体がスムーズに進んでいたからできたことです。佑芽がもっと遅れていたら,星南も11月実装とはいかなかったですね。

4Gamer:
 そこがちょっと意外な順番というか,私は「次は美鈴かな?」と思っていたんですよね。美鈴より星南が先んじたのは,星南のほうが掘り下げが進められていなかったから,などの理由からでしょうか。

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小美野氏:
 それも理由の1つですが,先々で美鈴たちのグループ「SyngUp!」の話が出てきて,元ユニットメンバーの燐羽も現れるので,彼女はこれらを踏まえた時期に出したほうが伝わりやすい,と考えたからですね。
 まあ,多くの人は「次は美鈴だろう」と思っていたようですが。

4Gamer:
 ちなみに,ここ10年はアイドル系コンテンツの群雄割拠でした。最近は少々落ち着いてきた印象がありますが,小美野さんは学マスの開発時に,近年のアイドルゲーム市場は意識していましたか。

小美野氏:
 僕はあまり意識していませんでした。
 というのも,僕らにとっては「アイドルマスターとしてちゃんと作る」ことが最重要だったので,業界や競合の研究よりも,これまでのアイマスと向き合い,シリーズ完全新作としてどのような立ち位置を確立できるか。ここを考えるのに終始していました。
 それに,他社作品のことは当事者から話を聞きづらいのに対し,アイマスは社内で当事者たちから話を聞けるので,分析しやすいんです。

4Gamer:
 そこは大きなメリットですね。ノウハウも山になってそう。

小美野氏:
 社内外のアイマス関係者には何度も話を聞きました。
 当時はどういう意図で作っていたのか。曲はどのように考えて用意していたのか。ゲーム性はどういうところを担保するべきなのか。さまざまな話を聞いたうえで,今の完成形に至っています。
 一方でQualiArtsさんのほうでは,むしろ他社事例や業界研究などをしていただき,彼らのなかでゲーム内容を思索してもらっていたので,そうしたノウハウの蓄積同士を合体したのが学マスかなと思っています。

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4Gamer:
 言いづらい話かもしれませんが,学マスは各ストアのセールスランキングで上位に位置してきました。しかし,11月時点では200万ダウンロードと,DL数だけを見ると昨今の市場ではそれほどインパクトがない。
 現状はどういった状態なのでしょう。

小美野氏:
 それに関しては,ダウンロード数の定義の違いになるかもしれません。学マスの場合,実際にゲームを遊んでいただいた数に限りなく近い数字をダウンロード数としています。

4Gamer:
 “誠実に”カウントしていると。DL数は市場でガシガシ押されますが,現実的に考えると「人が2千人」でも一大フェス級ですしね。
 ただ,DL数については「盛大な見せ方」に誘惑されませんか?

小美野氏:
 されません。今の時代,「このゲームを何人が遊んでいるか」を公表することの価値が低下し,盛り上がっているように見せることのメリットも減ってきたと考えています。リリース前に事前登録者数を押し出しださなかったのも,それが理由です。
 じゃあなぜ100万DLや200万DLを発表したかというと,それに合わせて記念のものを用意していたからというだけです。

4Gamer:
 つまり,アチーブメントみたいなものですね。

小美野氏:
 そういうことですね。

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4Gamer:
 国内での勢いのままに,海外展開は考えていますか。

小美野氏:
 あくまで今はですが,考えていないです。
 海外展開には「2つの問題」があると思っているので。

4Gamer:
 と言いますと。

小美野氏:
 まずは運営の問題です。僕は一時期,ミリシタ(アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ)のアジア版を担当していましたが,グローバル展開は同時リリースも含めて,日本版との並行運用が難しく,翻訳やデバックで運営内容の遅延が発生します。そのときに当然ですが「遅れたものを遊ばされている」とご意見を多数いただきました。
 この意見に対するケアをどうするべきなのか。学マスに関しては,僕のなかで結論が出ていない。というのが1つ目の問題です。

4Gamer:
 よく耳にする関門ですね。
 もう一点はどうでしょう。

小美野氏:
 もう1つは,海外の方々にとっての“アイドル像”が,日本の方々とはかなり差があることです。日本におけるアイドルは「成長途中の身近な存在」といったイメージが強いかと思いますが,海外のアイドルはアーティストであり,パフォーマンスが重視されていると思います。もちろん,それがすべてではないことは分かっています。
 ただ,学マスのように成長をテーマに据えると,アイドルになっていく過程を知りたい需要が大きいことが前提になります。これもまた障壁になるため,今すぐ海外展開というのは難しいです。

4Gamer:
 成長するアイドルと,完成したアイドルの楽しみ方の違いは,ここ10年の世界アイドル大戦でよく見聞きしましたしね。
 ただ,今年ちょっと興味深かったのが,中国や韓国のゲームショウでのセッションで「成長や努力を見る物語が(成功の秘訣として)キテる」という論旨を見聞きしはじめたことでした。これが大陸の興味関心の移ろいなのか,“日本狙い撃ち”の意味なのかは不明ですが。

小美野氏:
 僕らもその流れは各方面からうかがっていますし,受け入れられる時代がいずれくるとは思っています。ただ,学マスにおいてはそれがすべてなので,今はまだ踏み込めないでいるという状態です。
 ゲームから文化を塗り替えるのは,すごく難しいことですから。

4Gamer:
 売れる売れないとは次元の違う成功の話ですもんね。

小美野氏:
 そうですね。もちろん,熱心な海外プロデューサーがいるのは存じていますし,出してほしいというお声があるのも把握していますが,そもそも1つ目の問題を解決できず,さらに懸念があるとなると,現時点では難しいと思っています。

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4Gamer:
 小美野さんは最近「アニメイト全国行脚」に同行するなどで忙しそうですが,リリース前後で忙しさはけっこう変わりましたか。

小美野氏:
 ありがたいことに,多くの企業さんからお声がけいただいたり,社内のグッズチームからもいろいろな話がきたりで,監修系のお仕事がとても増えました。ゲームの開発・運営についてはある程度は想定できていたので,忙しくはありますが,そこまで変化はないです。

4Gamer:
 企業コラボの描き下ろしグッズも怒涛の量ですよね。

小美野氏:
 お声がけいただくこと自体,大変光栄なので本当にありがたいです。ただ……2025年からはもうちょっとうまくやりたいです……(笑)。
 それでもまあ,忙しさについては僕自身,昔からゲームプロデューサーとして複数タイトルに携わるような業務をやってきたので,「あのころと比べたらまだマシ。まだがんばれる」って思っています。

4Gamer:
 当時最大の繁忙期ではどれくらいのタスクを?

小美野氏:
 若手のころ,年間10本くらい家庭用ゲームの開発を担当していたときがありましたね。すべてがメインプロデューサーではなかったですが。

4Gamer:
 それはなかなかの(笑)。
 若いときの経験や苦労が生きてるんですね。

小美野氏:
 どうでしょうね(笑)。
 体力も落ちたには落ちたんですが,幸いまだ元気にはやれてます。

画像集 No.009のサムネイル画像 / [インタビュー]まさに飛躍の年。「学園アイドルマスター」のここまでの歩みを,学マスプロデューサーの小美野氏に聞きまくる

4Gamer:
 描き下ろしイラストの話だと,「学園アイドルマスター DEBUT LIVE 初 TOUR -初声公演」の開催記念イラストについて質問なのですが。
 これ,咲季が食べてる謎ペーストはなんなんですか。

小美野氏:
 これは……なんなんだろ(笑)。
 咲季の担当の山本(アシスタントプロデューサーの山本 亮氏)が,「ペーストにしてくれ」って言ってた気はしますが。

4Gamer:
 山本さんの仕業だと。
 お店のモーニングで謎ペーストを食べてるのがオカシイなあって。

小美野氏:
 山本はたぶん「記念としてのイラストである」という目的をもって,リアリティよりも“咲季らしさ”を優先したんじゃないかと思います。

4Gamer:
 確かに,咲季っぽくて分かりやすいですしね。
 ちなみにアイドルの担当分けは山本さんと,同じくアシスタントプロデューサーの佐藤大地さんとは,どのように分業していますか。

小美野氏:
 基本は担当アイドルをざっくりと分けて,さらにゲーム面を山本が,(佐藤)大地が音楽面を中心に見ています。音楽は僕も好きですが,趣味が偏っているので,ああでもないこうでもないと口をはさむのは良くないだろうなと思い,自重しています。
 音楽って言語化するのがすごく難しいんですよね。その曲がどう良いのか,悪いのかを伝えるときも,僕は好き嫌いでしか判断しづらくて。それがイヤで,音楽プロデューサーの佐藤さん(佐藤貴文氏)にターゲット層を意識してもらい,僕と干支が一周差がある大地に視点を合わせてもらっています。すると,音楽がちょうど良くなるんです。


親愛度9で終わりじゃないよ!


4Gamer:
 続いては,ゲーム面のお話です。
 ゲームの楽しまれ方は現状,想定通りでしょうか。

小美野氏:
 ほぼ想定通りです。学マスの楽しみ方は当初から,2パターンのプロデューサーさんに分かれるだろうと想定していました。
 それは「物語を楽しむ人」と「攻略を楽しむ人」で,現状はいずれも想定通りに楽しんでいただいている印象があります。

4Gamer:
 前者は,コミュを追うのがメインの人でしょうか。

小美野氏:
 そうです。「親愛度コミュ10話でエンディング」という設計も,その人たちにそこまで楽しんでもらえたら,いったんひと区切りでよくて,シナリオ追加時に戻ってきてもらえればいい,と考えてのことです。
 運営中のイベントすべてを追いかけてもらうとすると,無理してゲームを続けることで,作品そのものにイヤな印象を持つ人が出てきてしまいます。そのため,彼女たちの物語が興味の中心にある人は,エンディングを見たあと,しばらく距離を置くでも構いません。
 もちろん,シーズンイベントなどでアイドル同士の関係の深堀りするなど,遊び続けてもらうための努力は惜しみません。ただ,物語の世界線を分けているのは,あくまで深堀りの範囲にとどめるためです。

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4Gamer:
 親愛度コミュを楽しみの中心としたんですね。
 その点,親愛度10のプレイヤー達成率はいかがでしょう。

小美野氏:
 想定よりも高い数値に達してくれました。しかし「親愛度9で終わったと思って止まる人」が予想外に多かったのが反省点です。評価“A+”までやってもらう施策を後付けしたのは,そのせいでした。

4Gamer:
 確かに,親愛度9は終わり感が強いですしね。
 True Endのボーナスも開放されますし。

小美野氏:
 そこが悩ましかったです。開発時もエンディングのハードル自体はそこそこ高く置こうとしていましたが,当時のテストプレイ中,「親愛度10にたどり着くのは難しい」と分かりました。
 そこでQualiArtsさんの調整で,1つ手前の親愛度9を物語的なピークとして,先にTrue Endを見せてから,その先のもう一歩をがんばってもらう……という構造にしていただきました。

4Gamer:
 親愛度10には,それなりのゲームプレイも求められますしね。
 私はコミュも攻略も大好きなのでよかったのですが。

小美野氏:
 どちらも楽しんでくださっているプロデューサーさんが多いかとは思いますが,物語を楽しむ人向けとしては少し反省点が残ります。
 一方で,ゲーム部分だけを楽しんでくれている人も少なくはないので,いずれにせよありがたい話だと思っています。

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4Gamer:
 それこそ,この担当編集はゲームだけ楽しんでるタイプでして。

小美野氏:
 おー,そうなんですね。

4Gamer(同行編集):
 申し訳ないですが,ほぼすべてのコミュは高速タップで送り,ライブシーンもスキップの嵐で,通しで見たことは一度もないです。

小美野氏:
 あっ,めっちゃ分かります。
 僕も担当アイドルのはスキップしてました。

4Gamer:
 ちょっ,ええ(笑)。

小美野氏:
 僕の場合,シナリオを確認して,ボイス収録に同席して,完成形も監修時に読んで,テストプレイも何回もしたので,正式リリースされるころにはもう,担当アイドルのコミュについてはなんならセリフまで覚えてるって状態でしたので……。
 ことねの親愛度コミュに関しては最初にできたので,少なく見積もって30回くらいは通しで読んでますね。毎回泣きそうになりますが。

4Gamer(同行編集):
 私はアイマスと歩んだ10年間が人生において重すぎるので,「アイマスはもう絶対に遠くから眺めるだけ」と心に誓ったからですね。アニメがやってたら観る,くらいの関係で,ハマりたくないがためのプレイスタイルです。仕事でも避けてきましたし,配信時も触れもしませんでした。こいつ(ライターつきひ)が無言で原稿を送ってくるまでは。
 おかげで今は,PLv54です。こいつ(つきひ)はPLv59ですが。

小美野氏:
 すごい! めっちゃやってくれてますね!

4Gamer(同行編集):
 それだけ楽しませてもらっています。楽曲もアイドル選択画面で流れる部分しか聴いたことなかったので,ここに来る前に初めて聴いてみましたが,カッコよかったです。予想外でした。だからどこかでコミュとかも見返しそうだなって思いましたが,イヤなんですよね。
 ほんと,アイマスにはなるべく一生触れたくない……!

※言い訳の編注:好き嫌いの話ではない。“今生ではそうする”と誓っただけの話。もはや大半に通じない焦げついた懐古だが,私にとってアイマスは,無敵艦隊でセンタワを狙うリアル対人戦ゲームだった。spring-fragrance4.3@idolmaster.jpやcarl-czerny50@idolmaster.jpから届いたメールはまだ持っている(メール☆プリーズ。地元の通称キャバメ)

4Gamer:
 もう手遅れすぎる気が……。

小美野氏:
 でも,そういうプロデューサーさんがいることは,僕らにとってはすごくうれしいです。今回,ゲームの中身を作るにあたって,いかにおもしろくできるかをQualiArtsさんと一生懸命考えてきたので。

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4Gamer:
 ゲームシステムについてはぶっちゃけ,学マスはデッキ構築ローグライクの先駆け「Slay the Spire」をかなり参考にしている印象ですが,国内の大手パブリッシャがやる仕掛けとしては珍しいですよね。

小美野氏:
 ゲームデザインの発端は僕ではなく,当時の上司であった三本さん(「アイドルマスター」シリーズ ゲーム統括の三本昌史氏)と,QualiArtsさんがほぼ同時に「ローグライクのゲーム性はどうか?」と相談してきたのがはじまりです。
 そのあと,自分でもいくつかローグライク系のゲームを遊んでみて,「確かに」と感じられたんですよね。繰り返し遊んでも新鮮に楽しめてしまうゲームサイクルも,これだとなりました。

4Gamer:
 関係者の思惑が見事にかみ合ったんですね。
 そのうえで,どのように練り上げていったのでしょう。

小美野氏:
 まず「アイドルを育成するゲーム」にすべく,アイマスらしくボーカル・ダンス・ビジュアルのパラメータを育てていき,それを発揮できる場も用意して,ゲーム全体の“箱”に当てはめていきました。その過程で,単純に育成するだけじゃない遊びを加えていった感じです。

4Gamer:
 組み合わせがいいんですよね。ゲーム性が本当におもしろい。
 新プラン「アノマリー」とかも超ハマってます。

小美野氏:
 アノマリーの調整はいろいろあったんですが,とくにQualiArtsさんの最後の詰めの調整力がすばらしかった結果ですね。

4Gamer:
 言えるかは分かりませんが,さらなる新プランも構想していますか。

小美野氏:
 皆さんにお話しできるのは,既存のゲームモードと適切に組み合わせられるかの検証が済んでからですかね。
 学マスの遊び方を変化させる方法は,「プランを増やす」「プロデュースモードを増やす」「エンドコンテンツを増やす」の3軸ですが,当面は2つ目にあたるN.I.A編を楽しんでいただきたいと思っています。

4Gamer:
 10月には「#アニメイトを盛り上げ隊」のサークルイベントがありましたが,集団で楽しめるコンテンツも検討していきますか。

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小美野氏:
 集団プレイはエンドコンテンツで用意するのはありですが,あまり恒常的な遊びにはしたくないのが本音です。ただ,今後もいろんな形で遊んでいただくためのバリエーションとしては検討していきたいですね。

4Gamer:
 個人的にも意外なタイプのイベントがきたなと思いましたが,サークルイベントを基本形にしない理由はなにかあるんでしょうか。

小美野氏:
 僕は過去にGvGゲーム(ギルドvs.ギルド系の遊び)を担当していましたが,そのときメリット・デメリットをよく知りました。
 ギルドなどの集団を巻き込む遊びは,プレイヤー間の足並みを求めたり,コンテンツの価値を“強く”しすぎたりすると,輪に入っていない人は触れにくく,輪に入っていてもリーダーが辞めた途端に大量引退など,「ゲームを辞める理由」になります。
 ですから,プロデューサーさん同士でのグルーピングを強くしすぎるものにはしたくないと,QualiArtsさんとも話してきました。

4Gamer:
 あの期間はサークル移動も多かったでしょうしね。
 こうしたゲームの楽しみ方は想定内とのことですが,「True Endで終わりだと思われた」のような想定外の事例はほかにありましたか。

小美野氏:
 うーん,パッと思いつくものだとほとんどないですね。細かいところでは「写真撮影枠が足りない」「メモリ所持上限が足りない」とか,そういった機能面での不満は思いつくのですが。

4Gamer:
 それら機能改善もかなりスピーディですしね。

小美野氏:
 そこはQualiArtsさんの取捨選択が早いおかげです。あと,関係者らが意思疎通と認識共有がきっちりできているからですかね。
 僕が普段やり取りするのは,QualiArtsで開発ディレクターを務める岩本航輝さんですが,長い付き合いなのでお互い気を使わず,夜中でもお互い電話をかけたり,打ち合わせ前にメモをバーっと送りあったりし合っています。この関係を構築できたのが大きいです。
 単に優秀な会社や人材だけでは,ここまでのクオリティもスピードも出ませんでした。技術力の高低の話だけじゃないですよね。岩本さんなしではこのプロジェクトは立ちいかなかったと思います。

4Gamer:
 大切なコミュニケーション構築に聞こえます。
 ついでに不満を申しておくと,例えば直近のイベント「ケーキが結ぶフレンドクリスマス」。イベント専用ガシャが提供されるとき,アイドルのピースが排出されると「シュピーーーン!」って演出が入り,そのたびに報酬送りが止まるじゃないですか? あれ100回連続とかで回すと,1分くらい放置するはめになるんですけど,スキップできませんかねえ。

小美野氏:
 そうですよね。
 そういうところはなるべく改善していくつもりです。


仲は悪くても,相性は最高


4Gamer:
 シナリオについては,初星コミュのユニークさが話題です。
 あのテイストは,シナリオ担当の伏見つかささんの意向なのか。それともプロジェクト側の意向なのか。制作方針はどうでしたか。

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小美野氏:
 両方ですね。コンセプトにも“明るく温かいお話”などと書いています。あとは,できれば少年誌のような熱い展開にしたくて,アイドルたちが単なる仲間ではないという見せ方を意識した結果です。
 楽曲「初」の歌詞からも分かるとおり,彼女たちは互いを高め合う仲間であり,ライバルでもある。そこを強調してもらいました。

4Gamer:
 コミカルも中心というわけではなく,バランスの一部なんですね。

小美野氏:
 はい。コミカルさと熱い会話の緩急が狙いです。とくに「Re;IRIS」の3人(咲季・手毬・ことね)はそれが顕著ですね。
 といっても,コミカル要素は完全に伏見さんの書き味にお任せです。おそらく,かなり難しいことをやってもらっています。

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4Gamer:
 Re;IRISは,アイマスにおける歴代の信号機トリオ(※)と比べると,かなりトゲトゲしい関係というか,仲が悪いというか。あくまでケンカップル的な文脈ですが,当たりが強い者同士ですよね。

※アイマスでは伝統的に,3人1組のアイドルが(広告イメージ的な)顔役となる。だいたい「太陽的な赤い子」「月的な青い子」「星的な黄色い子」となるため,赤・青・黄の信号機の愛称で親しまれる

小美野氏:
 彼女らについては,仲良しではなくとも“相性が抜群にいい”ことを目指した結果です。あの子たち,確かに仲がいいとは呼べない間柄なのですが,それぞれ人としての相性は最高にいいです。

4Gamer:
 ああ,すごく納得する答え。
 とはいえ,アイマスはアイドルゲーム界隈の顔役ないし王道。そういう看板を持つ立場だと,エンタメにおけるお決まりの文脈は,キャピキャピ仲良し成長物語……的な手法を取るのが定番かと思います。
 このあたりはぶっちゃけ「置きにいく」つもりはなかったんですか?

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小美野氏:
 定義にもよりますが,ゲームとしては確かにあまりやらないことをやっているかもしれません。
 ですが,伏見さんたちが主戦場とする小説やアニメでは,咲季たちのような“とがった関係性”のほうがある意味メジャーですよね?

4Gamer:
 ああ,おっしゃるとおり,ゲームは王道系セットアップからのスタートが慣例的に根付いていますが,小説・マンガ・アニメではそこを脱却し,つかみからキャッチーにいく戦法が長らく主流ですもんね。
 そうした文脈をうまく取り入れて,このようにズラしたと?

小美野氏:
 それが伏見さんたち学マスライターチームの強みだと思っています。

4Gamer:
 実際,アイドルたちの個性が並外れて際立っていることで,彼女らの言動はネットでもミーム的に広がってきましたしね。

小美野氏:
 女の子同士の愉快な日常会話が抜群にお上手ですからね。

4Gamer:
 ただですね,手毬の言動なんかは,開発陣は満場一致で「いいね!」となったんでしょうか? 手毬の尖り加減がプロデューサーらに響いたのは周知の事実ですが,アイマスの看板を背負って作る側の皆さんなら「これは言わせすぎじゃない……?」と怖くなり,それこそマイルドな表現に置きにいっても仕方ないのが大型プロダクトかと思いますが。

小美野氏:
 大きくもめることはなかったですね。ただ,例の「殺すから」は,さすがに言いすぎじゃないかと話し合いましたが(笑)。

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4Gamer:
 ですよね(笑)。それでも通したことで,今につなげたと考えると,多くのプロデューサーは「英断だ」と言うかと思います。
 ちなみに親愛度コミュは伏見さん,志瑞 祐さん,雨宮和希さんの担当とのことですが,ほかのコミュはどのような制作体制なんでしょう。

小美野氏:
 親愛度コミュ以外もお三方が書くことも多いです。
 ものによってはほかの作家・ライターさんに書いていただくこともありますが,イベントシナリオも基本は,主役ポジションの子の担当作家さんが手がけることが多いですね。

4Gamer:
 味つけがブレないなあと思っていたのは,だからなんですね。そのうえで「自分の担当外のアイドルを絡ませる物語」も多分にあるはずですが,このあたりはシナリオ関係者ですり合わせるのでしょうか。

小美野氏:
 そうした課題は,毎週のシナリオ定例会議で整えています。
 最初はシナリオチームで方向性を話し合い,プロットが作られ,それを読んだ僕が意見して,だいたいの方向性が固まったらシナリオを担当作家さんに細かく見てもらう,といった流れで進めます。

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4Gamer:
 ついでに世界観の質問なんですが,初星学園のアイドル科って,学年ごとにどれぐらいの生徒が在籍しているんでしょう。

小美野氏:
 大まかな想定はありますが,決めきってはいませんし,明言もしないようにしています。実は教室の席数から算出はできますが。

4Gamer:
 そこはまだ見せない設定であり,想像で補ってほしいと。

小美野氏:
 はい。

4Gamer:
 その点,プロデューサー科はアイドル科よりも少数ですよね?

小美野氏:
 人数比ではかなり少ないですね。

4Gamer:
 あと,アイドル科はエンタメ的な舞台装置として想像しやすいのに対して,プロデューサー科ってなんなんでしょう。
 リアルで考えると,トータルビジネスの専門家コース……みたいに考えられますが,本当にアイドルプロデュース特化なのかどうか。

小美野氏:
 初星学園の専門大学にプロデューサー科が設立された経緯は,「100プロのプロデューサーの人員が足りなかった」からです。
 初星にアイドル科が設立された当初,アイドルの卒業先であるプロダクションも存在すべきだったので,星南のお父さんが十王財閥グループの資本で100プロを開設しました。しかし,事務所には卒業生が毎年いっぱい入ってくるので,その子たちの面倒を見る人も必要です。けれど,プロデューサーという人材はそんなに急には集められない。
 そこで「ならプロデューサーも育成しよう!」と考えられた結果,プロデューサー科もセットで設立されたわけです。

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4Gamer:
 よかった。就職先も込みだったんですね。学生が学生をプロデュースして,どう実績にしてご飯を食べていくのかが心配だったため。
 では,プロデューサー自身についてもです。学マスでは現状,プレイヤーとアイドルは1対1の関係性で描いていますよね?

小美野氏:
 そうですね。
 基本的には1人のプロデューサーが,1人のアイドルを見ているという設定で,複数人を同時に担当させることもしていません(※)

※初星コミュなどをのぞく,プレイヤー視点のコミュにおいての話。「同時並行で複数人をプロデュースする様子を描かない」とも言える

4Gamer:
 その点,プロデューサーは「アイドル担当前から同一人物の1人」がいるのか。「アイドル11人に対して,プロデューサー11人の別人物」がいるのか。手毬の担当者と莉波の担当者は,担当選択の前後において同一人物なのか,あるいは別人なのか,という話ですね。
 歴代のアイマスでも「〜〜担当のときは,人が変わったみたいだ」といったギャップや,それゆえの楽しさがあるわけですが,学マスにおいてはプロデューサーの存在をどう定義しているのでしょう。

小美野氏:
 同一人物である1人のプロデューサーが,それぞれのアイドルを担当した時点で,並行世界的に広がっていくと思ってください。
 プロデューサーの口調や一人称などのベースは,伏見さんに設定を決めてもらいました。そのうえでアイドルごとの対応は,相手次第で関係性を変えるように,それぞれ接し方に違いはありますが,完全な別人には見えないように整えてきました。

4Gamer:
 つまり,手毬のプロデュースをしているプロデューサーも,幼少期に莉波との交流があった同一人物,と見ていいわけですね?

小美野氏:
 設定上はそうです。ただし,今はあくまで1対1の関係性を紡いでもらうことしか考えていないので,莉波との接点は,ほかのアイドルをプロデュースしているときは出さないようにしています。

4Gamer:
 となると,仮にプロデューサー1人とアイドル11人をアニメ的に描くことになったら,莉波の“はみ出し”具合はやはり強そうですね。

小美野氏:
 たしかに,そうかもしれません。


“発注時”にはネタバレも……


4Gamer:
 楽曲制作時は,作詞家・作曲家さんとどんな相談をしますか。

小美野氏:
 まずは担当者に「学マスとはなにか」を説明させてもらい,次に楽曲を歌唱するアイドルの紹介をし,曲の方向性を伝えていきます。
 ストーリー性が関わるような楽曲に関しては,シナリオプロットなども添えて,より細かく説明させてもらっています。

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4Gamer:
 学マスの曲は,アイドルごとの解像度が高いですもんね。

小美野氏:
 ありがたいことに,作詞家・作曲家さんのなかには,学マスをプライベートで遊んでくださっている人たちもいるからですね。
 楽曲制作の都合上,皆さんには“先のお話”もお伝えしなければならないことがあるため,打ち合わせでネタバレをするほかなく,「マジかー」と残念そうな顔をされたことが何度かありますが(笑)。

4Gamer:
 この業界の常ですが,心理的にはゲームで見たいでしょうし(笑)。

小美野氏:
 お渡しする資料も,セリフすらないプロットで「こういう結末です」と知らせるものがけっこうあるので,申し訳なくも思います……。

4Gamer:
 清夏の「カクシタワタシ」のプロットとか,絶対先に読みたくない。

小美野氏:
 「カクシタワタシ」はとくに期待されていましたしね。
 清夏についてはメタ的な話になりますが,彼女をプロデュースしたことのない人に向けては,明るいギャルの表情だけではなく,「実はこういう表情もあるんだよ」という訴求をいろいろと狙ってきました。

4Gamer:
 おかげで「清夏が一番重い」の説も早くに広がりました。

小美野氏:
 そうですねえ。清夏のそうした隠れた一面は,表面的なビジュアルや楽曲の切り抜きではあまり伝わらないと思っていたので,彼女が抱えているものの重さに勘づいてもらうためにも工夫してきました。

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4Gamer:
 制作スケジュールで言うと,楽曲の工期はどうなっていますか。

小美野氏:
 現時点(12月時点)で言うと,来年の11月分くらいまで制作下にあります。最低限,仮歌ができていないとMVも作りはじめられないので,だいたいの曲は“1年前の仮歌納品”をめどにしている感じです。

4Gamer:
 それだけ早くても,ゲーム内ライブ映像はギリギリなんですか。

小美野氏:
 かなりギリギリです。「カクシタワタシ」も曲自体はずいぶん前にできていたのに,ライブ映像ができたのは11月後半くらいでした。

4Gamer:
 品質の高さゆえ仕方ないにせよ,相当ギリギリですね。
 余談ですが,初代「アイドルマスター」では最後にできた楽曲が,表題曲の「THE IDOLM@STER」であるとされます(※)
 学マスは運営型ゲームとあり,リリース前後も制作ラインは稼働していたでしょうが,配信前の最後に作った曲がなにか思い出せますか。

※書籍「THE IDOLM@STER MASTER BOOK」声優・開発インタビューの部分より(2008年3月22日発刊)

小美野氏:
 うーん,なんでしょ。最初の曲で言えば「初」の発注で,曲の完成で言えば「世界一可愛い私」と「初」が同時期。「Fighting My Way」の制作も同じころに走っていたと思います。
 ずっと悩んでいたものだと「Luna say maybe」です。このころはまだ作曲担当の美波さんにすらたどり着いておらず,「手毬はどんな曲にしよう……」と長らく大地が頭を抱えていた覚えがあります。
 それで配信前の最後に作ったのだと……「Howling over the World」ですかね? おそらくではあるのですが。

「Howling over the World」
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4Gamer:
 “小美野Pの趣味”と言われてる曲ですね。実際はどうですか。

小美野氏:
 「Howling over the World」は僕の発注案件でした。リリース後のライブ用に3曲ほど作るという話が浮上したとき,ライブ曲なら作品の文脈を気にしてロジカルに作る必要もないだろうと思ったので,僕へのオーダーも「盛り上がる曲が欲しいです」ときていました。
 1曲くらいは好きに作ってみたかったんですよね。いわゆる,アニメのオープニングテーマっぽいものが欲しいなと思って。

4Gamer:
 実際,かなりロボットアニメのオープニング曲っぽいですよね。

小美野氏:
 完全にロボアニソングです。実はこの曲,学マスのゲームシナリオとはまったく関係ない,“この曲のためだけのシナリオと設定”をバーッと書きまくった資料まで自分で用意したんですよ。
 でも,音楽Pの佐藤さんにその怪文書を見せても「ハ?」ってなるだろうなと思って,そのときは送るのは控えました(笑)。

4Gamer:
 いつか表に出てくることを期待してます,怪文書。
 楽曲に関してはここ半年,「各アイドルの誕生日に新曲公開」もしてきましたよね。あれは大変じゃなかったですか。

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小美野氏:
 大変ですが,アイドルの誕生日である以上,プロデューサーの皆さんがみんなで,同じ時間に盛り上がり,「おめでとう」と言える場所を作りたかったんです。新曲ミュージックビデオの公開を,アイドルごとの誕生日の当日0時にしているのもこれが理由です。
 グッズのほうは,あとから「せっかくの描きおろしイラストを使わないのはもったいない」という意見があったので,という感じです。

4Gamer:
 誕生日の新曲施策は,単純に考えると「毎年11曲」かつ+α数が指数関数的に増える計算ですが。来年以降も続けるんですか?

小美野氏:
 ……ノーコメントで。

4Gamer:
 ノーコメントだった,と書いても(笑)?

小美野氏:
 大丈夫です(笑)。そこは山本と大地も考えているので,楽曲になるかは現時点では明言できませんが,来年以降もなんらかの形で彼女たちの誕生日を祝っていくつもりではあります。

4Gamer:
 楽曲ときたらMVについてもですが,毎回公開しているシーズンイベント曲のMVはクオリティがどんどん上がってきていますよね。

「仮装狂想曲」で飛び跳ね廻るウキウキのスケアクロウくん,だいすき
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小美野氏:
 シーズンイベント曲はもともと,MVを作る予定はありませんでした。でも各アイドルの1曲目のMVが非常に好評だったため,これは喜んでもらえるコンテンツかもと考え直し,急遽「キミとセミブルー」と「冠菊」からはカードイラストを用いて動画を制作しました。
 そのあとの「仮装狂想曲」からは事前に準備する時間もあったので,イラストレーターさんと連携して,描き下ろしイラストを使ったオリジナルMVを作るようになった,という流れです。

4Gamer:
 MVとはちょっと違うんですが,「十王星南に聞く5つの質問」という動画で“星南ちゃんダンス”なる検索誘導があったんですが。
 この星南ちゃんダンスなる動画は出さないんですか。

小美野氏:
 星南は山本の担当なので,僕はまったく分からないです(笑)。

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4Gamer:
 また山本さんの仕業と……。
 そのへんもちゃんと分業なんですね。

小美野氏:
 ええ。とくにシナリオは読むといろいろ言いたくなっちゃうので,任せると決めた以上は最終確認まで介入しないようにしています。音楽も大地に任せると決めた以上,担当アイドルの曲以外は介入なしです。
 そうじゃないとメンバーの責任感がなくなってしまうので。

4Gamer:
 音楽の話のラストは声優陣について。それぞれ初ライブなどの活動をこなした時期ですが,これまでの感想はいかがでしょう。

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小美野氏:
 ライブ公演はいきなりドームとかではなかったものの,ソロでの歌唱もお願いして,会場的に歌詞の表示モニターなども用意できなかったため,皆さんには大変なことをお願いした自覚があります。
 そんななかでキャストの皆さん,僕らの想像を超えるパフォーマンスを発揮してくださったのが,とても印象的でした。

4Gamer:
 個人的には「初恋公演」(出演:麻央役の七瀬つむぎさん,清夏役の湊みやさん,広役の川村玲奈さん)で「仮装狂想曲」を披露したことに驚きました。高速歌唱系な歌はもちろん,踊りも忙しそうでしたし。
 キャスト陣はあのとき「やろうやろう!」だったのか。「イヤイヤ無理ぃ!」だったのか。現場の雰囲気はどうだったのでしょう。

小美野氏:
 とくにイヤとかの反応はなかったと思います。繰り返しになりますが,大変なお願いをしている自覚があったのですが,ゲネの段階でほぼ完璧にこなされていたのが本当にすごいなと思いました。


アイドルの「卒業」や「花言葉」


4Gamer:
 小美野さんの過去の発言では,生放送「初星学園HR#7」のあとの「ひとり小美野の部屋」での一幕が,わりと重要に聞こえました。
 とくに「学マスではアイドルたちが卒業していく」という発言がけっこう話題になっていましたが,真意はいかがでしょう。

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小美野氏:
 アイドルの卒業については実は,3月5日のゲーム発表会後に公開した公式インタビューでも言及していました。ひとり小美野の部屋では,リマインドの意味でもう一度伝えさせてもらっただけです。
 学マスでは,いつかは言えませんが,アイドルたちの卒業に触れていくことになります。しかし,皆さんが思うであろう「卒業したらいなくなっちゃうの?」という不安については,あらかじめ「大丈夫です! 彼女たちの物語は続いていきます!」とお答えしておきます。

4Gamer:
 卒業後は,プロ編に移り変わるとかで。

小美野氏:
 はい。現状は何年後にやれるのかの見通しもつきませんが(笑)。

4Gamer:
 ゲーム面の数々の話題も,最初から話すつもりでしたか?

小美野氏:
 こう言うとおもしろみがなくなっちゃうかもしれませんが,ある程度は事前に用意しています。
 僕はプロデューサーの皆さんとの距離を縮めるために,「実は……」という話題を常にストックしていて,問題ないことだけ話しています。まだまだ話せてないことも山ほどありますが,なかなか機会自体がないんですよね。聞きたいという方々のためにどこかで話したいんですが。

4Gamer:
 例えば,どんなネタがあるのでしょう。

小美野氏:
 各アイドルのモチーフは花です,とか。

4Gamer:
 へええ,なるほど……うーん。
 勘づいている人は少なくないのでしょうが,個人的には看板役の名前が「花」海「咲」季と直球すぎて,逆に考えたことない……。

小美野氏:
 僕も「実はモチーフはこれでした!」とか絶対に言わないと決めてたんですけど,あまりに気付いてもらえなさすぎて(笑)。ブランドロゴのハチドリもそこからとっています。
 こういう,話す機会がないネタをいっぱいストックしているんです。

4Gamer:
 話を戻しますが,作中の時間経過は親愛度コミュで描くんですか。

小美野氏:
 そうですね。例えば,STEP2「N.I.A編」でも作中時間を進めましたし,さらなるSTEP3でも時間を進めていきます。
 アイドルの祭典のH.I.F(Hatsuboshi Idol Festival)は夏・冬の年2回開催で,それぞれ一番星(プリマステラ)が決めます。アイドルたちはみな一番星を目標とするので,時間は進めるべきものでした。シーズンイベントでも,季節の移り変わり自体は描いてきましたしね。

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4Gamer:
 N.I.A編に続くSTEP3は,いよいよH.I.Fなのでしょうか?

小美野氏:
 それは内緒です。

4Gamer:
 ですよね。N.I.A編では全アイドルの新・親愛度が一斉に開放されましたが,STEP3以降も全員まとめて実装されるのでしょうか。

小美野氏:
 いえ,そこは現在検討しています。

4Gamer:
 なるほど。
 さらに,12月の学マスカンファレンスでは「秦谷美鈴」の2025年5月実装も発表済みです。美鈴役の春咲 暖さんが出演する,2025年2月の初陣公演よりは前かなと思っていたので,予想よりも遠い印象でした。

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小美野氏:
 これはリリース時から各所でずっと言っていますが,学マスで新アイドルを1人追加するのって,めちゃくちゃ時間がかかってしまうんです。できて半年に1人がギリギリなんですよ。
 なので星南から半年後,1周年のタイミングがベストでした。ちなみに「半年に1人増やしていきます」という意味ではないですよ。美鈴以降はなにも決まっていないです。

4Gamer:
 美鈴も実装直後,親愛度20まで一気に開放するのでしょうか。

小美野氏:
 いえ。実装時は「まずは10話まで」とさせていただきます。11話以降もそこまでお待たせしないとは思いますが,今は断言できないです。

4Gamer:
 美鈴については“サボり魔”な一面がすでに広まってきましたが,ほかのアイドルたちと比べると若干「普通の女の子寄り」な印象が強い気がしていて。彼女はどういう経緯で生まれた子なんでしょう。

小美野氏:
 美鈴はそれこそ開発初期に設定を作り,キャラクター原案のへちまさんに最初に作ってもらったアイドルです。印象的にプレーンに感じられたのなら,彼女はある意味,原点に近いからかもです。

4Gamer:
 最初期キャラゆえの名残だと。

小美野氏:
 それと,美鈴がシンプルに見える理由は「初星学園のベースの制服」を着ているからかもしれないです。これは美鈴の性格からしたら「制服のカスタマイズなんて面倒なことは絶対しないだろう」「それにほかの服も選びたがらないだろう」と考えてのことでしたが。
 個性的な制服の子たちと並べると,色味が抑えめですしね。

4Gamer:
 みんな派手めですもんね。
 ただまあ,学マスですし。普通の子じゃないことは分かりますが。

小美野氏:
 はい。そこは期待してください。

4Gamer:
 そこは期待できます。学マスは癖のバーゲンセールなので。

小美野氏:
 初期構想でいうと,ことねと星南は今より関係性が薄くて,美鈴と手毬はもっとベタベタな感じでしたけどね。

4Gamer:
 膨らませつつ,萎ませましたねー。
 いいや,どんどんベタベタでお願いします!

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4Gamer:
 といったところで,本日は長々とお話を聞かせていただき,どうもありがとうございました。まずは初星学園のプロデューサー科で切磋琢磨している皆さんに,ひと言メッセージをお願いします。

小美野氏:
 プロデューサーの皆さん,新しい親愛度コミュとプロデュースモードは楽しんでいただけていますでしょうか。
 学マスカンファレンスでも発表させていただいたとおり,学マスはこれからも盛りだくさんでやっていきます。
 まだロードマップは公開していませんが,1周年のあともしっかりとがんばっていきますので,引き続き「学園アイドルマスター」と“アイドルたち”のプロデュースを,どうぞよろしくお願いいたします。

4Gamer:
 ありがとうございます。そのうえで最後にもう1つ。
 学マスの成功は誰もが知るところです。引いては小美野さんの身辺にも影響が出はじめていて,心境にも変化があるかと思います。
 ここまでの約半年,あるいはそれ以前の企画当時から振り返って,小美野さん自身は「学マスで成し遂げたかったこと」はかなったか。もしくは当時の自分が報われたか。そうした実感はありますか。

小美野氏:
 今日お話ししたとおり,学マスはさまざまなな人に支えられた上に成り立っています。なので,自分自身が報われたとは思っていないです。
 ただ,3人。僕のことをずっと過大評価し続けてくれて,誰かに紹介するときも常に「こいつは本当にすごいやつなんです」って言い続けてくれた人たちがいるんです。今は,その人たちが嘘つきにならなくてよかったなとは思っています。これまで僕を過大に評価してくれていた人たちが,ようやく立って真正面から「ほら,俺らの言ってたとおりでしょ」って言える材料を返せた。恩返しとかじゃないんですけど,迷惑はかけたくなかったんで。あと正直,居たたまれなくてマジできつかったです,3人とも僕が尊敬するプロデューサーなので。
 だからそこは,報いることができたかなと思ってます。

4Gamer:
 人生において大切ですよね,そういうの。

小美野氏:
 はい。彼らに言わせてきたぶんの面目を,これでやっと守れそうです。それにようやく,彼らに追いつくための一歩も踏み出せました。

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