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忘れられない日々,繰り返すあの夏が“舞台で”蘇る――「舞台『夏空のモノローグ』」ゲネプロ公演レポート
2024年7月24日から29日まで,都内のシアターサンモールにて,「舞台『夏空のモノローグ』」が上演中だ。ちょうど舞台上演中の7月25日には,移植版となるNintendo Switch用ソフト「夏空のモノローグ 〜Another Memory〜」が発売されたことからも,その名作ぶりが伝わるだろう(関連記事)。
本稿では,初回公演に先駆けて行われたゲネプロ公演の観劇レポートをお届けする(ゲネプロ公演の写真は後日追加予定)。
「舞台『夏空のモノローグ』」公式サイト
「舞台『夏空のモノローグ』」
原作ファンの筆者がネタバレ無しで感想を綴る
あらすじ
舞台は海にほど近い田舎町,土岐島市。
主人公・小川葵はいつもと同じように過ごしていた。
平凡な風景の中にそびえ立つ,超高層建築物『ツリー』。
30年前に突如現れ,にわかに全国を騒がせたそれも,
今やただ寂れた観光資源に過ぎない。
そんな中,葵の所属していた科学部は廃部が決定。
面々は連れ立って廃部前日である,7月29日。
『ツリー』観測へと赴く。
その日,その時,その瞬間――。
『ツリー』は歌いだし,
――7月29日は,ループを始めた。
会場に入り,まず目に飛び込んできたのは舞台上にそびえ立つ“ツリー”だった。作中で30年前に突如現れた,謎の建築物。白く無機質なたたずまいで人々を見下ろしているさまは,片田舎にあるものとしては異様な存在感だ。
そんなツリーのもと,舞台は“記憶を保ったまま同じ1日を繰り返す”という原作のストーリーを実に丁寧に綴っていく。正直,舞台を観ている間「あれ,これって何周目だっけ?」「この場面はさっきも見たような……」と,登場人物たちと同じように何度も惑わされ,観客である自分まで世界に飲み込まれていた。
……と,ひょっとしたらゲームをやっていない人にとっては,あらすじだけ読むとかなりシリアスな内容に感じるかもしれない。だが,この物語は実に高校生らしい爽やかさと賑やかさに溢れ,非常にコミカルなシーンもたくさんある。そうした原作の空気を,本舞台では見事に表現してみせていた。
さらに細かいところでは,時代設定も原作発売当時のものだったことも胸熱だ。登場人物たちが使う連絡ツールはフィーチャーフォンだし,科学部に置いてあるテレビは,液晶ではなくブラウン管のもの。筆者も原作は大好きな作品だったので,「これこれ,この感じ!」とうれしくなってしまった。
また,ゲームではお馴染みだった,ループが始まるときに現れる「謎の数字」や,LRCシステム(Loop Research Conference『ループ研究会議』の略)が登場したことにもワクワクした。
原作のゲームはちょっと驚くくらいボリュームがあるストーリーで,イベントストーリー的なものもとてつもない数がある。制作陣からしたら,まだまだ見せたい場面はたくさんあっただろうし,約3時間とそこそこの長さがあったとはいえ,よくまとめたなと拍手を贈りたくなった。
メインキャラクターを務める役者陣についても触れておこう。
まずは科学部のメンバーから,主人公の同級生である木野瀬一輝(演:塚本凌生)。彼はいつも無愛想,周囲から怖い人だと思われることも多いのだが,実際はとても優しく,ヒロインを想い気遣う繊細さがよく伝わってきた(余談だが,ゲネプロでは日替わりの一発芸を披露させられており,苦労していたところも微笑ましかった)。
次に,カガハルこと加賀 陽(演:永島龍之介)。主人公の一つ年下でありながら,日常的かつ積極的に告白してくるムードメーカーだ。舞台の彼もとても明るくチャーミングで,くるくると表情が変わるさまが見ていて飽きない癒やしの存在だった。
科学部の部長で3年生の沢野井宗介(演:白石康介)は,この人の芝居で科学部の雰囲気が変わると言っても過言ではない重要なポジション。こちらの期待も大いにあったが,それ以上に体を張った(?)見事な演技と存在感で魅せてくれた。シリアスなシーンもお見事。
いつも読書している1年生の篠原涼太(演:古賀 瑠)の“静かな存在感”も良かった。みんなの輪のなかでも,どこか我関せずといったクールな役どころだからこそ,彼が時折見せてくれる笑顔は破壊力がある。カガハルとの1年生コンビが微笑ましかった。
浅浪 皓(演:三好大貴) |
翔(演:伊奈聖嵐) |
教師で科学部顧問の浅浪 皓(演:三好大貴)は,科学部メンバーのなかで唯一の大人だ。その落ち着きと穏やかな優しさ,主人公や大事な弟の翔(演:伊奈聖嵐)に向ける慈愛の眼差しが尊い。背負っているものがまあまあ重い兄弟なのだが,翔のはつらつとした笑顔にも,原作を知る身としては胸が締め付けられるような気持ちになった。
物語の重要な鍵を握る謎の人物となる綿森 楓(演:大海将一郎)は,ミステリアスな魅力を遺憾なく発揮していた。時に謎めき,時にキュートで,時に悲哀に溢れている。これは主人公でなくとも心惹かれてしまうのは致し方ない……!
そして,主人公である小川 葵(演:中川梨花)。原作は乙女ゲームという体をなしていながらも,その確固たる軸は,ずっと逃げていた問題と葵自身が向き合い,それを乗り越えて成長していくところにあると筆者は考えている。「夏空のモノローグ」はほかでもない彼女の物語であり,この舞台における役割もこのうえなく重い。だが,消極的だった彼女が懸命に前を向こうとする姿に,思わず涙が流れそうになった。
「舞台『夏空のモノローグ』」は,ゲームを知らない人でもしっかりと楽しめると太鼓判を押せるし,ゲームをよく知っている人は,またもう一度ストーリーをたどりたくなること間違いなしの作品だ。
「明日が来なければいいのに」という想いは,今の環境が辛い人でも,あるいは今が幸せな人であっても頭に浮かんだことがあるはずの感情だろう。だからこそ,舞台のラストに提示されるメッセージが心に響く。物語っていいな,人々が力を合わせて作り上げるエンターテイメントって素晴らしいなと感じる,素晴らしい一作だった。
なお,本公演のチケット(当日引換券)はカンフェティ(外部リンク)にて発売中だ。一般チケットは9000円(税込),特典付きチケットは1万1000円(税込)となっている。また,7月24日18:30公演と7月29日12:00/17:00公演は配信プラットフォーム「カンフェティ」(外部リンク)でも配信される。価格は各3500円(税込),3公演セット券は9000円(税込)だ。アーカイブ視聴期間などの詳細は公式サイトを確認してもらいたい。
さらに,7月24日と7月29日公演を撮影,編集したBlu-rayの発売も決定している。価格は1万2000円(税込)で,SrotaStage Official Shop(通信販売)にて予約受付中だ。発送は12月中を予定しているとのこと。
「舞台『夏空のモノローグ』」
■公演日程
7月24日(水) 〜7月29日(月)
7月24日(水)18:30(1)
7月25日(木)18:30(2)
7月26日(金)13:30(3)/18:30(4)
7月27日(土)13:00(5)/18:00(1)
7月28日(日)13:00(2)/18:00(3)
7月29日(月)12:00(4)/17:00(5)
※公演時間は休憩含め3時間を予定
※劇中で描かれるLRCシステム内で、主人公・小川葵と1対1の会話シーンが描かれるキャラクターが分かれます(5分ほどのシーンを予定)。
(1)浅浪皓
(2)篠原涼太
(3)沢野井宗介
(4)加賀陽
(5)木野瀬一輝
■劇場
シアターサンモール
http://theatersunmall.server-shared.com/map/map.html
〒160-0022 東京都新宿区新宿1-19-10サンモールクレストB1
東京メトロ丸の内線 新宿御苑前駅 大木戸門方面出口(出口2)より 徒歩3分
■キャスト
小川 葵:中川梨花
木野瀬一輝:塚本凌生
加賀 陽:永島龍之介
沢野井宗介:白石康介
篠原涼太:古賀 瑠
浅浪 皓:三好大貴
浅浪 翔:伊奈聖嵐
綿森 楓:大海将一郎
アンサンブルキャスト:飯山真衣、奥山静紀、吉田まいの、市角海斗
アンダースタディ・声の出演:稲田京也、若菜太喜
■チケット情報
一般チケット:9,000円(税込)
特典付きチケット:11,000円(税込)
特典:非売品キャストブロマイド7枚組(ヒロイン+攻略対象キャラクター6名)
◇一般販売チケット◇
[一般販売(先着)]
URL:http://www.confetti-web.com/natuzora
※制限枚数:1申込につき4枚まで
※7月22日(月)18:00より「当日引換券」に切り替えて販売(開演3時間前まで購入可能)
【チケットに関するお問い合わせ】
カンフェティチケットセンター(運営:ロングランプランニング株式会社)
TEL: 03-6228-1630(平日10時〜18時)
お問合せ:https://www.confetti-web.com//support/qa_reg_1.php
■原作
オトメイト(アイディアファクトリー/デザインファクトリー)
■スタッフ
脚本:桐山瑛裕(SUPERNOVA)、一ジョー
演出:桐山瑛裕(SUPERNOVA)
プロデューサー:通崎千穂(SrotaStage)
主催・制作:舞台『夏空のモノローグ』製作委員会(SrotaStage、Asagiri Entertainment)
■舞台公式HP
https://srotastage.jp/natuzora_stage/
■舞台公式X (旧Twitter)
https://twitter.com/ntzr_stage/(ハッシュタグ:#舞台夏空 )
PV:https://youtu.be/0McCUkfQtWc?si=3UCnQmhhCnydBwR0
【配信情報(※アーカイブ有)】
(1)2024年7月24日(水)18:30 公演(LRC:浅浪皓)
(2)2024年7月29日(月)12:00 公演(LRC:加賀陽)
(3)2024年7月29日(月)17:00 公演(LRC:木野瀬一輝)
配信プラットフォーム:カンフェティ
チケット取り扱い
https://confetti-web.com/@/natuzora-stage_streaming
(※WEB予約のみでの受付となります。)
発売日:7月19日(金)17:00〜
◯チケット価格(税込)
(1)(2)(3)単品:3,500円
(4)3作品セット券:9,000 円
◯配信特典:
沢野井宗介、篠原涼太のLRC回替わりシーン
(全チケットに付属、視聴可能期間:8月1日(木)18:00〜8月8日(木)23:59)
〇本編アーカイブ視聴期間:
(1)2024年7月24日(水) 18:30 〜 7月31日(水) 23:59
(2)2024年7月29日(月) 12:00 〜 8月5日(月) 23:59
(3)2024年7月29日(月) 17:00 〜 8月5日(月) 23:59
(4)各配信開始 〜 8月8日(木) 23:59 ※3作品セット
チケットについてのお問合せ先
カンフェティお問合せフォーム
https://www.confetti-web.com/support/qa_reg_1.php
購入・視聴方法
以下のURLをご覧ください。
https://www.confetti-web.com/guide/streaming/
(C)IDEA FACTORY/DESIGN FACTORY (C)SrotaStage