レビュー
[プレイレポ]「聖剣伝説 VISIONS of MANA」は,アクションRPGの王道的な楽しみが目いっぱい詰まったシリーズ最新作だ
「聖剣」と世界の命運を握る「マナの樹」を巡る壮大な冒険はもちろん,魅力的なキャラクター達や敵ながら愛嬌があるモンスター,そして印象に残るサウンドなどで,これまで数多くのファンを集めてきたのは説明するまでもないだろう。筆者自身もまた,とくに初期シリーズでがっちり魅了されたゲーマーの1人だ。
「聖剣伝説 VISIONS of MANA」公式サイト
本作のテーマは「原点回帰」であり,グラフィックスや全体的なシステムこそ時代に即したものに進化しているが,リングコマンドを使い自ら剣や魔法を繰り出して敵を倒すバトルや,仲間から操作キャラを自由に切り替えられる仕組みなど,(初代を除く)シリーズ伝統の仕組みを踏襲する王道的なアクションRPGになっている。
体験版も配信済みなので,それをプレイしてリリースを楽しみにしている人も少なくないだろう。
4Gamerではすでに,ゲームの前半一部分のみをプレイした状態のインプレッションをお届けしているが,今回はあらためて,より詳細なプレイレポートをお届けしたい。
[プレイレポ]「聖剣伝説 VISIONS of MANA」は,聖剣らしいビジュアルとストーリー展開,爽快なアクション,そしてフィールドの探索が楽しい
スクウェア・エニックスは8月29日,アクションRPG「聖剣伝説 VISIONS of MANA」(PlayStation 5 / Xbox Series X|S / PlayStation 4 / PC)を発売する。今回,製品版の前半部分を自由に触ることができたので,さっそくインプレッションをお届けしたい。
「御子」と「マナの樹」の特殊な関係性
「御子」が失われると……?
本作の舞台は,人間,獣人,精霊,そして女神と多種多様な種族が共存し,互いに恩恵を与え合っている世界だ。人々は地域の自然そのもの,あるいはその力を生み出すマナや精霊の力を借り,日々の生活を送っている。
きれいな水が溢れ,草木が育ち,地上が豊かなのも,マナの力が滞りなく循環しているからこそ。人々はそうやって,日常生活を送り,街や集落のような存在を維持してきた。
だが,この世界にはある大きな掟があった。そんなマナの循環を維持するために,「御子」の存在が必要不可欠だったのだ。御子は4年に1度,各地域から選ばれ,彼らを保護する守護者「魂の守り人」と共にマナの樹に向かって旅をし,魂を捧げる。御子も守り人も大変名誉な存在とされている一方,旅が予定どおりに進まず御子の魂が捧げられないと,その地域には強力な災いが降り注ぎ,容赦なく滅んでしまう。
そのようななか,火の村ティアナで育った少年ヴァルと幼なじみのヒナは,それぞれ魂の守り人とフェアリーに選ばれた火の御子として,マナの樹へ旅立つ。だがそのほかの御子は例年どおりに選ばれず,各地の大精霊の力もなぜか弱まりつつあるなど,“いつもと違う”では済まない旅がヴァル達を待ち受けることになるとは,このときは知るよしもなかったのだ。
……といった導入で始まる本作は,自由に歩き回れる3Dフィールドを採用したアクションRPGだ。仕組みそのものは物語を進めながら各エリアを順次クリアし,場合によっては区切りのいいところでボス戦が挟まるタイプ。
だが,「セミオープンフィールド」と名付けられているとおり,各エリアは(エリアごとに)差はあるものの十分に広く,探索も思う存分できる。それこそ,徒歩だけでの移動はちょっと躊躇してしまうほどの広大さだ。
そのため,個別のエリアの広さこそ純粋なオープンワールドの作品には敵わないが,その一方でエリアごとに草原,砂漠,断崖地帯など大きく特色が分けられたフィールドとなっているので,新たなエリアに進むときは次に何が待っているのか,シンプルにワクワクできる。
探索という観点でもその密度は相応に高く,宝箱や移動用のギミック,エレメントポイントを入手できる精霊石など,かなりの数が用意されており,基本的に回れば回っただけ報酬が得られるようになっている。
こういった場所は,マップやミニマップには最初から青丸が付いており,「デタラメに探し回る必要はないが,実際に行ってみないと何があるかは分からない」というレベルでヒントが明示されているのもうれしい。ノーヒントの旅もそれはそれで味があるが,やはり常に周囲を気にして歩き回るのは大変だ。
インプレッションでも触れたが,本作の移動そのものの自由度は高めで,進行に応じて移動不可になる場所や場面もあるのだが,(シナリオ的に制約がなければ)進んできたステージに戻ることは普通にできる。序盤で手に入る騎乗動物のピックルでフィールドの目的の場所に急いで向かってもいいし,竜脈と呼ばれるセーブポイントからは,ステージをまたいだファストトラベルも簡単に利用できる。とくにサイドクエストを引き受けたときは,以前クリアした場所に行くことがかなり多いので,多用することになるはず。
また,犬っぽいピックルは騎乗しながらアイテムを拾ったり,戦闘を避けたり,ファストトラベルできたりするので,探索を軸に動きたいときの使い勝手が非常に良い。プレイヤーフレンドリーで見た目もカワイイので,ぜひ活用したい。
グラフィックスに関してはキャラクターを含め,全体的に大小のさまざまなデフォルメが効いた,イラストチックで温かみを感じるような作りという印象だ。
とくにフィールドの情景などは美しく,プレイ状況によってはまるで絵画を切り抜いたような構図になり,プレイしていて強く印象に残る。昨今はハードや技術の進化により,現実と見間違えそうなリアル寄りのビジュアルを誇る作品も珍しくないが,“聖剣伝説らしさ”という点ではこちらの描き方に軍配が上がるのは間違いないだろう。とくに自然豊かなフィールドは一見の価値がある,と言っておきたい。
世界観に即した形で「精霊器」が大きな役割を果たすバトル
好みの装備と仲間を選び,旅を進めていこう
本作は剣や槍などの武器を使用した近接バトルがメインだが,実はうまく使えば戦闘を格段に楽に進められる道具がある。それが,インプレッションでも触れた,精霊の力を宿した「精霊器」だ。
精霊器は物語を進めてくと順次,風や水といった属性ごとに入手でき,キャラクターをクラスチェンジするためのアイテムとして機能する。
本作の武器種はクラスに付随して変化し,例えばデフォルトが片手剣を使うモリビトのヴァルで,大剣を使いたいなら風属性のルーンナイトか水属性のデュエリストにチェンジ。一方,獣人のモートレアでナイフの二刀流を使うなら,月属性のナイトブレードや土属性のニンジャマスターを選ぶ……といった形で,キャラのスタイルに大きな影響を与える。
呪文やスキルの解放もクラスごとに行い,例えばデュエリストのヴァルなら敵を攻撃するだけで一定確率で凍結させたりできるし,道中で仲間になる草人のジュリは風属性のハーメルンになると,パーティ全体に体力の自動回復を付与できたりと,極めて強力なパッシブを持つものもいる。
なお,ヴァルの場合は武器種の変化が剣かランスとおとなしめだが,水の御子のパルミナは「フレイル」「鎌」「靴(キック)」と,全然違うラインナップになっているのも面白い。
誰をスタメンにし,どの精霊器を装着させるか。物語が進むにつれて悩む場面が増えるだろう。
なお精霊器は,戦闘になればそれ自体,スキルを発動できる武器として利用可能。例えば風のジンブーメランで敵を長時間空中に拘束したうえ,追加攻撃すれば風の刃を広範囲に拡散できるし,火の精霊器サラマンダーキャンドルは炎をまとって突進して敵を炎上させるといった,アグレッシブな攻撃ができて爽快だ。
見栄えが派手で使っていて楽しいというのもまた,魅力の1つと言えるだろう。
これらの能力はMPなどを消費することなく,一定の時間が経てばいくらでも使えるし,デフォルト設定なら仲間もガンガン使ってくれる。本作のAIが操作する仲間は,とくにザコの殲滅力がかなり高いのだが,この精霊器を活用してくれるのが要因の1つだと感じた。その一方,ボスのように敵の攻撃力と耐久力が高いと,意外とあっさり瀕死になったりするので,強敵が相手のときは指示を出して補助や回復を優先させる手もあるだろう。
戦闘そのものに関しても,バトルごとにかかった時間やダメージの有無によってボーナスが得られるので,常に目標を持って戦える。また,強力なネームドモンスターやクリア時間が制限された「精霊の試練」といったバトルも用意されており,いろいろな挑戦ができる機会も多い。
レベル自体は比較的上がりやすいと感じる本作だが,それ以外の強化ポイントが多数あることを頭に入れておくと,厳しい戦いも楽になるはずだ。
世界中を巡りマナの樹に向かう道中に何が待つのか
ぜひ自分の目で確かめよう
精霊器が戦闘で役立つのは前述のとおりだが,実は探索にも欠かせないものとして存在している。フィールドには至る所に怪しいものが設置されているのだが,多くがその属性に合った精霊器で起動できるようになっているからだ。
これは,崖を登るような物語の進行に必須のギミックだったりもするのだが,全体としては隠されたアイテムやエレメントポイントの入手に使用することのほうが多いのではないかと思う。
ギミックとしては大ジャンプする風の精霊以外にも,水球を使って上に登る水の精霊,ロケット(のようなもの)になって空中を高速移動する火の精霊など,バラエティ豊かで探索の良いアクセントになっている印象だ。
こういったポイントは最初からフィールドに用意されているので,初見の段階では使えないことが多いのだが,精霊器の入手後に戻ってみるとしっかり機能する。要するに,精霊器が増えるたびに探索ポイントが増えるので,以前通過したエリアに戻るメリットがあるのだ。
精霊器をゲットしてすぐ戻るも良し,サイドクエストなどで寄ったついでに探索しても良し。もちろん使うかどうかはプレイヤーの自由に任されている。ただ,新たなクラスをアンロックするだけでなく,探索の幅も広がるということで,精霊器を入手するときはいつもワクワクできるのは確かだ。
全体として本作は,非常に手堅い作りであり,精霊器の活用法など覚えるべきことが若干多かったりするが,ヘルプも充実しているしシンプルにアクションRPGとして楽しい。
最初は武器の選択肢もほぼないが,中盤以降はグッと利用可能なバリエーションが増え,お気に入りのキャラも自由に操作できる。フィールドの怪しい場所がマップですぐ分かったり,普通に戦っていればお金に困らなかったり,ファストトラベルの利用制限が少なかったりと,プレイ時のストレスが溜まりにくいのも好印象だ。
最後になるが,本作における御子は何とも奇妙な存在だ。多くの人が選ばれることを願い,どこに行っても尊敬される立場だが,“魂を捧げる”というのは単なる比喩ではないようで,ごく一部だが明確に嫌がっている人々もいる。
御子が出ないと地域が滅ぶことも含め,うがった見方をすると人身御供のようだが,人間にしても精霊にしてもそういったとらえ方をしているわけでもなく,何とも不思議な空気に包まれている世界だ。そしてそれこそがまた,“「聖剣伝説」シリーズで描かれる世界なのだ”と納得できるような雰囲気に満ちている。
序盤には登場しない聖剣も含めて,こういった謎が旅の果てに解き明かされるのか,ここも注目したいポイントだろう。少しでも本作に興味があるならば,ヴァル達と共にマナの樹への旅を始めてみてほしい。
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