企画記事
君が一番ライクな8番ライクはどれ? ホラー度強めに可愛らしさ満点,おじさん全振りなど,異変だらけの10タイトルを一挙紹介
どういった作品なのかをひと言で表すなら,デジタル版の間違い探し。ただし,2枚の静止画をじっくり見比べるといったものではなく,その世界の“正常な状態”を記憶したうえで,その後に出現する世界の異変(異常,アノマリー)の有無を判断する。
具体的には,地下鉄の駅から出口に向かって歩き,何らかの異変があれば引き返し,なければそのまま進む。そうやって正解を続ければ外に出られるというゲームだ。
シンプルなルールで,プレイヤーだけでなく,配信などでプレイを見ている人にとっても何が起こっているかが非常に分かりやすいため,短時間で遊べることも相まって大ヒット作となった。それを受けて,同作にインスパイアされた「8番ライク」と呼ばれるタイトルが続々とリリースされている。
本家の雰囲気を保ったもの,ホラー要素を強めたもの,癒やされるもの,特殊な派生を遂げたものなどさまざまな作品の中から,本稿では怖がりの筆者が,ときおりジャンプスケア要素に震え上がりながらプレイした10タイトルを紹介しよう。
目次
※クリックするとそのタイトルの紹介にジャンプします
東京行き新幹線での奇妙な体験。3回間違えるとお化けが!?
Shinkansen 0 | 新幹線 0号
ジャンプスケア度:★★数か月に1本のペースで和風ホラーの新作をリリースし続けていることで知られるインディースタジオ,Chilla's Artが手がけた8番ライクが「Shinkansen 0 | 新幹線 0号」だ。
走行中の新幹線の7号車から異変を察知しつつ歩き,0号車の先にある運転室まで辿り着いて,ブレーキをかけて下車するのが目的となっている。
<普通車でのルール>
・異変があったら後ろの車両に戻る(正常の基準は最初の車両)
・異変がなければ前の車両に進む
・ミスした場合は最初からやり直し
※グリーン車では異変対処時の移動方向が逆になる
Chilla's Artは,「VHSエフェクト」を用いたレトロ感あふれるビジュアルのゲームを得意としているのだが,本作ではその手法が用いられておらず,非常に美麗なグラフィックスで新幹線の内部が描かれている。このあたりは本家へのリスペクトということだろう。
ゲーム中に起こる異変は,不気味なものや咄嗟の移動を求めれられるものもあったが,すんなり楽しめるレベルのものが多かった。
しかし,Chilla's Artのタイトルがそれだけで終わるはずもない。最初の「普通車」編をクリアすると開放される「グリーン車」編では,異変があれば前進,なければ後退とルールが逆になり,プレイヤーの混乱を誘う。加えて,対処を3回間違えると“お化け”が出現。薄暗い車両内の一部には奇怪な乗客が現れ,ホラー度がグッと増す。
ミスしたときに初めからやり直しではなく1ステージ分だけ戻る「イージーモード」も用意されていて,筆者は非常に助けられた。難しく感じたときはプライドを捨てて活用していこう。
地下鉄の駅に佇む気味の悪いオブジェは敵か? 味方か? 学生による意欲作
2番線 | Nibansen
ジャンプスケア度:★★大学生によって開発されたという「2番線」は,ちょっぴり遊び心のある世界観が特徴の8番ライク。もしかしたら日本のどこかに存在するかもしれない都市“十京”を走る地下鉄,ビッグエド線の飯田島駅ホームでルールに従いつつ異変を探し,C7出口から脱出を目指す。
<ルール>
・異変があったらすぐに逃げる(正常の基準はルールのパネルがあるステージ)
・異変がなければ先に進む
・ミスした場合は最初からやり直し
いくつかある襲撃系の異変に対応するためなのか,それとも探索の距離が長めなのに配慮してなのか,本作での移動スピードは歩きより走りに近い。おじさんはもちろん,ホームにあるオブジェクトの数も多いので,変化を見落とさないよう,ときどき立ち止まっては見渡す進み方がいいかもしれない。
クリア後に開放される「Endless IHEN」を設定画面でオンにすると異変なしのパターンがなくなる。また,「Teleporter」をオンにすると,開始地点にすぐ戻れるポータルが出現するなど,プレイしやすさにも配慮されている印象だ。
だが,本作の一番の謎は,ホームの奥に鎮座している気味の悪い存在ではないだろうか。その奇妙な姿は,「8番出口」が影響を受けたというネットミーム「The Backrooms」に登場する超常的な怪物,エンティティのように見えなくもない。なぜここに存在しているのか,その理由が気になって仕方がない。
本家同様に,見慣れた駅の風景がモデルになっていることもあり,現実世界で地下鉄のホームを利用するときは,異変がないか周囲を見渡してしまいそうである。
舞台は深夜の商店街。ノスタルジックでホラー度低め
10番商店街
ジャンプスケア度:★「賑わう商店街」を見られる場所が随分と限られてしまったように感じるこの頃。ノスタルジーあふれる夜の商店街を,ゆったりと(ときには走りながら)異変を確認しつつ進み,10番街までたどりついて脱出を図るのが「10番商店街」である。
<ルール>
・異変があったら直ちに左に進む(正常の基準は0番街)
・異変がなければ右に進む
・ミスした場合は最初からやり直し
本家とは異なり,10番商店街での異変への対処方法は右折か左折になっている。異変がなかったときに始点まで戻るシステムは確かに面倒なところもあったので,嬉しいアレンジだと言えるだろう。
すべての店が閉まっている深夜ということもあって,グラフィックス自体は非常にシンプル。その分チェックする場所も少なく簡単にクリアできるだろうと思ったのだが,意外と気づけない異変が多く,ウロウロしてしまった。
1度クリアすると,少し様子が変わった商店街で再チャレンジできるほか,新しい異変も発生するようになるようだ。
時計の秒針の音や,自分の足音だけが響く夜の商店街に現れるのは,“恐ろしい異変”というよりは“間違い”に近い。なので,ホラーが苦手な人でもきっと遊びやすいはず。
7月には,今後のアップデートで異変を追加する予定であることが告知された(外部リンク)。いつかは活気に満ちた様子の商店街も見てみたいものである。
異変が怖すぎてむしろ気づきたくない
Mayonaka 10 chome - 迷央十丁目
ジャンプスケア度:★★★ここまで紹介したタイトルの異変は,恐かったり恐くなかったりといった感じだったが,今回のタイトル中で1,2位を争うくらいのホラーっぷりになっていると思われるのが,この「Mayonaka 10 chome - 迷央十丁目」。プレイヤーは,異常現象や恐ろしい怪異が目撃されているという迷央(まよなか)町をルールに従いながら通り過ぎて,無事に10丁目にある自宅に帰らなければならない。
<ルール>
・異変に遭遇したら決して近付かず左折する(正常の基準は迷央0丁目)
・異変に遭遇しなければ右折する
・ミスをした場合はやり直し
異変への対応は「10番商店街」と同じで,すべてを確認した後に右または左に移動するタイプ。
光量不足の懐中電灯であたりを申し訳程度に照らしながら,今の時代にそぐわない古井戸のある家や,誰もいない公園,黒いゴミ袋を積んだトラックの横などを通り過ぎていく。異変は分かりやすいものが多いが,できれば気づきたくない類のものばかりだ。
全体の難度自体はそれほど高くないと思われるが,裏で賑やかな動画を流しながらのプレイでも終始鳥肌が立ちまくっていたのだった。
とにかく暗く,雰囲気が本当に恐いので,投光器を装備するオプションをつけてほしいものである(切実)。
異変が見当たらないときこそ,疑心暗鬼がSAN値を削る
The Stairway 7 - Anomaly Hunt Loop Horror Game
ジャンプスケア度:★★★国産が目立つ中,洋ゲーでも8番ライクな作品「The Stairway 7」を見つけることができた。主人公は,廃墟のようなマンションに閉じ込められてしまったプレイヤーと猫のジンジャー。ループを断ち切るために異変を探しつつ,70階まで移動するのが目的になるが,グロさやシビアさが強く,「迷央十丁目」を超えるかもしれないホラー度となっている。
<ルール>
・異変があれば下に向かう(正常の基準は最初の階)
・異変がなければ上に向かう
・ミスした場合はHPにダメージを受ける。HPがゼロになると途中から再開
※理由もなく頻繁に下のフロアに降りると,体が弱り,異変に襲われる可能性がある
上下に移動すること,プレイヤーにHPがあること,異変発生場所が階段の踊り場であることは,8番出口との大きな違いだろう。
踊り場で異変を見つけたら下へ降り,異変がクリアされたことを知らせる効果音が鳴ったら上まで移動してOK。異変に気づかず進んでしまうとHPを失ううえ,心臓がキュッとなるようなジャンプスケアに見舞われる羽目になる。HPがゼロになると途中のフロアからの再スタートとなった。
怖がりの筆者が絶望したのは,これを70階まで続けなければならないことが明らかになったときだ。異変そのものはまだしも,異変がないという判断が間違っていたときの演出が,個人的にはかなり心を削られた。結局,その恐怖に耐え切れず20階を少し過ぎたあたりで逃亡したのだった。
悪夢から目覚めるため,自分を撃つ。その先に待つのは?
悪夢の家 -Nightmare House
ジャンプスケア度:★★「悪夢の家 -Nightmare House-」の舞台となるのは,リアルなビジュアルで表現された悪夢の中。洋風の一軒家を探索して異変が見当たらなければベッドで眠り,日めくりカレンダーが「6日」のときに異変がなければ玄関から外へ脱出するというゲームとなっている。
<ルール>
・異変があった場合は1Fリビングのテーブルの上にあるハンドガンで自分を撃つ(正常の基準はカレンダーの31日)
・異変がない場合は2Fのベッドで眠る
・ミスした場合は最初からやり直し
ホラーではあるものの,「迷央十丁目前」や「The Stairway 7」よりも恐ろしさは抑えめ。微笑みながらずっとこちらを見つめて視線を外さないリビングの男性,よく見えない外の様子,扉の開かない謎の部屋,壁の絵など,程よく不気味さを感じさせる要素はあるが,落ち着いて異変を探すことができるだろう。
異変を見落とし,ベッドで寝てしまった場合は最初に戻るだけだが,外に出てしまうと,ビックリ系のペナルティが待ち構えている。また,筆者の場合,異変のない6日目なのに,それまでの癖でうっかりベッドでスヤスヤと眠ってしまい,最初からやり直しになることも結構あった。
6日目に異変があれば外に出ることはせず,異変が現れなくなるまで繰り返すことになるのだが,スムーズに進めば今回紹介しているタイトルの中ではループ数が少なく,気持ち的にリトライはしやすい。洋画や海外ドラマの中に居るような雰囲気も味わうことができるだろう。
可愛い女の子が夜の神社へ向かう道すがら出遭う異変
夜間参拝 | Visiting Shrine at Night
ジャンプスケア度:★★8番出口が「リアルな3Dグラフィックスの地下通路」+「おじさん」という内容のゲームだったのに対して,「グリッチエフェクトの効いた2Dドットグラフィックスで描かれる屋外」+「可愛い女の子」という,逆を行くような要素で構成されているのが「夜間参拝」である。
ひぐらしの鳴き声が辺りに響く中,女の子となったプレイヤーは,目的地である夜の神社(右端)へと参拝に向かわなければならない。画面左上に表示されている9本のロウソクに火を灯すため,守らなければならないルールは次の通りになっている。
<ルール>
・異変があったら左へ戻る(正常の基準は最初のステージ)
・異変がなければ右へ進む
・ミスをした場合はやり直し
女の子の可愛いらしい見た目に合わせて,異変も可愛らしい……ことはなく,本作は間違いなくホラーカテゴリに属する作品。些細なものや気味の悪いものに加えて,突然襲いかかってくる異変が多めな印象も受けた。油断していると,どこかで情けない声を漏らしてしまうはずだ。
一度クリアすると,異変の発見状況を表す24本のロウソクが画面右上に表示されるようになる。なかなか見つけにくい異変もあるため,これを手がかりに全ての異変発見に役立てたいところだ。
泳ぎの下手すぎる可愛い古代魚が,異変を探して悪戦苦闘
ハチバンバピス
ジャンプスケア度:★2023年に,フィンランドのヘルシンキ自然史博物館にあるという古代魚の復元模型が話題になったことを覚えているだろうか。オルドビス紀に生息していたというその魚の名前は「サカバンバスピス」。正面についた目や,顎がなくて笑っているように見える口など,愛嬌のある特徴的な顔に注目が集まり,SNSで大バズりした。
「ハチバンバスピス」は,そんなサカバンバスピスにそっくりな「イチバンバスピス」を,2Dグラフィックスで描かれる海の中で泳がせて,「ハチバンバスピス」にまで進化させるゲームだ。
<ルール>
・異変があれば左に戻る(正常の基準はイチバンバスピスのステージ)
・異変がなければ右に進む
・ミスをした場合は一段階退化
ここまで紹介してきたように,8番ライクにはホラー要素が半ばつきもののようになっているが,本作は「ホラー」や「精神的恐怖」といったものとは全く無縁。楽しげなBGMが常に流れていて,逆に癒やしすらある。
異変はひと目で分かるものや,向こうからアピールしてくるようなものばかりだ。ただ,楽にクリアできるわけでもない。サカバンバスピスと同じように,本作のバスピスにも泳ぎが下手という設定があり,進化してもそれは変わらない。最初の難度では前にしか進めず,難度が上がっても,今度は終始回転したり,後ろにしか進まなかったりして,とにかく思うように操作できないため,もどかしいことこの上ない。
意図と反する動きになってしまうなどして,もしミスしてしまっても一段階前の姿に戻るだけなので,それほどストレスは感じない。とにかく安心してプレイできる全年齢向けのタイトルになっている。たまにはこんな可愛い8番ライクな作品も大歓迎だ。
作品ステータスを“おじさんに全振り”した異色作
ミスター9
ジャンプスケア度:平和編★ / 秘密編★★ホラーに全振りの8番ライクをいくつか紹介したが,この「ミスター9」は,作品のステータスをまさかの「おじさん」に全振りしてしまったタイトルである。
場所がどこかは分からないが,主人公が生活する庭付きの家には9人のおじさんたちも同居している。しかし,ときどきおじさんたちの様子がおかしくなるのだという。そうした中で9回続けて異変の対処に成功し,世界の平和(?)を守ることが目的となっている。
<ルール>
・おじさんに異変が発生したら,そのおじさんを撃つ(正常の基準は玄関右のボードで確認)
・おじさんに異変が発生していなければ,自分を撃つ
・ミスした場合は最初からやり直し
異変があってもなくても,銃を撃つだけで次のループに進めるため,周回はスムーズだ。
プレイヤーが探索できる範囲は,家の中に加えて庭もあり,かなり広いが,全体をくまなくチェックする必要はない。異変自体はおじさんとその周辺しか発生しなかったので,そこを注意深く観察すれば難なく気づけるだろう。
最初からプレイできる「世界の平和編」はステージ自体も明るく笑える異変が多いのだが,クリア後に開放される「世界の秘密編」は暗闇のステージとなり,異変もホラーテイストになる。異変の数は70を超えるようで,探し甲斐がありそうだ。
全体の雰囲気はそれほど恐くないものの,大きな虫や鳥が出てくるようになるため,苦手な人は注意してほしい。
答え合わせ機能が用意された親切設計
フォルスモール
ジャンプスケア度:★★「フォルスモール」では,商店街ではなくショッピングモールが異変発生の舞台になる。日本の地方にある施設,はぴあモール瀬良の3Fで1時から発生する異変を探し出して対処し,9時に非常口から屋外に避難するのが目的となっている。
<ルール>
・異変があったら,その異変を撮影して,開いた非常口から出る(正常の基準は12時)
・異変がなければ,自分で非常口を開けて出る
・ミスした場合はやり直し
本作では,1ステージに出現する異変が1つとは限らない。また,異変があったら撮影するシステムとなっており,移動の手間が小さくなっている。なお,異変の有無に関わらず出口は共通だ。
プレイして感じたのは,その親切なつくりである。本家の8番出口や8番ライクをプレイした人なら,「異変の数だけでなく内容も確認ができたらいいのに」と思ったことが1度はあるだろう。実はフォルスモールにはヒント機能があり,それを頼りに答え合わせをすることが可能となっているのである。
答えを確かめたかったら,×印の場所まで戻って見直してもいいし,逆に細かく知りたくなければスルーして先に進んでもいい。異変の総数が74と多いので,撮影済みかどうかのチェックができるのも嬉しい。モヤモヤを感じることなく遊べるはずだ。
余談になるが,プレイ中,商店街のみならず,今やショッピングモールの風景にすら,ある種の懐かしさを覚えていることに時の移ろいを感じ,柄にもなくなんだかセンチメンタルな気分に浸ってしまったのであった。
8番ライクとホラーは相性がいいが……
10のタイトルをプレイしてみて,8番ライクな作品にホラーに大きく傾いたものが多いことの理由が分かった気がする。8番出口へのリスペクトなのは当然として,前のめりになって間違いを探している眼の前に大きなSEと共に不気味な怪異が突然現れると,画面を凝視している分,ビックリ度が増して余計に恐く感じられたのだ。
非常に相性がいい組み合わせで,かつワンコイン程度で購入できるものが多いので,これからもこうした8番ライクな作品は増えていくだろう。とは言え,ホラーが苦手な一プレイヤーとしては,恐くない,もしくは抑えめな作品ももっと増えるといいなあと世界の片隅で願ってしまうのであった。
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