プレイレポート
[プレイレポ]やっぱりシレンは面白い! 14年ぶりの完全新作「不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録」の先行試遊とQ&Aセッションのレポートをお届け
1995年に,「トルネコの大冒険」に続く不思議のダンジョンシリーズの第2弾として1作目が誕生してからおよそ28年。当時からの不思議のダンジョンファンはもちろん,ここ2,3年でさまざまなプラットフォームにて展開した「不思議のダンジョン 風来のシレン5plus フォーチュンタワーと運命のダイス」(PC / Nintendo Switch / iOS / Android)※でファンになったという人も少なくないだろう。
※「風来のシレン5plus」のオリジナルは,2015年6月にリリースされたPS Vita向けタイトル。同作品にさらに新要素を加えたものが2020年12月にPCとSwitchに向けに,その移植版が2022年3月にiOS / Andoroid向けにリリースされた
そんな風来のシレンシリーズだが,完全新作として制作されるのはなんと14年ぶり。それもあって,注目しているゲームファンもメディア向けの先行ハンズオンでプレイしてきたので,そのレポートを開発者インタビュー(Q&A)とともにお届けしよう。以下,ネタバレはもちろん避けているが,我慢できないので一つだけ……とても面白かったぞ!
「不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録」公式サイト
痒い所に手が届く,ちょっとしたサポート要素で遊びやすさがアップ。新たなシレンの冒険を楽しもう
まずは,超簡単に物語のあらすじを説明しておこう。ゲームの舞台は,とぐろ島という海賊の宝が隠された島だ。主人公の風来人・シレンとその相棒である語りイタチのコッパは,一儲けをたくらみ,この島にあるお宝目当てにやってきて……というわけではもちろんない。あるとき夢の中で,とぐろ島の怪物と,助けを呼ぶ女の子の姿を見たため,人助けにやってきたわけである。
簡単な操作チュートリアルを終えると,探索の拠点となる宿場浜(しゅくばはま)から冒険が始まる。ゲームサイクルは,不思議のダンジョンシリーズではおなじみのもので,ローグライクと呼ばれるゲームの定番な遊び方だ。いわゆるパーマデスで,シレンが冒険の途中で倒れてしまうと,道具(アイテム)やお金といった持ち物をすべて失い,レベルも1になって,拠点である宿場浜からやり直しになる。
「じゃあ,倒されたら全部ゼロからのスタートなの?」というと,そういうわけではない。この宿場浜には倉庫があり,冒険の途中に拾える道具「倉庫の壺」などを使えば,冒険中に手に入れた道具を倉庫に送れるのだ。倉庫にある道具は倒れても失われることはないので,道具集めのために何度もダンジョンに挑み,道具が整って万全の状態になってからダンジョン踏破を目指すということも可能だ。
この,“何度もやられて繰り返し挑む”ことが,不思議のダンジョンシリーズやローグライクと呼ばれるゲームの基本的な進め方であり,そして楽しいところだろう。風来のシレン6では,“シレンが倒される=時間が経過する”という仕組みもあり,その時間経過によって道中や拠点で発生するイベントもある。
このシステム,何度もやられることが前提のゲームサイクルを生かしていることはもちろんだが,ちょっとしたミスや情けないやられ方でスタート地点に戻されても,「まあ,イベント見るためだし,まあまあまあ……」なんて自分に言い聞かせて,心の安寧を保てるところもとてもいい。
さて,ここからゲームのメインであるダンジョン探索についてさらに“潜って”みよう。
ダンジョン内は四角形(スクエア)のマス目で,こちら(シレン)と敵が交互にターン制で行動する。ダンジョンは入るたびに地形や敵の配置,落ちている道具が変化するといった,不思議のダンジョンシリーズの共通要素と言える部分はもちろん変わらない。プレイヤーは毎回違った環境に適応して,攻略を進めていく必要があるというわけだ。このあたりの基本の進め方はゲーム内でしっかり説明してくれるので,シリーズ初心者でも遊びやすいだろう。
物語で目指すのは,とぐろ島の最奥部にある蛇頭山(じゃとうさん)の山頂だ。といっても,山をただ上へ上へと登っていくだけではない。そもそも山のふもとまで行くのがなかなかの旅路で,そこにたどり着くまで,峠を上り下りしたりトンネルを抜けたりと,いろいろな区画を通っていく必要がある。
その区画によってダンジョンの地形が異なり,またグラフィックスも変化するので,探索自体はもちろん視覚的にも飽きがこない。このダンジョンを抜けたら,次はどのような風景が広がるのだろう。どのような敵や仕掛けが待っているのだろうと,ワクワクしながら冒険を進められるだろう。
ダンジョンの序盤はけっこう穏やかで,大した難敵もおらずスルスルとクリアできる。ダンジョンを進んでいくと,ところどころに休憩ポイントがあり,最初のポイントである山あいの里では,鍛冶屋を利用し装備を強化できる。
油断さえしなければ,わりとここまでは余裕だな……と思っていたら,山あいの里を抜けたところから事情が変わった。ここから急に厄介な敵が増えてくるのだ。
まず,10Fまでの敵で厄介だったのが三割バッターだ。野球のバットを持ったバッタなのだが,「だ,ダジャレ……?」と侮るなかれ。まず与えてくるダメージが,同階層の敵のなかでかなり高い。それだけならまだしも,なんとこの敵,飛んでくるものをすべてバットで打ち返し,3割の確率でこちらに跳ね返してくるのだ。しかも,矢や石といった物理的な攻撃だけではなく,杖から出す魔法弾すらも。つまり,囲まれてしまったときに「こっちを杖の効果で止めておいて……」みたいなことができないので,戦う場所や持ち物などによっては“詰み”な状況になるのも珍しくない。
10F以降に登場する遠距離攻撃持ちもこれまた本当に厄介だ。矢を撃ってきたり,アイアンヘッドが頭を投げ飛ばしてきたりと,飛び道具を使ってくる敵にちょくちょく遭遇するようになる。
こちらも飛び道具で反撃するか,斜め移動しながら距離を詰めることで対応はできるが,HPがピンチのときに出てこられると相当マズいことになる。そして筆者は実際マズいことになって,1周目のプレイでは遠距離攻撃持ちのアイアンヘッドに倒された。無念。
13F以降出てくるデッ怪は,その名のとおりメチャクチャ大きく,異世界とつながった“デッ怪ホール”から登場する厄介な敵だ。身体が大きいからか動きが遅く,後ろと中心への攻撃には弱いという弱点はあるが,とはいえただひたすらに強く,時間が経つと消えてまた出現を繰り返すため,戦ってもあまり意味がない。しかも,倒せたとしても,もらえる経験値が多いとか特別な道具が手に入るとかもないのである。
戦うべき相手ではなく,探索の邪魔をする役割といった感じで,今いる場所を予測し,「何か近づいてくるぞ……」と思ったらその場から離れるといったように,戦闘を避けながら次のフロアへ進む階段を探そう。
ここまで厄介な敵の話をしてきたが,ダンジョンで出会うのは敵だけではない。倉庫のところでも少し触れたが,ダンジョンには敵対しない“徘徊人”がいて,シレンにいろいろな提案をしてくれるのだ。
今回のプレイで確認できたのは,先ほど紹介した飛脚に,いらないものを交換してくれる風来人のコーカ,壺を売ってくれるナゾーさんなど。どれもシレンにとって有益なので,冒険を大いに助けてくれることだろう。
そして,不思議のダンジョンシリーズファンの方々にとって嬉しい便利機能もいろいろあった。まず,振り向き機能を使用したときに,シレンの向きがマップに赤いラインで表示される機能だ。これによって,ちょっと分かりづらい斜めのライン上にいる敵にも,遠距離攻撃を当てやすくなったというわけだ。
そして,マップ上に自身が移動したルートが表示される機能も追加された。歩いた場所が少し薄くなる程度なので,序盤の冒険で目を凝らして同じルートを辿るということはないだろうが,高難度のダンジョンなどで,神経を尖らせてプレイするときにはこれ以上ない機能だ。
ストーリーについては深くは触れないが,見てほしいのがダンジョンの間にある景色の数々だ。かなりしっかりと描かれていて,1つの島を“冒険している感”を強く味わえた。ほかにも,冒険中に手に入れた持ち物の手帳は見ていて楽しかったので,ダンジョンに潜って知恵を絞り出しながら戦うこと以外にも,いろいろ魅力的な要素がありそうだ。
今回は序盤から2時間ほどのプレイだったが,その範囲でも「やっぱり不思議のダンジョンはメチャクチャ面白いし,ゲームバランスがすごいな」と感じられる仕上がりだった。
シレンの楽しさは,さまざまな難関やピンチに対応し,「上手く立ち回ったな!」というやりがいを得られることだと思っている。魔法弾を打ち返す敵や武器を弱体化してくる敵,視界外から攻撃してくる敵など,いやらしい敵がいっぱい出てきては“ひりついたピンチ”を迎え,それを手持ちの道具を駆使して“ギリギリ切り抜ける”という状況を2時間の間に何度も体験できたことは「さすが」のひと言だ。
もし本作で不思議のダンジョンシリーズを初めてプレイする人がいれば,「最も重要なのは自身の経験」ということだけ言っておきたい。貴重な道具を持ち込んで全ロストしても,あと1Fでクリアというところでトラップを踏んで倒れても,へこたれることはない。アイテムはもちろん大事だが,それまでに繰り返し挑んできた自身の経験を次の冒険につなげることが重要なのだ。
なお,本作には,ダンジョンの途中で倒れたとき,他プレイヤーに救助を求める「風来救助」の機能が搭載されている。ローグライク中毒の筆者は“死に慣れているため”おそらく使わないが,救助してもらうことでダンジョンを続きから遊べる機能があることは,初めての人にとって心強いはずだ。
最後に,今回の先行プレイのあとに行われた,プロジェクトマネージャーの篠崎秀行氏とディレクター・アートディレクターの櫻井啓介氏のQ&Aセッションで本稿を締めたいと思う。その前に,あらためてもう一度……風来のシレン6,面白かったぞ!
プロジェクトマネージャーの篠崎秀行氏とディレクター・アートディレクターの櫻井啓介氏のQ&Aセッション
――仲間システムは登場しますか?
櫻井啓介氏:
操作キャラクターの切り替えはありませんが,イベントを進めていくと,話しかけて同行させる,というようなシステムが存在します。
篠崎秀行氏:
アスカも,シナリオを進めると登場します。ダンジョンの中を歩いているので,話しかけて仲間にしてください。
――14年ぶりの完全新作ですが,その間にローグの要素を取り入れたアクションゲームなどが増えました。そんな中で,風来のシレンを蘇らせるにあたって,何か意識した点はありますか。
櫻井啓介氏:
風来のシレンというシリーズは,初代から完成されたフォーマットのようなものがあるので,それを踏襲することをかなり意識しました。
篠崎秀行氏:
ローグの要素を含んだゲームは私も好きでよくやっています。ただ,シレンを久しぶりに出すにあたって,「シレンがアクションゲームになってもいいのか?」といったところを考えると,これじゃないと言われるんじゃないか,と思います。
ローグというゲームの特徴をシステムのベースにし,それをグラフィカルにしたものが不思議のダンジョンシリーズです。誕生は30年も前で,それだけ歴史を積み重ねているゲームなので,現代のローグライクやローグライトをプレイしている層にどうしたら受け入れられるだろう,ということはもちろん考えてはいます。しかし,今作で私たちシレンの開発チームが行うべきは,「シレンという遊びでどういうことが楽しいのか」ということを突き詰めた作品を作ることだと考えています。本作を楽しんでいただき,その結果,昨今のローグライクのファンの方々に「ローグライクは元々こういうゲームなんだよ」と伝わると嬉しいな……と思っております。
――風来のシレンを初めて知る人へのアプローチは用意していますか。
篠崎秀行氏:
まずは昔からのシレンのファンの皆さんに「待った甲斐があった」と思って楽しんでもらえるものが大事だと考えています。
その上で,これからシレンを知る人向けに動画配信をサポートする機能などにも力を入れています。動いているシレンを見ていただき「楽しそうだ」「自分でも遊んでみたい」と広がっていくと嬉しいですね。
――過去作に比べてボリュームや遊びの幅は違うのでしょうか。
櫻井啓介氏:
ダンジョン数としては15〜18程度で最終調整中です。
篠崎秀行氏:
クリア後のダンジョンでは,新要素を含めたさまざまなダンジョンを用意しています。
――14年ぶりの復活のきっかけはあったのでしょうか。
篠崎秀行氏:
風来のシレン5を出したあとも,シレンの続編を作りたいという気持ちはもちろんありました。
きっかけは,各プラットフォームで展開した風来のシレン5Plusが良い評判をいただけたことです。8年前にPlaystation Vita向けに発売した風来のシレン5Plusに手応えを感じ,その後展開したSwitch版なども,新要素や新ダンジョンの追加で想定したよりも多くの売り上げ,好評をいただきました。
これらのおかげで,風来のシレンという作品に愛を持っていただいているユーザー様がいるということがしっかり見えたのが非常に大きなポイントだったと思っています。
――コアなゲーマーと初心者にオススメなポイント,それぞれ教えてください。
篠崎秀行氏:
コアなゲーマーに向けては,ライブ探索機能を改善して壺の中身や装備の印が見えるようになった点や,方向切替の際にシレンから直線が伸び,敵が同軸にいるか分かるなど,細かい部分に手を入れているので,快適にプレイしやすいのではないかなと思っています。初心者に向けては,手帳というゲーム内の機能で,道具の値段や,敵の情報をゲーム内で簡単に確認できる点ですね。
そして今作は,装備をしっかり強化するのではなく,毎回手ぶらで気軽に挑めるようなバランスを考えて制作しています。いままでは,大事に強化した武器を失い,「またそれを作らなければならないのか……」とプレイする気分が失われることもありましたが,今作はそういうのは少ないのかなと。
――体験版のリリースはありますか。
篠崎秀行氏:
体験版のリリースは予定しておりません。開発の状況としては,約98%の制作状況まで進んでいて,最終的なバグの修正やゲームバランスの調整を行っており,発売日には問題ないと考えています。
――過去作にあった夜のダンジョンはあるのでしょうか。
篠崎秀行氏:
賛否両論あったこともあり,昼夜と技に関しては実装を見送りました。今作の開発のコンセプトとなる「原点回帰」という考えもあり,シレンの本質の面白さを見直して,要素の取捨選択をしました。
――デッ怪は倒すメリットがあまりないように見えました。あの敵はゲームプレイにどう関わってくるのでしょうか。
櫻井啓介氏:
マップ上にデッ怪ホールが表示されるので,そこを避けて歩く,ルートを誘導する遊びとして入れています。おっしゃるとおり,ほとんど倒すメリットはないです(笑)。
篠崎秀行氏:
前や横は攻撃が効きませんが,弱点となるような道具で攻撃すると比較的簡単に倒すことは可能です。ただ,倒せると言っても,次に出てきたデッ怪に倒されるなんてこともあります。この作品はすべてのハプニングが楽しいゲームだと思っているので,1つのお邪魔な要素として捉えていただければと思います。
――ビジュアルやグラフィックス面のこだわりを聞かせてください。
櫻井啓介氏:
今作は3Dを採用しているわけですが,ドットライクな操作感やグリッド感を壊さないことを大前提に考えていました。また,ほぼ真上に近いような見下ろしですが,シレンや敵の顔が少し見える,絶妙な角度を探しました。マス目数は5plusとほぼ同じで,ここもこだわった部分です。
ダンジョンの道中については,景色が変わるとモチベーション維持にもつながると思ったので,物語に沿って絵が変わるようにしました。
篠崎秀行氏:
ダンジョンは地下に潜っていくことが多く,絵として地味になりがちですが,今回はお宝もある島ということで,冒険という部分を強く感じる作りにしました。その点で,地形にもアップダウンがあり,違う風景や町並みがあることで,ここまで来たんだということを感じさせつつ,ボスまで楽しんでいってもらえればと思っています。
「不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録」公式サイト
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不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録
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