プレイレポート
「Delta Force: Hawk Ops」の詳細が明らかに。Team Jadeスタジオヘッドのレオ・ヤオ氏へのインタビューも掲載
「デルタフォース」シリーズを記憶しているゲーマーはかなりのベテラン勢とえるかもしれない。1998年にNovaLogicというメーカーが第1作となる「Delta Force」を開発して以降,2009年の「Delta Force Xtreme 2」まで9作のシリーズ作品が公開されたミリタリーシューターだ。
かなり簡単にキルされるハードコアなゲームプレイが印象的だったが,この頃はまだ「バトルフィールド」や「コール オブ デューティ」「Counter-Strike」が大ヒットする前。大規模なマルチプレイヤーモードと言えば「デルタフォース」だったのだ。
NovaLogicは2016年に廃業するのに合わせて「Delta Force」の販売権をTHQ Nordicに売却しているが,そのTHQ NodicからIPをTencentが入手したことで,2023年8月のgamescom 2023にて「Delta Force: Hawk Ops」が正式にアナウンスされた。
その開発を指揮するのは,Electronic Artsのエンジニアを始め,20年以上のキャリアを持ち,現在はTeam JadeのスタジオヘッドであるLeo Yao(レオ・ヤオ)氏である。
デルタフォースとは,1977年に結成された対テロ特殊部隊,アメリカ陸軍第1特殊作戦部隊デルタ分遣隊の通称であり,パナマ侵攻や湾岸戦争,最近でもウクライナやイスラエルで活動していることで知られる。
有名なところでは,1993年のソマリア内戦に介入して2機のヘリコプターを失い,「誰も置き去りにはしない」のモットーから19名の死者を出してまで敵中救助に向かった“モガディシュの戦闘”が,2001年にリドリー・スコット監督により「ブラックホーク・ダウン」として映画化している。
TiMi Studio Groupが,この「ブラックホーク・ダウン」も正式ライセンスすることで,「Delta Force: Hawk Ops」は基本プレイ無料ながらもシングルプレイヤー用のキャンペーンが用意されているというのが,大きな特徴の1つとなりそうだ。
映画のストーリーになぞらえ,“モガディシュの戦闘”を生き抜くという壮絶なキャンペーンが用意されているが,ほかにもゲームの核として,32vs.32の大型マルチプレイヤーモードである「Havoc Warfare」と,エクストラクションモードとなる「Hazard Operations」もプレイできる。
多彩なカスタマイズ機能で長く遊べるゲームに
「Delta Force: Hawk Ops」のマルチプレイヤーモードはシングルプレイヤー用キャンペーンとは異なり,2035年という「10年後の近未来」での戦闘にフォーカスし,プレイヤーが好みのオペレータを選んでプレイするシステムになっている。
現在アナウンスされているオペレータは,メディックの「Bee Colony(ビーコロニー)」,アサルトの「Dire Wolf(ダイアウルフ)」,エンジニアの「Shepherd(シェパード)」,スナイパーの「Luna(ルナ)」,そしてまだ詳細不明の「ドラゴン」の5人だ。それぞれが戦術装備1つと戦術アイテム2つ,そして特徴(パッシブスキル)1つを持っている。
例えば筆者が今回選んだビーコロニーは,複数の仲間をロックし,ホーミングして回復する弾丸を撃ち込める「Therapeutic Pistol(回復銃)」という武器をデフォルトで装備している。タクティカルアイテムには腕から小型のドローン(UAV)3体を発射して任意の場所に激突させて白煙を炊く「Smokescreen(煙幕)」および,回復機能のある煙幕を噴射する「Bee-Tech Smoke Grenade(ビーテク・スモークグレネード)」を持つ。そしてパッシブには味方をほかのオペレータよりも迅速に回復できる「Quick Rescue(クイックレスキュー)」が用意されているといった具合だ。
キャラクターシートにはヘルメットとベストの2つの防具スロット,短銃,ナイフ,重火器2つの合計6つのスロットがある。これに加えて携帯用具のスロットがあり,胸につける「チェストリグ」が1つ,ベルトを表すと思われる5つの「クイックストレージ」,そして「収集したアイテムを入れるためのバックパック」「カードホールダー」「セーフボックス」があり,最大重量70kgまで荷作りできるようだった。
このキャラクターシートの右半分は,プレイヤー専用の大きなスタッシュで,ここに溜めてある銃や防具,ヘルスキット,グレネードなどをゲーム開始前に選んで入れておける。またスタッシュにはイヤリングやPCの電源ユニットなど,何に使うのかよく分らないものも含まれていたが,これらは戦場で集め,マーケットでゲーム内通貨に換金するためのアイテムであるようだった。
こうしたアイテムの中でもっとも重要なのが,「MandelBrick」と呼ばれる小型機器だ。これはゲーム中に入手して“デコーディング”することにより,レアアイテムが入手できるかもしれない,トレジャーボックスやカードパックのような稀少なアイテムだ。
今回のセッションではじっくりと観察できなかったものの,アサルトライフル,バトルライフル,マシンガン,ショットガンなどの銃器をカスタマイズできる“ガンスミス”機能も充実している。
プレイヤーは好みによってスコープや銃口のサプレッサー,フォアグリップ,リアグリップ,ストックなどの新しいパーツ(MOD)を調達して調整可能で,こうしたMODはローンチ時点で1000種以上が用意されているという。
それぞれのMODは,武器のダメージやレンジ,ハンドリングなど6種のパラメータを変化させ,プラスとマイナスの効果が発生する。瞳孔間距離や重量制限までを微調整することが可能になっており,かなり専門的に楽しめそうな印象だった。
「Hazard Operations」と「Havoc Warfare」
「Delta Force: Hawk Ops」でフィーチャーされるエクストラクションモード「Hazard Operations / 危険なミッション」は,最大3人のプレイヤーがチームでミッションを行う。任務達成後は,脱出できるエリアへと撤退し,そこで救助ヘリに乗り込まなければならない。「Escape from Tarkov」や「Call of Duty: Warzone」のDMZをプレイしたことのあるゲーマーならお馴染みのモードだろう。
3か月ほど前には,「Hazard Operations」向けの「Zero Dam」というマップが公開されたが,今回のメディアセッションでは第2弾となる「Ashes」でプレイできた。脱出ポイントは南西側にあり,プレイヤーは北東からミッションを始めることになるが,開始当初はまだ具体的な指令がないままマップに潜入する。中央を東西に流れる川の両岸で,プレイヤーたちが自由に移動できるようになっていた。
マップを広げると,全域にわたって8か所の「コントラクト」を示す青いアイコンが表示されており,ここに行けば何らかの仕事を受け取られるようだ。また,「Boss」と書かれたボスキャラクターがいる拠点が2か所,赤いアイコンで表示されている。
ボスは側近に守られているだけでなく,かなり強力な武器で武装しているので,攻略するのかどうかは仲間と相談したうえで決める,といったところだろうか。
また,ミッションの遂行に合わせて,上記した「MandelBrick」と,それをデコーディングする「Decoding Station」が黄色いアイコンで表示される模様だ。
エクストラクションモード「Hazard Operations」でボスがいるのは,こういう基地のような場所であることが多いようだ |
ゲーム中でレアアイテムを入手できるクレートが「MandelBrick」だ。これをマップ中のどこかにあるDecoding Storeに持っていくと,アイテムがアンロックされる |
かなりオープンなマップ内には,ところどころに民兵が点在している。さらに,川に近付くと大きなワニがいたが,これは2003年にリリースされた「Delta Force: Black Hawk Down」をプレイしたことのあるベテランゲーマーなら,何とも懐かしいギミックであるはずだ。ほかにも川の北岸を列車が通るのも確認できたが,実際に乗れるのかどうかは今のところは不明である。
ヤオ氏が「現時点でのAIはかなり強力」と話していたが,実際にAIの民兵たちはかなり強く,カバーを取ってしばらくは安全だと油断していると,それなりに距離があってもヘッドショットも決めてくる。一旦戦闘が始まると周囲から集まってきたりもするので,状況を確認して作戦を臨機応変に練っていかなければならないようだ。
もう1つの「Havoc Warfare / 全面戦争」は,両軍32人ずつのチームで戦うという大規模マルチプレイヤーモードで,こちらは「バトルフィールド」シリーズのコンクエストモードなどを彷彿とさせる。1回プレイしただけでは距離感が良くわからなかったものの,チームはそれぞれがオフェンスとディフェンスに分かれ,3〜4か所に分かれたゾーンを攻略していくというゲームプレイになっていた。
相手がリスポーンしてはワラワラと路地から飛び出してくるチョークポイントがあるなど,映画「ブラックホーク・ダウン」を彷彿させるような臨場感も表現されている。そんな路地に向けてロケットランチャーを撃ち込むのも楽しいが,路地に近付こうものならディフェンス側も屋根に登って複数で上から攻撃してくることも多く,立体的な攻防戦も楽しめる。
「Havoc Warfare」では搭乗型兵器も利用でき,近未来的にアレンジされたATVや装甲車,さらにはAH-1035D突撃型ヘリコプターや戦車(詳細未発表)なども利用できる。ヘリコプターはかなり強力になりそうだが,対空戦車や熱誘導のロケットランチャーなどで対抗できるとのことだった。
レオ・ヤオ氏インタビュー 〜“ブラックホーク・ダウン”的な体験を求めるゲーマーたちへ
4Gamer:
よろしくお願いします。
レオ・ヤオ氏(以下,ヤオ氏):
はい。まず,「Call of Duty: Mobile」をプレイしてくれている日本のゲーマーの皆さんに,この場を借りて本当にありがとうと言っておきたいです。実際,日本ではFPSのプレイヤー層はそれほど厚くないという話を以前から耳にしていたのですが,熱心にプレイしてくれる人が多い市場であると我々は認識しており,だからこそ感謝しておきたいのです。一度,日本のイベントに参加したことがあるのですけど,上手なゲーマーもゾロゾロいて驚きました。
4Gamer:
中国のゲーム企業であるTiMi Studioが米軍に特化したミリタリーシューティングである「Delta Force」のライセンスを獲得したというのが,ユニークだなと思いました。
ヤオ氏:
ご存じないとは思いますが,「Delta Force」シリーズは中国ではすごく人気があったゲームで,当時はインターネットカフェでプレイする人がほとんどだったのですが,すごく盛り上がっていたのです。そのIPが売りに出されたと耳にしたとき,これは我々がやらなきゃいけないと,宿命のようなものを感じました。
4Gamer:
Team Jade(琳琅天上工作室)は,我々にとっては「Call of Duty: Mobile」で印象的なスタジオですね。
ヤオ氏:
ありがとうございます。Team Jadeは,2014年にTiMi Studiosが結成されるよりも早く,2008年に深圳で結成されたスタジオで,PCタイトルを基盤に成長してきました。「Call of Duty: Mobile」や「Pokémon Unite」でモバイルゲームに進出したのは皆さんもご存じのことと思いますが,いわばPCからモバイルに,そしてまたPCへという流れが近いのかなと思っています。「Delta Force: Hawk Ops」は,家庭用ゲーム機にもリリースされる予定ですので,さらに多くのゲーマーに楽しんでいただけるのではないかと期待しています。
4Gamer:
「Delta Force: Hawk Ops」はモバイル版もリリースされるようですが,クロスプレイなどはサポートされますか。また,eスポーツについてはどうでしょうか。
ヤオ氏:
PCとPlayStation 5,それからXbox Series X|Sは技術的に問題ないと思うのですが,モバイルプラットフォームは,コントロールスキームから言って大きく異なりますから,完全に分けた環境にしようと思っています。クロスセーブなどについては検討中です。
また,eスポーツ分野は我々の強みでもありますが,少なくてもローンチ時点ではまだ考えていません。ファンの皆さんが,どのような反応を示していただけるかでしょうね。
4Gamer:
「Delta Force」のオリジナルの開発者たちとは連携していますか。
ヤオ氏:
コンサルタントとして意見を聞きました。彼らが新作を作るならどうするかという質問もぶつけてみましたが,「大きなマップでの大規模な対戦」と「シネマティックなゲーム体験」の2つのDNAを進化させたいということで,それが「Hawk Ops」の骨格となり,そこからどう発展させていくのかが我々Team Jadeの大きな目標となりました。
4Gamer:
今回のプレイアブルデモは,敵AIがかなり強力といった印象でした。
ヤオ氏:
実は,中国国内ではすでに大規模なテストを2023年末から実施しており,そうした声も上がっているのは事実です。ただ,簡単に調整し過ぎて「Delta Force」本来のシビアなタクティカルシューティング要素を失ってしまうのはどうかなと思うのです。
チャレンジングなキャンペーンやエクストラクションモードのほうが,“ブラックホーク・ダウン”的な体験を求めて「Delta Force」をプレイしようというプレイヤーには喜んでいただけるのかなと。ハードコアなミリタリーものにするのではなく,エキサイティングな体験をご提供したいのです。
4Gamer:
「Escape from Tarkov」で人気のエクストラクション,「バトルフィールド」の大規模戦闘,それから「コール オブ デューティ」のシネマティックな演出など,いろいろなタイトルの良いところをすべて詰め込もうとしているように思えます。
ヤオ氏:
それぞれ素晴らしい作品ですから,そう言って比較してもらえるならすごく光栄なことだとは思います。我々の強みとしては,プレイヤーの皆さんの体験をもっとも大切にし,フィードバックを受けてゲームプレイの最適化やチート対策をしっかりとやってきました。自社開発のアンチチートソフト「G.T.I. Security」の開発やアップデートも自信を持ってやっておりますので,皆さんには心配することなく楽しんでいただけると確信しています。
4Gamer:
「Unreal Engine 5」も利用しているとのことで,地表を這うように吹き抜けていく砂塵や,爆発効果などが見事に表現されていますね。
ヤオ氏:
重要なのは,NVIDIAやIntel,AMDといったパートナーと,しっかりと協力し合うということです。武器の武器の物理効果やモデリングに精通したプログラマも我々のスタジオには多いですから,そうした表現についても満足していただけるのではないでしょうか。
4Gamer:
ビジネスモデルについて教えてください。
ヤオ氏:
今のところは,まだ調整中ですので詳しくはお話しできませんが,「Delta Force: Hawk Ops」ではオークションシステムを導入する予定です。長くゲームを楽しめるGaaS(Game as a Service)としてフェアな取引ができ,無料でゲームをプレイする人にもフェアにゲームを楽しんでもらえるよう努力いたします。
4Gamer:
ありがとうございました。
「Delta Force: Hawk Ops」公式サイト
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