インタビュー
[インタビュー]“オートバトルの三国志大戦”は,ブロックチェーンに適応した新しい姿に。再始動した「三国志大戦〜Battle of Three Kingdoms〜」について聞いてみよう
オリジナルのプロデューサーである西山泰弘氏がセガを辞めて自分の会社を立ち上げ,巡り巡って,古巣で作っていた「三国志大戦」のブロックチェーン版に携わることになった……ことまではついぞ数日前のリリースで知っていた。(関連記事)
とはいえ西山氏がジョインしたのは比較的最近なので,まぁそんなに進捗もないだろうし,再始動で頑張ります! みたいな話をするのかなと思ったら,想像していたより遥かにいろんなことが発表された。
中でも驚いたのは,「第3四半期に事前イベントが行われる」と発表されたこと。もうそんなに開発が進んでいたとは。
ということは,ほかにもいろいろ進んでるのではという期待があったので,セッションが終わったばかりのdouble jump.tokyoの上野氏と、スゴロックスの西山氏を捕まえて,喧噪の会場内で無理矢理話を聞かせてもらうことになった。「Battle of Three Kingdom 〜Sangokushi Taisen〜」(以下,三国志大戦B3K)は,いま一体どういう状況で,どこまで進んでいて,どういうゲームになるんだろう?
関連記事:すでに始まっているデジタル社会へのパラダイムシフトで,「メタデータ」の方が大事にされる社会ができつつある。double jump.tokyoの上野氏が考える,NFTが果たす役割
関連記事:「三国志大戦」の西山泰弘氏が,セガを辞めて新天地で目指すものは何か―――ゲームのプロデュース集団として,業界に広く深く貢献したい
4Gamer:
すみませんセッションが終わったばかりなのに。思ってたより中身やスケジュールについてしゃべっててびっくりしました。
三国志大戦の要素を捨てたが,勝算あり。「Web3ゲームの世界を制覇せよ! 『三国志大戦〜Battle of Three Kingdoms〜』」聴講レポート
IVS Crypto 2024 KYOTOの2日目,「Web3ゲームの世界を制覇せよ! 『三国志大戦〜Battle of Three Kingdoms〜』」と題したセッションが行われた。double jump.tokyoの上野広伸氏と,スゴロックスの西山泰弘氏が登壇し,ブロックチェーンゲーム「Battle of Three Kingdoms」について語った。
上野広伸氏(以下,上野氏):
私もあんなに言うとは思ってなかったです。スライドちゃんと見てなかったからなぁ。
西山泰弘氏(以下,西山氏):
いや事前にちゃんと見せられましたよ私ら(笑)。
4Gamer:
まぁ中身の細かいところを今聞いても教えてくれないでしょうし,そのあたりは追々明らかになっていくとして,そもそも西山さんがジョインした経緯ってどんな感じなんですか?
西山氏:
ジョインした経緯は……普通にプロデューサーとして,というか,僕はあれですよ。旗立てる人なんですよ。
4Gamer:
なんか分かります。
西山氏:
DJT(double jump.tokyo)のメンバーって,みんなすごくいい人なんです。あんまりオラオラしてないし。みんないいものを作りたいと思ってるんですけど,すごく丁寧だし,慎重だし,ノブさん(上野氏)も忙しいし,という状態で。
そんな中で,なんか「旗を立てるような人が欲しい」と思ってくれて,お声がけしてもらったのが最初ですかね。
上野氏:
ちょうどタイミングも合ったんですよね。西山さんがセガを辞めることを知らなかったんですけど,3月にちょうどそんな話を聞いたんで,じゃあぜひと。
4Gamer:
それはまたばっちりなタイミングでしたね。
西山氏:
だって去年の二条城のタイミングでは,関わるだなんて全然思ってなかったですよ。DJTさん頑張ってるなぁ,みたいな。
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4Gamer:
西山さんがみんなに「またなんかやるんだ?」と声かけられて面食らってると,当時よく聞きました。
西山氏:
まぁ私が入ったから勝てるとか,そういう話ではないですよね。もちろんそういうつもりでやりますけど。
でもなんか,実際に中に入ってノブさんとか坂本さん(double jump.tokyoのブロックチェーンゲーム開発統括である坂本康朗氏)なんかと細かく話をさせてもらうと,これ全然勝てるんじゃないの……みたいな。
4Gamer:
メンバー的に,という意味ですか?
西山氏:
そうそう。
4Gamer:
じゃあDJTは,一体何に困っていて西山さんを呼んだんでしょう。
上野氏:
んー,なんて言うのがいいですかね……「推進力」っていうか。
我々は開発会社で,いままで真面目にいろんなことをやってきましたし,実績も積ませてもらってますけど,なんていうかこう,良くも悪くも……。
4Gamer:
“真面目ちゃん”の枠からなかなか出られない,みたいな?
上野氏:
うん……そうですね。「プログラムとしていいもの」は作れるんですが,やっぱりある程度尖ってるところなんかがないとコミュニティにはうまく刺さらなかったりしますし,我々の“熱量”をぶつけていかないといけないことだってあるわけじゃないですか。
4Gamer:
そうですね。
上野氏:
その熱量みたいなものが,もうちょっとあればなと思ってたところに,熱量の塊みたいな人がちょうどいたという次第で(笑)。
4Gamer:
渡りに船。
西山氏:
このゲームには「三国志らしさ」と「三国志大戦らしさ」という2つのファクターがあると思うんですけど,実際には三国志大戦の開発メンバーはいないわけですから,そういう意味でやっぱり私を使ってもらったほうがいいと思うんですよね。
上野氏:
いや本当にそうですね。
西山氏:
いろいろ「お作法」もあるわけですし。いろいろあったほうが,やっぱりアーリーアダプターというか最初に興味を持ってくださる人に引っかかりやすいよ,とかね。
4Gamer:
でもさっきの話を聞いてると,「三国志大戦らしさ」を結構バッサリやってるらしいじゃないですか。
上野氏:
三国志大戦の“アミューズメント”の“らしさ”という意味ではそうですね。
4Gamer:
でも西山さんがオリジナルで一番売りにしてたことは「プレイフィール」ですよね?
西山氏:
うんそうですね。カードがユニークだとか,ゲームの大戦のランキングのシステムがどうだとか,オリジナルが持つ特徴はいろいろあるんですけど,僕はやっぱり「プレイフィール」が一番の売りだと思っています。
4Gamer:
でも今回,その「プレイフィール」は使えないですよね。戦略的オートバトルらしいですし。自ら一番の特徴だと言ってる部分が機能として存在しないのに,今の段階でそれを「三国志大戦だ」と言い切れる理由はどこにあるんでしょう。
たぶん昔のプレイヤーなら,みな同じことを思ってると思うんですが。
西山氏:
なるほど,いいツッコミです。ええとですね……「これだったら三国志大戦になる」みたいなことが見えた,というのが今の段階なんです。
4Gamer:
もうちょっと具体的になりますか?
西山氏:
アミューズメントでプレイフィールを売りにするのが一番だと思ってるし,僕はそういうのを「ゲームエンジン」と呼んでるんですけど,そのゲームエンジンのアーケードぽいフィールはないけど,「こういう設計でいけば,三国志大戦のそのままの良さを持ったまま出せるな」という感じです。ちょっとこれ以上はいま具体的にはしゃべれないんですけど。
4Gamer:
ちょっとイヤらしい表現ですけど「アーケードの三国志大戦らしさは残ってないけど,三国志大戦らしさの“コア”はちゃんと残っている」ということですかね。
西山氏:
合ってます。アーケードの三国志大戦らしさを,PCのブロックチェーン三国志大戦にも持ってくるやり方が見つかった,という感じですね。
4Gamer:
なるほど。それが本当であれば,永らく「三国志大戦」に関わっているユーザーさん達もちょっと安心ですね。
西山氏:
逆に言うと,アーケードの三国志大戦らしさを出すにはどうするつもりなんだろうと思っていたんですけど,私がいないから既成の考え方みたいなものがまったくなくて,DJTがいろいろトライアルしてて……「え,そのやり方でいくの?」とか「それありなの?」みたいな。
4Gamer:
オリジナルの人がいないがゆえのチャレンジ。
西山氏:
そう。たぶん,私が自分がやってたら絶対出てこないようなアイデアとかね。だから,あとからジョインしたからこそ作れたアイデアもいくつもありますよ。
4Gamer:
そういう「らしさ」の部分は意図的に残したんですか?
上野氏:
結構迷いはありましたね。オリジナルの三国志大戦の開発メンバーがいるわけでもないですし。セガさんに監修を入れていただく中で,根っこのところの三国志大戦らしさをどう出すかということに苦労していたというのは,事実ではあります。
4Gamer:
そうですよねえ。
上野氏:
一方で,ゲームの仕様としてはブロックチェーンゲームだし,そもそもアーケードのゲームでもないので,まぁ全然違うものでいいだろうと思ってですね,こうバッサバッサと……。
4Gamer:
バッサバッサ(笑)。
上野氏:
そんなところに西山さんが入ってきて,逆に西山さんはそれがすごく新鮮だったみたいで,結果的に積み上げられていったことについては,逆にいい方向に働いているというのが現状ですね。
4Gamer:
そんなにバサバサ切ったのなら,逆にあとは足すだけですもんね。
上野氏:
いやホントそれです。そうなんです。
西山氏:
入ったときに見て驚いて,あぁでも逆に,三国志大戦の別バージョンの姿はこれかもしれないな,と思えたのは本当大きいですね。
4Gamer:
つまり,アーケードの三国志大戦のユーザーに向けてるんですか?
西山氏:
そのユーザーさん達はやってくれると思ってます。でも……あれですよ,どのゲーム作ってるときもそうなんですけど,別に細かくペルソナを切らないんですよね。
4Gamer:
そういう方多いですよね。
西山氏:
でも対戦ゲームとかの“ちゃんと納得感のあるゲーム”が,ブロックチェーンのマーケットでまだ出てないと思ってて。
4Gamer:
その「納得感のあるゲーム」というのは,いわゆる我々がよく言うゲームらしいゲームってやつですか?
西山氏:
そうですね。一回プレイした瞬間に,あ,次はこうしようとか,これがないとダメか……とか,ちょっと頑張って買うしかないかな,いやリワードで取れそうだからそこまで頑張ろうかなとか……そのゲームプレイヤーがハマるまでの感覚ってあるわけじゃないですか。
4Gamer:
はい。
西山氏:
この作品だったら長くやるかもしれないから,腹くくってルールを全部把握して,勝てるポジションいくぞ,とかね。そういう感覚なら出していけると思いますよ。
4Gamer:
心強い返事が。
上野氏:
もちろん三国志大戦というIPを使っているし,ブロックチェーンゲームですし,今まで三国志大戦をやってたユーザーとか,Web3ユーザーとか,マーケティング観点ではそういう人たちが呼び込みやすいとは思ってます。
4Gamer:
うんそうですね。
上野氏:
ただ,今作っている新たな切り口での三国志大戦は,それ以外の人にも幅広く受け入れられると思ってるので,マーケティングとしてそういうコアな人達を集めつつも,広げていく方法も多種多様だと思います。
4Gamer:
最近はブロックチェーン界隈も,結構「ゲームらしいゲーム」も出始めてますし。
西山氏:
でも,日本の人が好きなゲームで,骨のあるゲームを出さないとダメだよね。日本の人が好き……というか,日本らしさでグローバルに行きたいというか。
4Gamer:
分かります。IVSにもYGGのゲームブースがありましたけど,6割くらいは海外でしたしね。
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西山氏:
大手はまだ手を出しづらいから,おっかなびっくりやるんじゃないですかねえ,まだ。
4Gamer:
Web3は相変わらずDJTみたいな「由緒正しい中堅」が強い気がします。
「マイクリプトヒーローズ」で,ありとあらゆる経験をすでに積んでいるのが強み
それで言うとね,私このチームにジョインしてから,こういうことしたい,ああいうことしたい,って毎日あーだこーだ言ってるんだけど,「いやそういうことはもうマイクリ※でとっくにやってますよ」って結構な頻度で言われて愕然としてます。
※My Crypt Heroes(マイクリプトヒーローズ)。2018年11月に正式サービスを開始して,イーサリアムベースのブロックチェーンゲームとして,DAUや取引高,取引量などで世界1位を記録した作品。
4Gamer:
実は私も,恥ずかしながらマイクリちゃんとやったことないんですが……そうなんですか?
西山氏:
ギルドっぽいところの煽りとかは結構すごいかな。あとマイクリって,要はノンIPじゃない? なのでオリジナルでチーム分けしてゲームを引っ張らせたり,サンドボックスの走りみたいな土地の遊びとか,とっくの昔にいろんなの入れてるんですよ。
4Gamer:
うーん知らなかったです……。そんなことになってたんですね,あれ。
上野氏:
いやあゲーム自体がコア化してるし,そもそもウチがあんまりアピールうまくなくて……。
西山氏:
そこはね,及ばずながらも僕が力になれるんじゃないかと。
4Gamer:
あんまりコア化しちゃうと,かつてのMMORPGみたいになっちゃいますよね。トップレベルの集団のためにゲームが作られていくというか。
上野氏:
興味ある人に届かせないといけないな,とは思うんですけど。
たぶんDJT自体が,プロダクトをちゃんと作ろうというところに集中しすぎていて,なんていうか,アピール方面も頑張らないといけないなとは思いますね。
4Gamer:
「開発屋さん」というカラーがありますよねやっぱり。
上野氏:
そうですねえ。
4Gamer:
何年か前にTGSで初めてご挨拶するまで,何してる会社なんだろうと正直思ってました。当時はブロックチェーンってホントに出始めの概念だし,社名も謎だし。double jump.osakaもあるのかなとか。
上野氏:
はははは。
でもさすがに最近は徐々に慣れてきまして,さらに西山さんのような熱い……というか,ガンガン行くような人の血を入れて,マインドというか,そういうものもインプットしたいですね。
西山氏:
アピールもレイヤーがあると思ってて,まず最初は,コアのゲームエンジン……まぁ売りになる部分ですね,そこまでお客さんがたどり着きたいという衝動というか。
4Gamer:
はい。
西山氏:
あとは,その商品自体をお客様にアピールして,「これやってみたいな」と思わせる部分と。こっちは,4Gamerさんとかみたいなメディアの力が大きいですよね。あとはSNSとかYouTuberとか。アライアンスとか仕掛けの部分ですね。ここはうまい人がたくさんいます。
でもね,せっかく作ったコアな部分を,お客様がそこまでたどり着きたいと思わせるとか,必然性を作るとか,そういうのは私,自分でプロだと思ってますよ。ここはゲームの話だからね。
4Gamer:
言うならばゲーム内のゲームプロモ。
西山氏:
そう。プレイさせて,順番にこうやって,こういう風にやったらこういうリワード設計があるから,こうしたほうが絶対にいいよ,とか。
4Gamer:
なるほど。チュートリアルなんかに通じるものがあるけど大事な部分ですね。
西山氏:
メニューが一個増えました! ○○モードです! って言われてもね。一部のリテラシーが大変高いユーザーだと遊んでくれるんですけど,そういう人達って周りを誘いづらいんですよねなんか。
4Gamer:
というと?
西山氏:
1万人がそのゲームをやってて,例えばリテラシーが高い200人が新フィーチャーを遊んでくれるわけです。で,その200人を1000人とか1500人とかに増やしたいんですけど,ちょっと彼ら的には誘いづらいというか説明しづらいというか……。
上野氏:
DJTもね,ちょっとそういうとこあります。
4Gamer:
そうなんですね(笑)。
西山氏:
そこは,僕が直せると思ってまして。
4Gamer:
そこも内部完結のプロモーションの話ですしね。
西山氏:
例えばね,このプレイフィールがどうだとか,そういうところってやっぱり大手はすごいんですよ。さすがに積み重ねてきたものが違う。
4Gamer:
なるほど。
西山氏:
でもブロックチェーンだったり,Web3とかオンラインで運営とか,そういうところでお客様に対する見え方とか提案とか,そういうのはやっぱりDJTじゃないとできないかもな,と思うくらいのことがやれちゃうんです,この人たち。
4Gamer:
ベタ褒めですね。
西山氏:
だから私,結構楽しいですよいま。
ブロックチェーンゲームである意味を,キチンと持たせたゲーム設計を目指す
4Gamer:
西山さんがやろうぜ,入れようぜ,みたいな感じで入れた仕様とかあるんですか? DJTが思いつかなかったようなこと。
西山氏:
うーん,なくはないですけど,僕はこういう遊ばせ方をしたいとか,こういう感じが必要とか,そういうことはあれこれ言うんですけど,その内容はプランナーとか,チームとか,ディレクターとか,そういう人達が作ってくれるわけです。
4Gamer:
さっき言ってた「旗を立てる人」ですしね。
西山氏:
そうですね。さっきの話で言うなら,アーケードにおけるプレイフィールドの部分がないということは,カードやセットする配置の遊びであれば一緒のレベルまではいけるかなとか,その前段階で,デッキをどうしようかなとか,ゲームをブロックで分けて考えるんです。ロジカルに。
4Gamer:
なるほど。
西山氏:
で,そのロジックで分けたときに,この部分が弱いのであればどの部分を追加しようかなとか考えればよくて,まぁなんていうか……そういうのはちゃんとしてるんですよ。
4Gamer:
ノリで押しこむみたいなキャラですけど,意外とちゃんとしてるんですよね。
西山氏:
4Gamerさん,前回のインタビューでも「意外と真面目にゲーム作ってるんですね」みたいなこと言ってたんですよそういえば!
上野氏:
ははは。
4Gamer:
とはいえ「ブロックチェーン」という技術をゲーム内でどう生かすのかについては,何か教えてもらえたりしませんか。ブロックチェーンゲームと呼ばれるものの最大の問題は「ブロックチェーンを使う意味何もないじゃん」というものが多いということでして。
西山氏:
そこについては,当然ですけどまず「デジタルは劣化しない」というのはメリットですよね。まぁ直接ブロックチェーンは関係ないですけど。痛まないし破損しないし読み込めないこともありません。
あとベタなところでは,「資産なのでオンチェーン※で交換/売却ができる」というのはメリットになり得ると思います。
※ブロックチェーンネットワークにデータ(この場合カード)が乗って処理されて,それらがブロックチェーン上に記録されることをこう呼ぶ。シンプルに「オンラインで」と捉えても大体合ってる。
4Gamer:
そのへんはまぁ普通に思い付くことですし,もう一声。
西山氏:
んー……NFTの「唯一無二」であることをうまく使ってユーザーさんにメリットを出したいなぁと考えてます。例えば,まだアイデアベースで実証実験もしてないんですけど,ギルドアイコンをNFTで配ってそのアイコンが名前のところに付けられるようにするとか。
4Gamer:
あぁそういうのちょっといいですね。いい意味で煽られる(笑)。
西山氏:
あとはまぁ大会上位者が使ったデッキパックを,それぞれのプレイヤーに配布したりとか。
4Gamer:
それ……強い人がさらに強くなるだけの懸念がありませんか?
西山氏:
強い人だけではなくて,ゲーム全体への貢献度が報われるシステムを目指しているので,そこは大丈夫ですよ!
4Gamer:
その配布されたNFTも,SBT※じゃなければもらった人が自由に使えるわけですよね。それこそマーケットに出したり,ファンサービスで配布したり。
※Soul Bound Token。読んだイメージのままで,移転不可能なトークン。
西山氏:
もちろんです。それこそがブロックチェーンがゆえの広がりですしね。
4Gamer:
去年も思ったんですけど,やっぱりまずWeb2.5くらいからいくのがいいんだろうなと。2が3に歩み寄るのか,3が2に歩み寄るのかちょっとそこは分からないんですけど,2.5くらいから始めないと,ユーザーはやっぱり一足飛びにはついてこれないなぁ,とか。
西山氏:
うん分かります。
4Gamer:
今回の三国志大戦B3Kなんかは,まさにそのベンチマーク的なタイトルですよね。
西山氏:
ほんとそうです。
上野氏:
まあ,間違いなくそうだと思ってて,2から攻めるか3から攻めるかというよりも,2と3が歩み寄った結果,Web2.4とか2.5,2.6とかそのへんのどっかになるというのが完成形な気が,僕はしてますね。
4Gamer:
そうですよねえやっぱり。
上野氏:
勝手に,日本のブロックチェーンゲームを占うようなタイトルでもあるのかなって思ってるんで。
4Gamer:
そういうのもあってなかなか出なかった感じですか?
上野氏:
それもちょっとありますね,本当に。
4Gamer:
発表の時のみんなの食いつき度合いといったら,結構なものでした。ポジティブもネガティブも,どっちも。結局お前もブロックチェーンか! みたいなのももちろんありましたし,やったー! 新作だー! みたいな人もいましたし。
上野氏:
反応があるのは嬉しいことですよね。何も反応ないのが一番アレなので。
ちゃんといいゲームじゃないとファンってつかないじゃないですか。それでファンができたら,そのファン自体をもっと喜ばせるとか,ファン同士をつなげるとか,そういうことも大事だと思うんですよ。
4Gamer:
はい。
西山氏:
DJTは,ブロックチェーンっていう仕組みの上で,ファンをつなげる……というか,ファンダムみたいにしていくというのを,ここじゃないと持ってないナレッジがなんかがあって。テクノロジーの話なんかも含めて,いろんなことやるんですよね,ここは。
4Gamer:
業界の中にいる私も,かつては「何をしてるとこなんだろう?」と思ってたくらいですし,ユーザーさんも何してるかよく分からない人多いと思うんですよね。そういうのも,もしかしたらこれを機に,もうちょっと広く知られるようになるのかなとか。
西山氏:
ブロックチェーンの文脈で言うならば,ソシャゲのときのグリーさんとかDeNAさんとか,そういうのと並び立つポジションにいる会社だと思うんですよね。
4Gamer:
もう結構老舗ですしね。
西山氏:
まぁあと,マイクリとかで,なんていうかトライアルが終わってる人たちをたくさん持ってるのが強いですよね。
4Gamer:
あぁそれは分かります。普通の会社だったら,いまからトライアルやるのに。
上野氏:
確かに当時よくやってましたね。自分で言うのもアレですが。なんであれをやろうとそもそも思ったんだろう。狂気ですよね。
4Gamer:
ははは。
西山氏:
でもユーザーもついてきましたし。
上野氏:
あの時代はほんとに参考になるものがなかったから,全部自分達が考えてやるしかなかったから,結構楽しかったんでしょうね。
4Gamer:
それはちょっと分かります。24年前にちゃんと立ち上がってるWebメディアってあんまりなくて,誰も参考にできないから自分達でやるしかないという。
上野氏:
そうそう,そんな感じです。
西山氏:
でも社長なんだからお金の話とかもしなきゃダメじゃない? でもこの人,普通にゲーム設計をしててずっと2人で喋ってますよ。
上野氏:
(笑)
4Gamer:
いやあ,Excel見てたって面白くないんですもんね。
事前イベント「義勇の夜明け」は,もう間もなくであることが判明
4Gamer:
そういえばですね。まさかロードマップが出るとは思わなかったです。
上野氏:
あれは本当にやり過ぎだと思いますよ。
4Gamer:
これ出していいのかな,と。
西山氏:
プロデューサーとしては,合格基準があるわけですけど,これうまくいかなかったときは終わりだなーと思いながら聞いてました。
上野氏:
あのスケジュールを出すということは,それをやりきるという開発チームの意気込みなんだなと判断しました。
4Gamer:
自分で自分の首を。
しかしマイルストーンにあった「Q3」※って,割とすぐですよ。
※第3四半期のことで,一般的な日本の企業では「10〜12月」を指すことが多いが,アメリカや中国などは第1四半期が通常1月から始まるので,第3四半期といえば「7〜9月」を指す
西山氏:
ね! もうQ3入ってますよね。
4Gamer:
いや,今Q2ですよね?
西山氏:
あ,今Q2か。びっくりした。
上野氏:
いや,私アメリカ基準ですよ。
4Gamer:
え。アメリカのQ3なんですかもしかして。
西山氏:
今じゃん。
4Gamer:
重要な情報だし書きますよ?(笑) 確かに「Autumn」とは書いてありましたけど,普通に11月くらいを指してるのかなと……。
上野氏:
え,ちょっと待ってください。一応確認だけど,アメリカ基準だと第1四半期は1月から?
4Gamer:
そうです。
上野氏:
じゃあ合ってます。アメリカ基準です。
4Gamer:
うひゃー。じゃあ遅くとも東京ゲームショウくらいまでには何か出るってことですね。
西山氏:
社長が言ってるから大丈夫です。でもプロデューサーはちょっと不安がってると書いておいてください(笑)。
4Gamer:
じゃあ真面目な話,結構仕上がりつつあるということですか?
上野氏:
それはもう,はい。
4Gamer:
久しぶりに情報が来たと思ったら結構進んでるんですね。あの「事前イベント:義勇の夜明け」って要するにテストプレイみたいなものでしょうか。
上野氏:
ゲームの前哨戦みたいな感じですね。
西山氏:
あぁそこ! そのへんは,きっと私と同じ感想ですよね。たぶん思ってることと違いますよ。
4Gamer:
え?
西山氏:
私も同じ感覚だったから(笑)。普通ああいうのって,クローズドベータテストとかそういうのを想像するじゃないですか。でもDJT的には違うんですよね。
4Gamer:
では一体?
上野氏:
実際にメインでローンチするゲームとは,ちょっと違う遊びを提供していくという感じ……ですけど分かります? まずは認知度を上げていくという,そういうマーケティング戦略の一環です。
4Gamer:
既存のゲーム業界文脈的には何になるんですか,これ。
西山氏:
よくあるゲームプロモとは全然違う,なんかファンダムを作る仕組みみたいな感じがしますね。
4Gamer:
あぁなるほど。
西山氏:
このマーケット独特のもので,魅力の一つではあります。
4Gamer:
例えば大作RPGを出すとして,その前段階としてテキストアドベンチャーを出すような感じですか?
上野氏:
あー,そういうのに近いです。いい表現だと思います。
西山氏:
すごいな,理解早いですね。ちなみに僕,全然ピンとこなかったですよ最近まで。
4Gamer:
ふふふ,勝ちですね。
しかし面白そうな試み……ではあるんですけど,つまりそれ,本編とは関係ない新しいバイナリを作ってるということですよね。
上野氏:
そう,仕込んでるんです。
4Gamer:
今作ってるものから切り出すとかではなくて。
上野氏:
そうですね。完全に別で作ってます。
西山氏:
ね? なんか変わってるんですよ,この人たち。そういう意味で,すごく勉強させてもらってます。そういうことをやるんだなぁ,と。
4Gamer:
これ,西山さん「なんでこんなことやるの?」とか聞いたでしょう?
西山氏:
聞いた,聞いた。
4Gamer:
上野さん,なんて言ったんですか?
西山氏:
「いやそういうもんですよ」みたいな(笑)。最初にそれ聞いたときちょっとだけムッとしましたもん私。「そういうもん」ってなんだよと思って。
4Gamer:
(笑)
西山氏:
でもちゃんと聞いてるうちに,あぁなるほど,そういうフラグなのかとか,そういう風にお客様が参加していってくれるのかとか,ようやく理解を。
4Gamer:
これ,プラットフォームはスマホですか?
上野氏:
スマホとPCです。
4Gamer:
いいですね。スマホの画面でさっきのチャート見てるのつらそうだし,スマホとPCなら,純粋にプロモーションとしてあれこれできますもんね。。
上野氏:
ですね。ただ,完全にゲームとは切り離されないような形で,ストーリーとして……うーんなんて言うんだろう。
4Gamer:
プレリュードみたいな?
上野氏:
はいはい,そうです。そんな感じのものを遊んでいただこうかと。
4Gamer:
名前からしても(義勇の夜明け),まさに戦国時代が始まる感じですね。
これ,その後の本編で何かに繋がったりはしないんですか? 例えば,そこで作られたキャラが本編では重要なNPCとなって……みたいな,なんかそういうのとか。
西山氏:
あ! 上野さん,これしゃべっちゃダメですからね。もうダメです。これは4Gamerさんの罠ですからね。
4Gamer:
えええ。
西山氏:
ノブさん(上野氏)はすぐそういうのしゃべっちゃいそうでダメです(笑)。
4Gamer:
どうせもうすぐ出るじゃないですか。なんかしゃべって期待を煽ってくださいよ。
西山氏:
ダメです。もうちょっとだけ我慢してください。
でも真面目な話,全体を見渡したとき,このゲームの設計の中でちゃんと筋が通ってる……というか,お客様がちゃんと筋通ってることを体感していただけるようなものが作られつつあるので,すごく楽しみですよ。まさに僕は今,それらを絶賛精査中です。
4Gamer:
発売日延期したゲーム……ってまぁ,これはそこまで伸びてないですけど,決算とかいろんな理由で「もうこのへんでいいか」っていう出され方をすることも多々あるんですが,聞いてる限り,三国志大戦B3Kにはそれはなさそうだと思っていいですか。
上野氏:
ないですよ。むしろはるかにパワーアップしてると思いますね。
4Gamer:
三国志大戦というIPを使った新作だ! と思ったら「おいおいブロックチェーンかよ」って思った人,正直少なからずいると思います。発表時点でのゲームユーザーにとっては,ブロックチェーンゲームの印象ってそこまでいいものではなかったですし。
上野氏:
うんまぁそういうのは否定できないでしょうね。
4Gamer:
そうはいっても「三国志大戦」だし,まぁ驚きと期待と半々くらいの? あと心配。まぁそういういろいろがあって,待ってる時間が長かったと思うんです。情報全然出てこないし。
上野氏:
いや本当にそこはすみません。
4Gamer:
「あれどうなったんだろう?」って。でもお二人の話を聞いたり,さっきのセッションを聴いたりする限りは,大丈夫そうな気がしますね。
西山氏:
いやもう,ゲーム作るのが好きなのはもちろんですけど,新しい体験作りとか新しいことにチャレンジしたりとか,そういうのも大好きなんで。
開発チームの中に熱量がないと,ユーザーに熱が伝わるわけがない
4Gamer:
いやあ実はそこもちょっと心配してまして,なんていうか西山さんって,割とオールドタイプの業界人ですよね。
西山氏:
ちょっと待って(笑)。……まぁでも確かにそうか。
4Gamer:
まぁ僕もですけどね。そういう「古いタイプの業界人」の真剣な言葉を受け止められるのかなぁ,ってちょっとだけ陰で心配していました。
上野氏:
というと?
4Gamer:
DJTの開発の方々が,それぞれどういう経歴をお持ちなのかとか,さすがにそこまでは存じ上げないんですけど,たぶんですけど「ピュアなゲーム業界の開発者」じゃないと思うんです。多くの人は。
上野氏:
ああ,そこはそうですね。
4Gamer:
元スクエニとか,元セガとか,元バンナムとか……たぶんそういう感じではなさそうだなと。なので,オールドタイプの言葉を受け止めるのも結構な苦労だと思うんです。
上野氏:
そこは確かにそうですね(笑)。
西山氏:
えええ……。
上野氏:
でも意外と西山さんってロジカルなんですよ。
西山氏:
ここでも「意外」と言われた(笑)。あとそういう意味で言うならば,僕だけじゃなくてスゴロックスのメンバーも一部ジョインしてますので。
4Gamer:
なんなら“翻訳家”もちゃんといるわけですね。
西山氏:
そうですね。
……いやでも,本当に重要なのはそこじゃないんですよ。そこでお弁当食べてる,開発統括の坂本っていう人がいるじゃないですか。
4Gamer:
急に飛び火しました(笑)。
西山氏:
彼が一番のキーマンなんですけど,おっしゃるように私がゴリゴリにあれやこれやとやらせたり指示したりするので,現場はたまに間違った方向でトライ・アンド・エラーが始まっちゃったりしがちなんですよ。
4Gamer:
容易に想像できます。
西山氏:
でも彼を先頭にして,そういうのをキチンとサポートできて,つつがなく動かせるDJTのメンバーって,なんていうか……運用の仕組みがすごく整ってるんですよ。
既存の大手ゲームメーカーの開発とは違って,“今の時代に合わせた開発の体制感”みたいなものを持っているのかもしれないと思いますねホントに。
4Gamer:
ある程度のシステム化は必要ですよねえ。
西山氏:
こないだの話で言うなら,僕みたいなオールドスタイルが「なんかいまいち面白くないな」とか言っても,「あ,じゃあここをこうすればよさそうですね」みたいな感じで指示が飛んで現場が動いて,なんかそういうすごい感じなんですよ。びっくり。だから「DJTならできるかも?」って真面目に思いましたね。
[インタビュー]「三国志大戦」の西山泰弘氏が,セガを辞めて新天地で目指すものは何か―――ゲームのプロデュース集団として,業界に広く深く貢献したい
三国志大戦の名物(?)プロデューサー「西P」がセガを去って数か月。自分の会社を立ち上げたということで,オフィスにお邪魔してみた。あんまり景気のよくないこんな時期に会社を辞めて,一体何をするつもりなんだろう?
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4Gamer:
CEOである上野さんの力量も大きいですよね,やっぱりそういうのは。
上野氏:
あ,今度はこっちにきた(笑)。
西山氏:
そうですねえ。一番トップのノブさん自体が,ゲーム作りのコアの部分をちゃんと分かっているので,現場の背中も,ほいほい押せるんですよね。
これがなんか,毎日P/Lのこととか,会社のレピュテーションのこととか,そういうのばっかり考えてる社長だとちょっとねえ。だから繰り返し「DJTなので出来そうです。売れそうです」って言ってるのは,ちゃんと理由があるんです。
4Gamer:
まぁゲームの面白さって,結局は開発とか含めた周辺環境が込みですもんね。
上野氏:
さっきのセッションでもちょっと言ったんですけど,ゲームが持つ熱量で一番“火種”となるところは,ユーザーよりもまず開発メンバーだな,と思ってます。その開発メンバーの熱量が,一番初めのコアユーザーにも伝わるというところから,火は燃えていくんだろうなぁ,と。
4Gamer:
伝播しますもんね,そういうのは。
上野氏:
開発の中に熱量がないと,ユーザーに熱が伝わるわけはないんですよ。当たり前なんですけど。そういうところを改めて気づかされました。
4Gamer:
なんかいい感じのところで「あと3分で締めてくれ」というハンドサインをもらったので,締めに入ります。
今日の朝の段階では,「西山さんもジョインしたばかりで,まだしばらくは出ないだろうから,どういうゲームにしたいかというのを聞いてみたいな」と思ってたんです。
上野氏:
ははは。
4Gamer:
でもフタを開けてみたらすごく近そうなので,ベタですけど,ユーザーに向けてお二人からコメントをお願いします。
上野氏:
一言で言うと「ぜひ楽しみに待っててください」という感じです。ここまでお待たせしてしまいましたが,「新しい三国志大戦」をお見せできるように頑張ってます。ぜひ期待してください。
西山氏:
ブロックチェーンとかそういうテクノロジーの話だけじゃなくて,すごく新しいゲーム体験をちゃんと設計してますから,早くお客様の評価をもらいたいと思ってます。全力で作ってますので,楽しみにしててください!
4Gamer:
セッション終わった直後に捕まえてしまってすみませんでした。ありがとうございました。
――――2024年7月5日
- 関連タイトル:
魁 三国志大戦 -Battle of Three Kingdoms-
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