インタビュー
[インタビュー]すでに始まっているデジタル社会へのパラダイムシフトで,「メタデータ」の方が大事にされる社会ができつつある。double jump.tokyoの上野氏が考える,NFTが果たす役割
まだ開花しきれていないジャンルのせいか,中にいる人達の結束力(?)は強く,向いているベクトルも同じで,割と皆ほぼ同じことを言う。そんな中でちょっとほかの人とは違う視点を持っていそうなのが,ブロックチェーンゲームの老舗,double jump.tokyoのCEOである上野広伸氏だ。
先ごろ,セガから「三国志大戦」のライセンス許諾を受けて作るブロックチェーンカードゲーム「Battle of Three Kingdoms」を発表したので,ブロックチェーンに興味がなくても,社名を聞いたことがあるかもしれない。
同社は,日本におけるブロックチェーンゲームとNFTの老舗とも呼んでも差し支えないと思うが,そんな会社のCEOが,それらについて今どう思っているのか聞いてみたいと思ってインタビューオファーを出したところ,あっさり快諾いただけた。CEOを捕まえて個別のゲームタイトルの話をしても仕方ないので,NFTを取り巻く諸々の環境について,上野氏の考えている方向性を存分に聞いてみた次第だ。
氏の話は尽きず,あっちへこっちへと飛びまくったわけだが,たぶんに概念的なものを含む大変興味深い話が聞けたと思うので,ぜひ皆さんにもお読みいただきたい。登場からそれなりの時間は経ったが,(日本では)いまだ海のものとも山のものともつかないものであるNFTやブロックチェーンについての,「定まった方向性」はない。氏の見解や思考を読んで,改めて考え直すきっかけにしてもらえれば,とても嬉しい。
大変長いインタビューとなったが,カットせずに全文を掲載している。お時間のあるときに,ゆるゆると読んでほしい。
関連記事:BCG版「三国志大戦」,「Battle of Three Kingdoms」は今秋リリース予定。初期からトークンの発行も予定
・リアルもデジタルも,ただの“情報”の塊でしかない
・いずれ,リアルファッションよりデジタルファッションの方が市場が大きくなる
・「デジタルに記録されたことが“事実”になる」という,デジタルに浸食されている時代
・食事をするときに,人は「メタデータ」を食べてるだけでしかない
・AIイラストが出回る時代だからこそ,価値のキープのために“メタデータ”が必要
・日本でマスアダプションするときの最大の問題は,インフルエンサーの層が薄いこと
・NFTにおいて本当に大事なことは「値付けされる」こと
・価値の変動を捉えて時流に合わせていくのが得意
4Gamer:
こんなお忙しいタイミング(注:東京ゲームショウ初日)にお時間ありがとうございます。
今回インタビューのオファーをした時に,ご快諾いただけたことも嬉しかったですけど,何が一番嬉しかったって「質問リストをください」と言われなかったことです。
上野氏:
あー,はい(笑)。そこらへん,もしかしたら適当なのかもしれません。
4Gamer:
いつも要望しないんですか? やはりゲームクリエイターさんとかプロデューサーさん相手だと,どうしても質問リストをまずくれ,という話になるので。それはいいのですが,そのリストが強すぎて,人によってはただのQ&Aみたいなインタビューになっちゃうんですよね……。
たぶんそれはですね,クリエイターと会社の意向がちょっと食い違ったりすることもあるからですよね。その点僕は(CEOとクリエイターを)兼業してるから,たぶん答えやすいんだろうと思います。
4Gamer:
そういうのはちょっと分かります。私も編集長兼社長なので,なんでも答えられはするんですけど……。でも兼任してると,困ることもありません?
上野氏:
なんだろうな,言葉選びが結構慎重になりますね。「嘘」じゃないんけど,ギリギリこれくらいの表現なら……みたいな。
4Gamer:
すごく分かります(笑)。
で,そんな上野さんにお時間をもらえて何を聞こうかと思ったんですけど,それぞれのゲームの話とか,会社の話とかしてもあんまり面白くないなというのがありまして……。
上野氏:
そうですね。そこはそうだと思います。
4Gamer:
というわけで,素直に「ブロックチェーン」を軸にあっちこっちに話を飛ばして,上野さんの思想や思考(嗜好)についてあれこれ聞いてみようかと。質問リストもないし,決められた回答もなしで。
上野氏:
ぜひそれでいきましょう。
リアルもデジタルも,ただの“情報”の塊でしかない
4Gamer:
さてまずいきなりなんですけど,ゲーム業界はいまだにブロックチェーンにちょっと懐疑的です。
上野氏:
はい。
4Gamer:
たぶんですけど,メーカーさんは懐疑的じゃないと思うんです。メーカーさんによっては,もうガンガン行きたいんじゃないでしょうか。でもおそらく,ユーザー側がまだ懐疑的なんですよね。「だってどうせ詐欺でしょ?」という空気は根強く残っていますし,それがブロックチェーンゲームからNFTにも派生している感はあります。
上野氏:
ええ,分かります。
4Gamer:
個人の意見で恐縮ですけど,私個人はブロックチェーンにもNFTにも魅力を感じています。テクノロジーとしてきっと何か「とてもうまい使い道」がある気がするのです。でもなんか一度付いた悪い印象が先行していて,それこそメーカーさんが……というか上野さんもそうですよね,上書きしようとしても,なかなかできない。
先日の「三国志大戦」の発表のときも,「あれもついに詐欺ゲーの仲間入りかぁ」みたいな感想があって,いやそうじゃないだろと思う半面,仕方ないのかなという気もちょっとしたり。
「三国志大戦」のIPを使用したブロックチェーンゲームの開発をdouble jump.tokyoが発表。ゲームに特化したブロックチェーン“Oasys”を採用
double jump.tokyoは本日,セガより「三国志大戦」のライセンス許諾を受け,「三国志」をテーマとしたブロックチェーンゲームを開発すると発表した。新たに制作されるゲームでは,「三国志大戦」のIPを使用したアートワークを楽しめるという。開発には,ブロックチェーンプロジェクト「Oasys」を採用する。
上野氏:
そうですね。そのあたりのポジティブアピールはちゃんとしていきたいですよね。
4Gamer:
ですので今日は,その辺の話をきっかけに,いろいろ横に広げていきたいなと思っています。ブロックチェーンゲームだけに限らず,Web3全般だったりNFTだったり。
上野氏:
いいですよ。でもその前にちょっと話を戻すんですが,ブロックチェーンゲームとかNFTとか,そのあたりのことがまだマスアダプション※しきれていない大きい理由としては,たぶん「面倒くさい」っていうのと「高い」かな(笑)。
※マスアダプション:「大衆化」の意味で使われており,世間一般に向けて価値や物事を届けること。
4Gamer:
「面倒くさい」を超えた人にしか「高い」かどうかは分からないのでは?
上野氏:
プライスが分かってるのもあるじゃないですか。すごく高いものから,そんなに高くないものまで,結構多種多様にあるんですけど,平均すると……というか,傾向的には“ちょっと高め”なのかなと思っています。
4Gamer:
でもなんでそういう着地になっちゃうんですか? 広げていきたいならまず安値,とかそう考える人も一定数いそうなものですが。
上野氏:
それは「マスアダプションしてないから」なんですよね。ユーザーが少ないと単価が高くなるという。
4Gamer:
専門書高額理論?※
※例えば「刑法総論を買ったら5000円だった」のような話。扱う内容に差はあれど,一般書籍であれば1200円程度(2022年の平均価格は1268円)なので,4倍ほど高い
上野氏:
まぁそんな感じです(笑)。そしてこれって「たまごとニワトリ」なので,結構難しいんです。広がってくれば単価も安くできるし,何ならおっしゃるように単価を下げた方がより売れるとか,そういう側面もあるので。うまくいけばすんなりマスアダプションするんでしょうけど。
でも,マスアダプションする前は単価を高くしないとビジネスが成り立たないというジレンマがあると思うんです。
4Gamer:
例えばじゃあNFTゲームのキャラの値段って,僕らユーザーからすると「5万円でキャラを買えば,5万5千円くらい稼げるかもしれない」みたいな話もあるわけじゃないですか。トークノミクス※的話で言うのであれば,の話ですけど。つまりマスアダプションしてNFTのプライスが下がったら,そういう部分の意味合いで言うなら“取り分”も下がるということになりますか?
※トークノミクス(tokenomics)はtoken+economicsの合成語。定義としては「NFTや暗号資産,ブロックチェーンプロジェクトなどが持つエコシステムの,経済的/財務的な側面のことを指す言葉」なのだが,すごく乱暴に言うと「そのブロックチェーンゲーム/NFTがどれくらい儲かるか」のような文脈で使われることもある。
上野氏:
そこらへんは非常に難しい話なんです。まず様々なIPに広がっていかないと,相対的な価値が分からない状態なので,値段が高いのか安いのかすらも分からないというのが今の状態だと思うんですよね。
4Gamer:
あぁなるほど。基準がないからだと。
やっぱ人間って,絶対的な価格があんまり分からないので,基本的には相対的な価値ですべての物事を判断するわけですよ。どっちのほうが,上か下か。
4Gamer:
ありがちですね。
上野氏:
例えば……いや,固有のキャラクター名を言うと角が立つかもしれないのでやめましょう(笑)。例えば,とある有名なキャラクターがあったとして,それがこの価格なのであれば,このキャラだったらもっと上だし,このキャラだったらもっと下でもいいんじゃないか……みたいな基準ができるわけです。
でも今はそれがないので,なんかテクノロジーと機能だけを言われて「○○円です」って言われても,納得いかないし,みたいなところはあると思うんですよね。
4Gamer:
確かにそのとおりですね。なんでその値段なのかの納得できる理由が,嘘でもいいのにそれすらないんです。
上野氏:
その話にプラスして,今までデジタル上のアイテムというのは,利用規約上……というか立て付け上は「貸与」だったんですよね。ゲームのアイテムとか。
4Gamer:
そうですね。MMORPGとRMT※のときに散々繰り広げられた話題です。
※RMT(Real Money Trade)は,古いMMORPGプレイヤーならお馴染み,ゲーム内アイテムやゲーム内通貨,アカウントなどを,現実のお金で売買する行為。善悪や是非はいったん置いておくとして,かつては割と普通に行われていた。
上野氏:
ええ。なぜかというと,貸したものにしておかないと,サービス終了する時にちょっといろんなことがゴチャゴチャしちゃうからです。でもNFTはそれを「あげますよ」と言ってるわけです。なので“物”と同じような感じになります。
服飾品とかバッグとかと同じように二次流通市場もありますし,持って所有感を楽しむこともできます。そういうことをデジタルの世界に持ち込んだのが,NFTだと思っています。
4Gamer:
なるほど。「代替不可能なトークン」※と言われるよりはよっぽど分かりやすいです。
※「NFT」という言葉を調べると,解説記事などに必ず書かれている意味不明の言葉。
上野氏:
例えば,ルイ・ヴィトンのカバンというのはなんであんなに価値があるかというと,安売りしないからです。メーカー自体が安売りしないからこそ,二次流通額も結構キープされている。そういう価値認識こそが,あのブランドの価値自体をずっと保っている源泉となっているわけです。
4Gamer:
ハイブランドに限らず,高級品と呼ばれるものには結構同じことが適用できますね。
上野氏:
もちろん,ブランドの限定品とかだと価格が高くなるから,と買う人もいるにはいるんですけど,大半の人は「二次流通市場に売る」ことを目的にしているわけじゃなくて,そこでも価格がキープされているということに対して,つまり価値がキープされているという認識のもと,ある程度高くてもそれだけの価値があるものだと皆さん認めてますよね……という認識のもとで買ってるんだと思うんです。
4Gamer:
分かります。
上野氏:
NFTだって,基本的には転売をすることを目的としていないし,でもまぁ転売を目的としている人もいて……そういう世界なのかなと思うんですよね。そういう風になっていけば,面白いんじゃないかと。
デジタル世界のものに,リアル世界のもの的な価値の付け方とか仕組み,二次流通市場も含めて,そういうものを持ち込んでくれれば面白いんじゃないかというのがNFTの一つの発想ではありますね。
4Gamer:
そういう風に,面白いと多くの人が思えるターニングポイントはいつ来ますかね。そもそもまだNFTって「所有感」があんまりないんですけど……。
上野氏:
それはねえ……。もっと所有感を満たすやり方もあると思うんですよね。
4Gamer:
例えばどんな感じでしょう。
上野氏:
ニュアンス的なもので説明がちょっと難しいんですけど,そもそもデジタルのものとリアルなものに,どういう違いがあるのかという特性を理解するところから始めないといけないと思います。これは別にNFTとか関係なく……じゃあ書籍の話でいきましょう。
書籍も,リアルの書籍と電子書籍があります。どっちの方がいいですかって言われたら,昨今ではケースバイケースですよね。旅先で読むときは雰囲気重視でリアル書籍がいいかもしれないし。
4Gamer:
いままったく同じ例を出そうと思ってました(笑)。
上野氏:
あ,そうですか?(笑) まぁビジネス書みたいなものだと,検索性とかも重要かもしれませんね。携帯性と検索性を重視するなら,電子書籍の方がいいですね。
4Gamer:
はい。
上野氏:
でもその2つって,実は別なものなんですよね。
4Gamer:
そうなんです。皆さん媒体が違うだけで同じものだと思ってるけど,あれ実は結構違うものですよね。
上野氏:
僕は,リアルなものも全部“情報”として捉えてるんです。手触りとか匂いとか,情報量が多いし。アートなんかもそうですが,リアルなものの方が情報量が多いので,確実に価値があると思うんですよ。源泉的な価値が。
ただそれに対して,デジタルなものというのは可搬性や検索性,情報拡散性などがあります。なのでデジタルなものの価値というのを,リアルなものとは違う形で上げていこうと思うと,誰がそれを持ってるのかとか,情報拡散性とか検索性とか,そういうものにフォーカスして,そのデジタルアイテムの価値を上げていかないといけないんです。理論的に言うことは可能なんですけど,まだそこまで至ってないのが,今のNFTですね。
4Gamer:
なるほど。
上野氏:
リアルの二次流通市場をデジタルの世界に持ち込みますよ,と僕は先ほど言いましたけど,ただそれは同じようにしちゃいけないです。やっぱり価値の源泉が違うので,違うやり方で目立たせないと,なんかちょっと間違っちゃいますよ,とは思っています。
電子書籍でコミックとか買うと,たぶん所有感を増すためだと思うんですけど,背表紙が並んだりしますよね。
上野氏:
はいはい。
4Gamer:
ちょっと楽しいとは思うんですけど,でもそれ結局同じことをやってるだけだと思うんです。同じ“価値”を出そうとしているというか。たぶん今おっしゃってるのって,そういうことですよね。同じものを目指してはいけない。
上野氏:
そうですね。リアルとデジタルは,同じ部分もあるんですけど,完全に同じではないわけです。
例えば,リアルの書籍の中で全10巻のうち6巻だけ抜けてると気持ち悪いので,古本で買ってくるとかあるじゃないですか。でもデジタルの場合って,リアルほど手触り感とかはないかもしれないけど,「今なら6巻がここで安く売られてます」みたいな情報を付与するのは,検索性が高いのでめちゃくちゃ簡単なんですよね。
4Gamer:
確かにそうですね。
上野氏:
で,その背表紙が並んだ棚の中で……まぁたぶんあまりにも露骨じゃないように一度ボタンかなんかをポチッと押さないと見えないでしょうけど(笑),そのボタンを押すと「6巻は今ここに行けばいくらです」と見えて,じゃあ買おうかなと。そういうところまでUXを高めていかないといけないと思うんですけど,そこまでにはなってないですね。
いずれ,リアルファッションよりデジタルファッションの方が市場が大きくなる
4Gamer:
んーでは書籍なんかの例で言うなら,なんかUI/UXの問題で,意外とある程度「デジタル資産の所有感」みたいな問題は解決されそうな感じがあります。でもこれ,じゃあファッションの話になるとどうなんでしょうか。
最近NFTでのデジタルファッションの話が割と聞こえてくるので例に出してみましたが,これってUXとかの問題じゃないですよねきっと。
上野氏:
きましたねファッションの話。えっと,ちょっと遠回りした話をしていいですか?(笑)
4Gamer:
もちろんです,ぜひ。
ファッション世界のことについて言うと,僕はリアルファッションよりデジタルファッションの方が市場が大きくなると思ってます。
4Gamer:
それはメタバース絡みですか?
上野氏:
です。
4Gamer:
やっぱりそうなりますか。
上野氏:
ファッションは,誰が何と言おうと,誰も言わないけどみんなが知ってる事実として,8割がた「顔と体型」で決まるんですよ。
4Gamer:
まぁそうですよねえ。
上野氏:
ちょっと悲しい現実ですけどね(笑)。
でも,ファッションというのがそもそも何なのかというと,自分のアイデンティティを表現するものであるわけです。でも,それに対してリアルのファッションには「顔と体型が結構幅をきかせている」という問題があり,それがまあ限界ではあるんですけど。
4Gamer:
重要なファクターですよね。
上野氏:
めちゃくちゃ重要ですね。
でもメタバースの世界においては,顔と体型というのはただのパラメータに過ぎないんですよ。自分のアイデンティティを表現するのはファッションそのものだし,デジタルならそこで生きているアバターそのものなんですよ。そしてメタバースの世界であればあるほど,顔と体型は似たようなものになっていきます。やっぱりみんな,いい顔と体型に寄せていこうとするから。
4Gamer:
MMORPGなんかを見てても,そうかもしれません。
だからみんな顔も体形も似たようなものになって,ファッションこそがアイデンティティを表現する重要なファクターになってくると思うんです。
それでその時に,リアルな世界だとTPO的な問題もあるし,文化というものも統一的に守られているし,普通は変なファッションができないわけです。
例えば,パリコレに出てるファッションとか,普段の街中で着ないじゃないですか。すごく面白いけど,街中で着るものじゃないとみんな思ってる。でもメタバースの世界では,あれ着てナンボですよ。
4Gamer:
そういうのを着ないと,普通のファッションだと,誰が誰だか分からない。
上野氏:
アイデンティティにならないんですよ。
で,そういう自分のアイデンティティを表現するものに,一体いくらお金を出すんですか? いくつ買いますか? いくつ買ってもかさばりませんよ? 暑いとか寒いとかそんな機能性はどうでもよくて見た目だけの話ですよ? ……という世界になった時に僕は,「ブランド価値」の方がさらに重要になってくると思います。
4Gamer:
おっしゃるように機能性がほとんどないので,そこに差別化は生じませんしね。
上野氏:
そうすると,ブランド価値とか,アイデンティティを表現するための特殊性とか,そういうことが重んじられるようになってきて,結果としてデジタルファッションの方が,リアルファッションの市場よりも大きくなるんじゃないかと思ってます。
4Gamer:
でもそういう話で言うなら,日本のブランドはまだまだですよねデジタルファッション。
上野氏:
そうなんです。
4Gamer:
聞こえてくるのは海外の話ばかり。
上野氏:
そうです,そうです!
でやっぱりね,グローバルハイブランドの人たちが賢いなと思うのは,ルイ・ヴィトンとかグッチとかナイキとかもそうですけど,いち早くNFTの分野に足をかけてるじゃないですか。でも大々的には言ってない。いつか来るであろうメタバース時代に,その世界での老舗ポジションを取りたいからなんですよ。
ルイ・ヴィトン公式サイトの「よくある質問」で,「ブロックチェーンとは何ですか?」から始まりWeb3.0に対して真摯に説明をしている。
ルイ・ヴィトンが初のNFT作品発売、価格は約586万円(FASHIONSNAP/2023年6月)
ナイキのNFTスニーカー売り上げ好調(CoinPost/2023年5月)
Our first virtual collection is coming.(ナイキ/2023年4月)
GUCCI® VAULT - METAVERSE & NFT
4Gamer:
でしょうねえ。
上野氏:
これはどんな分野でもそうなんですけど,歴史的価値って結構重要で,老舗ポジションを取るのは結構重要なことですよね。それがたとえ売れなくても。
4Gamer:
まぁ売れる必要はないですし。
上野氏:
そう。だから彼らは,今やってるんですよね。売れるか売れないかは重要じゃなくて,こんな時からやってたんですよ,という。だから日本のファッションブランドがそこまで注力してないのは,ちょっと悔しくもありますね。
4Gamer:
取り組み※としては,ほとんど聞こえてこないんですよね……。
※日本ブランドの動きをみると,UNIQLOはちょっと面白い試みをしていて,NFTアートクリエイターの絵を使ったUTを作って,リアルに逆輸入している。一方でZOZOが採用しているDRESSXは,アバターに着せるわけではなくて結局ユーザー本人の写真を使っていて,リアルを捨て切れないところがなんかとっても日本ぽいと感じてしまう。
上野氏:
まぁ今はそんなに稼ぎにならないような気がしますしね,正直。
4Gamer:
もちろんそうですね。
上野氏:
ただ,いつか来たるべき時のために……なんていうのかな「盛り上がってきたからうちもやります」って,なんかちょっとあまりにもストーリーがないっていうか。
4Gamer:
すごく分かります(笑)。
上野氏:
昔からやっててたまたま今盛り上がってますよ,の方が見栄えがいいですし(笑)。
4Gamer:
あとから追っかけだと理念もなく見えちゃいますしね。
上野氏:
そうなんですよね。そういうのもちゃんと理解したうえで,グローバルハイブランドってやってるんだろうなぁと思います。
4Gamer:
でもそれを言うなら,double jump.tokyoだって,今となってはNFTの老舗みたいなもんじゃないですか。
上野氏:
そうですね(笑)。でもこれこそが,うちが昔からやってただけで,ポジション狙うとかあまりなかったんですけど,たまたまそうなりました。
「デジタルに記録されたことが“事実”になる」という,デジタルに浸食されている時代
この流れでついでに聞きたいんですが,メタバースの時代きますかね。
上野氏:
まだだいぶ先だと思いますね。
4Gamer:
どれくらいかかると思います?
上野氏:
んー……決定版のデバイスがいつ出てくるか次第ですが,5年ほどかかってもおかしくないと思います。
4Gamer:
では上野さんの中では,最終形態はどんな形を想定してます? こんな感じじゃない?みたいな。
上野氏:
それ難しいですねえ……。VRっていうか,VRみたいな世界がメタバースの主戦場だと思うんですけど,ARの方が先に来る可能性もありますね。
4Gamer:
確かにARは若干ハンドリングもしやすそうだし。
上野氏:
Apple Vision Proみたいなのが発表されてますけど,ああいうものの方が先に来る可能性はあるかと。
4Gamer:
あれはあれで楽しそうです。
上野氏:
楽しそうです。まぁ50万円しますけど(笑)。3年くらい経ったらなんか変わってくるかもしれないですね。
4Gamer:
「メタバース」を描いた有名な作品って,もちろん全部観たり読んだりしてるわけじゃないんですけど,基本的に「現実世界がクソだから逃避してる」ように感じてならないんですよね。
上野氏:
なるほど(笑)。
例えば小説とかゲームとかは別世界の体験をするわけですけど,それを脳内で体験するのが小説で,実際にプレイして体験するのがゲームだったりするんですけど,それをより視覚的なところで体験するのがVRかなと思ってるので,現実逃避とはまでは僕は思いませんけど,なんか別世界を楽しむ感じですかねえ。
みんな楽しんでるのかなぁあれ。「レディ・プレイヤー1」とか,楽しんでるというよりはなんかこう……。
上野氏:
まあでもその話で言うと,僕はリアルな世界とデジタル世界をあんまり区別してないので,そういう違和感はないですね。
4Gamer:
お,なんか楽しそうな話題に。
上野氏:
ちょっと変な考え方かもしれませんけど,リアルな世界も「リアル世界」という,ある意味メタバースの一種だという認識でいる感じなんですよ僕。なのでさっき,「物」のことをインフォメーションって言ってたわけです。僕にとっては,デジタルの世界もリアルの世界も,同じ土俵の上の話なんですよ。リアルの方がインフォメーションが多いなぁくらいの認識で。
4Gamer:
なるほど。であれば確かに,いまよく見られる「メタバース」にも全然違和感がないわけですね。
上野氏:
違和感はないですね。ただ,そこまで行き着いてないですけど。
やっぱりリアルのほうがインフォメーションが多いし,体験としてもまだまだ全然優れているので,それをどこまで追いつかせるかが重要です。リアルなものっていうのはインフォメーションが多いけど,すぐに別世界にはできないような制限がります。重力の制限とか場所の制限とか。
デジタルは,そういう制限はない代わりにインフォメーションがまだまだぬるくて,リアルのほうがインフォメーション密度が高いので楽しいわけですよね。そのバランスだな,という感じで見てますね。
4Gamer:
「リアル世界というメタバース」という視点はすごく納得できるんですが,そこに行き着くまでの阻害する壁っていまはなんだと思います?
上野氏:
やはりテクノロジーの壁が結構大きいですね。まだまだ,単純にそのレベルだと思います。
4Gamer:
じゃあテクノロジーの壁を無事に超えて,将来,皆が思うような“メタバース”が登場するとします。そのときのメタバースがどれくらいの規模感で動くのか分からないですけど,将来的にはたぶん,今現実世界にあるような問題が次々起こっていくんだろうなという気がしています。
そのときに,法律の問題とかモラルの問題とか,そういうものがどういうふうに解決されていくんだろうというのはちょっと個人的に興味があります。
上野氏:
あぁ,なるほど。
4Gamer:
いま「概念的には同じもの」みたいな話をしておいてアレなんですが,普通の人はやっぱり違うものだと思うわけです。違うものだという認識をしているなかで,リアルの問題を解決するためのルールを,アンリアルの世界に持ち込んで本当にいいのかどうかというのは,議論の余地があると思うんですよね。
上野氏:
まあ確かにそうですね。ただ,リアルの世界で強い人が,デジタルの世界で強いとは限らないというところがミソなんじゃないかと思ってます。
4Gamer:
あぁそれは,太古の昔のNIFTYとかのフォーラム文化のころから感じますね。
上野氏:
例えば今は「リア充」という言葉がありますけど,たぶんそのうち「デジ充」とか,なんかそういう言葉が出てくると思いますね。
4Gamer:
価値の転換?
上野氏:
そうなっていくと思いますね。まぁ転換というか,なんか「リア充」という言葉が,言葉本来の意味で「リアルだけ充実してるんでしょ」という具合に歪象化されていくのではないかと。
4Gamer:
あぁ,なるほど。それはありそうです。
上野氏:
実際にそういう人結構多いですしね。リアルの世界はちょっと目立たないかもしれないけど,デジタルの世界で友達も多いしフォロワーも多いし,ひとたびコメント書けば人気者で……みたいな人は結構いますし。
4Gamer:
今はまだ,世界はリアルの比重が強いですからねえ。
上野氏:
そうなんですよ。
そのうちたぶんそういう方向に向かうと思いますよ。僕の中では,感覚的には半々くらいになっていくかなっていう。
4Gamer:
あれ,ちょっと控えめでした。
上野氏:
いや,最終的にデジタルの比重が大きくなる可能性はありますけど,そうなるにしてもかなり先の未来ですね。近々ではたぶん半々くらいかな,っていう。
4Gamer:
その「かなり先」はどれくらいですか?
上野氏:
アハハ,それで言うと100年とかそういう単位ですね。
4Gamer:
なんだぁ,やっぱりそれぐらいはかかっちゃうんですね。
上野氏:
でも半々になるのは,意外とすぐそこだと思いますよ。
4Gamer:
すでにその傾向ありますよね。
僕の感覚ではもう30%くらいデジタルですね。もしかしたら,もっと大きいかもしれないですけど。もう既にパラダイムシフトが起きてるんですけど,みんなそれに気づいてないんですよ。
4Gamer:
どういうことについて言ってます?
上野氏:
それは例えば……例えば昔は,まぁ昔といっても一昔前くらいですけど,リアルの世界で起きた事実を,書物とかデジタルのものに記録して,「事実を記録する媒体がデジタル」だったんですよね。まぁ書物をデジタルというとアレですけど。
でも今では,ツイッターとかで「この投稿パクツイですよね」とかいうのは調べて検索すれば,このツイートが初めてだったとか分かるし,あとはクルマで事故ったときも,ドライブレコーダーを見て「こっちの車が悪い」とかなるじゃないですか。
4Gamer:
あぁ……。
上野氏:
みんなが気付かないうちにもう既に変わってるのは,「デジタルに記録されたことが事実になってる」んですよ。事実を記録するのではなくて,記録されたことが事実であって,記録されていないことは分からない,になってるんです。
交通事故とか,昔は目撃者がいない限り両者の言い分で決まってんでしょうけど,今やドライブレコーダーがないんだったらちょっとそれが正しいかどうか分からないですねえ,という認識になりつつあるんです。
4Gamer:
記録されたことが事実,というのは言われてみればホントそうですね。
上野氏:
これってもう,みんなが気づかないうちにパラダイムシフトが起きてると思っていて。
4Gamer:
はるか昔,2ちゃんねるの全盛期とかに,同じようなことを考えてました。あのころライターさんとかでも「2ちゃんにそう書いてあった」とか「2ちゃんのみんなも言ってる」とか言う人いましたけど,それのどこが事実なんだ? と思ってました。それの拡張版みたいなものですよねいま起こってることは。
上野氏:
そうです。デジタルが便利になってリアルの世界に入っていけばいくほど,デジタルこそがリアルになっていく。完全に置き換わるとまでは言いませんけど,もう3割くらい置き換わってるんだと思ってます。
4Gamer:
そこまで考えは及んでなかったんですが,言われてみれば確かにそうかもしれません。
食事をするときに,人は「メタデータ」を食べてるだけでしかない
上野氏:
ビジネスなんかでも,言った言わないの議論になるんだからちゃんとエビデンスを残しましょう,といって全部デジタルに残すのは,それこそが“事実”だからですね。
4Gamer:
確かにそうです。ビジネスを取り巻く環境もどんどん複雑になっていますし,エビデンスを残しておかないとちょっと怖い。
上野氏:
そう。だから逆に,リアルというのは事実を発生させる場所じゃなくて,体験を楽しむ場になりつつあるんです(笑)。ビジネスの世界とか事実の世界にある,そこで何が起きてるか,価値はいくらなのか,みたいなことは,すでにデジタルに寄せられてるんじゃないかなって。
4Gamer:
それはある意味,世界の分離ですよね。いや,結局は同じものだからいいのか?
上野氏:
例えば高度情報処理社会になって……って,こんな話でいいんですか? ゲーム全然関係ないんですけど(笑)。
4Gamer:
いや面白いです。このまま続けましょう。
上野氏:
高度情報処理社会になって,ご飯を食べるときに,今食べてるものがおいしいとかまずいとかじゃなくて,どんなシェフが作ってとか,ミシュランで星がいくつあってとか,食べログで何点だったとか,どこ産のマグロだとか,そういう知識がおいしさを形作ってるんですよね。
4Gamer:
あぁそれはすごく思います。
上野氏:
その“知識”は,どっちかというとデジタル世界のものだと思っているので,そういうのもあってかなり浸食されている認識です。
4Gamer:
個人的には,ああいうものにすごく抵抗があるしほとんど気にしないんですけど,それはそういう理由だからなのか。
上野氏:
それはそうかもしれないですね。これは「リアルな情報」じゃなくてメタデータなんですよね。
4Gamer:
そう,ただの付加データなんですよね。おいしいかどうかという話でいうと,極論では関係ない。
上野氏:
そうです。
4Gamer:
有名なシェフだったり焼津のマグロだったり,そういう情報はなんらかおいしさに関与してるのは理解できますけど,「だからおいしい」という理由にはならないですよね。
上野氏:
なんか,おいしいという定義が変わってきた感じですよね。
4Gamer:
あぁそういう表現が一番適切かもしれません。
上野氏:
なんか,インフォメーションがかなりの部分を占めるというか。
4Gamer:
確かにデジタルです。
上野氏:
という世界になっているなぁ,みたいな。
4Gamer:
ゲームでもありがちですが,そういう付加データで判断されるようになってくると,なんかもっとプリミティブで曖昧な部分がなくなっていく感じがありますね。「なんか昔懐かしい感じの醤油味だった」みたいな。それこそが「本人の意見」だと思うんですけどね本来は。
上野氏:
もうちょっと,そういうものの価値は認められていいと思うんですけどね。
4Gamer:
ぼんやりしたグレーな部分が,どんどん消えてる気がします。
上野氏:
まあ,もうちょっと目の前の食べ物を味わったほうがいいのは間違いないですね(笑)。
4Gamer:
それはホントそうです。「あの有名店のれん分けだからおいしいです」とか言われても,なんで? としか。
しかしそういうあれこれを考えていくと,確かに世の中がメタバース化する日はどんどん近づいてるんですかねえ。
上野氏:
まぁみんながイメージしてるメタバースはまだもうちょっと先ですね。
4Gamer:
ちなみにメタバースの定義って何だと思います?
上野氏:
いろんな人のいろんな定義があると思うんですけど,3Dの別世界だと思います。
4Gamer:
お,3Dなんですね。
上野氏:
3Dだと思います。ちょっと言葉的に広すぎるので何とも言いづらいですけど,普通に想像するのは3Dの世界だと思いますよ。
4Gamer:
そこでまぁ言い古された言葉ですが,僕らゲーマー的には「MMOと何が違うねん」っていう。
上野氏:
一緒です。究極のところ,一緒のものですね。
4Gamer:
ですよねえ。ちょっと安心します。
上野氏:
なんなら,MMOの世界こそがメタバースを先取りしてると言えるかと。「ゲーム大会」が「eスポーツ」という名前に置き換わったようなもので,昔からあるものを,“メタバース”という文脈で汎用的に捉えるというか。
どうしてもMMOだと“ゲーム”のイメージが強いので,それを汎用的な捉え方をしたものがメタバースだというだけな気がしますね。
4Gamer:
業界の識者的な人もたまに「MMORPGとは違います」って言うんですけど,何が違うのかは何度聞いても納得できなくて。
上野氏:
いや,MMORPGの延長だと思いますね。それで言うと,例えばVRChatとかで会話だけ楽しむ人もいますけど,いやそれを言ったらMMOだって,もう途中からゲームなんかしてなくてチャットしかしてないじゃん,みたいな。
4Gamer:
そうそう。ログインしても結局チャットしてるだけっていう。
上野氏:
それが一番楽しい,みたいなものもあったりするんで,そんなに差があるわけじゃないと思ってます。
4Gamer:
であれば,なんでゲーマーは「メタバース」にピンと来ないんですかね。
上野氏:
そんなに変わらないのに新しい言葉が持ち込まれるのがちょっと嫌だなとか,そういうレベルだと思います。eスポーツも,初めは結構抵抗あったんで。
4Gamer:
eスポーツは特に,昔からやってる人達はちょっと抵抗が強かった気がします。
上野氏:
あれもたぶん,ちょっと伝え方が良くなかったんですよ。eスポーツって,言葉だけで捉えちゃうとゲームをスポーツ化する,じゃないですか。でもゲームって,なんだかんだ言ってもスポーツほどはフィジカルを動かさないですよねみたいな考えとかあったりして「全然違うじゃん」みたいな(笑)。
「スポーツ」というビジネススキームを持ち込んだのが「eスポーツ」だと僕は思ってるんです。
4Gamer:
なるほど。「ゲームがスポーツになった」のではなくて「ゲームにスポーツのスキームが加わった」のだと。
上野氏:
プロがいてプレイヤーがいて,解説者がいてオーディエンスがいて,その構図の中でいかにビジネスとして成立させるか,楽しんでもらうかっていう構図ですよね。そこをアピールすべきだったんですけど,なんかうまくアピールしきれなかったので誤解されたんだと思います。
でも今や! 今やゲームをプレイする人より,ゲーム配信者の実況を観てる人のほうが多いんじゃないですか? もうなってるんですよ。「eスポーツ」という言葉をあーだこーだと言おうが言うまいが,もう世界はそうなってるんです。
4Gamer:
でもそういう話で言うなら,逆にちゃんとアピールできたからゲーマーは嫌だったという可能性はないですか? 結局カネ(=ビジネス)なんじゃないか,と。
上野氏:
そこは,そこまででもないと思いますね。まだちゃんと伝わりきれてないのだろうと。
4Gamer:
日本人は,お金儲けとかにちょっと過敏に反応するじゃないですか。
上野氏:
そこはそうですね。
4Gamer:
現時点でのブロックチェーンゲームもたぶんそういう部分があるのかなぁ,と思ってたりします。
そんなに過敏に反応する必要はないはずなんですけどね,本来は。
ゲームの中でも多様性があってもいいと思うんですけど,たぶんみなさん「ゲームというものは子供まで楽しめるもの」みたいな発想があるんでしょう。それは一面の真理としては正しいと思うんですけど,ビジネスとして成り立たないと継続しないので……。
4Gamer:
子供じゃ楽しめなさそうなゲームもたくさんあるので,そういうわけでもなさそうな気がします。でもそれにしたって,お金の話はそこまでセンシティブにならなくていいとは思いますけどね。ゲームの内容でそれがファーストプライオリティだとしたら,ちょっといただけませんが。
AIイラストが出回る時代だからこそ,価値のキープのために“メタデータ”が必要
上野氏:
そう。お金の話は大事なんですよ。
僕はマンガとかアニメも好きですけど,アニメーターの皆さんのサラリーが低かったりするのは僕にとっては非常に残念でならないです。ビジネスとしてある程度成り立たないと,やっぱり継続しないんですよ。つまり文化がなくなっちゃう。僕が一番危惧するのはそこですね。
ゲームだけじゃなくてマンガもアニメも世界と戦っていかないといけないので,その文化自体の火を絶やすことが一番の悪なんですよ,僕の中では。盛り上げていくためにどうするかという発想しかないです。
4Gamer:
外側は盛り上がっても,アニメーターのところまでいかないことが多いらしいですからねえ……。
上野氏:
あれはいろんな……なんというか。
4Gamer:
でもゲーム開発も同じだったらどうしよう,ってちょっと危惧してるんですが。
上野氏:
全然マシです。マシですけど……。
4Gamer:
でもスマホゲームって,当たれば月に何億,何十億って売り上げるわけですよ。
上野氏:
今やレッドオーシャンかブラックオーシャンか,という感じですしねえ。確かに一発当たれば,本当に投資額の100倍とかの利益があるような世界ですけど。
4Gamer:
そうですね。当たれば。
はい,当たれば(笑)。確率で言ったら2%とか3%とか,それ以下の世界。
4Gamer:
セルランの上位勢もあんまり変わらないですもんね。
上野氏:
変わらないですねえ。
4Gamer:
そんなところに,ニョキニョキ上がってきたのが中国。
上野氏:
すごいですよね。その良し悪しは別として,素直にすごい。稼ぐ仕組みとか技術力も含めてすごいなと思います。
4Gamer:
ずっと昔にChinaJoyに行ったとき,それはもう見事なモンハンのパクリが作られていて。まぁ正直パクり度合いはフォローしようがないなと思ったんですが,ゲームの歴史は似たような感じで積み上げられてきたし,そもそもよく考えたらあの時代にモンハンのパクリが作れるの結構すごくない? とかもちょっと思ったりして。
関連記事:[CJ 09]ある意味かなりの注目作「Hunter Blade」はどの程度モンハンなのか?
上野氏:
いや普通にすごいですね。
4Gamer:
あの技術力がついに花開いちゃったわけで,なかなか複雑な気分です。
上野氏:
危機感はありますね。純粋な技術力だと,やっぱり今は中国とかに遅れを取っているし,韓国もすごいですね。
4Gamer:
韓国もすごいですね。PCオンラインで培ったあの技術。
上野氏:
ちなみに僕エンジニアなので……って,これまた話飛んじゃっていいですか?
4Gamer:
どうぞどうぞ。
上野氏:
エンジニアだから,なんで中国の技術力があんなに優れているかというのはなんとなく分かっていて,あれはソースコードが出回ってるからなんですね。
4Gamer:
あー,そうですよねえきっと。
上野氏:
これ本当に全然良くないことなんですけど,例えばどっかの会社で作ったソースコードがあって,それは別に日本から流出したとかそういうのじゃなくて,中国のどっかの会社で作られたものが,なぜだかほかの中国のゲーム会社で使われたりとかして。どんどんソースコードが循環してるんですよね。
これやると,ビジネスの倫理的な良し悪しは別として,発展度はめちゃくちゃ上がります。絶対上がる。
4Gamer:
全体のレベルが底上げされていくんですよね。
上野氏:
そう,間違いなく上がります。だからといって推進する気はまったくないんですけど,投資が多いとかそういう理由じゃなくて,ソースコードが出回ってるから発展したんですよね。
4Gamer:
そこにもってきて,人材の流動性っていうのもありません?
上野氏:
ありますね。そういう話でいうなら,韓国とかもそれがあります。
4Gamer:
あぁそうですね。大昔に韓国の業界人から「ソース持ってやめて次の会社で使うんだよね」と聞いたことがあるので,ソースコードの問題は韓国でもいくぶんあったものと思います。
上野氏:
あと韓国は,PCゲームでテクノロジーを磨いたのがスマホにも活かされてるし,それがPCゲームにも活かされてるので,やっぱり一歩先んじてる印象はあります。日本だとコンソール機があってPCがなくて,携帯はガラケーで次スマホ,とかだったので,テクノロジーを磨く時期があんまりなかったんですよね。
4Gamer:
コンソールが一大勢力になったということの裏目が,ここにきて出てくるとは思わなかったです。
上野氏:
そうですねえ。
ただまぁテクノロジーはどんどん入れ替わるので,今ならAIとかはワンチャンありますね。日本はAIに対して結構寛容なんで。
4Gamer:
びっくりするくらい寛容ですね。まぁ上野さんも割と寛容ですけど(笑)。
近未来のこと
— Hironobu Ueno | double jump.tokyo CEO (@h2ueno) August 25, 2023
・出生率低下への対策
・人種等の属性による差別を失くす
・種の存続のための多様性確保
・世界総人口のコントロール
などの観点から、AIがランダムに遺伝子操作して生み出した「ジェネレーティブ人類」を赤ちゃんとして家族に迎え入れる時代
みたいなSF妄想をしてしまった
上野氏:
うん寛容ですね(笑)。寛容なほうが,結果的に国としては得するはずです。
4Gamer:
僕も自分では割と寛容なほうだと思ってるんですけど,意外と世の中はそうでもないっぽいんですよね。
上野氏:
そうですねえ。
4Gamer:
あれはなんなんでしょう。分からないものに何かを委ねる恐怖ですかね。
上野氏:
もあるかもしれませんし,今まで厳しく自分を律してきたのに,急に寛容なものを受け入れられないということかもしれません。
4Gamer:
なるほど。
上野氏:
せっかくこっちはルール守ってきたのに,緩いルールでやるあいつはずるい,みたいな。
4Gamer:
なんとなく理解はできます。でもStable DiffusionのAIのイラストもそうですけど,よくわかんない方向に炎上しちゃってた気がしてて。
上野氏:
そうですね。
4Gamer:
イラストを見る側は,誰が描いたものであろうが極論ですが関係ないわけで,実際に賞まで取ったAIイラストもあるわけじゃないですか。
AIで描いた絵はインチキ?! 美術コンテストで1位受賞、芸術論争に(2022.10朝日)
上野氏:
これまたさっきのメタデータの話になりますけど,AIとかが出回ってくると,単なる絵に対するコストがむちゃくちゃ落ちてくるわけですよ。やっぱり,コストが高いもののほうが価値が高い,と人間は認識するわけなので,コストが低くなると絵の価値も低くなるんですよ。
4Gamer:
絵でもテキストでも,AIの普及で危惧されるのはそこです。
上野氏:
でもこれ,一つ手があって,この絵は○○さんが描きましたよという署名入り,つまりクリエイターの名前入りのイラストというのは,価値がある程度は担保されると思うんです。だから,クリエイターの名前が入ってない絵というのは,価値がどんどん落ちていくと思います。一方でクリエイターの名が入ったものは,価値がキープされる。
4Gamer:
さっきの食べログの話ですね。
上野氏:
結果的に,絵もそういうメタデータこそが重要な時代になっていくと思います。
さっきの食べログの話は,なんでそういう情報が重要になってきたかというと,輸送技術とか保存技術によって,誰もが安価においしいものが食べられる時代になったからなんですよ。要は食べ物がコモディティ化しちゃったんです。だからメタデータの方が重要視されてるわけで,それと同じことが絵にも起きます。
4Gamer:
なんでもそうですけど,コモディティ化すると急激に変質する気がします。
しかしさすがに食べ物は無理ですが,絵だとNFTの出番になりそうですか?
上野氏:
NFTは,その一翼を担うことは可能かもしれませんけど,NFTがあるかないかに関わらず,時代はそうなっていってると思いますよ。だからこそ,人間がちゃんと労力とか想いを尽くして作ったものに対して価値をつけていくには,NFTでもなんでも使えるものを使ってちゃんとその情報価値をアピールしないといけないし,やらないと文化が廃れていくんではないかと。
4Gamer:
確かにおっしゃるとおりですよね。でもそれで言うと,なんか表層しか見てない感じの意見で申し訳ないんですが,NFTアートってありますよね。NFTとアートという組み合わせは,素人意見ですがちょっと取り合わせが悪くないですか?
上野氏:
あ,ちょっと分かります。
4Gamer:
どっちも投機商品みたいなものなので,激しさ倍増といいますか。
上野氏:
これモダンアートとかにも言えることですけど,マルセル・デュシャンが,便器だけ置いて「泉」って名をつけたりして。でもあれって,普通の人があんなことやっても意味がないわけですよ。
※マルセル・デュシャン「泉」(Fontaine)。実は1950年のニューヨーク展示から,何度もレプリカが製作されている
ちょっと気になったんですけど,ビデオゲームを作るときに「アート」をやっているという意識はあるんですか?
Chen氏:
意識はあんまりないんですけど,でも逆にすべてのものはアートだと思います。このコーヒースプーン一本ですら,アートになります。コンセプトさえあれば,それはアートになります。例えば一つ有名な装置があって,便器をこう……。
上田氏:
マルセル・デュシャンですね。
Chen氏:
そうです,さすが上田さんです!
僕は芸術の歴史を知ってから,その「便器」の芸術性を見い出すことが初めて可能になりました。ちゃんとしたコンテクストでアイデアがあれば,作ったものはやっぱりアートであって,アートは目で見たそのものではなくアイデアだと思うんです。(指で頭を指して)もし僕がクリエイターが伝えたいメッセージを理解できるのであれば,それはアーティスティックな体験だと言えます。
4Gamer:
そうですね。
デュシャンの名前があって,ちゃんとした美術館で展示されてるというストーリーもあって,初めて価値認識がされるわけです。でもデジタル上の絵なんかは誰もがコピーできちゃうから,誰がどうこうみたいなストーリーが作りにくいんです。
そこに対してNFTというものがあって,ご存じのようにNFTというのは「絵そのもの」じゃなくて,誰が描いたとか,そういうものをトレースするための技術で価値担保したにすぎないんですよね。
4Gamer:
さっきのメタデータの話につながるわけですね。
上野氏:
はい。価値担保したにすぎない技術なんですが,でもまあそういうのが価値の大半を占める時代になっちゃってるので,結果的に役に立つだろうなという感じです。
4Gamer:
そうなんですけど,いまだに「コピーできない」とか大いなる誤解をもって認識されていることが多いあたり,なかなか前途多難かもしれません。
上野氏:
コピーされないわけじゃないんですけどね……。というか普通にコピーできますし。
4Gamer:
意外と多くの人が知らないのではないかと。
上野氏:
絵は普通にコピーできるじゃないですか。
4Gamer:
そうですね。
上野氏:
さっきのデュシャンの便器の写真だって……。
4Gamer:
コピーできます。
上野氏:
そうそう。別にコピーなんていくらでも,右クリックコピーで,別にできるじゃないですか。食品とかも同じで,レシピ通りに作れば“もの”としてはパクれるんですよ。ただメタデータ……それが誰が作ったかとか,何で作ったとか,そういうものはコピーできないんです。
だからNFTがコピーできないというのは,そのメタデータ部分であって,画像部分というのはコピーできるわけです。
4Gamer:
たぶんそこが理解しづらいところだと思います。そのものはコピーできるのに,なんの意味があるの? ってなっちゃうのも分かります。
上野氏:
あくまでもメタデータの保存技術とか流通技術であって,本体ではないんですよね。そこがたぶん難しいというか,理解が難しいというか……。
4Gamer:
正直僕も,一番最初にそれを聞いたとき「?」ってなりましたもん。
上野氏:
まぁここまで話したようなことを,「本体自体に価値がある時代ではないじゃないですか」みたいにこと細かく説明すると,「まあ確かに」って納得してくれる人も多いんですけど,全員にそれをするわけにはいきませんし(笑)。
「そのもの」の価値だけを認めるんだったら,あなたもう食べログも見ないでくださいね,という話ですけどね。
4Gamer:
まぁ極論気味ではありますがそういう話ですよね。
上野氏:
メタデータの価値を認めないのであれば,絶対にブランド名を見て服を買わないでくださいね,という。まぁ個々人の意識はどうであれば,もうメタデータの価値の方が大きい時代になっちゃってますけどね。
4Gamer:
ここまでの概念ぽい話に納得できてないと,存在がそもそも難しいですからねえ。詳しくない人を騙すみたいな煽り文句も多いですし,いまのままだと色モノで終わっちゃいます。
上野氏:
そうですね。
日本でマスアダプションするときの最大の問題は,インフルエンサーの層が薄いこと
4Gamer:
「コピーできないってすごい」とか「だってコピーできるんでしょ」とか思ってしまう普通の皆さんに,どうやってアプローチしていくのがいいんでしょうかね。なにかいいアピール方法って思い付いてますか?
上野氏:
そこはやっぱり難しいですよね。なにかのパラダイムシフトが起こらないと,認識がそういうものに追いついてこないと,説明したからといってなかなか難しいとは思います。
4Gamer:
何か「きっかけ」がないとですよね。
上野氏:
でも本当は皆さん分かってるはずなんですよ。ルイ・ヴィトンと全く同じ素材で同じ製法で,でもルイ・ヴィトンじゃないからルイ・ヴィトンのタグが付いてないカバンがあるとして,「それ一緒じゃん」って言われたときになんて思うのか,とかね。
4Gamer:
まぁそういうのちょっと考えます。
上野氏:
でもまあエンタメの話なので,そんな説教臭い話をされても納得しないんですよね(笑)。だからちょっと難しいところで。自然と認識してもらえるようにならないと難しいと思っています。
4Gamer:
それは何かキャズムを飛び越える,何かがないと?
上野氏:
そういうブレイクであれば,やっぱり面白さとかIPとか,そういうものじゃないのかなと思ってるんですよ。
4Gamer:
上野さん的にも「これでしょ」っていう解決策の提示は厳しい感じですか。
上野氏:
なかなかね……。なんでもそうですけど,飛び越えて入って一回やってみればなんとなく分かるんですよ。でもそれを説教臭く説明されても,なんかねえ……。僕だってちょっとイヤです(笑)。
ロジカルに言われると,ロジカルに反撃できるんですよ。すべてのものごとには,いい面も悪い面もあるから,いい面を言われても悪い面が言えるし,悪い面を言われればいい面が言えます。でもそういうやりとりをしているうちはダメなんですよね。
4Gamer:
良さを説明しないといけない時点でダメ,というのも分かりますし,そもそもそういう概念的な話以前に「MetaMaskのアカウントを作ってください」と言われて普通は萎えると思います(笑)。
上野氏:
あれね(笑)。そもそも概念の難しさもありますし,それにプラスして面倒くささもあって。もう単に面倒臭いんですよねぇ。
4Gamer:
こんなに面倒くさいことをしなきゃ遊べないの? って普通にイラっときたんですけど,実は遊ぶためにはもっとステップがあったりしますし。
上野氏:
面倒なのは良くないですよね。
4Gamer:
現時点であれを超えてる人って,投機目的の人か業界人じゃないですか,って言いたくなります。
上野氏:
もしくはイノベーターの人か。
4Gamer:
あぁ,本当のイノベーター。
上野氏:
はい,本当のイノベーター。Apple Vision Proを50万円だけど買っちゃう人。そういう人は割とブロックチェーンゲームやってますね。でもそれってイノベーターなので,マスじゃないんですよね。
4Gamer:
マスからはちょっと遠そうですね。
上野氏:
また,ちょっと違う話で申し訳ないんですけど,いまちょっと出てきたキャズム※理論ってあるじゃないですか。
※キャズム(Chasm)とは,新しいサービスや商品が世に登場したときに,それが広く浸透していくときに発生する障害,乗り越えるべき壁のこと。「谷間」「割れ目」を意味する言葉からきている。
4Gamer:
ありますね。もはや普遍的な概念になりました。
上野氏:
イノベーターの後に,アーリーアダプターっていうのがあって……アーリーアダプター※ってインフルエンサーのことだと僕は思ってますけど。次にアーリーマジョリティー,レイトマジョリティーと続きます。
で,なぜキャズムがあるかというと,インフルエンサーがちゃんとマスのところに進出しきれてないのが要因だと思うんですよ。
※キャズム理論の前提となるイノベーター理論においては,顧客グループを5種類に分ける。イノベーター,アーリーアダプター,アーリーマジョリティー,レイトマジョリティー,ラガードで,市場開拓は上から順番に進めていく。
4Gamer:
昨今の状況的には確かにそれが一番しっくりくる解釈な気がします。
特に日本は,インフルエンサーが弱いと思ってます。まぁ最近ではYouTubeとかのおかげでようやく“架け橋”ができつつありますけど。
例えばNFTの世界には,BAYC(ベイシー)と言われる猿の絵のNFTがありますけど。
※Bored Ape Yacht Club(BAYC)は,世界でもっとも人気が高い……と言われているNFTコレクション。Yuga Labsが発行するもので,すべて猿がモチーフになっている。
4Gamer:
はい,超有名な。
上野氏:
あれがアメリカとかで一定の流行をみせたのは,やっぱり本物のセレブリティたちがTシャツ着たりとか,NFTを買ったりしたからなんですよね。※
それに対して日本のセレブリティは……まぁ日本でセレブリティっていうと芸能人が多かったりするんですけど,いろんな規制とか制約の下に活動してるんですよね。新しい技術とか概念を使っちゃいけない,みたいな。使うと叩かれるし。おとなしいことしかできないのが日本の社会なんですよね。
※BAYCを購入した有名人はジャスティン・ビーバー,マドンナ,パリス・ヒルトン,ネイマールなどが挙げられる。
4Gamer:
なるほど確かに「セレブ」の行動1つ取っても結構違いますもんね。
上野氏:
日本でも,芸能人と言われている人たちがインフルエンスすべきなんですけど,そういう人たちはリスクを回避する傾向にあって,新しい技術とかあんまり使わないですよね。
4Gamer:
セレブじゃないかもしれないけど,YouTubeとかには結構そっち系で有名な人,とか出てきてるじゃないですか。
上野氏:
確かにTwitter(X)なりYouTubeなり,有名な人がようやく出てきていろいろやってるんですけど,なんていうか……うさんくさいと思われてるわけですよ。
4Gamer:
まぁそうですね。
上野氏:
まだマス化しきってないので,どうしてもうさんくさく見られちゃう。
4Gamer:
まぁ実際にちょっとうさん臭い人もいるので,ある程度仕方ないとは思いつつ,そこから状況が好転しないのは問題だと思ってます。
上野氏:
そう。だから僕は,インフルエンサーが弱いのが日本の社会の特徴だと思ってます。弱いというか,層が薄い。
4Gamer:
特定の層しかいないということですね。
上野氏:
そう,特定の層しかいないから「インフルエンサーと言えばあの人」みたいになっちゃうんですよ。アメリカなんかでは,芸能人もインフルエンサーの一部ですし,すごく層がぶ厚い。だからキャズムを起こしやすいんですよ。
4Gamer:
それが本当なら,日本ではこの先も結構厳しいじゃないですか。
上野氏:
でも日本は,その代わりというわけじゃないでしょうけど,イノベーターがめっちゃ多いんですよ。
4Gamer:
あぁなんかそれは分かる気がします。割と新しいものに食いつくのが速いですよね。
上野氏:
イノベーターが多いので,ゲームとかでちょっと変わったことをしても日本は割と食いついてくれます。日本のイノベーターの間ではやったアメリカでブレイクして逆輸入されるパターンも昔からよくありますし。
キャズムを超えるのは,日本であるべきだったはずなのに,なぜ海外でブレイクして逆輸入されているのか。なんだそれ,みたいな(笑)。
4Gamer:
インフルエンサーの層が薄いっていうのは,確かにほかのジャンルでも言えることかもしれませんね。海外のセレブは,社会問題なんかでも結構発言してオピニオンリーダーになりますが,日本じゃそういうのはほぼ何もないですからね。
上野氏:
そうなんですよ。日本でマスアダプションするときの最大の問題は,インフルエンサーの層が薄いことなんです。
4Gamer:
言われて気付いたくらいですが,確かにそうかもしれません。
上野氏:
日本のキャズムがすごく深いのは,そこが理由なんだろうなって思ってます。
最近では他社さんがYouTuberを使ってNFTを広めようとしていますけど,あれは間違ってないと思うんですよね。今の日本のインフルエンサーはそこにいるので。
4Gamer:
テレビで芸能人がNFTについて熱く説明するのは,確かになんか想像できないです。
上野氏:
いまだとちょっとレピュテーションリスクになるかもしれませんしね。
NFTにおいて本当に大事なことは「値付けされる」こと
上野氏:
……ってすみません,ホントにあっちこっち話が飛んでる。
4Gamer:
いや全然オッケーです。ちゃんとつながってますし(笑)。
冒頭で話したように,NFTとかブロックチェーンゲームをこのあとどのように広げていくのがいいんでしょう,というのがそもそもの議題(?)ですし。
上野氏:
なんか乱暴なまとめみたいになっちゃいますが,本当はもうすでにパラダイムシフトは起こっている。目の前のものよりもメタデータの方が大事にされる社会に対して,メタデータを流通させるための技術がNFTなんですけど,抽象的すぎて伝わりきらないという……。
4Gamer:
そんな中,キャズムを超えるかもしれないブレイクスルーとして,御社が作ってる“三国志大戦”(Battle of Three Kingdoms)なんかは,面白さとかIPの強さを武器に,その一端になったりしませんか。
上野氏:
そうですね,ちゃんと楽しくなる仕掛けは考えていますし,マスアダプションする一つの契機になってくれればいいかなと思ってます。
4Gamer:
しかしマスアダプションにあたって,トークノミクス……というか経済的側面って絶対に必要なんですかね。
上野氏:
ある程度はあった方がいいと思います。ある程度,は。
4Gamer:
その「ある程度」はどんな感じのレベルを想定されてます? なんかやっぱりお金が絡むと,好き嫌い以前にセンシティブになっちゃうというか。
上野氏:
そうなんですよねえ。
4Gamer:
本質論で言うなら必要ないですよね,トークノミクスは。
上野氏:
まったくそうですね。
4Gamer:
なんで毎回絡めちゃうのかなぁ……と。ゲーム性とかで勝負しないのかな,とか。上野さんなら納得できる回答をくれそうなので聞いちゃいますが。
上野氏:
これねぇ……またちょっと難しいところなんです。
僕の中でのNFTは,転売すること自体は主目的じゃないと思っているんですよ。いや“主機能”じゃないと言った方がいいかな。ただ,二次流通市場で取引できるという機能があるがゆえに,値付けがされるわけですよ。そしてその「値付け」こそが,一番重要だと思ってます。
4Gamer:
その「重要」というのは?
上野氏:
例えば野球とかサッカー,F1とかもそうだと思うんですけど,いろんなスポーツで,選手の年俸いくらですよって出るじゃないですか。何億円とか,何十億円とか。それに対して「わ,すごい!」ってみんな言うわけですよ。
でも,年俸がいくらなのかに関係なく,その人のプレーは元からすごかったんですよ。そのスポーツをよく知っている人からすると,絶対そうですよね。でも世間一般の人,例えばサッカーとかにとくに興味があるわけではない人たちが,興味を持って「確かにすごいな」って思う一つの基準が,価格なんですよ。
4Gamer:
なるほど分かります。実際に私,スポーツにはほとんど興味がないですが,たまに選手の年俸のニュースとか見て「へーすごいな」くらいは思います。
上野氏:
ね。よっぽどその分野に興味がある人以外は,まず価値認識をするのは「価格」であることが多いんですよ。例えば,車に興味がない人が,車に。
4Gamer:
あぁホントそうですね。クルマは好きなので,すごく分かります(笑)。
上野氏:
または,バッグに興味がない人が,バッグに。
4Gamer:
たまに,値段聞いてびっくりすることあります。
上野氏:
そうそう(笑)。でもそれだけの価格が付いていて,二次流通額も落ちてなくて,何十年もこの金額ということはよっぽど価値があるんだなぁ……と,その実態を見て逆算して価値を把握するみたいなところもあるわけです。なので,値付けされることというのは,めちゃくちゃ重要なんだと思いますね。
4Gamer:
なるほどそういう観点でしたか。
上野氏:
さっきeスポーツなんかも例に出ましたけど,ゲームとかマンガとかアニメが好きな人は,「どう考えてもこれすごいでしょ。なんでこの価値が分からないの」と言い続けてるわけで,まぁでもなんかそういうサブカル……いや,日本においてはそのサブカルこそが“メインカル”なんですけど,それはさておくとして(笑)。
4Gamer:
お,その話をします?
上野氏:
今度ゆっくりやりましょう。またなんか深遠な話になっちゃうし(笑)。
それで,そういうサブカルに興味がない人に興味を抱いてもらうというのは,やはりその規模感が重要なわけです。何人集めたとか,プロプレイヤーがいくらもらったとか。なんでそこまで気付かないんだろう?というのは思わないでもないですが,やっぱり“価格”をつけて初めて比べられるわけです。人間は,相対価値に生きる生き物なので。
4Gamer:
絶対的価値なんてそうそうないですしね。
上野氏:
だから「このゲームのエクスカリバーはすごいんだ」と言うよりも,このエクスカリバーには○○円の値段がついてますと言った瞬間に,「それすごいね」とか「手に入れるのすごく苦労したでしょ」とか,そういう世界になっていくわけですよ。だから値付けが重要なんです。取引することそれ自体は副次的効果なんですよね。
4Gamer:
分かるための「きっかけ」なわけですね。
上野氏:
そう。でも分かろうが分かるまいが,初めから“価値”は1ミリも変動してないんですよ。でもそれはもったいないことで,すでに価値があるんだから,ちゃんとほかの分野の人にも認識してもらおうというのが値付けなんですよね。
4Gamer:
なるほど,浅はかに想像していたものとは逆でした。初めからある価値を理解してもらうためのものだったとは。
……いま聞いてて「なるほど」とは思ったんですが,それがすなわちトークノミクスを肯定する全材料になるわけでもないですし,やはり概念の話だからなかなか理解してもらえなさそうな気がします。
上野氏:
そうなんですよ。理屈ではいろいろ言えるんですけど,こんな理屈を述べたところで納得はしてくれないし,そもそもエンタメ領域は“理屈じゃないだろ”みたいな部分があるわけですし。すっと腹に落ちるようなところまで来ないと,なかなかアダプションしないんだろうなとは思ってます。
4Gamer:
ゲーム業界的には,やはりそれは「面白いゲーム」なんですかね。腹に落ちるための必須アイテムは。
上野氏:
何か流行ればいいんですけど,じゃあ「流行る」ってなんだ? みたいな。
4Gamer:
例えばモンハンにNFTが付くとか?
上野氏:
そうかもしれないけど,そうする意味がカプコンにあるのか考えると……。
4Gamer:
そうなんですよねえ。まぁ僕らゲーマーが思ってることもそれですし。「NFTにする意味あるの?」
上野氏:
確かに難しいところです。
たぶん価値認識が逆転するタイミングはあると思っていて,「どうせデジタルアイテムくれるんだったらNFTにしてよ」ってなる時代が来ます。
4Gamer:
んー,昔ブロックチェーンというテクノロジーが出始めの頃って「あなたのMMOの装備は,ゲームがなくなっても残ります!」みたいなことがよく言われてたじゃないですか。その時は正直まったくピンとこなかったです。残ったところで,なんか意味あんの?
上野氏:
確かにその通りで,残ること自体に短期的な意味はないです。
4Gamer:
ですよねえ。
上野氏:
うん,ないですね(笑)。
残ること自体に“短期的な”意味は見いだしづらいです。でも長期的な意味はありますよ。それは何かというと,例えば10年前20年前のゲームでこういう装備を持ってたという情報自体が,リバイバルされた時にすごく重要な意味を持ったりするからですね。
4Gamer:
でもそのときには,たぶんすでにコンテンツ自体が存在しないですよね。
上野氏:
ええ。なので企業とかコンテンツから離れて,そのメタ情報だけがブロックチェーンに残るというのはすごく意味があって,それなぜかというと,今やIPのほうが人間の寿命より長いからです。
4Gamer:
なるほど,アイテムではなくてIPとして見ている。
上野氏:
ディズニーとかがモロにそうですが,ミッキーマウスはたぶん今から100年後にもあるんですよ。
4Gamer:
ありそうです。
人間や,普通の会社の寿命より長い。なんなら,ディズニーという会社は消えてなくなってるかもしれないけど,ミッキーマウスは残ると思います。それがIPの力なわけで,だからIPって企業の持ち物であるかもしれないけど,“公共物”になりつつあると思うんですよ。あらゆるIPが。
企業とかコンテンツから離れたところで,メタデータとしてブロックチェーン上に残るということは,たぶん長期的にはすごく意味あることになるのではないかと。
4Gamer:
あぁでも確かに会社にひも付いたままで,会社と共に消えるIPって多いですもんね。映画とかアニメとかゲームの世界を見ても。
上野氏:
これの難しいところは,短期的にはそんなに意味がないっていう(笑)。
4Gamer:
話が戻ってる(笑)。
んーなんだろうな,例えば僕がリネ2で使ってた剣とか,UOで暮らしてた家とか,そういうのがNFTになってゲームがなくなっても持っていられたりするのは,ちょっと楽しい気がしてきました。
上野氏:
楽しいですよ絶対。
おっさんとかジジイとかになってきた頃に,思い出の価値たるやすごいものになるわけですよ。例えばこのゲームを,あなたは何年何月何日何時何分何秒にクリアしました,というその情報こそが意味があるものだという時代になると思うんですけど。あくまでも長期的には,ね。
4Gamer:
僕もオトナになってようやく,タイムスタンプの入った写真が一番大事なんだということに気付きました。
上野氏:
そういうの,めちゃくちゃ重要なんですよ。
4Gamer:
お金で買えるものはまぁどうでもいいとして,写真はカネじゃ買えないですからねえ。
上野氏:
そうなんですよ。
でもなんかねちょっとね……どうしても,なんか説教くさいというか(笑)。正直に言って,こんな風に一生懸命説明しなきゃいけないうちは,なかなか難しいんだろうなと。
4Gamer:
まぁそうですね。説明しなきゃいけなかったり,がんばって記事にしなきゃいけなかったりするうちは,まだダメなんだなとは思います。
上野氏:
そう,すごく逆説的な話なんですけどね。
まあ理論というか理念というか,そういうものについては今まで言ってきたようなことなんで,間違ってはないと思うんですけど,それをどうやって浸透させていくのかという。
4Gamer:
理念の浸透って必要ですかね?
上野氏:
まぁ,確かに。自然とパラダイムシフトするのが一番理想ですね。
4Gamer:
スマホみたいにね。
上野氏:
そう,スマホみたいに。
ドライブレコーダーで記録したことが事実である,みたいな冒頭で話したことのように,いつの間にかそうなってる,くらいが一番いいです。
4Gamer:
スマホでなんで電話できてるのかみんな知らないけど,普通にみんな使ってますし,そんな感じで。
上野氏:
そうなるのが理想ではあります。そのためには,まずは一回使ってみないと分からないという問題は依然残っているわけで,使ってみる場を提供するのが,たぶん目先の目標になろうかと思います。
4Gamer:
話戻っちゃいますが,誰もが面白そうだと思うコンテンツとか?
上野氏:
そうですね。もちろん全員じゃなくても,ある一部の人に受けるコンテンツもいいんです。まずは使ってもらうというのを実践していくしかないんだろうなと。
4Gamer:
それだと,思ったより時間がかかりそうですよ。
上野氏:
結局は各個撃破ですよね。このIPに興味がある人に,このIPを提供して。
4Gamer:
地道だけど一番早かったりするんですかね。
上野氏:
初めはそれがいい気がします。ただ,どこかで爆発力がくると思うんですよ。キャズム理論の僕なりの日本版解釈なんですけど,さっき言ったように日本はインフルエンサーの層が薄くてキャズムが大きいんですけど,ただ逆の爆発力もあって,日本人はみんながやると自分もやるんですよ!(笑)
4Gamer:
確かに!
だからたぶん,世の中の20%30%の人がやり始めたあとで,70%80%に広まるのがめちゃくちゃ早いと思います。
4Gamer:
じゃあ地道な各個撃破も,そのうちたぶんブレイクスルーを迎えますね。
上野氏:
そうそう。ある臨界点を超えると,なぜかいきなりドンと。
日本はとくに,その臨界点を超えた時の爆発力が良くも悪くもありますね。同調文化なので。
4Gamer:
諸外国にはそういうの,あんまりないんですか?
上野氏:
そういうのは薄い気がしますね。爆発力はありますけど,日本の方が強いです。
4Gamer:
本当にそうなんですね。
上野氏:
まだやってないの? みたいな。同調圧力が良くも悪くも強いので。
4Gamer:
じゃあその臨界点を超えるまでの仕込みを今。
上野氏:
そう。ずっとやってる感じですね。
double jump.tokyoは,価値の変動を捉えて時流に合わせていくのが得意
4Gamer:
「ずっとやってる」と聞いて思い出したんですが,double jump.tokyoって,できてから今までいろんなところのお金が入ってるじゃないですか。投資する人って,その時その時で“価値がある”と思ってるから入れるわけなんですが,この業界の流れってすごく速いから,価値あるものがどんどん変わっていくじゃないですか。
上野氏:
変わりますね。
4Gamer:
そのあたりで,何か投資家とハレーションを起こしたり,何か行動が制約されたり,そういうことはあんまりないですか?
上野氏:
結果的に結構前から老舗としてやってたというのもあって,なんていうか,ブロックチェーンゲームが形になる前からずっとやってこれてるわけです。その過程で価値の移り変わりを何度か経験しているからこそ,価値の変動を捉えて時流に合わせていくのが得意な会社,だと言えます。
4Gamer:
あぁ,なるほど。
上野氏:
今の価値に対して投資してくれとかそういう話じゃなくて,柔軟に変えていけること自体を評価してほしい,みたいな話ができるから,そこはまぁあんまり問題ないですね。
4Gamer:
とはいえ創業2018年で,言うてもそこまで古くないです。
上野氏:
そうそう。
4Gamer:
そこから5年,いったい大波は何回きたんですか(笑)。
上野氏:
そう,波がね,もう多すぎて。楽しくはありますよ,“イベント”が多くて。ひたすらイベントが多いゲームみたいなものです経営も。
4Gamer:
それは攻略のしがいがありますね。
上野氏:
毎週なんかイベントやってるなみたいな。
4Gamer:
ちょっと大変そう……。
上野氏:
ちょっと疲れちゃいますけど,楽しいかと言われたら意外と楽しいんですよ。
4Gamer:
ちなみに,エンジニアとしての自分と,経営者としての自分と,どっちが好きなんですか?
上野氏:
どっちかというと,エンジニアとかゲームクリエイターとしての自分の方が好きだったりします。
4Gamer:
まぁ経営者って,つまるところ「キャッシュが尽きないように動かす」のが仕事ですからね。
上野氏:
そうですね。物作ったりの方が楽しいです。物作ったり,ここまで話してきたような抽象的なことを,抽象的なまま概念として捉えたりとか,そういうことは好きなんですけど。
4Gamer:
好きそうです(笑)。
上野氏:
どっかに投資して……とかはあんまり興味がないというか。いや,もっと興味があった方がいいでしょうけど。でもプロダクトとかサービスを出して,それが評価されて利益を得るというのが,非常に喜ばしいことです。
4Gamer:
会社の活動が正当に評価されて,適切な利益になる,というやつですね。
上野氏:
ええ。そういうのじゃない利益を得ることは,嬉しいけど……まあ「よかったね」くらいのもので。やっぱり,ちゃんと自分の狙った通りのプロダクトとかサービスを出して,そしてそれが評価されて利益を得る,これが一番いいですね。
4Gamer:
たまによく分かんないところで利益が増えても,まぁそんなに楽しくないんですよね。やりきった感もないし。
上野氏:
そう,なんかね。あんまり,うん(笑)。
ゴルフとかでたまたま入っても,そんな楽しくはないですよね。練習してきたものの積み重ねでちゃんとうまくいったときは,めちゃくちゃ楽しいですけど。スコアだけいいことに意味があるのかな,みたいな。それは単なる数字でしかないよな,という。
4Gamer:
ただのエクセルシートに並んでる数字でしかないんですよね。まぁそれに悩まされてるわけですが。
上野氏:
いやほんとそんな感じですね。
……ってホントにゲームが全然関係ない話ばっかりだったんですけど,これ本当に記事になるんですか?(笑)
4Gamer:
がんばります。
上野氏:
僕が記者だったらすでに困ってます。何書けばいいのみたいな。
4Gamer:
まあでもWebXとかX(Twitter)での発言を見て「面白そうな人だな」と思ってたんですが,なんとなく想像どおりでした。
上野氏:
よかったです。
僕は,良くも悪くも一歩引いた目で見てるので,そこがちょっとほかの人と違うかしれませんし,どう思われるかですね。
4Gamer:
あぁ確かにそんな感じですね。
上野氏:
だからむしろ,ミッションを達成できるのだったらNFTじゃなくてもいいじゃん?と思っちゃってるタイプなんです。でも,このテクノロジーは絶対何かに生かせるなと思ってやってる感じです。
4Gamer:
そういう人だから,さっきもちょっと言いましたけどAIに子供を作らせようとかいう話をしちゃうわけですね(笑)。
上野氏:
あははは,そうそう。
4Gamer:
あれ僕も「なるほどなぁ」って思いました。
上野氏:
Twitterとかでよく,そういうタイプの話をしますね僕。
4Gamer:
AIの話も楽しそうです。
上野氏:
僕AIの話をしたらめちゃくちゃ長いですよ?
4Gamer:
じゃあ次はぜひAIでお願いします(笑)。
――――2023年9月21日
- 関連タイトル:
魁 三国志大戦 -Battle of Three Kingdoms-
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