レビュー
[レビュー]あの熱き戦いが装いも新たに。初の完全リメイク「STAR OCEAN THE SECOND STORY R」は懐かしくて新しいJRPGの金字塔
※PC版は11月3日発売予定。
SO2Rは,エニックスから1998年にPlayStation用ソフトとして発売されたRPG「スターオーシャン セカンドストーリー」(以下,SO2)のリメイク作品だ。
RPGと言えば中世ファンタジーの世界設定が多かった中で,「スターオーシャン」は宇宙を舞台としたスペースオペラの要素を取り入れ,他作品とは一線を画す個性を持つ人気シリーズとなった。2作目となるSO2はシリーズの中でも人気が高く,2008年にはPSP用ソフト「スターオーシャン2 Second Evolution」としてリマスター化,2015年にはPSP版をベースにしたPS3 / PS4 / PS Vita版もリリースされている。
今回はリマスターではなく,ビジュアルやサウンド,戦闘システムといった,あらゆる要素に手を加えた完全リメイク作となっている。SO2の25周年を記念する作品と言えるSO2Rは,具体的に何がどう変わっているのかを順に見ていきたい。
※記事制作にはPlayStation 5版を使用しています。掲載しているスクリーンショットも同様。
「STAR OCEAN THE SECOND STORY R」公式サイト
懐かしい世界を新たに彩る“3D×2D”
SO2は主人公が選択可能な「ダブルヒーローシステム」を採用しており,SO2Rでもそれは同様だ。銀河連邦軍の青年将校・クロード,または未開惑星エクスペルに住む少女・レナの視点から物語を辿ることになる。
クロードは惑星ミロキニアを調査中に,謎の装置により,未開惑星エクスペルに飛ばされる。飛ばされた先でモンスターに襲われていた少女・レナを助けるため,光線を放つ“フェイズガン”と呼ばれる武器を使用したことで,エクスペルに伝わる「光の剣」を所持した勇者だと勘違いされてしまう。
一方,レナは突如として出現したクロードにある種の恐れを抱きつつ,モンスターから救ってくれた恩人ということもあり,徐々に打ち解けていく。
ストーリーの大筋はクロード編とレナ編,共に同じなのだが,途中で別行動をとることがあり,それぞれで見られるシーンが異なる。また,クロード編とレナ編,どちらかでないと仲間にならないキャラもいるので,少なくとも2周楽しめるRPGだと言えるだろう。
レナを襲ったモンスターにしてもそうだが,エクスペルでは現在,さまざまな異変が起きている。その原因は“ソーサリーグローブ”と呼ばれる隕石にあり,クロードとレナはその異変の一端に触れることで,ソーサリーグローブの調査をすることになる……といった導入だ。
レナが住む村はエクスペルの中でも田舎の村で,いかにもRPGのスタート地点といったところ。この小さな村から,壮大で冒険心にあふれるストーリーが展開されていく。
さて,最も目を引くのが,ビジュアル面の大幅な進化だ。精緻に描き込まれた背景グラフィックスは,思わず見惚れるほどに美麗。それでいて,キャラクターやモンスターは3Dモデルにせず,ドット絵で残すというこだわりが見られる。
「ドット絵を残す」というこだわりは,スクウェア・エニックスの“HD-2D”にも通ずるものがあるが,それとはまた少し趣が異なる。背景グラフィックスは美麗に仕上がっており,その中をドットのキャラクターたちが動き回るわけだが,SO2のキャラクターは前後左右の4方向だけでなく,斜めの8方向にも移動でき,走るだけでも計12方向分のパターンがある。
このドットパターンの豊富さが,奥行きのあるフィールドをキャラクターが走って移動しても,不自然さを感じさせない滑らかさを実現している。そこに光と影の表現が加わり,公式サイトで“3D×2D”と称されているのも「なるほど納得」の質感に仕上がっている。
風光明媚な景色の数々には思わず見惚れてしまうが,これを生かすかのような新規要素がある。それが「釣り」だ。
水場に近づくと釣り竿のアイコンが表示され,釣りができる。釣った魚を売却すればお金稼ぎになるが,釣った魚に応じて報酬をくれる新キャラも追加されており,世界の広さを考えるとけっこうガチな寄り道要素かもしれない。
釣りと並ぶ新規要素として,「ミッション」もある。オリジナル版では各地にあったスキルギルドは,ミッションを受領するためのギルドにリニューアルされた。
各ミッションの項目を達成すると,経験値やお金,アイテムなどを得られる。項目の総数もスゴいが,報酬もスゴいので,ギルドにはマメに立ち寄り,受けられるミッションが増えていないかをチェックしておきたい。これらをキッチリとクリアしていくかどうかで,資金やスキル習得にかかるSPの溜まる速度がかなり変わる。
もちろん,サウンド面も強化されており,桜庭 統氏による名曲の数々がアレンジされている。なお,オリジナル版の原曲も収録されているので,以前のバージョンを聴きたくなったら,いつでもオプションから切り替えられる。
個人的には,オリジナル版の生き急ぐ感じの戦闘曲が大好きでたまらないのだが,SO2Rではバンドアレンジになり,1ループした後にソロパートなどが追加されていて,聴き応えがある。
また,各キャラクターのボイスもPSP版とSO2R版の切り替えが可能になっている。
遊びやすく改良されたシステムの数々
極限まで追求された“快適さ”
SO2Rを遊んでみて実感したのは,とにかく“快適”だということだ。
まず,タウンマップやダンジョンマップが十字キーの上を押すだけで,いつでも確認できるようになったのは大きい。SO2のダンジョンはけっこう広く,分岐も多いものもあり,マップなしだと非常に迷いやすい。しかし,SO2Rでは宝箱の位置やイベント発生位置まで正確に分かり,ダンジョン探索の効率が段違いに上がった。
上の画像はダンジョンをほぼ踏破した後のものだが,入ったばかりの時点では宝箱やセーブポイント以外は記載されていない。あくまで自分が踏破した箇所だけが描き込まれていくので,未踏のダンジョンに挑む冒険感が失われることはない。
SO2には,町中で仲間と別行動をするプライベートアクション(以後,PA)というものがある。PA中のみ発生するイベントも,SO2Rでは具体的にどこで発生するのかが一目瞭然だ。「どこの町か」だけでなく,「その町の中の,どのあたりで発生するのか」まで分かるのは助かる。
PA中に発生するイベントにはかなり条件が細かいものもあり,すべてを把握するには攻略本や攻略サイトがないと厳しかった。SO2RではPAマークのほかに期間限定マークもあり,マメにマップを開いて確認しておくだけで,「今,どこの町でPAイベントが発生するか」を把握できる。とても便利な機能だ。
嬉しいことに,ファストトラベルも可能になった。十字キーの上を押すと「ガイドマップ」が表示されるので,これまでに到達したことのある町やダンジョンに一瞬で飛べる。
エネミーとの遭遇は,ランダムエンカウント方式からシンボルエンカウント方式に変更された。長いダンジョンの探索中に何度も敵と遭遇するのはどうしてもストレスになりがちなので,この変更も嬉しいところだ。
また,自分たちより弱い敵の場合はシンボルが緑色になり,積極的に近づいてこないようになっている。
快適さの追求はこれだけではない。仲間たちと協力して発動する「スーパー特技」の中に「用心棒」というものが追加され,この特技を「ON」にしていると,仲間がエネミーシンボルを抑え込み,その間に横を通り抜けられる。狭い通路が多いダンジョンなどで,エネミーシンボルを避けにくいときに役に立つ特技だ。
スーパー特技には「リメイク」も追加されている。これは武器や防具,アクセサリに追加効果「ファクター」を付与できるという特技だ。ファクターにはさまざまな種類があり,たとえば「DEF UP 10%」といったものから,直前に受けたダメージを自身の与ダメージに上乗せする「復讐」など,幅広いタイプの効果が用意されている。
個人的に嬉しかったのは,各データベースの充実だ。アイテム図鑑,エネミー図鑑,そして魚図鑑もある。
地味なところでは,「クイック回復」も便利だ。フィールド画面もしくはメニュー画面で十字キーの右を押すと,回復系の術が使えるキャラが全体を回復してくれる。
ステータス画面のこだわりも見逃せない。初代PS版,PSP版,SO2R版のイラスト3種を切り替えて表示できるのだが,初代PS版のイラストだけは下からスッと出てくる演出になっている。もちろん,初代PS版のステータス画面の演出を踏襲しているわけだ。
漫画家の坂本太郎先生が過去,この演出をネタにした1ページ漫画を描いていたことから,体験版で「下からスッ」を確認されたときに,ファンの間で話題となった。まさか25年ぶりに「スッ」が見られるなんて……。
新たな要素により,高まる戦略性
SO2の代名詞とも言える激しい戦闘は健在
SO2と言えば,戦闘の激しさ,楽しさもウリだった。気持ちが盛り上がる桜庭 統氏による戦闘曲をバックに,小気味よい効果音と共に飛び出る高ダメージの数値。激しい画面エフェクト。クロードが必死に攻撃していると思ってボタンを連打していたら,実はとっくに麻痺状態にされて動けなくなっていた……なんてのもご愛嬌だ。
あらためて解説すると,SO2の戦闘はフィールド上で操作キャラを自在に動かすことができ,モンスターに対して通常攻撃や必殺技などを当ててHPゲージを削っていく。リアルタイムのアクション要素があるのだ。
このような戦闘をさらに奥深いものにしているのが「バトルスキル」だ。オリジナル版ではスキルギルドで「戦闘スキル」を購入した後,SPを消費して強化していたが,SO2Rでは戦闘後に得られるポイント「BP」を使って,序盤から全バトルスキルのレベルを自由に強化できるようになっている。
戦闘システムは改良されただけではなく,「アサルトアクション」と呼ばれる新規要素も導入されている。これは,バトルメンバー以外の仲間を召喚して援護攻撃を行えるもの。つまり,ベンチウォーマーになりがちな控えメンバーたちを有効に活用できるのだ。
また,アサルトアクションでの召喚限定になるが,特定のアイテムを入手するとシリーズの歴代主人公を呼び出せる。「3」以降はキャラクターのモデリングが3D化しているため,アサルトアクション用のドット絵は新たに描き起こしているという気合の入りようだ。
アサルトアクションはクールタイム制になっており,「通常攻撃」「弱点ダメージ」「バトルスキル発動」によって蓄積速度が上昇する。何もデメリットがないので,通常攻撃→必殺技→アサルトアクションといったようにコンボをつなげて,どんどん活用したい。
また,SO2Rではブレイクシステムも採用されている。スクウェア・エニックスのRPGではおなじみと言っていいシステムだが,シールド値をすべて削りきると「ブレイク」となり,その敵は一定時間行動不能になる。ブレイク中は「防御無視」「絶対クリティカル」「攻撃必中」「スフィア大量排出」といったボーナスタイムと化すので,機会があれば狙ってみよう。
既存タイトルのブレイクシステムと異なるのは,SO2Rの戦闘におけるブレイクは必須ではなく,あくまで追加要素であるという点だ。ブレイクシステムを搭載したスクウェア・エニックスのRPGは「ブレイクをしていかないと,まともに敵のHPを削れない」ことがほとんどだが,SO2Rは違う。
SO2には元々,ブレイクシステムがなかったため,このようなバランスになっているのだろう。実際,「ブレイクできたらラッキー」くらいの感覚で進めても普通にクリアできる。
ブレイクを狙って,賢く効率的に戦闘を進めたい人にオススメしたい新要素が「ジャストカウンター」だ。エネミーが攻撃する瞬間には体が赤く光る。これに合わせて[×]ボタン(※PS用コントローラの場合)を押すと,ジャストカウンターが発生し,エネミーのシールド値を1つ削り,自身のMPが最大25%回復する。
メンバー4人とアサルトアクションを加え,従来のワチャワチャした戦闘もいいが,あえてパーティーを1人だけにしてジャストカウンターを積極的に狙っていくと,格闘ゲームのような感覚でも楽しめる。戦闘の幅を広げるナイスなシステムだ。
ブレイクの効果として前述した「スフィア大量排出」も新規要素の1つだ。「敵の撃破」「クリティカルの発生」「ブレイクの発生」時に,敵から黄色いクリスタルのような「スフィア」がボロボロと出現する。これを溜めるとボーナスゲージが上昇し,溜めた量と「隊列」の種類に応じて,さまざまなボーナス効果が発生するのだ。
オリジナル版での「隊列」は戦闘開始時の初期位置を変更するものだったが,SO2Rではボーナスの値によってさまざまな効果が得られるようになった。これにより,倒されずにボーナスを維持していくことが重要になり,ボス戦の直前や経験値稼ぎ時など,状況に応じて隊列を変更する戦略性も生まれた。
ボーナス効果は戦闘が終わっても継続するが,「ジャストカウンターに失敗」「操作キャラの戦闘不能」「エネミーからバックアタックを受けてから戦闘開始」のいずれかが発生すると,その時点でボーナスゲージが壊れてしまう。それまでに溜めたボーナス効果は消えてしまうので注意しよう。
ちなみに,戦闘で敗北するとゲームオーバー画面になるが,「リトライする」を選択すると戦闘前のメニュー画面の状態に戻る。つまり,ボス戦で負けても,装備変更などをしてすぐに再戦可能だ。オートセーブ機能もあるが,負けるとは思っていなかった場所でゲームオーバーになったときに非常に助かる。
「遊びやすさ」を引っ提げて現れた
懐かしくて新しいJRPGの金字塔
序盤をプレイしていた頃は「ここまで背景がキレイになると,逆にドット絵のキャラクターが浮いて見えるな……」と思っていたのだが,ゲームが進むにつれて「いや,これが正解だ。よくぞ,やってくれた!」と感じるようになっていった。ドットで描かれた2頭身のキャラクターが精一杯,感情表現をしている姿が可愛くて仕方ないのだ。次第に「ああ,そうか。SO2って,こうだったよな」と,忘れていた何かを思い出した。
本作は「SO2という作品を今の世代に遊んでもらうべく,遊びやすく改良したリメイク」であると同時に,「かつてSO2をプレイした人が再び遊ぶ」場合も大事に考えられていると思う。SO2ファンの「記憶の中の,思い出のSO2」の解像度をグッと上げて具現化している……といったところだろうか。
戦闘終了後,「80点ってとこだな」という決めゼリフと共に剣を構えてカッコつけるクロードのドット絵を見るたびに,25年前に夢中で遊んでいた自分を思い出すのだ。胸に去来するこの感情は,もしキャラクターが3Dモデリングだったら,まったく違うものになっていただろう。
そして,なんと言っても,遊びやすい。ほとんどない読み込み時間。ファストトラベル。イベント倍速機能とスキップ機能。ダンジョンマップ。あの頃に欲しかったすべてが,ここにはある。
SO2は,豊富な仲間キャラとダブルヒーローシステム,親密度によるエンディング変化などの要素によって,周回プレイが楽しめる作品だ。クロード編とレナ編があるので,2回プレイしたという人は多いと思うが,それ以上となると,ただでさえボリュームのある作品なので多大な時間が必要だ。
しかしSO2Rには,ほぼすべての要素を引き継いで周回プレイが可能な「NEW GAME+」がある。クロード編とレナ編をしっかり楽しみたい人も,「1周目は仲間の選択をミスったんだよなー!」と後悔している人も,過去のバージョンよりも気軽に「もう1周いくかー」と思えるはずだ。
ちなみに,2015年に発売されたPS4版「スターオーシャン2 Second Evolution」をPS5本体で起動すると「PS5では予期しない動作をする可能性があります」との注意書きが表示される(戦闘中の表示がおかしくなることを確認した)。PS4からPS5へとハードが移行していくなかで,今回のSO2Rはまさに渡りに船のリメイク版でもあったわけだ。
オリジナル版の発売から25年と考えると,初代PSでSO2を遊んだプレイヤーはいい歳になっているはずだ。腰を据えて大作RPGをプレイするというのは,娯楽に使える時間的にも体力的にも厳しい年代かもしれない。
それでもぜひ,プレイしてみてほしい。「久しぶりに遊んでみるなら,こんなSO2がいいな」を見事な形で実現してくれているから。タイトルの「R」には「リメイク」だけではなく,「リプレイ」の意味もあると思っている。
筆者は本稿の執筆に際し,SO2Rを始めたところ,勢いあまって一気にクリアまでプレイしてしまった。ただ,ゲーム内に用意されたやり込み項目をすべて達成しようと思ったら,ここからが始まりだと言えるくらいに,SO2という作品はやり応えに満ちている。
さらにレイドエネミーなどの新要素,新たな武器,そしてスーパー特技の「リメイク」で新たな効果を武器に付られるので,「SO2はやり込み尽くした」という人も楽しめる仕上がりになっている。まだ11月ではあるが,年末年始までドップリと浸かれる1本になるだろう。
最後に,戦闘後のクロードのセリフを借りて,本作の完成度を賛えるとしよう。
「STAR OCEAN THE SECOND STORY R」公式サイト
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