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「Core Ultra」の実力はどの程度? IntelのワークショップでノートPCのゲームや生成系AIでの性能を確かめてみた
本稿執筆時点のCore Ultraシリーズは,基準消費電力(Base TDP)が9〜15Wクラスの薄型ノートPC向け「U」シリーズと,性能と薄さのバランスを取った基準消費電力20〜35W以上の一般的なノートPC向け「H」シリーズが発表されており,採用製品も徐々に登場しているという状況だ。
なお,基準消費電力45W以上で性能重視のゲーマー向けノートPC向けには,デスクトップPC向け第14世代CoreプロセッサをノートPCに転用した開発コードネーム「Raptor Lake-HX」ことノートPC向け第14世代Coreプロセッサがカバーしている。ただ,Dellのように,ノートPC向けCore Ultraをゲーマー向け製品に用いているPCメーカーもある。
Core Ultra 7 165Hの実力はどのくらい?
体験用PCには,いくつかのテスト用ソフトウェアがインストールされていたので,最初はそちらから触れていく。最初にテストしたのは,生成系AIソフトとしてインストールされていた「Stability AI-A1111 Web UI」と,「GIMP+Stable Diffusion」の2つだ。
どちらもCore UltraのCPUとGPUを活用する実装となっており,新搭載の「NPU」(Neural network Processing Unit)は使っていない。スタッフに確認したところ,「NPU対応版は,まだできていない」とのことだった。
体験用PCは,BIOS設定でメインメモリの16GBをCore Ultra内蔵のArc GPUに割り当てており,Intelとしては「Core Ultraでは,内蔵GPUで多くのメモリを消費するAIを動かせる」ことをアピールしたいようだ。
2つのAIに対しては,他のジャーナリストよりも面白いものを生成してやろうと思い,ジャーナリストの西川和久氏が「Technoedge」で掲載した「生成AIグラビアをグラビアカメラマンが作るとどうなる?」の第二回で公開していたプロンプトを入力してみたところ,CPUだけ,ーーTextデバイス,U-NETデバイス,VAEデバイスをすべてCPUに割り当てた状態ーーで実行すると約120秒〜130秒前後で,GPUだけで同じものを実行したときは約20秒前後で,以下の画像を生成できた。
爆速というほど高性能ではないものの,単体GPU非搭載のビジネス用途向けノートPCで,生成系AIが動かせるのは確かに面白い。
Core Ultra 7 165H搭載PCで,「FINAL FANTASY XV ベンチマーク」(V1.3)を実行する様子を動画で掲載しよう。
FINAL FANTASY XV ベンチマークでのスコアは以下のとおり。比較用として,筆者が出張用に持って来たGIGA-BYTE TECHNOLOGY製のノートPC「AERO 17」※の結果も示しておく。
※型番:XE5-73JP744HP。搭載CPUは「Core i7-12700H」で,GPUはCPU内蔵のIris Xe Graphicsである
Core Ultra 7 165H | Core i7-12700H |
---|---|
2268 | 1929 |
2023年9月公開のグラフィックスレンダリングベンチマーク「Cinebench 2024」も実行してみた。
CineBench 2024でのマルチスレッド,シングルスレッドのスコアは以下のとおり。
Core Ultra 7 165H | Core i7-12700H | |
---|---|---|
マルチスレッド | 753 | 805 |
シングルスレッド | 95 | 100 |
筆者のAERO 17は,巨大なACアダプターを接続して最大230Wの電力を供給するノートPCだ。単体GPUとして「GeForce RTX 3070 Ti Laptop GPU」を内蔵するゲーマー向けノートPCなので,世代は古くとも,今回,ワークショップで触ることのできたPCよりは格上だ。しかし,それと同等の性能を薄型ノートPCで実現できているのは,大したものである。
Intel Application Optimizationとは何するものぞ?
今回のワークショップでは,Intelが提供するさまざまな技術についてのデモンストレーションを行いつつ,各技術の専任担当者が,報道陣の質問に答えるというコーナーもあった。
筆者が強い関心を持っていたのが「Intel Application Optimization」(APO,関連記事)だ。APOとは,「PCゲームに対して最適な動作モードをPCに設定する」というゲーム特化のPC支援ツールである。
Intelの説明によると,APOによる最適化に対応するゲームタイトルであれば,その動作を有効化するだけで,最大で14%もフレームレートが向上するという。
AMDは「AMD Software」,NVIDIAは「GeForce Experience」で,GPUユーザー向けにAPOと似たようなものを提供しているが,どんな最適化を行っているのか,気になっていた。どちらかと言えば筆者は,ゲームグラフィックスのオプション設定は得意な方なので,ソフトウェア側で設定を勝手に変更されるのは気味が悪い……と考えていたので,APOのメカニズムについては気になっていたのである。
というわけで,「APOは,一体どういう最適化をゲームに施すのか」と,現場で説明を担当していたIntelのJason Xie氏(Hardware Technical Marketing Engineer)にぶつけてみた。
Xie氏によると,「現時点では,ゲーム側のグラフィックスオプションは,変更しない方針で設計されている」とのこと。「現時点で」という言い回しか気になるが,Intel内のAPO開発部隊でも「ゲーム側のグラフィックスオプションを変更すべきべきか否か」については,議論が分かれているというのだ。Xie氏は,「この点については,ユーザーからの意見を募集したい」とも述べていた。
それでは,APOは何を最適化するのか。Xie氏によると,「基本的には,ゲームタイトルごとに,P-core(高性能コア)とE-core(高効率コア)の割り当て制御を行う」とのことであった。
たとえば,人気PCゲームの多くは,据え置き型ゲーム機向けタイトルの移植版が多いが,それらのタイトルは6スレッド前後を前提に開発,チューニングされている。それをPC環境の多コア,多スレッド対応CPUで動かすと,OSがランダムなCPUコアを割り当てたときに,本来想定されたとおりの性能を発揮できないことがあるという。
そこで,ゲームタイトルによって異なるが,たとえば極力,特定のCPUコアをゲーム専任で動かすようにしたりとか,E-coreを極力,ゲーム側に割り当てないようにすると言った制御を,APOが行うのだそうだ。
筆者が「つまり,APOは『Thread Director』のチューニングを行う支援ソフトという理解で正しいか」と問うたところ,「その範疇を超えた制御も行えるが,その理解はおおむね正しい」と,Xie氏は答えた。
APOは,第14世代Coreプロセッサの登場と合わせてリリースされたが,P-core,E-coreによる「Hybrid Computing Architecture」が導入された第12世代Coreプロセッサ以降のCPUに対応するようだ。もちろん,Core Ultraシリーズも含まれている。
ところで,APOのソフトウェアは,入手方法が少し変わっている。Intelのソフトウェアダウンロードページからは入手できず,Windowsの「Microsoft Store」からしかダウンロードができないのだ。料金は無料だが,入手先については注意してほしい。
IntelのCoreプロセッサ製品情報ページ
- 関連タイトル:
Intel Core Ultra(Meteor Lake)
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