インタビュー
Bahamutによる「ロックマンX DiVE オフライン」開発者インタビューの日本語翻訳版を紹介。オンライン版の制作秘話なども語られた
今回のインタビューは,同作の発売前に実施されたもので,オンライン版プロデューサーの依田秀登氏,オフライン版プロデューサーの麻田 壮氏,デザイナーの水野佳祐氏,オフライン版のテーマ曲「Recognize」を歌うjunさんに話を伺っている。
オフライン版の制作にまつわる話に加えて,「ロックマンX DiVE」の開発秘話や設定画なども公開されているので,ファンはチェックしておこう。
「ロックマンX DiVE オフライン」公式サイト
※出典:BAHAMUT。掲載:2023/8/25
――「ROCKMAN X DiVE」を制作することになった経緯を教えてください。このプロジェクトを開始するために、どんな準備をしていたのでしょうか。
依田秀登氏:
これを話すと話が長くなりますね。皆さんもご存知の通り、「ROCKMAN X DiVE」は台湾カプコンが初めて制作したオリジナルタイトルのモバイルゲームです。当時私も台湾にいて、ロックマンシリーズが大好きだったので、日本でロックマンシリーズを取りまとめているプロデューサーに話を持ち掛け、台湾でロックマンゲームを制作したいと相談しました。そこからゲームの開発を開始しました。
台湾にはロックマンファンのプレイヤーが多くいらっしゃいますが、私はこれまでにロックマンゲームの開発に携わった経験もなく、プロデューサーも初めて担当することになりますので、日本カプコンのjunさんと水野さんに協力をお願いしました。もちろんjunさんや水野さんは台湾カプコンと連携を取るのは初めてで、私もそこで初めてお二人に会いました。どのようなゲームするかなどについて話し合い続け、ようやく2018年5月にプロジェクト発足し、2年10か月かかって開発を完成することができました。
最初は台湾カプコンから展開する小規模なプロジェクトでしたが、その後「モンスターハンター」や「デビルメイクライ」とのコラボレーションも行い、社内外の素晴らしい作曲家さん達にBGMの制作を依頼したり、「ロックマンZERO」シリーズのデザインを手掛た中山さんに詳細なキャラ設定のデザインをチェックしてもらったりして、最終的には多くの人を巻き込んだプロジェクトとなりました。
そしてオンライン版のサービス終了に差し掛かっている段階で、さまざまなゲーム開発に携わってきた麻田プロデューサーを招いて、「ROCKMAN X DiVE オフライン」を制作する運びとなりました。
――運営の3年間を振り返って、何か特別なこと、印象的なことはありますか?
依田秀登氏:
特別なことや印象に残ったことがたくさんあります。この3年間で多くのファンやプレイヤーとさまざまな交流を重ねてきました。台湾だけでなく、タイなど世界中からのファンがロックマンを愛してくださり、さまざまな意見を寄せてくれました。
運営中に厳しい状況もありましたが、そこでプレイヤーやファンの方々がロックマンへの愛の深さ感じることができました。是非この愛を次の世代にも継続させたい、新作を作ろうというふうに思いました。この経験が私にとって最も印象深く感銘を受けたことだと思います。
――サービス終了後にオフライン化されるスマホゲームは珍しくないが、その多くは観賞用に調整されたアプリで、ゲーム的要素はありません。それに対して、「X」のオフライン版は、どちらかというとコンソールゲームに近いです。なぜオフライン版を作ろうと思ったのでしょうか?
麻田 壮氏:
台湾でも同じかどうかは分かりませんが、日本では確かにおっしゃる通り、サービス終了後のゲームは未完結のストーリーをまとめたり、イラスト集を発売したりすることがほとんどです。しかし、「ROCKMAN X DiVE」は王道の横スクロールアクションゲームで、バーチャルスティックを使ったスマホ向けのプレイスタイルは、日本や北米のプレイヤーにとって操作がかなり難しいと感じることは多いでしょう。
アクションゲーム、シューティングゲームやアクションRPGなど、基本的には指が画面を覆ってしまうと操作が難しくなりますが、「ROCKMAN X DiVE」はコントローラーを接続してプレイすることができるし、Steamを通じても遊べますので、プレイヤーはコントローラーを使いながら、まるでコンソールゲームを遊んでいるような感覚で、存分にゲームを楽しんでいただくことができます。
もちろん、バーチャルスティックに慣れているプレイヤーもスマートフォンのままで手軽にプレイできます。どちらでもゲームをゆっくり楽しんでいただけます。
――オフライン版と運営版の違いは何ですか? 新しいコンテンツは追加されますか?
麻田 壮氏:
今回リリースさせていただくのはオフライン版なのでサーバーがなく、PvP・協力プレイ・ギルドシステム・ランキング・ガチャなどのコンテンツは含まれません。オンライン版では、モバイルゲームでよくある季節イベント、例えば夏限定イベントや旧正月、クリスマスなどのイベントがありましたが、通常2週間限定の開催時間しかなく、その時期にプレイできないプレイヤーも多かったではないかと思います。
そこで今回はいつでもプレイできるように、こういったイベントをできる限り全てオフライン版に収録しました。これもオフライン版のいいところだと思います。過去の季節イベントでは、特定のキャラクターやガチャ、あるいはイベント自体に参加したいと思っていたプレイヤーも、旅行やその他の理由で参加できなかったり、キャラを入手できなかったことはあったかと思います。「ROCKMAN X DiVE オフライン」を通じて時期の制限なく、好きなだけ存分にゲームを楽しんでいただけたら幸いです。
また、オフライン版ではBGMなどを再生できる鑑賞モードも新たに追加実装しました。これまでゲーム内で使用されたボイスや各ステージのBGMをゆっくり楽しむこともできます。
――運営版ではカプコンのタイトルとのコラボイベントも実施されていましたが、その内容はオフライン版でも収録されるのでしょうか?
麻田 壮氏:
では、はっきりお伝えさせて頂くとすると、今回のオフライン版では「モンスターハンター」や「ストリートファイター」、「デビルメイクライ」など、カプコン自社IPとのコラボキャラやステージのコンテンツは含まれていません。しかし、各ロックマンシリーズと「ROCKMAN X DiVE」のオリジナルキャラクターが収録されており、これらを含めると、総勢120人以上のキャラクターが登場するので、キャラクター育成からにしてはかなりのボリュームになっているのではないかと思います。
――本タイトルは価格は?いつ配信する予定でしょうか?
麻田 壮氏:
今回の「ROCKMAN X DiVE オフライン」は一度購入すれば、すべてのコンテンツを体験できる買い切り型のゲームです。その後のアップデート追加は予定していませんが、もちろん何らかの問題が発生した場合は更新される可能性があります。
発売日が2023年9月1日(金)に決定! Steam 版は8月18日(金)からプレオーダーの受付も始まっています。
――「ROCKMAN X DiVE」のユーザーデータを引き継ぐことができるのでしょうか、また、そのユーザーデータに応じて特別な報酬を受け取ることができるのでしょうか?
麻田 壮氏:
先ほどお話しした通り、「ROCKMAN X DiVE オフライン」ではサーバーを設置しておらず、そのため運営版のプレイヤーのデータを引き継ぐことはできませんし、運営版をプレイしてくださったプレイヤーに何か特別な報酬も配布することはできません。
ただ私個人としては、最初からもう一度ゲームを楽しんでもらいながら、以前参加できなかったイベントステージをプレイしていただけたらと思っています。「ROCKMAN X DiVE オフライン」では全キャラが手に入るので、以前参加できなかったガチャや引けなかったキャラや武器も含め、今回のオフライン版では全てを育てることができますので、是非収録したすべてのコンテンツを楽しんで頂きたいと思います。
――「ROCKMAN X DiVE」に携わった感想を聞かせてください。
水野佳祐氏:
まず、感想について、私自身Xシリーズの新作をとても楽しみにしていましたので、最前線で制作に携わることができてとても嬉しく思っています。ゲームの中には多くのキャラクターが登場し、スマホゲームならではの「新キャラがどんどん追加可能」という利点が活用されており、とても嬉しいシステムでした。
個人的には、水野版「X」(※)と彼のライバル「Kai」、この2人のキャラクターがいること、特にKaiは元々設定だけのキャラクターでしたので、ゲーム内で実際に登場し、さらにイベントとストーリーで深堀されているのが本当に嬉しく思いました。
※「水野版 ロックマンX」はもともとCAPCOMのエイプリルフール企画だったが、後に冗談が実現され、実物のフィギュアが発売されました。
――オリジナルキャラクターやダイヴアーマーのデザインに、何かコンセプトや表現したい要素がありますか。できれば、その発想フローを聞かせてください。
水野佳祐氏:
オリジナルキャラクターは、最初に依田さんからリクエストをいただき、その後二人が討論する形で進めていました。デザインからはそのキャラクターの設定が感じ取れるようにしたいと思い、各キャラクターのデザインにはそうした意味や理由付けをしています。
例えばオリジナルキャラクターの「リコ」は、瞳の表現を原作のキャラクターとの差別化を図り、中央に光点のような表現を入れることでロックマンXの世界の住人ではないことを表現しています。以降ほかのキャラクターにもある程度共通してこの要素は入れています。
そして「ヴィア」については感情豊かな性格ではあるものの、顔を黒くして表情を少しわかりにくくすることで、自分を隠したいという願望をもった、何か謎をもったキャラクターとして表現しています。
「リコ」はとくに最初に考えたオリジナルキャラクターで、そのデザイン作業は特に難しかったのですが、最も思い出深いキャラクターでもあります。当初はカプコン台湾のデザイナーさんが草案を考えておられて、もう既に可愛くて魅力的だったのですが、「ロックマンX」のデザインラインとは少し合わなかったため、彼女のデザインをよりXシリーズのキャラクターとして見えるよう調整するところからスタートしました。
ロックマンXは女性キャラクターの表現がどうしてもスマホゲームが目指す美少女キャラの表現とはかけ離れているのですが、依田さんの意向としてリコはスマホゲームらしい女性キャラクターとして推したいとのことでしたので、「ロックマンXらしさ」と「スマホゲームらしさ」のそれぞれ相反する二つの要素をある程度一致させなければいけないところに大変苦労をした覚えがあります。
ある程度デザインが出来上がってきたとき、改めてこのデザインがロックマンXファンの方々に受け入れられるのか、逆に普段スマホゲームで遊ばれている方々に響くのかなどの不安もありました。最終的にはリコがプレイアブルとして実装されたときの盛り上がり具合から、ユーザーの方々にはちゃんと受け入れられたのではないかと嬉しく思っています。
――ロックマンXシリーズで3Dで描かれるのはX7とX8だけですね。「ROCKMAN X DiVE」ではたくさんの3Dモデルを制作したと思いますが、特に大変なことはありますか。
水野佳祐氏:
ドット表現のものは背面や足裏、小物デザインがないものがちょくちょく存在してまして、そのデザインフォローが大変でした。立体化する上でどうしても必要になりますから。
デザイン画も存在しないので、ゲーム画面のドットを確認したり当時のコミカライズやフィギュア、カードダスなどで確認できるものがあればじっくり見てそれでも細かい部分にはフォローが必要でして、それだけでも大変な時間を要したと思います。
3Dモデルを製作してくれたデザイナーさんにも感謝しています。デザイン画があっても、それを立体化するのは容易ではありません。デザイナーさんたちの努力のおかげで、絵の中のものが現実の存在になっていて、非常に嬉しく思っております。
――本作のために新テーマソング「Recognize」(jun × KT-G)を制作し、ご自身でも歌われていますが、テーマソングを制作するきっかけは何ですか?
junさん:
制作のきっかけは、依田さんからの相談でした。過去に私が音楽ゲームタイトルで多くの楽曲を発表したことがあって、作曲、作詞、歌唱も一通り担うスタイルで活動しておりました。そのため、今回はすべて私が担当することになりました。
依田さんも私の過去の作品を知っているから、テーマソングの依頼が来たと思います。最初は運営版のためにテーマソングを作る話だったが、様々な理由でそれが実現できませんでした。オフライン版の発売が決まった時、また依田さんから連絡が来て、是非今回のテーマソングを作ってほしいと頼んできました。
――テーマソングは、ロックマン要素か、もしくは他の何かを意識して制作しているのでしょうか。
junさん:
テーマソングの制作は依田さんからの提案で、その方向性に沿って私が作曲しました。依田さんの言葉は理解しやすく、提案された方向もゲームの世界観に非常に合っているため、創作のインスピレーションを得るのが容易でした。
編曲は「ロックマンX アニバーサリーコレクション」の制作に参加したKT-Gさんが担当しました。彼の協力で、曲のスタイルは非常に大胆かつドラマティックになりました。
歌詞にも多くの考えや工夫が入っています。音楽ディレクターとしての任務を開始して以来、私はずっと運営版の制作に関与しており、リコ、ヴィア、アイコなどキャラクターたちの物語を見守ってきました。「ROCKMAN X DiVE」の物語には魅力的な部分が多く、ストーリーの進行につれて深層にどんどん近づいていきます。キャラクターたちが経験する冒険は、すべてが楽しいものではなく、困難や悲しみも含まれており、それが彼らの成長に繋がっています。今回歌詞にもこの「ROCKMAN X DiVE」の世界観を取り入れようと試みましたので、プレイヤーが聞いて同じ感覚を共有できればと願っています。
最後はテーマソングの構成についてです。今回のテーマソング「Recognize」は、「ROCKMAN X DiVE オフライン」のクリア後のエンディング動画で流れます。そのため、実際はエンディング動画が先に完成され、私がその動画の構成に合わせてテーマソングを制作しました。プレイヤーがエンディングを楽しむ際、この点にも注目してもらえると嬉しいです。
――名曲揃いのロックマンシリーズですが、BGMの制作にプレッシャーとかは感じますか。
junさん:
ロックマンシリーズは本当に多くの名曲があり、私自身も好きな曲がいっぱいあります。「ROCKMAN X DiVE」には多くの作曲家がBGM制作に参加しています。元々原作や原曲に詳しい人達で、「ROCKMAN X DiVE」の世界観もよく理解しています。そのため、彼らが作った曲にはすべて素晴らしいアレンジが施されています。プレイヤーの皆さんにも、アレンジ版と原曲の違いを聴いてみて頂ければ嬉しいです。
――昔のゲーム作品をリアレンジするには、特に大変なことはありますか。
junさん:
「ROCKMAN X DiVE」にはさまざまな作品からのキャラクターやBOSS、ステージが含まれており、どのようにして革新的な要素と懐かしい要素を同時に取り入れ、曲やSEやVOICEをより「ROCKMAN X DiVE」に合わせることについて、私たちもずっと模索しています。
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