プレイレポート
[プレイレポ]気分はまさにハン・ソロ。「スター・ウォーズ 無法者たち」は,ファンが長年夢見た宇宙のアウトロー生活を満喫できる一作だ
スター・ウォーズのゲーム作品はこれまで,2Dアクション,FPS,3Dシューティング,レース……と数え切れないほど多数のジャンルと種類で展開されてきた。今回の無法者たちは,本格的なオープンワールドを採用したアクションRPGということで,過去の作品以上にスター・ウォーズの世界に没入できるのではと,国内外で大きな期待を集めていたのだ。
近年はドラマやCGアニメなどのスピンオフ展開も多く,最新の映像技術を利用した世界を楽しむことは簡単になったスター・ウォーズだが,自分で“体験できる”となれば(アトラクションなどを除けば)ゲームの専売特許だ。
今回はPS5版をプレイする機会を得られたので,軽めのファン的な目線を交えつつ,その様子をお届けしよう。
遠い昔,はるか彼方の銀河系で,とある無法者が動き出す……
記事の冒頭でも触れたとおり,本作の舞台は旧三部作の帝国の逆襲とジェダイの帰還のあいだの時代と設定されている。反乱同盟軍が「エピソード4/新たなる希望」でデススターを破壊し,本格的な反攻作戦を始めたものの,その後は物量に勝る銀河帝国の反撃を受け重要基地が陥落するなど,銀河に戦いと混乱が広まっていた。
ここに目をつけたのが,銀河の裏社会を牛耳る巨大な犯罪組織(シンジケート)たちだ。混乱は自然と犯罪組織への締め付けを緩め,場合によっては帝国と反乱軍のあいだでうまく動くことで,多大な利益を得られる。辺境の惑星カントニカで経済を牛耳る新興シンジケート「ゼレク・ベシュ」も今が“黄金期”と語り,組織間の駆け引きを活発化していた。
本作の主人公ケイ・ヴェスは,そんなシンジケートたちの動きなどつゆ知らず,カントニカの片隅で燻った日々を送っている女性だ。上昇志向こそあるものの,狭い酒場の屋根裏で寝泊まりし,泥棒くずれとして合法,非合法を問わずケチな仕事を続ける日々。相棒兼ペットのニックスと共に,へんぴな星を出ることをばかりを夢見ていた。
だが,そんなケイには大きな計画があった。とあるギャングが経営するクラブからお宝を強奪し,それを元手に宇宙船に乗る算段をつけていたのだ。決行予定日は,誰もが注目するデカいレースがある日。事前に準備とシミュレーションを繰り返し,ついに後戻りのできないヤマに取り組むときがやって来たのだ。
こうして銀河のケチな悪党,ケイ・ヴェスの一発逆転を狙った仕事が始まった……というのが,本作の導入部だ。
本作は広大なオープンワールドを舞台に,ケイを操って無法者稼業を繰り広げていく三人称視点のアクションRPGだ。プレイヤーはある時はシンジケートの仕事を引き受けて敵の拠点に破壊工作をおこない,またある時は帝国軍の基地に忍び込んで盗みをおこなうなど,非合法な仕事に明け暮れていく。
スター・ウォーズシリーズでは,主人公やその仲間が帝国の指名手配犯になっていることが珍しくないが,本作では原作の政治犯的な立ち位置ではなく,タイトルどおりの“無法者”として追われている。
基本システムそのものは,オープンワールド作品でスタンダードな,メインクエストとサブクエストを自由に選んで進めていけるタイプ。序盤のカントニカを抜けるところまでは,半分チュートリアルなので一本道だが,次の惑星であるトーシャーラからは自由に動けるようになる。
この惑星にはサバンナのような広大な平原が広がっており,スピーダーで好きに走り回れるのは爽快だ。もちろん,気が向けば徒歩移動だっていいし,道中にある探索エリアで足を止めれば,お宝が見つかるだろう。
物語が進めば宇宙船も自由に利用可能になり,惑星軌道周辺でのクエストや探索などに励めるようになる。狭い場所を宇宙船で高速移動しながら進んで行けるような場所は,「まさにスター・ウォーズ!」という感じだ。またハイパードライブが解禁されれば,別の惑星にいってさらなる別のフィールドとクエストにも挑戦できる。砂漠の惑星タトゥイーンもその一つなので,ファンなら見逃せないところだろう。
ただしクエストは,むやみやたらに引き受けてクリアすればいいかといえば,そうではない。本作には「派閥システム」が組み込まれており,シンジケートの派閥ごとの評判がケイへの対応に影響を与えるからだ。例えばある派閥が別の派閥に被害を与えるクエストを引き受けた場合,当然発注元の評判は良くなるが,逆に被害を受けた側はケイを敵視するようになる。
実際の派閥としては,原作映画でも隆盛を誇ったジャバ・ザ・ハットのハット・カルテル,スピンオフアニメのクローンウォーズなどにもたびたび出てきたパイク・シンジケート,そしてこちらもスピンオフなどで話題に出てくることもあったクリムゾン・ドーンなど,きちんと世界観を反映したものになっている。ファン視点で見ると,原作ではあまり内情が出てこなかった犯罪組織の裏側が,少しだが垣間見られて楽しい。
派閥の好感度はアイテム価格の上下や,派閥の代理人から受けられるクエストの質などに影響を与えるが,一番大きな違いは行動の自由度に影響が出ることだろう。
本作ではフィールドの一部分や,広い都市の一区画を派閥が縄張りとして統治しているため,好感度が高ければ自由に立ち入って商品の売買や情報収集ができるのだが,一方で敵対していないデフォルト状態の“普通”ですら,見つかるとつまみ出されてしまう。
仕事に関しては,派閥の管理エリアの中でおこなうタイプが多く,とりあえず簡単そうなものに飛びつくか,派閥間のバランスを取っていくか,プレイヤーの判断が求められるはずだ。
ハン・ソロ並のブラスターの射撃術……だけでなく,ステルスが重要なアクション部分
本作の主人公ケイは,ジェダイでも,その弟子のパダワンでも,シスの暗黒卿でもない。したがって,スター・ウォーズのシンボルでもあるフォースは使えないし,ライトセーバーも扱えない。近づけば肉弾戦自体はできるが,基本的に頼りになるのはブラスターをはじめとした銃火器だ。
ケイの強化はレベルアップ式ではなく,装備を充実させて高めていくタイプ。単純に店に有用な防具が並んでいることもあれば,パーツを集めて作る(アンロックする)パターンあるし,武器のブラスターもクラフトを活用して順次強化していく仕組みだ。そしてパーツ集めの近道は,探索やクエストをクリアするのが手っ取り早い。
またそれとは別に,ケイの仲間の専門家から課される条件(○○を規定回数おこなうなど)をクリアすることで,アビリティとして新たな能力を得られたり,ステータスが向上したりする。積極的に仲間にして同時並行的に進めていくと,クエスト進行も楽になるはずだ。
ただし注意しなければならないのは,ケイは基本的に後ろ盾のないフリーランスということだ。つまり敵対組織の拠点などで見つかってしまえば,周囲には敵しかいないということになる。小さい施設なら力押しでもなんとかなるが,規模が大きいと対処できないほどの敵が大量にわき出してくる。こうなればケイに残された道は,逃げるかやられるかしかない。
したがって本作では,ステルスプレイが非常に重要になっている。メインクエストにせよ,サブクエストにせよ“忍び込む”というシチュエーションが序盤から非常に多く,真っ正面から挑むのは下策だったり,そもそも(ゲームオーバーになって)不可能だったりする。
原作映画でもよく帝国の施設に隠れて侵入していたが,本作でも似たようなシチュエーションは非常に多い。気がつけばダクトばっかり通っていたり,屋内なのに断崖絶壁のような場所をクライミングのように進んでいたりと,「うーん,これはスター・ウォーズだ」とついつい口に出てしまった。
ちなみにしゃがんで物陰に隠れるのはもちろん,屋外なら草むらに忍んだり,そこから口笛を吹いておびき寄せたりと,ステルス動作自体は比較的スタンダードな作りだ。またケイは,戦闘中にアドレナリンをためて射撃の時間だけスローにする能力を持っており,少々のピンチならこれで切り抜けられるときもある。
ただスター・ウォーズの世界観で考えると,ケイにはちょっとした懸念点があるのは否めない。というのもジェダイのような人並み外れた力も持っていないのに,そんな危険場所に頻繁に潜り込んで大丈夫なのか,ということだ。
そこで大きな力になるのが,あらすじで少しだけ触れた“相棒”のニックスだ。彼は常にケイに寄り添い,どこにでもついてくるだけでなく,非常に役に立つ。例えば遠くの落ちているアイテムを取ってくる,人間からアイテムを盗む,敵や見張りの注意を引いて無防備にする,入れない場所のスイッチを押す,周囲の敵の場所をあぶり出す……などなど,その能力は挙げればきりがないほど。
使用方法は(PS5なら)L1ボタンを押すだけであり,上記の能力はすべて,そこから選択する対象によって行動が変化する。極めて使い勝手が良く,ニックスがいることで,ケイが常人以上の能力を発揮できていると言っても過言ではないだろう。おまけに可愛いので,一緒に旅をしたり眺めているだけでも癒やされる点も見逃せない。
とにかく困難な場所では先にニックスを頼り,大事にならないように努める。これが本作を進めるコツの一つだと言えるだろう。
ルーク(ジェダイ)ではなく,ハン・ソロ(無法者)としてスターウォーズ世界を堪能しよう
今さら書くまでもないかもしれないが,本作のケイの立場は,ハン・ソロに非常によく似ている。ソロも結果的には帝国と戦うことになったが,基本は密輸業者のような裏社会の人間であり,悪党であるジャバの仕事をしていたのも有名だ。舌先三寸でシンジケートと渡り合い,パイロットしての腕と,ブラスターの射撃術,そして一瞬のアイデアで鉄火場を切り抜ける。ルークやダースベイダーと違い超人的な力こそ持たないが,だからこその魅力があったのは間違いない。
本作のケイは,まさにそのソロを追体験させるようなキャラクターだ。怪しい連中から仕事を引き受け,危険な目に遭って報酬をもらい,組織のしがらみに巻き込まれつつも縛られることなく自由に旅をする。ゲームの進行上の関係からしばらくは自由に動けなかったり,ニックスやアドレナリンというドーピングがあったりするが,腕だけを頼りに“無法者”として名を上げていく姿は,善の存在であるジェダイを主役とした作品とは一線を画するのは間違いないだろう。
また世界観の作り込みも納得の出来で,街では薄汚い商店街に異星人とドロイドが溢れ,街道ではスピーダーが走り,帝国の基地では大量のストームトルーパーが巡回して,宇宙では帝国相手にTIEファイターと激闘を繰り広げる……といったスター・ウォーズ世界に没入できる要素には事欠かない。原作のファンなら,「おおっ!」と思う場面にいくつも遭遇するはず。
原作ではたびたび登場する「サバック」というカードゲームが実際にプレイできるのもまた,嬉しいファンサービスの一つと言える。
ちなみにケイは自分のブラスターピストル以外に,敵が持っているより強力なブラスターライフルなども拾えるのだが,何かアクションをするたび(例えば梯子を登るなど)に足下に落としてしまうのは,できれば修正してもらいたいポイントだと感じた。また個人的には,クエストにステルス以外の選択肢が,もっとあってもいいかなと思う場面もあった。
ともかく本作は「実際にスターウォーズの世界を体験してみたい」と考えているなら,間違いなくその選択肢の一つになるだろう。混沌としたはるか昔の銀河に,ブラスターを片手に持って腕試ししたいなら,ぜひプレイしてみて欲しい。
「スター・ウォーズ 無法者たち」公式サイト
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