連載
ありがたき哉 日本語化:一見地味だが出るべき脳汁はしっかり出る。初期ディアブロ風レトロ画なヴァンサバ「Halls of Torment」をご紹介
「ありがたき哉 日本語化」は,ここ最近で日本語対応となった海外作品を良い機会だからあらためて紹介しようという,フワッとしたコーナーです
「脳汁を出したい。だから程よいヴァンサバ系を教えろ。一つだけ条件を出すなら,モチーフやビジュアルは地に足のついた感じで」という人は,今回ご紹介する「Halls of Torment」を遊んでみるといいかもしれません。
「Halls of Torment」公式サイト
Halls of Tormentは,四方八方からワラワラと押し寄せるモンスターの大群を,操作するヒーローを強化しながら撃退していく,ヴァンサバことご存じ「Vampire Survivors」(PC / PlayStation 5 / Xbox Series X|S / Nintendo Switch / PlayStation 4 / Xbox One / iOS / Android)のフォロワーの一つであるPCゲームです。公式のジャンル名は(ローグライトな)「ホードサバイバルゲーム」。初代「ディアブロ」風のレトロなアートスタイルにより硬派な雰囲気をまとっていますが,画面を埋め尽くす敵とキラめく攻撃エフェクトで心臓ドキドキ,脳汁ドバドバ,目はチカチカ,うう,なんかやりすぎて気持ち悪くなってきた……みたいなプレイフィールはちゃんとヴァンサバです。
そんな本作は2023年5月にSteamで早期アクセスが開始され,2024年6月に日本語でも遊べるにようなりました。ありがたき哉。本作は本稿執筆時点で2万件を超えるレビューを集めていまして,“圧倒的に好評”(全てのレビュー)を獲得しています。
装備集めの要素でハクスラっぽい雰囲気あり
あくまでも“雰囲気”ですけど……(念のため)。
Halls of Tormentは,ドイツのシュトゥットガルトを拠点とするスタジオ・Chasing Carrotsが開発し,販売しているタイトルです。App StoreやGoogle Playを確認すると,「Halls of Torment: Premium」のタイトル名でモバイル版のリリースも控えているようですね。
念のためちゃんと説明しておきますと,本作は,俯瞰視点で展開する2Dグラフィフィックスのアクションゲームです。プレイヤーは用意されたヒーローの中から一人を選択し,「苦悶の広間」と呼ばれる戦闘マップ群のいずれかを選んで移動します。苦悶の広間では,画面中央のヒーローに対してあらゆる方向から迫ってくる大量のモンスターを,ひたすら撃退していきます。これを,ヒーローが倒れるまで,または約30分耐えてボスキャラクターを倒すまで行い,終了時点のスコアに応じて報酬の「ゴールド」をもらう――といった感じですね。
敵のモンスターを倒すと,経験値やゴールドとなるオブジェクトをドロップします。経験値を一定量溜めることでヒーローはレベルアップし,そのたびに,システム側から提示されるいくつかの「特性」から一つを選びます。「攻撃力が上がる」とか「足が速くなる」とか,そういうやつです。これを繰り返すことで,より強く,より好みのプレイスタイルで遊べるように,ヒーローを育てられるわけですね。
1ゲーム(この手のゲームでは“ラン”)は前述のとおり最大約30分で,死んでもクリアしても,次のランでは,レベルは0から始まります。……が,ランの外でヒーローを永続的に強化する方法がいくつか用意されているので,これによって少しずつランの時間は延び,より難度の高いマップへ挑戦していけるのです。
ちなみにヒーローを強くする要素の中には,「装備」(武器以外の,防具やアクセサリー)もあります。装備は,道中で出現する中ボス的なエリートモンスターを倒すとドロップする宝箱を開けて,複数個から選択する仕組みです。本作は断じてハック&スラッシュタイトルではないですが,レトロなアクションRPGっぽいグラフィックスと相まって,インベントリのような装備スロット画面は,ハクスラファンもワクワクできるんじゃないでしょうか。
ランは完全なヴァンサバ風で爽快感は抜群
ベースはヴァンサバですし,システムはとてもシンプルです。大まかな流れと共に,各要素を紹介しましょう。
まずは拠点となる「野営地」で,ヒーローを選びます。選べるヒーローは本稿執筆時点で11種類です。ヒーローによって,メイン武器と基本性能が異なります。最初はバランス型の性能を持つ「ソードマン」しか選べませんが,ヒーローは後述する「クエスト」の条件を達成していくことで,どんどんアンロックできます。
ヒーローのあとは,挑む苦悶の広間の一つを選択します。マップに降り立つと,すぐさま戦闘開始です。操作方法は,前後左右と斜めの計8方向へ移動,マウスカーソルの方向へ左クリックで攻撃――というのが基本となっていて,方向指示と攻撃は,いずれもオートにできます。
経験値が溜まりレベルアップすると,(一定の範囲内で)ランダムで特性が4つ提示されます。ここで好きなものを選んで,ヒーローの能力を伸ばします。
マップに出現したり,エリートモンスターがドロップしたりする「熟練の巻物」を拾うと,特性と同じように複数個から選択する形で「アビリティ」を習得できます。いわゆるスキルや魔法のようなものですね。ヒーローの強さやプレイスタイルへの影響が最も大きい要素でしょう。覚えられるのは最大で6つ。一度アビリティを覚えると,以後のレベルアップ時には,当該アビリティに関連する特性も選択肢に出現します。つまりアビリティの性能も高められるわけです。
エリートモンスターはアビリティのほか,装備や,「ポーション」に使える「ビン」の入った宝箱をドロップします。詳細は後述。装備はその場で身に付けることが可能で,ランが終わると消えます。……が,少しストーリーを進めると,装備を持ち帰って再利用できるようになります。
各マップにちょっとした(本当にちょっとした)謎解きイベントのようなものがあるのもいいですね。条件を達成することで,当該ランを少し有利に進められるアイテムが手に入るとか,そういった類いのものです。
はいきました。ランを締めくくる(?)ボスです。頑張って戦うしかありません。
ランの終了後は,スコアが表示され,それに応じた報酬としてゴールドがもらえます。なおゴールドはラン中にも少しだけ,ドロップで得られます。
ゴールドは,永続的な能力の底上げに使います。具体的に主な使い道は,「祝福の神殿」でヒーローの能力を高める,ラン内から拠点である野営地へ送った装備やポーション用のビンを購入してずっと使えるようにする――といったところです。
野営地に建てられた石碑のようなもので確認できるクエストでは,条件を達成することで報酬を得たり,新たな職業や,装備,特性,アビリティとそのアップグレードなどをアンロックしていけます。単純にゴールドが手に入るものもあります。クエストを眺めれば,今すべきことが分かりますし,目指すべきことも見つけられるでしょう。
ラン内ではポーションづかいがキャラ育成のキモ
ラン外でヒーローを永続的に強化する重要な要素は前述の祝福の神殿と装備,ラン内でのヒーロー育成におけるそれは,ポーションです。神殿はゴールドと引き換えにヒーローを強化するシンプルなものなので,ここでは装備とポーションをピックアップして紹介しておきましょう。
装備は前述のとおり,ランで倒したエリートモンスターがドロップする宝箱から得られるもので,身につけるとヒーローの能力が高まります。基本的にはラン内限定で使えるアイテムですが,マップ内のとあるイベントで井戸番アサフを救出すると,プレイヤーが各マップの井戸に投げ込んだ装備品を回収して,拠点の野営地で販売してくれるようになります。購入が必要なのは装備一つにつき1回だけで,ランへ持ち込んで死んでもなくなりません。
なお装備の中でも「紋章」だけは特別扱いです。紋章はドロップするアイテムではなく,各ヒーローに用意されたやや難度の高いクエストの報酬として得られるもの。装備すると,なんと当該ヒーローのパッシブ的な能力の一部が得られるほか,当該ヒーローが個別に持つ特性をレベルアップ時に選べるようになります。たとえば,攻撃力と防御力が高めのソードマンに「アーチャー」の紋章を装備させて,(アーチャーの)「+0.10 基礎クリティカル確率」を乗せ,さらにレベルアップ時には(アーチャーの)「武器熟練度II(的中)」が選択肢に出てくるようになる――といった感じです。
次にポーションですが,こちらは全6種類です。内2つはそれぞれ,アビリティと宝箱(装備)の選択時に選択肢をリロール(≒リセット)するもので,残りはレベルアップ時の特性選択を,より効率良くするものです。
入手方法は装備と似ており,イベントで献酌人クラークを救出すると,拠点でポーションを扱えるようになります。ポーションを使うためのビンはエリートモンスターを倒して入手し,井戸を通じて井戸番アサフに回収してもらい,購入します。
といってもいきなりラン内で使えるわけではなく,まずは薬草を集めて,合計6種類のポーションをアンロックしていく必要があります。アンロックしたあとの各ポーションの使用回数は,ビンの回収を繰り返すことで増やせるという仕組みですね。
レベルアップ時の特性選択で,ポーションは大きな威力を発揮します。煩雑になるので詳細は省きますが,簡単に説明すると,ポーションを使うことで「特性の選択肢をリロールする」「特性の効果を2倍にする」「必要のない特性は(今後)選択肢に出てこないようにする」「(今回は選ばない)1つの特性を次回以降に取得できるようにする」といったことが可能になります。これらはかなり強力です。ビルドと特性の効率に関して考えることも増えるので,ポーションが使えるようになってからプレイのモチベーションがまたグッと上がりました。
アップデートの方向性にも注目したい一作
Halls of Tormentは,ヒーローのバリエーションもそこそこで,装備品や紋章といった要素を備えていることもあり,ビルドに関して楽しく悩めるヴァンサバに仕上がっていると思います。
もちろん気になる点もあります。特性で上げられるステータスと,ヒーローの能力やアビリティとの依存関係が分かりにくいのもその一つ。どのステータスを上げると「何がどうなるのか」が直感的に把握しにくいと感じる人は多いでしょう。
本作は現時点で早期アクセスの作品なので,上記のような場所は手が入る可能性もあるでしょう。そのほか今後,現状では性能の幅がない装備品にアレンジが入ってハクスラっぽい遊び心地になるのでは――など,コンテンツ追加以外のアップデートにも夢が広がります。本作がどのような方向に進化していくのかにも期待しつつ,興味が湧いたひとはぜひ遊んでみてください。税込600円だし。
「Halls of Torment」公式サイト
- この記事のURL:
キーワード