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信長の野望・新生 with パワーアップキット公式サイトへ
  • コーエーテクモゲームス
  • 発売日:2023/07/20
  • 価格:1万1880円(税込)
    信長の野望・新生 パワーアップキット:6380円(税込)
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印刷2023/07/20 15:00

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[インタビュー]「信長の野望・新生 with パワーアップキット」は,テーマの「君臣一体」をどう深堀りしたのか。開発のキーマンに話を聞いた

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 コーエーテクモゲームスの歴史シミュレーションゲーム「信長の野望・新生 with パワーアップキット」PC / PS4 / Switch)が,本日(2023年7月20日)発売された。

 2022年7月21日にシブサワ・コウ氏の40周年記念作品としてリリースされ,高い評価を得た「信長の野望・新生」PC / PS4 / Switch)。そのパワーアップキットである本作は,家臣が自ら考えて行動する“生きた武将”が実現した「君臣一体」の戦国体験をさらに進化させるべく,家臣団を結成する「評定衆」や,武将同士の駆け引きに焦点をあてた「直談」といった新要素が追加されている。
 リリースに先駆けて,開発プロデューサー兼ディレクターを務める劉 迪氏に話を聞いた。

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「信長の野望・新生 with パワーアップキット」公式サイト

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 歴史シミュレーションゲーム「信長の野望・新生 with パワーアップキット」が本日(7月20日)発売された。「信長の野望・新生」をベースにさまざまな拡張が行われた本作について,新要素を押さえつつ,“無印版”を未プレイの人にもゲームの特徴が分かるように紹介していこう。

[2023/07/20 14:27]


“生きた武将”を実現し,高い評価を得た「信長の野望・新生」


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。まずは,ちょうど1年前にリリースされた「信長の野望・新生」の反響を教えてもらえますか。

劉 迪氏(以下,劉氏):
 総じて高い評価をいただけたかなと感じています。とくに「完成度が高い」「難度が高くて満足した」といった感想が多かったという印象です。

4Gamer:
 プレイしていて,過去作品のいろいろな要素を感じました。“新生”というワードのとおり新しいゲーム体験がありましたが,一方で変わらない部分,シリーズに元からある特徴や魅力は守られているなと。

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劉氏:
 ありがとうございます。「新生」というサブタイトルにはさまざまな思いがこもっていているのですが,その一つにシリーズの根幹となる部分を大事にしながら,新たな始まりとなる「信長の野望」を作るというのがありました。
 過去作でいうと「信長の野望・創造」に近いものを感じたという声が多かったですね。

4Gamer:
 30周年の記念作となった「創造」ですね。「新生」と同じくシリーズの区切りを迎えた時期にリリースされた作品で,「信長の野望」らしさを踏まえながら,新たな試みに挑戦していた作品だったと記憶しています。

劉氏:
 ええ。「創造」と同じく「新生」も多くの新たな挑戦をした作品で,嬉しいことにそれらの新要素がプレイヤーの皆さんに満足していただけました。

4Gamer:
 開発チームとしてとくに手応えを感じた部分はどこなのでしょう。

劉氏:
 「新生」ならではのテーマの一つとなった,自ら考え行動する“生きた武将”という部分ですね。とくに「具申」は,良い評価をいただけています。

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4Gamer:
 家臣たちが勢力の状況を自ら判断し,最善だと考えた政策や調略を提案してくるシステムですね。ゲームシステムとしての,プレイヤーをサポートする形での助言はこれまでもいろいろなSLGにありましたが,それとは違った“人間とのやり取り”を感じられるものになっていました。

劉氏:
 すごく難しい部分だっただけに,皆さんに新鮮なプレイ体験を与えられるものに仕上げられて本当によかったです。具申が発生する頻度や家臣の賢さなど,どこを落としどころにするか最後まで悩みましたから。

4Gamer:
 「新生」のインタビュー(リンク)のときもおっしゃっていましたね。「賢くし過ぎるとゲームとして楽しくなくなってしまう」と。
 確かに,個人的には武将たちの賢さは絶妙だなと思いました。難度や勢力で違いますし,武将によっては「おーい……」みたいなこともあったりしますが,とりあえず助言に従っていれば,良い具合に進められるというか。初心者や久しぶりに「信長の野望」をプレイする人にとってほどよいサポートになっていたのではないかと思います。

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劉氏:
 “家臣の言うとおりにやってみたら,何となくうまくいく”というバランスになったことは,私も良かったなと思っているところですね。
 先ほど伝えたとおり,「新生」は難度が高いゲームという評価が多かったのですが,一方で「遊びやすかった」という声も少なくないんです。自ら考える武将たちが,新たなゲーム体験だけではなく遊びやすさを生む形にもなっていたことは,確かな手応えを感じている部分の一つです。

4Gamer:
 では逆に,プレイヤーからの要望が多かったところや,開発側として課題に感じていたことなどは,どのあたりになるのでしょう。

劉氏:
 「勢力ごとのプレイの違いがない」「武将の成長要素が少ない」「腰兵糧を補給させてほしい」といったところかもしれません。あとは,「攻城戦」や「築城」がほしいという声がかなり多かったですね。
 もちろん,すべてに応えるというのは難しい話だったのですが,パワーアップキットを制作する際にしっかりとそれらの課題に向き合いました。

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歴史SLGはかた苦しいものではない。ゲームの面白さを届けるため,自ら実況プレイに挑戦


4Gamer:
 それでは,パワーアップキットについて教えてください。今回,どのようなテーマを掲げたのでしょうか。 

劉氏:
 「君臣一体」というコンセプトは,「新生」と変わらず大事にしています。
 おかげさまで「新生」は良い評価をいただけているので,何かを変えたり新しくするというのではなく,「新生」で打ち出した「君臣一体」をさらにしっかりと深掘りしていくというのは,最初から決めていました。

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4Gamer:
 パワーアップキットの開発は,いつごろ始まったのでしょうか。

劉氏:
 私と小笠原(「新生」プロデューサーの小笠原賢一氏),小山(「新生」開発プロデューサーの小山宏行氏)の3人を中心に動き始めたのが,2022年の9月ごろですね。私が開発プロデューサー兼ディレクターとなり,本格的にチームが稼働したのは翌月の10月でした。

4Gamer:
 「新生」では開発ディレクター兼リードプランナーを担当されていましたね。開発プロデューサーを兼任することになり,何が変わりましたか?

劉氏:
 「少しでもゲームの内容を良いものにする」という,ゲーム開発の現場で私がやるべきことは変わりません。
 開発プロデューサーに就任した大きな理由の一つは,プロモーションを積極的にやっていきたいというのがありました。分かりやすいところですと,動画コンテンツの「開発者実況プレイ」ですね。

4Gamer:
 ああ,拝見しました。いままでのコーエーテクモや「信長の野望」のイメージとは異なる独特のノリがあるというか,けっこうゆるい感じもあって,初めて見たときは驚きました。


劉氏:
 開発者がゲームを紹介する動画は今までもありますが,ああいう形で実況配信のように視聴者の声を取り上げながら……というのはおそらく初めてだと思います。
 あれはけっこう実験的にというか,ゲームだけではなくプロモーションも新しいことを試そうという形でスタートしたんです。“コーエーテクモの歴史SLG”と聞いて,お堅いイメージを持つ人って少なくないですよね。だからこそ,少しでも親しみのあるものに見せたいと考えて進めた企画なんです。

4Gamer:
 劉さん自身のキャラクター性みたいなのも強めで,シャツのボタンの開け具合やアクセサリーの見せ方にこだわりを感じます。今日お会いして,「あっ,実況プレイの人だ。服装も実況のときと一緒だ!」と,タレントに会ったときみたいな気持ちになりました(笑)。

劉氏:
 ありがとうございます(笑)。ゲームはもちろん,開発陣も決してお堅い人たちではないんですよ。なので,こういう形で少しずつでも開発者に親しみを持ってもらえると嬉しいなと,いろいろと変えていきたいなと思ってます。

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4Gamer:
 配信中のコメントや動画の再生回数を見るとなかなかの好調ぶりですよね。実際どのような手ごたえを感じていますか?

劉氏:
 当初は「評判が良ければ続けたいね」くらいのスタートだったのですが,想定以上の反応をいただけていますね。配信直後に予約本数が増えたりといったプロモーションとしての効果も出ていて,正直驚いています。

4Gamer:
 コンテンツとして楽しんでもらえているだけではなく,ゲームの面白さもちゃんと伝えられた結果の一つですね。

劉氏:
 そうだとしたら嬉しいです。社内でも評判がいいみたいで,シブサワ・コウ(コーエーテクモゲームス 代表取締役会長兼CEO 襟川陽一氏)も「すごく面白い」と言っているそうなんです。
 最初に「観ているらしいよ」って聞いたときは,「えっ……大丈夫かな。やりすぎてるかもしれないし」と少し焦ったんですが(笑)。

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4Gamer:
 歴史SLGって,実は皆でワイワイ言い合いながら遊ぶのが楽しいゲームのジャンルだと思うんです。私は子どものころ,友達と集まって「信長の野望」や「三國志」をプレイしていたんですね。お菓子を食べながら,「もう攻め込みなよ」とか「いや,まだ兵力が足りないだろ」とか言いあって。
 実況プレイ動画を見ていると,なんだか当時を思い出す楽しさがありました。こういったプレイスタイルが浸透すると,いち歴史SLGファンとしても嬉しいです。

劉氏:
 ありがとうございます。歴史SLGの硬派な部分はもちろん大事にしなければならないですが,みんなで楽しめるエンターテイメントという一面も,もっとアピールしていきたいんですよね。これからもいろいろな形のプロモーションを打ち出していきたいと考えています。

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200を超える戦場を自動生成することで実現した「攻城戦」


4Gamer:
 あらためてゲーム話に戻ります。パワーアップキットの開発を進めるとき,まずはどこから取り掛かったのでしょうか。

劉氏:
 城と周辺の領地が戦場となる「攻城戦」ですね。要望がすごく多かったので,これは最初に考えなければならないと思いました。

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4Gamer:
 「攻城戦」にはすべての城に専用の戦場マップが用意されているとのことですが,ゲームには200以上の城が登場するので,相当な作業量とコストになったのではないでしょうか。

劉氏:
 確かに一つひとつ作ろうとすると膨大なものになりますが,それは自動生成という方法でクリアしました。

4Gamer:
 えっ,自動生成で戦場を制作したんですか? どのように戦場生成のシステムが作られたのか気になります。

劉氏:
 詳しい話はしにくいのですが,城の立地や地形といったさまざまな条件やルールに従って戦場が生成される仕組みを作りました。不自然なものにならないよう,しっかりと時代考証班を立てて,当時の建物や街並みなども研究し,その成果が反映されています。

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4Gamer:
 興味深いですね。戦国時代の“こうだったかもしれない”街並みがゲーム中に再現されるのは,歴史好きに刺さりそうだなと思いました。

劉氏:
 これがけっこう面白くて。例えば当時の街並みって,きっちり建物が並んでなかったり,一つひとつがバラバラな向きだったりするんですね。一見,ちゃんと街が生成されていないように映るかもしれないですが,実は「当時は本当にこういった街並みだったかもしれない」という研究結果が下地にあって。なので,違和感があっても,「自動生成がうまくいかなかったわけではないよ」ということは伝えておきたいです(笑)。

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4Gamer:
 確かに昔の街並みでイメージするのって,京都や江戸だったりする人は多いと思います。それは古くから栄えている都であり,平和な時代に区画整理が行われて作られた街で。地方や地形によって違うだろうし,その“どう違うのか”を眺められるというのはいいですね。戦闘中でのんびり眺めるとはいかないかもしれないですが(笑)。

劉氏:
 戦国時代の城下町の名残があるところって本当にわずかで,なかなかその街並みをイメージするのって難しいと思うんですが,自動生成の街並みがプレイヤーの皆さんの想像力を掻き立て,楽しませるものになっていると嬉しいです。
 実は実況プレイの生放送の背景に映していたのが,時代考証によって作ったコンセプトアートなんですよ。山城と平城の両方を出しているので,興味がある人はぜひ見てください。

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「君臣一体」を更なる深掘り。より戦略的に,そして人間らしく


4Gamer:
 「新生」の大きな特徴の一つだった“自分で考える武将たち”の要素ですが,パワーアップキットで賢さの調整などはされているのでしょうか。

劉氏:
 新要素が追加された分,武将たちが考えなければならないことも増えているので,それに伴った調整はしています。各勢力の勢力拡大の傾向は少し変わりましたし,武将たちはもう少し効率よく内政を行うようになっていますが,といっても極端にゲームが変わるものではないですね。

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4Gamer:
 武将の人間らしさ,みたいなところはどうでしょう。

劉氏:
 人間らしさの部分で分かりやすいところだと,新要素の「直談」ですね。大名が家臣や他勢力の武将と直接話し合い,出奔を引き留めたり,自勢力に引き入れたりといった交渉を行うんですが,その難度が相手の心境や性格によって左右されるんです。
 「武将の成長要素が少ない」という要望に応えるため追加した「恩賞」も,人間味のある部分を感じていただける要素となっていると思います。

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4Gamer:
 戦闘や内政などそれぞれ別に功績が用意されており,功績を上げた家臣に感状や「二つ名」を与えることでその働きに応じた能力がアップするという,武将の成長要素ですね。

劉氏:
 はい。過去作でも,家臣に仕事を与えているうちにそれに関する能力が上がるという要素はありましたが,それだとその武将が自分で成長したというイメージで“君臣一体感”がもっとほしいなと。それで,大名が労に報いるという見せ方で武将の成長要素を作りました。
 イメージとしては,「担当した仕事によって,その武将のたどるキャリアが変化する」という感じですね。仕事をした武将と,それを評価する大名という関係性が描けたと思います。

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4Gamer:
 組織としての人間関係の描き方でいうと,「評定衆」はとても気になる新要素です。
 勢力全体の方針に関わる「家宰」や,政策の提案や実行をする「奉行」という役職を家臣に与えて家臣団を作るという新要素ですが,これはどういった経緯で作ったのでしょうか。

劉氏:
 「評定衆」を追加した大きな理由の一つとなっているのが,「勢力の違いがない」という意見が多かったことですね。当然,開発陣もそれは課題に感じていたところで,どうにかしなければと考えていました。

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4Gamer:
 勢力ごとの方針の違いや個性を出すものでいうと,「信長の野望・大志」の「志」がありましたね。それとはまた違った形を考えたのは,どういった理由があったのでしょう。

劉氏:
 プレイヤーの皆さんからも「大志」の「志」のようなものがあればいいという声はあがっていて,私たちも当初は「志」ようなものを検討していたんです。ただ,「志」はあくまで大名の考えですよね。「君臣一体」というテーマを踏まえると,そのままでは違うと。
 そこで,「では,武将一人ひとりが『志』を担う形にしたら面白いのではないか」と考えてできたのが,今の「評定衆」の形です。とくに「家宰」は,勢力ごとに任命できる武将がある程度決まっていて,その家臣が持っている家宰特性がそのまま勢力の特色になるように分配しています。

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4Gamer:
 システム的な部分では「志」とそれほど変わらない印象ですが,それが一人の大名の考えではなく家臣団の考えも関わっているという見え方になっているんですね。
 ひとつ気になったのですが,なぜ「家宰」という役職名にしたのでしょうか。「信長の野望・創造 戦国立志伝」にも出てきてはいますが,あまり一般的ではなく,家臣団の立場としてもちょっとニュアンスが違う呼称だなと感じました。

劉氏:
 やはりそれは気になりますよね。もともと「評定衆」は,五大老と五奉行がイメージ元にあって,では「大老」にとも考えたんですが,身分に「家老」「宿老」があるので紛らわしくなるだろうという議論がありまして。歴史が好きな人はとくに違和感を覚えるかもしれませんし,私たちもとても悩んだ部分ですが,ゲームを遊ぶうえでの分かりやすさを考えたうえで「家宰」にしました。

4Gamer:
 なるほど。あくまでゲーム内用語として,みたいなところなんですね。あと,五大老と五奉行がイメージ元と聞いて,「評定衆」の仕組みがだいぶ理解できました。
 新しい政策は20種類以上追加されるということですが,「評定衆」の仕組みが加わったことで勢力固有のものも増えているのでしょうか。

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劉氏:
 勢力固有の政策は9種類ですね。例えば浅井だったら外交関係,朝倉だったら登用関係といったように,それぞれの勢力が当時行っていたであろうことをモチーフにしているので,このあたりでも「新生」以上に勢力の個性が感じられるはずです。
 同じく武将の特性も増えていて,「この武将がいるから,この勢力は少し違う」といった差別化が生まれると思います。

4Gamer:
 武将の特性も大幅に増え,全体でおよそ100種類になったそうですね。大好きな蒲生氏郷に特性「鯰兜」が追加され,個人的にそれだけでも「ありがとうございます!」なのですが,固有特性はどれくらい増えているのでしょう。

劉氏:
 30種類ほどですね。蒲生氏郷のはもともと「新生」でも入れたかったんですが,叶わずで。同じように「新生」で持たせたくてもできなかった武将の固有特性を,パワーアップキットでたくさん追加できたのは良かったです。
 固有ではないですが,所持している武将が限定される特性もけっこうあって,その辺りでも武将の個性付けはできていると思います。

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「新生」で評価をもらえたからこそ,自信をもってパワーアップに挑めた


4Gamer:
 自動生成の戦場などの新たな試みもあり,なかなか苦労はあったのかなと思うのですが,開発は順調だったのでしょうか。

劉氏:
 うまくチームビルドができて,ほぼ想定どおりに進行することができました。確かに戦場の自動生成は当初の想定より時間がかかり,少し不安にはなりましたが,そこはプログラマーをはじめ,スタッフがすごく優秀なので信頼して任せていましたね。
 3月30日に配信された「『信長の野望』シリーズ40周年記念特番」関連記事)で発売日を発表したとき,「これだけコンテンツ量があって,本当に間に合うのか」という話がありましたが,そこは自信もあったので,強気で「できます」と。完成したものは,そのときの企画より新要素の追加も増えていますし,本当に開発チーム全員で良い結果をもたらすことができたなと思います。

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4Gamer:
 「ここは大変だった,苦労した」みたいな状況に陥ることはあまりなかったのでしょうか。

劉氏:
 私が苦労した点を挙げるとしたら,新要素の一つひとつの作業というより,全体としての「『君臣一体』というテーマをいかにして表現するか」のバランス取りですね。
 テーマをしっかり持って開発を進めていても,どうしても違う方向に進むということがあるので,そういったブレがないか全体的なバランスを見ながら各要素をチェックし,ブレを感じたところをその都度軌道修正しました。そもそも私が,それを人一倍気にかけるタイプではあるんですが,自分自身もブレないよう注意深く確認し,何とか作りきることができたと感じています。

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4Gamer:
 手ごたえのあったところや,想定していなかったところでうまくいったという部分はありますか?

劉氏:
 「評定衆」ですね。当初は政策をコントロールする「奉行」だけのつもりだったんですが,小山が「誰を任命するかで勢力全体の戦略が変わるような存在がいたほうがいいのでは」と,現在の「家宰」につながる要素を提案してきたんです。
 確かに面白いんですが,やり方によってはゲームが大きく変わってしまう可能性があり,その要素の追加を始めてみたものの,当初は「少し難しいかな」と考えていました。

4Gamer:
 勢力全体となると,勢力の内部組織の話だけではなく,対外的な部分にも影響が出ますしね。

劉氏:
 ええ。その辺りでも難しいと思ったんですが,進めていくうちにこの対外的な部分で重要な要素になったんです。
 実際の戦国時代は,他勢力を戦争で滅ぼすのではなく,従属させる形で自勢力で取り込むというケースも多々ありますよね。今回は攻城戦が加わったことで,敵対勢力を滅ぼすことが難しくなり,従属させるという選択がより意義のあるものになる。そう思って,従属させた大名を「外様家宰」として「評定衆」に加えられるようにしたんですが,その要素によって従属大名を,勢力の一員として主従関係をより感じられるものになったんです。

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4Gamer:
 過去にも従属やそれに近いシステムはありましたが,勢力下におかれてはいるものの,そこまで自勢力に関与しない印象でした。「評定衆」は確かに勢力内の一グループになった感があります。正しくは臣ではないかもしれませんが,これぞ「君臣一体」という。

劉氏:
 ええ。当初は時間の関係もあって本当に「難しいんじゃないかなあ」という考えだったので,いろいろな要因によって「君臣一体」らしさのあるシステムができたのは,意外だけど面白い出来事でした。

4Gamer:
 お話を聞いた感じ,元々ある「新生」をその名のとおりパワーアップさせたものなんですね。タイトルによってはまったく新しいゲームのようになったものもありますが,基本のプレイ感覚は「新生」と変わらず,新しい要素が楽しめそうです。

劉氏:
 これは私自身の考えではあるんですけれど,パワーアップキットはあくまで拡張版であるべきで,本編を修正したり一新したりするのは少し違うかなと捉えています。
 とくに今回,プレイヤーの皆さんが「新生」を楽しんでくださっていることが伝わっていましたから。自信を持ってベースの部分はそのままに,パワーアップさせるいろいろな要素をチームで話し合うことができました。

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史実シナリオだけど仮想シナリオ? 新たな形で歴史のIFを楽しむ「関ヶ原の戦い」


4Gamer:
 これはやりたかったけどできなかったことや,次作以降の課題と感じたものなどはありますか?

劉氏:
 それはもちろんあります。例えばビジュアル面だと,もっと城を緻密に,リアルに表現したいという開発メンバーもいまして。今の一枚絵のマップでそれをするとなると縮尺がおかしくなりますし,マップ自体をかなり広くしなければならなくなるんですね。

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4Gamer:
 個人的に,ゲームをしていて城が視覚的に足りないと感じていました。攻城戦が加わったことでそのあたりはだいぶ解決しそうですが。

劉氏:
 私も,城はもっと見せていきたいところではあるんです。領土の反映が城のビジュアルで表現されると達成感もありますからね。城でいうと「築城」も入れたかったのですが,スケジュールの都合などで実現できませんでした。
 あとは,これはプレイヤーの皆さんの要望も多かったところですが,武将の考え方にもう少しバリエーションをつけるというのが今後取り組みたい部分ですね。皆さんけっこう,「武将にもうちょっとワガママ言ってほしい」って言ってまして(笑)。

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4Gamer:
 それは私もすごく期待しています(笑)。命令に対して「えー……」じゃないですが,微妙にはっきりしない態度だったり,そのときの状況や気分で不満げだったりとか……それをするとなるとかなりのパターンの性格や考え方を設定しなければならないでしょうし,現実的ではないことは想像できるのですが。

劉氏:
 武将が2200人もいますからね。有名な武将でしたらまだいろいろな資料やエピソードから人格付けはできますが,それって本当にほんの一握りですから。
 自ら考える武将たち自体が「新生」で初めて行った取り組みですし,「これが今の落としどころかな」というところまでできたものなので,これを今後の参考にし,さらに突き詰めていきたいです。

4Gamer:
 そろそろお時間となりました。最後にメッセージをもらう前に,あらためて注目してほしいポイントを聞かせてもらえますか。

劉氏:
 史実シナリオ「関ヶ原の戦い」はぜひプレイしてほしいです。ゲーム進行中にいろいろな分岐を用意していて,その選択次第でいくつものIF展開へと変わっていき,思いもよらない物語へと発展していきます。

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4Gamer:
 史実シナリオにはなっていますが,プレイヤーの選択で仮想シナリオのように変化するんですね。

劉氏:
 はい。社内でいろんな人にテストプレイしてもらったんですが,予想以上に評判がよくて。「毛利輝元が出陣していたら」「石田三成が,あそこでごめんなさいしていたら」といった,歴史ファンなら一度は考えることも取り入れてみました。プレイヤーの皆さんに受け入れられるかどうか,ちょっとドキドキする部分ではあるんですけどね。

4Gamer:
 関ヶ原は歴史好きではなくても知っている大きな出来事であり,「もしもこうだったら」という想像の余地もたっぷりあるので,広い層が興味を持つものになるんではないかと思います。そもそも「信長の野望」は,IFを楽しむゲームですから。

劉氏:
 そうですね。それこそ「信長の野望」の出発点って,シブサワ・コウが織田信長の果たせなかった天下統一を果たしたいと思ったところですし。「関ヶ原の戦い」シナリオの評判がよかったら,今後にも活かせるかなと考えています。

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4Gamer:
 では,読者やゲームのプレイヤーにメッセージをお願いします。

劉氏:
 パワーアップキットの開発が終わり,あらためて自分で見直したとき,本当にクオリティの高い内容に仕上がったと感じました。それは,皆さんから多くの要望をいただき,それに応えることで,高い評価をいただいた「新生」の魅力ををさらに掘り下げることができたからです。
 「新生」に引き続き,シリーズファンはもちろん,新規の方も遊びやすいゲームになっています。ぜひ,自ら考え行動する生きた武将たちと「君臣一体」となった戦国体験を楽しんでください

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

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――――2023年7月7日収録

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