インタビュー
[インタビュー]ペルソナらしさはそのままに新たなステージへ。アトラスとセガのキーパーソンが語る「ペルソナ5:The Phantom X」
アトラス,セガ,中国のPerfect Worldの3社が共同で手掛けるペルソナシリーズの新作は,どのような考えで開発・運営されるのだろうか。詳しく話を聞いてきた。
アトラス
「ペルソナ」シリーズ統括プロデューサー 和田和久氏
「P5X」チーフプロデューサー 宇田洋輔氏
「P5X」開発ディレクター / メインシナリオプランナー 新田祐介氏
セガ
「P5X」開発プロデューサー 松永 純氏
「P5X」運営ディレクター 酒井祐太氏
「ペルソナ5:The Phantom X」公式サイト
「ペルソナ5:The Phantom X」は思っていた以上にペルソナだった。“らしさ”はそのままに新たな感覚を味わえる挑戦的な新タイトル[TGS2024]
「ペルソナ5:The Phantom X」は,ライセンスアウトではなくペルソナチームががっつり関わるペルソナ最新作だ。セガとアトラス,Perfect Worldの3社が共同で作り上げるスマホ&PC向け新作は,思っていた以上にペルソナだった。
ペルソナらしさはそのままに新たなステージへ。3社共同開発で広がる新たなペルソナの世界
4Gamer:
本日はよろしくお願いいたします。
4Gamerでは以前Perfect Worldにインタビューをしていて,本作の始まりがPerfect Worldのクリエイターたちがペルソナシリーズの熱心なファンであり,それがきっかけでアトラスに企画を提案したことだったと聞きました。
和田和久氏(以下,和田氏):
始まりの話で言うと,おっしゃるとおりPerfect Worldさんからの提案がスタート地点になりました。
一方,同時期にちょうどアトラスも,広い層に届きやすく,気軽に楽しめる新しいかたちでペルソナの魅力を打ち出していきたいと考えていたわけです。タイミングが重なったことで,私たちにとっても大変興味深い提案となりました。
4Gamer:
プロジェクトはいつから始まったのでしょうか?
和田氏:
本格的に動き出したのは2022年あたりですが,提案いただいたのは2019年のなかばからですね。
4Gamer:
正式に動き出すまで,けっこう時間が空いていますね。
和田氏:
会社間で詰めなければいけない話もありますし,プロダクションの意向だけで済まないこともたくさんありましたから。
またペルソナチームとしては,「これはペルソナだ」と胸を張って送り出せる体制ができるかが重要でして,チームとしてどこまでできるか,お互いどこまで歩み寄れるかがしっかり見えている必要がありました。本当に手探りな状態からのスタートになりました。
宇田洋輔氏(以下,宇田氏):
そもそもペルソナチームは,コラボの監修などをしたことはありましたが,サービス型のゲームを作るということ自体はやっていませんでした。コンシューマゲームのペルソナの魅力をどうサービス型のゲームに載せればいいのか。このあたりはセガさんに入っていただけたことで大きく動きました。
4Gamer:
なるほど。和田さんには,2019年末に「ペルソナの今後」といった企画でメディアミックスや派生作品についての考えをうかがったのですが,そのときもストーリーやデザインなどかなり細かいところまでチェックされるという話で。新規のプロジェクトとなるとなおさらペルソナチームが最初から関わる部分が大きそうです。
「ペルソナ5」から「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」までの3年で取り組んだシリーズの挑戦とは。ペルソナチームの和田和久氏と伊東大輝氏,デザイナーの副島成記氏に話を聞いた
「ペルソナ5」発売の2016年から「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」発売となった2019年まで,これまでにないペースで作品を制作してきたペルソナチーム。「P5」の“完全版”発売というひとつの区切りのタイミングで,ペルソナチームの和田和久氏と伊東大輝氏,アートワークチームの副島成記氏に,3年間の挑戦や「ペルソナ」への思いを語ってもらった。
- キーワード:
- PS4:ペルソナ5 ザ・ロイヤル
- RPG
- CERO C:15歳以上対象
- アトラス
- プレイ人数:1人
- 学園物
- PS4:ペルソナ5 スクランブル ザ ファントム ストライカーズ
- Nintendo Switch:ペルソナ5 スクランブル ザ ファントム ストライカーズ
- Nintendo Switch
- アクション
- コーエーテクモゲームス
- ホラー/オカルト
- 日本
- 3DS:ペルソナQ2 ニュー シネマ ラビリンス
- 3DS
- CERO B:12歳以上対象
- PS4:ペルソナ3 ダンシング・ムーンナイト
- PS Vita:ペルソナ3 ダンシング・ムーンナイト
- リズム/ダンス
- PS4:ペルソナ5 ダンシング・スターナイト
- PS Vita:ペルソナ5 ダンシング・スターナイト
- PS Vita
- PS4:ペルソナ5
- PS4
- PS3:ペルソナ5
- PS3
- インタビュー
- 編集部:Junpoco
- カメラマン:増田雄介
和田氏:
最初に話し合わなければいけないことがとにかく多いんですよ。ただ,紆余曲折ありましたが,「これならやれるよ。本気でこっちの体制を作ろう!」となってアクセルを踏んでからは,どんどん進んでいきました。
ペルソナでサービス型のゲームと聞いて,どうなるのか気になる方や,不安になる方はいるだろうという懸念はもちろんありまして,そういうファンの思いはとても大切にしたいと考えています。私たち自身が「これはペルソナだ」というゲームを出せる体制を構築して,ファンが納得するかたちで届けたいと考えています。
宇田氏:
体制作りに関わる話だと,メインシナリオは90%以上をペルソナチームが担当しています。
新田祐介氏(以下,新田氏):
シナリオライターは各社(アトラス,セガ,Perfect World)にいるのですが,メインシナリオとオリジナルのペルソナ5のキャラクターが登場するシナリオは基本アトラスが担当しています。そのほかについてはセガさんやPerfect Worldさんと協力して制作し,開発ディレクター兼メインシナリオプランナーの私が総合的な判断をするかたちで取り組んでいます。
宇田氏:
運営型のゲームって,たとえばサブシナリオを作るにしてもコンシューマゲームでいうサブシナリオとは作り方が異なるんですね。ペルソナチームにはその知見がないので,そこはセガさんやPerfect Worldさんに制作していただき,ペルソナというゲームとしての最終調整を私たちが行なっています。
4Gamer:
開発のなかで,セガはどういった役割を重点的に担っているのでしょうか。
松永 純氏(以下,松永氏):
セガはアトラスさんとPerfect Worldさんのあいだにいるような立ち位置で,主に運営型ゲームのサイクルや仕様について協力しています。物語やバトルといった,コンシューマゲームとしてのペルソナの魅力をどのように運営型のゲームに反映するかという点について,仕様の監修を行ったり,いま宇田さんから話のあったサブストーリーの制作などを担当しています。
私と酒井はもともとストーリードリブン型のゲーム「チェインクロニクル」の開発・運営をしているので,それらで得た知見も生かしながらですね。ほかには翻訳のコーディネートでも開発をサポートしています。
4Gamer:
翻訳については非常に気になります。中国や韓国などではすでにサービスが始まっていますが,日本版との違いはあるのでしょうか。
酒井祐太氏(以下,酒井氏):
言語によって伝わり方や受け取り方が異なるので,同じシーンでも表現が異なることはありますが,「ストーリーやコンテンツについては同じものをお届けする」というのが基本の考えです。
先行している地域でのユーザーさんのご意見を受けて改善した箇所など,利便性の向上については最初から実装されているものもありますが,国や地域によってP5Xのストーリー体験が異なるということは避けないといけないと考えています。
松永氏:
やはり日本が遅れて配信されることにはなるので,そのあたりは国内サービス開始時点でストーリーやコンテンツを初めから多めに用意させていただき,正式サービスを進めるなかで足並みを揃えられるようにしたいと考えています。
4Gamer:
先行してサービスが行われている中国や韓国などの反響はどのように受け止めていますか?
宇田氏:
おかげさまで好評をいただいていて,作ってよかったなと感じています。アップデートのたびに熱量の高い反応が返ってきて,本当に楽しんでいただけているようでうれしいですね。
新田氏:
とくにストーリー周りは好評で,多くの感想をあげていただいたり,考察を楽しんでいただけたりと,大きな反響がありました。
実はサービス前のテスト段階では,オンラインゲームのシナリオとしてはまだまだ改善の余地が多いシナリオでした。3回目のクローズドβテストあたりで私が開発ディレクター兼メインシナリオプランナーとなり,それまでよりもしっかりとペルソナチームが関わるようになったのが,さきほど和田が話したアクセルを踏み込んだタイミングです。そこからはストーリーラインも評価されるようになりました。ただ,ここで満足せず,さらなるブラッシュアップも考えています。
松永氏:
メインストーリーの評判を見ると,いわゆるJRPG的なゲームをちゃんと遊びたいという思いに応えられていることで強く支持されているように感じています。
それと,日本の熱心なペルソナファンの方々のなかには,中国版や韓国版でP5Xをすでにプレイしている人がいらっしゃって。基本的にゲーム体験は同じものを届けるということは絶対なのですが,やはり新鮮さだとか,日本語で楽しめること以上の何かを届けられないかという点は感じており,今まさにアトラスさんと話し合っているところです。
4Gamer:
正直に言いまして,最初に中国でのサービスが発表されたとき,いわゆるライセンスアウトなゲームで「ペルソナらしさ」が失われるのではないかという不安があったんです。それが今回TGS 2024でプレイしてみてその不安はだいぶ解消されて,同じような不安を抱えていた人に「とりあえずやったら分かる! やってみて!」とおすすめできそうだと思いました。
開発側としては,これからどのように日本のファンにP5Xを知ってもらおうと考えているのでしょう。
宇田氏:
アトラスはもともと,こういうユーザーを対象にしているからとか,このプラットフォームだから,といった理由でゲームの作り方の思想を変えるようなことはしていません。「自分たちのゲームはこうだ」というのがまずあって,それをどう対象のユーザー層やプラットフォームに落とし込むか,という順序で考えています。今回の場合は運営型のゲームで,セガさんとPerfect Worldさんの力を借りながら我々は「ペルソナらしさ」を作っています。その思いがゲームを通して伝わるとうれしいですね。
和田氏:
気軽に誰でも遊び始められるペルソナと考えると,私たちはここまでのコンテンツを出したことってないんですね。入り口は広くて,そこからいろいろな体験につながっていくようなイメージで期待してほしいです。
松永氏:
ペルソナらしいRPGの体験を届けるためのお手伝いという点で言うと,アトラスさんの姿勢がはっきりしていることで私たちも力を振るえたように思います。
ストーリーやバトルといったアトラスのRPGらしさをちゃんと届けたいという思いが大前提にあるのに対して,さまざまなコンテンツやキャラクターが増えていく楽しさ,成果が広がっていく楽しさといった,運営型のゲームの面白さにどのようにつなげていくのか。それが明確だからこそ,我々やPerfect Worldさんは迷わずに開発ができています。
そのあたりをコアなペルソナファンに「ちゃんとできているね」と言っていただけるととても頑張れますし,それがチャレンジのポイントだと思っているので,しっかりと作り上げていきたいですね。
酒井氏:
月に何度か更新が入って,新しいキャラクターやイベントが始まり,数か月に1度の大きなアップデートでストーリーやバトルコンテンツが追加される,というのが運営型のゲームの特徴ですが,P5Xも同様に世界が広がっていきます。
更新されるたびにキャラクターの新たな一面が見えたり,もしくはプレイヤーとしての楽しみ方が追加されたり,P5Xで毎月ワクワクしていただける瞬間が増えていくような展開ができればと考えています。
4Gamer:
今回あらためて話を聞いて,完全な3社共同開発だったんだなと思いました。当時の発表は,セガおよびアトラスとPerfect WorldとのIPライセンス契約が締結という,いわゆるライセンスアウトみたいなもので,言葉の印象みたいなところでも「投げっぱなしなんじゃないか……」と不安に思う人もいたと思うんです。
それが実際話を聞いてみると,「しっかり監修しています」といったレベルではない力の入れようだなと。
新田氏:
はい。先ほどお伝えしたとおり,メインシナリオやコラボシナリオについてはアトラスがほぼ全て制作していますし,現状を鑑みると,あの発表は今となっては良い意味でウソになるかもしれませんね(笑)。
松永氏:
アトラスさんとセガの両社で合わせると,普通に一本ゲーム作れるくらいの人数が関わっていますからね(笑)。さらにPerfect WorldさんがAAAに相応しい体制を組んでいるという。
そういう意味でも「ATLUS TGS2024 MEDIA BRIEFING」(関連記事)で宣言したように,あらためて共同開発であることを伝えさせていただきました。
怒涛の情報公開にLynさんのライブも!「ペルソナ5: The Phantom X」発表会レポート
セガとアトラスは2024年9月25日,「ATLUS TGS2024 MEDIA BRIEFING」を品川プリンスホテルのクラブex」にて開催した。本稿では,その第1部「ペルソナ5: The Phantom X」発表会をレポートしよう。イベントでは,満を持して始まる国内展開について開発陣が語るトークコーナーやLynさんのミニライブなどが行われた。
4Gamer:
以前ペルソナシリーズ開発についてインタビューをしたとき,本当にちょっとした語尾のニュアンスまで「このキャラはこんなことは言わない」といった感じでチーム内で確認されていると聞きました。本作でもやはり同じように……という雰囲気ですね。
新田氏:
ええ,まさにそれを行うため,私は開発ディレクターと兼任でシナリオプランナーとしてチームに加わりました。ただ,そうして仕上げたシナリオを実際に実装するかどうかはPerfect Worldさんの意向もあるので,そういった部分を含めてお互い何度も北京と東京を行き来して話し合っています。
4Gamer:
最後にあらためて読者にメッセージをお願いします。
宇田氏:
月並みですが,ファンの皆さんの期待に応えられるようなかたちで一生懸命作っていることはお伝えしたいですね。
どのようなプラットフォームでも,「これはペルソナだ」と思っていただけるゲームを作ることを常に大事にしているので,そのあたりは不安なくお待ちいただけるとうれしいです。
和田氏:
あらためてになりますが,アトラスとしてはペルソナとして守るべきものは守りながら,より広い層が気軽にペルソナシリーズに触れられるようなゲームを目指して開発を進めています。
そして,“ずっとペルソナの世界を楽しみ続けられる新しいペルソナ”として,セガさんとPerfect Worldさんと共同で,それぞれの強みやいいところを生かしてしっかり作っているので,期待していただければと思います。
新田氏:
注目していただきたいのは,「無欲と生命」というシナリオテーマです。これはペルソナ5のテーマである「更生と叛逆」のオマージュになっていて,新たな主人公とその仲間たちが欲望のない世界にどう抗うのか,どのように自身のペルソナを覚醒させるかは,本作ならではの展開になっています。ぜひ楽しんでほしいですね。
また,ペルソナ5ファンの皆さんには,怪盗団や四軒茶屋が物語に登場する点を伝えておきたいです。どのように関わってくるかは詳しくは伝えられませんが,四軒茶屋のあの病院やあの純喫茶が出てくるかも? という期待も込みで楽しみにしていてください。
松永氏:
ペルソナ5というゲームを完成された一本の映画と例えると,運営型のP5Xはテレビドラマのような立ち位置と言えるかなと思います。
新しい話がどんどん更新されて,視聴者の反響などのいろいろな影響を受けながらコンテンツが展開していくようなイメージです。楽しみ方や魅力は少し変わりますが,私たちセガは少しでも違和感なく,ファンの皆さんに「これはペルソナだ」と思っていただけるようなコンテンツを作り,それを長く楽しんでいただけるようにしていきたいです。
酒井氏:
今後の動きで言うと,まずはクローズドβテストが近日実施予定となっています。ご応募者多数の場合は抽選となりますが,スマートフォンとPCでプレイできますので,「ここはどうなっているんだろう?」と気になっている部分があれば,実際に触って確かめていただければと思います。
4Gamer:
ありがとうございました。
「ペルソナ5:The Phantom X」公式サイト
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(C)[2024] Perfect World Adapted from Persona5 (C)ATLUS. (C)SEGA.
(C)[2024] Perfect World Adapted from Persona5 (C)ATLUS. (C)SEGA.
(C)[2024] Perfect World Adapted from Persona5 (C)ATLUS. (C)SEGA.