プレイレポート
PS5版「バルダーズ・ゲート3」インプレッション&インタビュー。気になるコントローラ操作や日本語ローカライズはどうなった?
2023年8月にリリースされたPC版がSteamでのレビューや各種レビューサイトで高い評価を受け,先日行われたGolden Joystick Awards 2023ではUltimate Game of the Yearなど7つの賞を受賞。12月8日に開催されるThe Game Awards 2023でも,Game of the Yearを含む8部門にノミネートされている(関連記事1 / 2)。
そんなBG3の日本向けPS5版を,メディア向けに実施された体験会にてプレイしてきた。序盤のインプレッションを交えて,コンシューマ版の操作感や日本語のローカライズの仕上がりを伝えたい。また記事後半では,開発スタッフへのメディア合同インタビューを掲載しているので,ぜひチェックしてほしい。
「バルダーズ・ゲート3」公式サイト
プレイ前に読みたい「バルダーズ・ゲート3」の予備知識。関連作品と歴史から読み解く,フォーゴトン・レルムの歩き方
Larian Studiosが開発を手がけたターン制RPG「バルダーズ・ゲート3」の日本語版が,スパイク・チュンソフトから2023年12月21日に発売となる。本稿では,そんな本作の面白さを掘り下げると共に,プレイ前に知っておくとより深く楽しめるようになるだろう予備知識を紹介する。
世界で高評価のBG3。日本語版の仕上がりは?
本作の世界は,テーブルトークRPG「ダンジョンズ&ドラゴンズ 第5版」をベースに作られている。ゲームの舞台となるのは,さまざまな特徴を持つ人型種族が暮らし,数多くのモンスターが徘徊するフォーゴトン・レルムだ。
あらゆる生命体の支配を目論む邪悪な存在であるマインド・フレイヤーに,彼らの幼生を植え付けられた主人公は,身体を乗っ取られる恐怖と闘いながら,それを回避する方法を探すために世界を探索することとなる。
そうした探索の中で,主人公は同じ運命を背負った者と遭遇する。遭遇時には主人公が取り得る会話や行動の選択肢が示され,いずれかを選ぶと,さらに選択肢が示される。それが何度か繰り返され,その結果として彼らと協力するか,敵対するか,あるいはトラブルなく別の道を進むかが決まる。それら選択肢は,主人公の種族やクラスによって変化することもあるので,それぞれに異なる展開が待っているのだ。
もちろん,マインド・フレイヤーの幼生に寄生されていないNPCと接触することもあり,その場合も同様に会話や行動の選択肢が提示される。彼らが抱えているトラブルを解決したり,対立を煽ったり,「自分には無関係だ」と立ち去ったりと,取り得る行動はさまざまだ。場合によっては,自分の選択が意図せぬ結果に結びつくこともある。
戦闘はシミュレーションRPGライクなターン制で,基本的には相手が射程に入る位置まで移動して攻撃することを,敵味方で毎ターン繰り返す。戦闘によっては,敵を殲滅しなくとも,別に用意された目標を達成することで完了することもある。攻撃手段も単に武器や魔法を使うだけでなく,敵を高所から突き落とすといった手段もあり,どれが正解というものはない。どのように困難を乗り越えるかはプレイヤー次第だ。
攻撃の成否やダメージ量などは,(表示こそされないものの)すべてダイスを振ってその出目で決められる。そのため,なかなか思うような結果にはならない。敵は強く,そして賢いので,こちらもしっかり考えて行動しないと,主人公も含めたパーティメンバーはあっさり倒されるなんてこともざらにある。
なお,本作は戦闘中にもセーブができるので,細かくセーブしておけば,悪い結果が出ても数手前からすぐにやり直すことが可能だ。やられたら素直に敗北を受け入れ,バトルの最初からやり直す! ……と意気込んで挑みたいところだが,相手によってはそんな心を簡単にへし折られるかもしれない。ということで,バトル中のセーブは覚えておいても損はないだろう。
コマンドはサークル状に表示され,左右いずれかのアナログスティックで選択する。ボタン配置的には,左スティックで選択のほうが決定ボタンを押しやすい |
セーブやロードなどのコマンドもサークル状に表示される。下記のインタビューにもあるとおり,最初からコントローラ操作を意識したUI設計になっているとのこと |
実際にプレイして感じたのは,会話でも戦闘でもとにかく判断を迫られることである。今回は魅力の高いキャラクターを主人公にしたこともあり,ひたすら相手を説得し,物事を穏便に運ぶような選択肢を一貫して選んでみたのだが,そうやって多数の判断を通じてロールプレイしていくことができるのがBG3の大きな魅力と言える。D&Dを知らなくても,圧倒されるほど作り込まれた作品世界で,自分だけの冒険を楽しめるだろう。
そんなゲーム体験を支えるのは,膨大なテキスト量だ。それだけに気になる日本語ローカライズの質だが,プレイした範囲では大きく気になる部分は見当たらなかった。3時間ほどのプレイのため確認できたのはほんの序盤であり,まだ調整中ということで翻訳前の部分などもあったが,ゲームを進めるうえで不自然に感じるような表現はなかった印象だ。これも序盤のみのプレイのため細かい部分までは確かめられていないが,日本語版のD&D第5版に準拠したテキストになっているということなので,実際の仕上がりは製品版でじっくりと確認したい。
デベロッパ・Larian Studiosのキーパーソンにインタビュー
BG3のプレイ後,デベロッパであるLarian Studiosのスタッフに対するメディア合同インタビューが行われた。回答したのは,リードシステムデザイナーのNick Pechenin氏,アソシエイトライティングリードのChrystal Ding氏,リードシネマティックアーティストのGraham Ross氏の3名である。
Nick Pechenin氏 |
Chrystal Ding氏 |
Graham Ross氏 |
──本作でとくにこだわったところや,プレイヤーに注目してほしいところを教えてもらえますか。
アソシエイトライティングリード Chrystal Ding氏(以下,Ding氏):
私達がもっとも注目してほしいのは,ロールプレイをするところです。
リードシステムデザイナー Nick Pechenin氏(以下,Pechenin氏):
システムデザイナーの観点から言うと,「ダンジョンズ&ドラゴンズ」やテーブルトークRPGを未プレイでも,すべての人が楽しめるデザインにすることが1つの課題でした。「ダンジョンズ&ドラゴンズ」や「バルダーズ・ゲート」シリーズの知識がなくとも遊べるよう,すべてをBG3内で完結させることを心がけました。
──テーブルトークRPGのプレイ感にこだわった理由を教えてください。
Pechenin氏:
動物と話したり空を飛んだりといった,テーブルトークRPGのコアな部分である自由度の高さを表現したかったからです。もう1つは,コンパニオンと一緒に旅をしている感覚を伝えたかったからですね。
Ding氏:
思いがけないことが起こったときに,それがサイドクエストとなって楽しい経験ができるよう,いろんな分岐を考えました。
──メインストーリーを進行する以外の楽しみ方や,開発中に仕込んだ遊び要素があれば教えてください。
リードシネマティックアーティスト・Graham Ross氏(以下,Ross氏):
この時点ではあまりネタバレしたくないので,ぜひプレイして見つけてください。
Pechenin氏:
一番オススメは,自分のやりたいようにプレイすることです。それがあなただけのストーリーになりますから。テストプレイ時に,皆がメインストーリーを追っていくだろうと思っていたら,人によって全然違う進め方をしていたんですよね。それがすごく興味深い点でした。どんな進め方でも,最終的に1つのストーリーになるので,ぜひ自分のやりたいようにやってみてください。
──「ダンジョンズ&ドラゴンズ」や「バルダーズ・ゲート」シリーズを知らない人でも,BG3を楽しめますか。また,そうした人達に対して,本作をどう説明しますか。
Pechenin氏:
ファンタジーの世界観を持つ多くのゲームは,「ダンジョンズ&ドラゴンズ」に何かしらつながりがあります。「ドラゴンクエスト」や「DARK SOULS」もそうですから,本作も楽しめると思います。たとえば私が自分の親に説明するなら,「『ゲーム・オブ・スローンズ』みたいなファンタジーアドベンチャーだ」と言いますね。
Ding氏:
私も「自分が主人公になるファンタジーアドベンチャー」と説明します。
Ross氏:
「友達と2人で,語りながら物語を作っていくようなゲーム」と説明しますね。
──BG3は一見オールドスクールなコンテンツですが,実際にプレイするとまったく新しいゲームになっていて驚きました。開発中,どんなマジックを使ったのでしょうか。
Ross氏:
暗黒魔法だね(笑)。
Ding氏:
カットシーンを刷新しています。「Divinity: Original Sin 2」のときは,1つのシーンに最大2人までしかキャラクターを出せませんでしたが,今回は1つのシーンに3人以上出してストーリーテリングしています。
Pechenin氏:
もちろん,最初からこんな偉業を成し遂げるとは思っていませんでした。まさか6年もかけて1つのゲームを開発することになるとは……。長い期間アーリーアクセスを行い,フィードバックを受けて,どのような要素を入れたらいいのか調査したからこそ,高く評価されるゲームになったんだと思います。
──テーブルトークRPGをプレイしているような自由度の高さと,壮大な物語をどうやって両立させたのでしょうか。
Ding氏:
自分のキャラクターのアイデンティティを形成し,何者であるかを創り上げるためのツールを提供することに多くの時間を費やしました。「どのようにロールプレイするか」を考えながらプレイしてもらえると嬉しいですね。ゲームを通じて,自分のキャラクターが置かれた状況を感じ取り,どのように自分のキャラクターを表現するか。そこを楽しんでほしいです。
Pechenin氏:
システムデザインチームにとって大きな焦点となったのは,「ダンジョンズ&ドラゴンズ 第5版」のルールをゲームのフォーマットに適合させ,プレイヤーが直感で魅力的に感じられるようにすることでした。私達は,「ダンジョンズ&ドラゴンズ」を象徴するクラスや呪文の強いファンタジー性を守りつつ,プレイヤーに代わって数字を計算し,ボーナスやダイスロールを記録し,プレイヤーが意思決定に集中できるようにしようと考えたんです。
Ross氏:
「ダンジョンズ&ドラゴンズ」やRPGで重要なことは,プレイヤーが物語の可能性を探求できるようにすることです。だから,私達シネマティック部門および関連するすべての部署は,ゲーム内のすべての瞬間をいかに重要なものに感じさせるかということに時間をかけました。とても小さなこと,取るに足らないことでさえも,プレイヤーに対してユニークなプレイ体験をしていると感じさせるために,一般的なプレイスルーでは「レアケース」と見なされるような瞬間にも注意と配慮を払いながら開発を進めました。
Pechenin氏:
プレイヤーキャラクターがどこにいるか,身長はどれくらいか,何を着ているか,どんな外見にしたかにかかわらず,カットシーンが正常に再生される仕様について説明するのにいい機会かもしれませんね。
Ross氏:
シネマティック部門では,ストーリーの分岐要素を通じてやりがいのある体験を構築するために,アートとナラティブに取り組むことに重点を置いていました。その体験を占める大きな部分は,プレイヤーキャラクターの容姿の選択を尊重することで,ゲームエンジン内のキャラクターメッシュとリグの基盤を新たに構築しています。
このゲームには,身長や体型が異なる複数の種族が登場しますが,プレイヤーがそれらの選択をすることを,可能な限り尊重したいと考えました。NPCがキャラクターのクラスや種族に反応する時間はほんの数秒かもしれませんが,ゲームが自分の意見を聞いてくれているとプレイヤーが感じることに大きな意味があるんです。それを深く,変化に富んだシステム的なゲームプレイや戦闘と結びつけることにより,美しくユニークで,人々が評価し認める自由度の高いものを作り上げることができたんです。
──まずはPCのゲームとして開発されたのかと思いますが,コンシューマ版を開発するにあたり工夫した点はありますか。
Pechenin氏:
コンシューマ版をリリースすることは当初から決めていたので,コントローラでの操作を意識しながら開発を進めました。またPC版でもコントローラでプレイしたいというリクエストは多いので,今回は必ずしもPCファーストというわけではなかったんです。さらにコントローラ操作だと,使う魔法によってコントローラのライトの色が変わる仕組みを入れています。今回,コントローラ操作の採用はチャレンジだったのですが,「Divinity: Original Sin 2」の経験が活きて,ストレスなくプレイできるようになりましたし,また画面分割によるCo-opプレイにも対応できました。
──Larian Studiosのパブリッシングディレクターより,PC版の日本語対応がアナウンスされましたが,PS5版と同じテキストが使われるのでしょうか。
Pechenin氏:
私の知る限りでは,同じテキストになると思います。日本にもLarian Studiosのゲームの熱心なファンがたくさんいますし,「Divinity: Original Sin 2」の日本語版が発売されたときはとてもエキサイティングでしたから,今回も日本語に対応することにしました。
──日本語版の表現は,オプションの「露骨な内容のコンテンツ」にある「性器の表示」「裸体表現の表示」「プライベートの時間の共有」をすべてオフにした状態に固定されますが,物語やゲームプレイ体験が大きく変わる部分などはありますか。
Ding氏:
そうしたフィルタリングによって,別の体験になることはありません。たとえばロマンスのシステムは,特定のクエストを達成したからNPCの恋愛感情が主人公に向くという単純なものではなく,プレイを通して少しずつ感情が育っていくものです。表現をフィルタリングしたとしても,そこにある感情は変わりません。
──BG3には膨大な量のコンテンツがありますけれども,開発中のワーク・ライフ・バランスはどうだったのでしょうか。
Ross氏:
大作ゲームを開発するときは長時間働きづめになることも少なくないですが,今回のワーク・ライフ・バランスはすごくよかったですね。
Pechenin氏:
今回は,労働時間を管理するシステムを構築して,大幅に労働超過するようなスタッフが出ないようにしていました。「Divinity: Original Sin 2」の開発時よりも,かなりワーク・ライフ・バランスが改善されたと言えます。
──戦闘では,きちんと考えて行動しないとすぐに敵に倒されるなど,結構難しいゲームだと感じました。初めてBG3をプレイする人に向けて,何かアドバイスはありますか。
Pechenin氏:
難度を変更できますので,まずは一番イージーなモードを選んでください。またキャラクタークリエイションは,外見を好みのものにして,そのほかはオススメの設定にするといいと思います。
迷ったら,バーバリアンがオススメですね。バーバリアンは非常にシンプルで,激怒して追加攻撃したりもするので,初心者はプレイしやすいんじゃないでしょうか。
──キャラクタークリエイションでは,BG3のオリジンキャラクターも選択できますよね。初心者にオススメのオリジンキャラクターは誰でしょうか。
Ross氏:
本当にオススメなのは,皆さん各自がキャラクターを作って,ゲームを進める中でオリジンキャラクターの誰と同行するか決めていくことです。強いてオススメを挙げるなら,ウィザードのゲイルですね。ほかのオリジンキャラクターのストーリーも当然楽しいですが,彼のストーリーはとくに好きです。
Pechenin氏:
私もゲイルがオススメです。BG3の持つ“異世界モノ”みたいな部分との親和性が高いんですよね。
Ding氏:
全員,私の子どものような存在ですから1人選ぶのは難しいです。皆さんのキャラクターを作って,オリジンキャラクター達と旅をしてほしいです。
──BG3のオリジンキャラクターはかなり作り込まれていますが,彼らの奥深い設定や物語を作るにあたって意識したことはありますか。
Ding氏:
キャラクター達が何かに遭遇したとき,どんなリアクションをするかを考えに考え抜いて,作り込んでいます。
──キャラクタービルドは何通りくらいあるのでしょうか。
Pechenin氏:
ビジュアル面を除くと,大きく分けて48種類です。ただ,そこにさまざまな要素が追加されていくので,明確な数字は公表していません。たとえば,ある魔法を覚えたかどうかや,動物と話せるかどうかなどで,そのあとのストーリーやゲームプレイはまったく異なります。
──知覚判定などではダイスが表示され,テーブルトークRPGの雰囲気が出ていますが,戦闘中はダイスが表示されない理由を教えてください。
Pechenin氏:
ゲーム内の判定はすべてダイスロールで行っているので,全部見せてしまうとダイスだらけの画面になってしまうんです。戦闘中は,魔法などの派手なエフェクトを見せたいので,ダイスは一切見せないようにしました。
──テーブルトークRPGをベースにしたコンピュータRPGは,テーブルトークRPGのプレイフィールを独自に解釈し直すという形で進化した面が大きいと捉えています。皆さんは,そうしたコンピュータRPGのゲームデザインをどう見ていますか。
Pechenin氏:
そういった進化は,主にインディシーンで始まり,のちに大きな会社が採用して大きなプロジェクトになるという傾向があるように感じます。私自身,新しいテーブルトークRPGやインディゲームなどに注目し,次に手がけるゲームのインスピレーションを得ています。
──とくに注目しているインディゲームを教えてもらえますか。
Pechenin氏:
「Solasta: Crown of the Magister」「Wartales」「Cobalt Core」の3本です。最近も,「ダンジョンズ&ドラゴンズ」インスパイアのタイトルをSteam Next Festで探しては試しています。
──DLCのリリースを含めて,今後のBG3の展開を教えてください。
Pechenin氏:
今のところ,DLCをリリースする予定はありません。今は,BG3をパッチなどで改善していくことにフォーカスしています。
──PC版リリース後に機能拡張などが行われましたが,そうしたアップデートは今後も行われますか。
Pechenin氏:
近日中にアナウンスします。ぜひ楽しみにしていてください(※セッション開催時は2023年11月上旬)。
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