プレイレポート
[プレイレポ]死者のチカラを使い,運命を変えてゆけ。HDリマスター版「ゴースト トリック」では,色あせることのない物語の面白さを体験できる
「ゴースト トリック」公式サイト
死者のチカラを使い,運命を変えてゆけ!
アドベンチャーゲーム好きであれば,「ゴースト トリック」の名前を聞いたことがある人は多いだろう。「逆転裁判」シリーズで知られる巧 舟氏が手がけた2010年の作品で,今でも多くのファンを抱えている。今回は実に13年振りの復活を遂げることになった。
本作の主人公は,物語が始まった時点で既に死んでいる男「シセル(ナゾマミレノワタシ)」。男の記憶は失われており,自分の名前はおろか,なぜ殺されたのかすら覚えていない。どうやら殺し屋に殺されてしまったようだが,気が付くと「赤毛のオンナ」も殺し屋に撃たれようとしている。
初めてプレイする人は「なぜ主人公は殺されたんだ?」「死人がどうやって彼女を助けるんだ?」と疑問で一杯になるはずだろう。しかし,数々の謎に弄ばれつつプレイするのが本作の楽しみであり,とりあえずはそういうものと受け入れて進めていこう。
主人公は死んでいて,完全に手詰まりのように見えるが,これを解決するのが「死者のチカラ」だ。主人公は誰かが死んだ後,その4分前の世界に戻れる。そこではタマシイでモノにトリツク(取り憑く)ことで,その機能を使えるようになる。ギターであればかき鳴らし,扇風機はスイッチを入れて風を起こし,冷蔵庫はドアを開けるといった具合で,トリツクモノによって異なる現象が起こる。
ゴーストが取り憑くゲームなので,「ゴースト トリック」というわけだ。死者のチカラを駆使し,赤毛のオンナをはじめとした人々を助けつつ,自らの死の謎に迫っていこう。例えば,殺し屋に銃を突きつけられた人がいて,近くに遮断機があるとしよう。主人公のタマシイそのものは現実世界に干渉できないが,遮断機にトリツクことで竿を動かし,銃を吹っ飛ばしてしまえばいいわけだ。
とはいえ,トリツクことができるモノは1つだけだし,起こした現象の影響力も限られている。一発で状況を激変させるというわけにはいかないのだ。「赤毛のオンナが殺し屋に殺されようとしている」シチュエーションの場合,遮断機で銃を吹っ飛ばしたとしても,殺し屋は地面に落ちた銃を難なく拾い上げ,再び赤毛のオンナを撃ってしまうだろう。遮断機にトリツクことで時間を稼いだ後,次の手を打たなければならないのだ。
誰かを助ける過程で何度も失敗するが,そのたびに4分前の世界をやり直せる。試行錯誤を繰り返しつつ,いろいろなモノにトリツクことで少しずつ状況を変えていこう。日用品を組み合わせて謎の装置を作るTV番組「ピタゴラスイッチ」のテイストに少し近いといえば伝わるだろうか。一つひとつの変化は小さいだけに,最後の一撃で大逆転を決めた時の爽快感は格別だ。
死者のチカラにはさまざまな制限があるが,とくに厄介なのは距離制限だ。タマシイは自由に移動できず,モノに取り憑いたあとで別のモノへと伝っていくしかない。具体的には,トリツクことができるモノに存在する「コア」から「コア」へ渡り歩いていくことになる。
「あそこにあるモノを使えれば状況を変えられるのに,どうしても届かない!」なんて時はなかなかにもどかしい。モノ伝いに渡り歩いていき,頭を捻るのはパズルゲームならではの面白さがある。
犬好きの筆者としては,第2章に登場する,御主人様である少女のカノンを守って命を落としたポメラニアン「ミサイル」の描かれ方が非常に深く突き刺さった。主人公とミサイルは死者のチカラで語り合えるのだが,ミサイルの内面と行動が実に犬らしい。犬を飼っている人なら「ああ,ウチの犬もこんな風に考えてるんだろうな」と思える説得力があるのだ。そんなミサイルに見守られながら,主人公はカノンを救うべく奮闘する。
巧 舟氏による軽妙洒脱なテキストと,モノにトリツクことで絶望的な状況をひっくり返すパズル要素,杉森雅和氏が手がける情感豊かなBGMなどが魅力の「ゴースト トリック」。もともとはニンテンドーDS向けで2画面プレイの作品だったが,1画面向けにアレンジされたスマートフォン版も発売しており,画面数の違いによってプレイ感が損なわれることはないと感じられた。
製品版では「大逆転裁判」の北川保昌氏によるアレンジBGMとオリジナルBGMを途切れることなく切り替えられるのに加え,「イラストアツメ」「BGMアツメ」や,さまざまな条件を満たす「チャレンジ」といった新要素が追加されており,オリジナル版を知る人も新たな気持ちで楽しめるはずだ。
「ゴースト トリック」公式サイト
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(C)CAPCOM CO., LTD. 2010, 2023 ALL RIGHTS RESERVED.
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