プレイレポート
[プレイレポ]メトロイドヴァニアに求める要素を完璧に近い形で提供してくれる「棄海:忘れられた深海都市」
Steamでは「棄海:プランティーズアドベンチャー」の名で配信されており,Switch版では限定スキンをはじめ,マルチエンディングやボスラッシュモード,4段階の難度選択が搭載されている。本稿では,Switch版「棄海:忘れられた深海都市」のプレイレポートをお届けしよう。
今回プレイレポートを書くにあたり,難度は「軍曹」(モンスターの危険度「中」)で,エレキヒュドラというボスを撃破する場面まで進めている。「軍曹」でもボス戦では何度かリトライするほどの手応えで,簡単ではないが難しすぎない,丁度いいバランスになっていた。なお,途中からの難度変更も可能なので,最初から高難度の「ガーディアン」や「プロテウス」を選んでも問題ナシだ。
冒頭でも紹介したように,Switch版では限定スキン「SW-417」を選んでプレイできる。スキンを変更するとイベントのグラフィックスも変化するので,好きな見た目で始めよう。なお,本稿では「ZX-921」のスキンを使用して進めている。
ユニークな世界観に惹き込まれて深海を彷徨う
本作でプレイヤーが操作する主人公は,人類を守るガーディアン「プランティー」だ。深海でも活動できる魚人のような姿をしており,かたわらにはメカジキ型のロボット「ブラント」が相棒として付いている。目が覚めると現在が西暦2487年であることを告げられ,立派なガーディアンとなるべく訓練を受けるのが冒頭のストーリーだ。
プランティーはまだ訓練を受けている新人のようだが,冒頭からさっそく大事件が発生する。「ラクシャ」と呼ばれる巨大生物の出現によりプランティーの住む拠点は破壊され,人類の住む深海都市ロイラも危険な状況に追い込まれているのだという。そこでプランティーは,まだ何も知らない新人ながらも人類を守るために,ロイラを目指すことになる。
そうしてプランティーは廃棄物まみれの深海を探索するのだが,先に進んでいくと何やら不穏な雰囲気が漂い始める。明らかに最近壊れたとは考えにくいほどの荒廃具合に,水苔が生えて数十年は放棄されているであろうデパート。
先に進むたびに「守るべき人類,まだ存在している?」と否応なく不安な気持ちにさせられる。タイトルの「忘れられた深海都市」って,もしやそういう意味か……と嫌な予感がずっと付きまとうのだ。
相棒のブラントが昔は美しい街だったと語るロイラの背景。昔っていつごろの話……? |
深海都市内部のデパート。全体的にボロボロで,長い間放置されているように見て取れる |
プランティーは道中でガーディアンに指令を出す機械に出会い,避難した人類の戻る場所であるロイラを守るため深海都市を脅かす脅威を排除することになる。しかし,当然のように増援はナシ。新人であるプランティー以外のガーディアンと連絡が取れず,孤軍奮闘となる。冒頭の訓練シーンでは5年振りの新人と言われていたり,何かと疑問点や情報に穴があるストーリー展開が続く。この絶妙な情報不足は,真実を知りたくなり先に進めるモチベーションにもなっていた。
ゲームの進行度合いに応じて,さまざまな情報が記録されていく“百科事典”も,ストーリー性を深めるのに一役買っており,新しい情報が手に入るとワクワクさせられる。事の発端であるラクシャのデータや,深海都市のニュース記事などのアーカイブを探索して入手することで,少しずつ理解が深まっていくのだが,その分嫌な予感も着実に増していく……。
百科事典は単なるデータではなく,当時起こった事件などが物語調に語られており読むのが楽しい |
探索していると,研究データやニュース記事などの情報が手に入る |
そうやって廃墟と化した深海施設に蔓延るモンスター達を倒していくのが,本作の基本的な流れだ。深海探索には息苦しさや恐怖,不気味な雰囲気がつきものだが,意外なことに閉塞感はさほど感じず,アクアリウムを眺めているような心地よさすらあった。
もちろん不気味なステージやシーンもあるのだが,荒廃した深海都市を探索している最中はリラックスしながら楽しく遊べる。プランティーが移動する際の水の音や,コミカルな外見のおかげで暗い雰囲気にならず,何時間プレイしても疲れることなく没頭できた。
メトロイドヴァニアに求める要素をハイテンポに味わえる
本作のジャンルであるメトロイドヴァニアは,探索とアップグレードの要素が大きな楽しみのひとつだ。入り組んだマップを探索し,最初は進めない道などが立ち塞がる。しかし,後々新たな能力を手に入れることで,かつて行けなかった場所を探索できるようになり,新たな道が広がっていく。
本作でもそういった要素は十分に盛り込まれており,序盤から後々の進化が楽しみになる作りになっていた。アイテムが見えているのに,そこに進む道がない(分からない)エリアや,プランティーが通れない細い通路。後で小さくなる能力か,ブラントがアイテムを取りに行けたりするんだろうなと先に進むモチベーションを抱かせてくれる。
ひとつ新しい能力を手に入れたらマップを端から端まで探索をし直したり,取れずに心残りだったアイテムを回収しに行くのがメトロイドヴァニアの醍醐味だろう。本作の場合は新たな能力を獲得するテンポも速く,次々と新しい遊びを提供してくれるので止め時を見失うほどハマってしまった。
操作性についても文句ナシの仕上がりだ。筆者はメトロイドヴァニアを遊ぶ際に序盤の遊びやすさを重視するのだが,本作はその点でも安心できた。
先に進むと新たな能力を得るというメトロイドヴァニアの要素を活かすため,序盤の移動や攻撃手段をあえて絞り後々のカタルシスにつなげるゲームがある。それはそれで面白くはあるのだが,個人的には序盤の操作が窮屈だと先に進めるのが辛くなってしまう。
その点,本作は最初から気持ちよく水中を泳げるし,最序盤でダッシュなどの操作が可能になるのでとにかく快適だった。前述したとおり,新たな能力も次々と得られるので,操作性についてのストレスを一切感じなかった。
戦闘方法もユニークな形式で,アクションとシューティングを合わせた戦いがクセになる。プレイヤーが操作するプランティーは,自身での攻撃手段を持っていない。代わりにブラントに指示を出して,突撃による攻撃をしてもらうのだが,このアクションは攻防の駆け引きが熱い。
プランティーの周囲には黄色のサークルがあり,それがブラントの通常攻撃範囲となっている。さらに右スティックを傾けることで,指定した方向への遠距離攻撃も可能だ。ただし,ブラントとの距離も遠くなってしまうので,敵の接近には注意が必要になる。プランティーは敵に触れられるだけでダメージを受けるので,攻撃指示を出しつつ,相手と距離を取ることも重要になるのだ。序盤は距離感の把握をしながら戦うだけで歯応えがあり,弱い敵との戦闘もしっかりと楽しめた。
最初は距離を取りつつ攻撃を指示するだけだが,早い段階でダッシュを習得するとまた違ったアクションも楽しめるようになる。ダッシュはスタミナを消費して一時的に移動速度を上げるのに加え,一定時間は無敵になる非常に便利なアクションだ。
そして,このアクションは回避としてだけでなく,攻撃に転じる際にも活用するのがポイントになる。プランティーがダッシュで敵をすり抜けるとマーキングでき,その状態でブラントが攻撃すると大ダメージを与えられるのだ。弱い敵なら一撃必殺,多少強い敵やボス戦でもマーキングは欠かせない。
本来逃げるために使うダッシュを,リスクを負ってマーキングするという攻撃手段にもできるので,操作に慣れてくるほど楽しくなる。得られる感覚としては,アクションゲームのパリィなどに近い。
マーキングをつけると敵をロックオンしたような表示が出現 |
この状態で攻撃すると,アイコンが割れるエフェクトが出て大ダメージを与えられる |
ほかにも,攻撃ボタンを長押しするとブラントが自身の周囲を高速回転し,触れた敵にダメージを与えたり,遠距離攻撃を防いだりできる「パワースマッシュ」が存在する。弱い敵ならパワースマッシュ状態で突撃するだけで一掃できてけっこう気持ちいい。
また,パワースマッシュ状態で右スティックを傾けて解除すると,ブラントを突撃させる「パワーアタック」になる。いわゆる溜め攻撃だ。パワーアタックはチャージが必要だが,強力かつ遠くまで攻撃できるので,中盤以降の強い敵は大抵パワーアタックで処理していた。
攻撃ボタンを長押しでブラントがぐるぐる回り始める |
スティックを傾けてボタンを離すと,任意の方向にブラントを発射。一定の距離なら貫通してまとめて敵を倒せる |
パワースマッシュは遠距離攻撃につなげられ,敵の攻撃も防げる便利なアクションだが,もちろんリスクもある。パワースマッシュを使うと,プランティーの頭上に丸い“ヒートリミットゲージ”が表示されて一定量を消費する。攻撃を防ぐとこのゲージがさらに減少し,最終的に無くなってしまうとブラントがオーバーヒートしてしまい,しばらく行動不能になってしまうのだ。こうなると自身で攻撃できないプランティーは格好の的で,油断して逃げないでいるとボコボコにされてしまう。とくに遠距離攻撃をしてくる敵が固まっているところで防御しようとすると集中砲火を浴びて,一瞬でブラントがオーバーヒート状態になるため,使いどころには注意が必要だろう。
これらのアクションに加えて,自由にカスタマイズできるスキルも用意されている。スキルはマーキング時のダメージ増加やHP回復など,戦闘を楽にできる要素でメモリースロットの枠内で好きなものをセットしていく。最初は4枠しか空きがないが,マップを探索すればスロット枠が増えていく仕組みだ。
スキル自体も探索で入手するものがほとんどで,マップの隅々まで探すとかなり便利なものも落ちている。ステータスを上昇させるアイテムを合わせて,マップを探索したくなるやり込み要素のひとつだ。
スキル以外には,ボスを倒した際や,マップ各所に落ちているアイテムを拾うとHPやスタミナ,与ダメージアップなどのアップグレードもやり込み要素となる。
“GRT-112”というアイテムを拾うとHPかスタミナ,“EXC-358”であれば攻撃のダメージ値かヒートリミット上限値のどちらか任意のステータスにポイントを振って強化できる。ちなみにどちらを選んでも後から拠点で何度でも直せるので,例えば探索中はスタミナを上げておき,ボス戦ではHPに振りなおすといったことも可能だ。
スキルやステータスを上昇させつつ,新たな能力を得て先へ進むというのが基本的なプレイの流れとなる。ボスだけでなく道中の敵も個性的な動きをしてくることが多く,戦闘は遊んでいてかなり手応えを得られた。
とくにボス戦はマーキングを活かした高度なアクションや,相手の動きやギミックを覚えていくことも重要で,ほとんどが初見では勝てない程度には強い。その分,倒せたときの達成感はひとしおで,どのボスも印象深かった。
楽しみが減ってしまうのでネタバレは避けるが,新たに習得していく能力もそれぞれユニークで,進める道が増えるのはもちろん敵への対処法も増えていくのでずっと面白さが続く。
唯一コアゲーマーなら気になりそうなのが,ボスの位置が拠点で表示されてしまうことだ。進む方向が明確に分かりすぎるので,意識的に寄り道をしない限りはすぐにボスに辿り着けてしまう。ボスの場所を探しながらマップを隅々まで探して,アイテムを回収しつつたどり着くという体験もまた楽しみなので,その一点は本作だと味わいづらいと感じた。
とはいえ,ボスの位置は気にせず進めばいいだけの話で,探索の楽しさやアクションのクオリティ,世界観やビジュアルも含めて良質な体験をできるのは間違いない。メトロイドヴァニアに求めているものを十分に満たしてくれる良作なので,同ジャンルが好きな人にはぜひともプレイしてみてほしい。
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「棄海:忘れられた深海都市」紹介ページ
「棄海:忘れられた深海都市」公式サイト
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