プレイレポート
ソロプレイで最高の物語体験を。新作ボドゲ「破宮のデクテット」先行プレイレポート。ランズベリー・アーサーさんによるプレイ動画も掲載
ボードゲーム「破宮のデクテット」が2022年11月25日に発売。アニメ“機動戦士ガンダム 水星の魔女”の大河内一楼氏が物語の原案を担当
コナミデジタルエンタテインメントは本日,ボードゲーム「破宮のデクテット」を,2022年11月25日に発売すると発表した。IP創生プロジェクト「ヨフカシプロジェクト」の第4弾で,ゲームデザインは上杉真人氏が,ストーリー原案は,大河内一楼氏が担当している。
特徴は二つ。一つはボードゲームとしては珍しい,“ソロプレイ”を主眼に据えたタイトルであること。そしてもう一つは,いわゆる“レガシー系”のシステムを採用していることだ。これは“一度きりのゲーム体験”に特化したタイトルという意味で,基本的には一度しか遊べないものとなる(ネタバレを踏まえたうえでの周回は可能)。
ボードゲームとしてはかなり異色な「破宮のデクテット」は,いったいどんなゲームなのだろうか。4Gamerでは,発売に先駆け本作をプレイする機会を得たので,その内容を紹介していこう。また声優のランズベリー・アーサーさんによるプレイ動画も合わせて掲載,さらに制作陣に制作の経緯などもうかがっている。本作が気になるボードゲームファンは,ぜひ読み進めてチェックしてもらえたら幸いだ。
※掲載している画像はテスト版のものです。製品版とは仕様が異なる場合があります。
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ヨフカシプロジェクト「破宮のデクテット」公式サイト
犠牲を乗り越え最奥を目指す,デッキ構築型ダンジョン探索ゲーム
本作の舞台となるのは,地下に封印されていた冥府の神・月黄泉が復活し,外界と隔絶されてしまった「私立月詠学園高等学校」だ。月黄泉を再度封印すべく10人の生徒達が選ばれたが,神の座する迷宮には一晩に1人しか入れない。無謀な迷宮単独制覇を目指しつつも,道半ばで倒れていく生徒達。後に続く仲間に,その遺志と力を受け継ぎながら。
つまりプレイヤーは10人の生徒から1人を選択し,順にダンジョンに送り出しながら死を経験し,10回きりのチャンスでラスボスである月黄泉を倒さなくてはならない。
実際のプレイの雰囲気は先の動画を見てもらうのが早いが,ここでは簡単に本作のルールをおさらいしておこう。
まず本作のメカニクスは,「ドミニオン」に代表されるデッキ構築型ゲームを踏襲している。つまりデッキから引いた手札でエネミーを倒し,タイルをめくってダンジョンを進みながらデッキを強化,キャラクターを成長させる。これを繰り返しながら,三層からなるダンジョンの最奥を目指すのだ。
ちなみに筆者の場合,1人目のキャラクターで到達できたのは第二層のボスまでだ。二層ともなるとエネミーがどんどん強くなり,まったく倒しきれないままボス戦へ。加えてデッキに「毒」や「呪い」カードが大量に混入するようになり,これにも苦しめられた。
ピンチに瀕し,なんとかこのターンだけでも生き延びる道はないかと血眼で探るが……どうがんばっても相手の攻撃を防ぎきれず。「もうダメだ」という絶望感があきらめに変わったとき,ふっと気持ちが軽くなり,「次に来るキャラクターのために,何か少しでもできることはないか?」という,妙に前向きな思考に変わったのが印象に残っている。登場人物の気持ちを追体験できた瞬間だ。
結局のところ,筆者はクリアするまでに3人を犠牲にし,4人目でようやくクリアに至ることができた。エンディング用の封筒を開くと……さらなる驚きが待っていたので,気になる人はその目で確かめてもらいたい。
なおダンジョン深層は純粋にエネミーが強い一方,プレイヤーが取れる選択肢も増えるので,適当にプレイしているとすぐに敗北してしまう。筆者の場合,休憩を挟みつつ,頭を振り絞って最善手を模索したのでかなり時間がかかってしまったが,どれだけ悩んでも構わないのがソロプレイのいいところでもある。カードの組み合わせなどをいろいろ考え,結果としてギリギリで強敵を倒せたときなどは,いわゆる「脳汁が出る」状態になること請け合いだ。ぜひ挑戦してみてほしい。
ソロプレイに秘められた無限の可能性――「破宮のデクテット」制作者インタビュー
以上のように,ボードゲームとしてはさまざまな挑戦が盛り込まれた「破宮のデクテット」だが,制作者側としてはどのような狙いがあったのか。ドロッセルマイヤーズの渡辺範明氏(以下,渡辺氏)と,オーシャンフロンティアの春木場將道氏(以下,春木場氏)に話を聞いてみた。
4Gamer:
まず本作の制作経緯について聞かせてください。これまでのシリーズと比べても異色なタイトルだと思うのですが,“ソロプレイ”や“レガシー系”といった本作のコンセプトは,どういった理由で選ばれたのでしょうか。
渡辺氏:
ヨフカシは,1作ごとにジャンルも世界観も変えることを前提にしたプロジェクトなんです。なので,今回もこれまでの3作とは異なるタイプのゲームをということで,コンセプトを決めていきました。最初に決めたのは“ソロプレイ”という部分ですね。
ボドゲから新規IPの創出を狙う「ヨフカシプロジェクト」の勝算とは。ゲームマーケット2021秋会場で話を聞いてみた
「ゲームマーケット2021秋」に出展されていたKONAMIとアニメイトグループ,そしてドロッセルマイヤー商會による共同ブース「ヨフカシプロジェクト」。「まっぷたツートンソウル」と「魔警オルトロス」という作風のまったく異なるタイトルでローンチを目指す同プロジェクトだが,その思惑はなんなのか。会場で話を聞いてみた。
4Gamer:
ボードゲームでソロプレイ用というのは,珍しいですよね。
皆で集まって遊ぶボードゲームって,バックストーリーはどうしても味つけ程度になってしまいがちじゃないですか。でもソロプレイのゲームなら,物語の側面をじっくり味わえます。そして物語体験をより強くするために加えたのが一回性の要素――いわゆるレガシーのシステムです。つまりこの二つを組み合わせて,「ストーリーを味わうボードゲーム」としての究極を目指したのが,本作というわけです。
4Gamer:
なるほど。ボードゲームは遊ぶために人を集めなくてはならないことがほとんどなので,ソロプレイのゲームは逆に手に取ってもらいやすいかもしれないですね。
渡辺氏:
ええ,ソロプレイのボードゲームには多くの可能性があると思っています。ゲームに不慣れでも自分のペースでプレイできますし,コミュニティに属していなくても手を出しやすい。それにソロプレイであっても,複数人で楽しむことは可能ですから。
4Gamer:
それはどういう意味でしょうか。
渡辺氏:
例えば対戦ゲームだと,駆け引きのために最低限,秘匿すべき情報があったりするじゃないですか。だからあまり小さな子供だと,参加するのが難しい。その点ソロプレイのゲームなら,親御さんと一緒にプレイしてもいいですし,友達とああだこうだ相談しながら遊ぶこともできる。
4Gamer:
確かにそうですね。
渡辺氏:
ソロプレイには,そんな風に無限の可能性があると思っています。本作には2人プレイ用のルールもあるんですが,1人用のルールを相談しながら遊んでも面白いと思います。本作はレガシー系とはいえ周回プレイが可能なので,より良い結末を求めて協力プレイするのも一興かと。
4Gamer:
あ,そうなんですね。周回プレイしても構わないと。
渡辺氏:
ネタバレになるのであまり詳しくは言えませんが,一度クリアしても“物理的に遊べない状態”にはならない,とだけお伝えしておきます。もちろん,すでに知ってしまった記憶を消すことはできませんけど。
4Gamer:
分かりました。では,本作の開発はシナリオが優先だったのでしょうか。ボードゲームの場合,先にゲームのジャンルやメカニクスがあって,そこに世界観を乗せることが多いように思うんですが。
渡辺氏:
シナリオというよりは,「どういう体験をしてほしいか」がまずあって,それに合わせてシステムを用意するという順ですね。まず10名のキャラクターが順に,後に何かの要素を引き継ぎながらダンジョンに挑んで行くデッキ構築型のゲームという,僕が用意した概要がまずありました。
そのうえでゲームデザインを上杉さん(I was gameの上杉真人氏),世界観の原案を大河内さん(大河内一楼氏)に,それぞれ担当していただいた形です。コロナ禍の真っ最中ということもあり,並行してリモート作業で進めたんですが,最近はこういう作り方が増えていますね。
4Gamer:
リモートでの開発となると,意思の疎通が大変そうに思えますが,その辺りの苦労はありましたか。
渡辺氏:
それが,そうでもなかったんです。それぞれのクリエイターさんが,ゲームのイメージをしっかり持ってくれていたので,僕はそれを交通整理したに過ぎません。
大河内さんは,今でこそアニメの現場で活躍されていますが,元はゲーム畑出身ですし,ゲームシステムへの深い理解のある方なんです。例えばキャラクター設定一つ取っても,「このキャラは回復系っぽい」といったように,ゲームに落とし込みやすい形にしてくれていました。
4Gamer:
ああ,なるほど。それは確かにありがたい。
渡辺氏:
一方,上杉さんもゲームデザインの面ではめちゃくちゃロジカルな方ですが,フレーバーの側面もしっかり考えて作る人ですから。モンスターの仮称なんかも「モンスターA」とかじゃなく,「トゲ」や「象」みたいに具体的なイメージで出してくれるんです。
イラストレーターの久坂んむりさんとのやり取りは私が担当したんですが,イラスト作業もスムーズだったと思います。皆が同じ方向を向いている感じがありましたし,設定とビジュアルが違和感なくまとまっていきました。
渡辺氏:
ただ,バランス調整をする上杉さんは大変だったと思います(苦笑)。ソロプレイとはいえ要素が多いゲームですし,テストプレイもオンラインでするしかなかったので。もう神業ですよ。
4Gamer:
イラストの久坂んむり氏に白羽の矢を立てたのは,何か理由があったのでしょうか。
春木場氏:
これはもう,イラストを見ていいなと思って声をお掛けしたという,ごくシンプルな理由からです。今回が初めての依頼でしたが,キャラクターからモンスター,アイテムまですべてを手がけていただいて,統一された世界観を生み出してくれました。
渡辺氏:
今時のデジタルゲームだと,一作品のグラフィックスを全部1人で描くなんて,まずあり得ないですから。これもボードゲームの良さと言えるかもしれません。
春木場氏:
イラストの枚数はめちゃくちゃ多くなってしまいましたけど(笑)。皆さんがやりたいことをできるだけ実現した結果,イラストに限らずパーツが多くなりがちという苦労はありました。
4Gamer:
コンポーネントもすごく多いですよね。この木製コマだって,紙トークンで済ますことだってできたでしょうに。
渡辺氏:
ヨフカシのグラフィックスデザインは,そのほとんどを製作プロダクションのTANSANが手がけているんですが,彼らがわざわざ茨の道を選ぶんです(笑)。いつも,こちらの要求以上のことを提案してきてくれて,ありがたい話です。
パッケージのボックス裏には,一面に花畑が印刷されている。これは死亡したキャラクターを埋葬する場所とのこと。こんなところにもこだわりの跡が見える |
月詠学園の生徒手帳は,ゲーム的には意味のない“おまけ”のコンポーネントだ。これもボードの余りを利用して作られており,雰囲気作りに一役買ってくれる |
4Gamer:
やはり世界観が厚くなればなるほど,コンポーネントは増えていくものなのでしょうか。
渡辺氏:
そうだと思います。表現すべきことが,純粋に増えていきますから。
春木場氏:
むしろ,今回はこのボリュームに落とし込むのに苦労しました。本当はもっとこだわりたかった部分もあるのですが,どうしてもコストの都合というものがありますので。
渡辺氏:
それにレガシー系のゲームの場合,梱包の仕方にも細かい指示が必要になるので,そこは苦労しましたね。封入物の順番はもちろん,紙の折りたたみ方や向きの指定まであるので,発売前の今は,ちゃんとできているかハラハラしているところです。
4Gamer:
確かにレガシー系だと,封筒を開いたとき,どういう向きにカードが入っているかとかでも体験が変わりそうです。では最後の質問なんですが……本作における,お二人の推しキャラを聞いてもいいでしょうか。
春木場氏:
自分は戸崎目自(とざきもくじ)でクリアしましたし,彼が推しですね。自信家の中二病タイプなんですが,呪いや毒なんかのデバフを武器に変える能力が強く,キャラが立っているところがお気に入りです。
渡辺氏:
僕は副会長の仁木兵衛(につきひょうえ)ですかね。生徒会長の補佐に徹していて,決して積極的なタイプではないけれど,先人の遺志を引き継いで立つことになるという。もし漫画やアニメだったら,彼が主人公ポジションだと思います。
あと単なる好みで言うなら,守銭奴キャラの小俣 晶(おまたあきら)ですね。コスト踏み倒し系の能力と性格がマッチしていて,また1年生の後輩キャラでもあるので人気が出そうなキャラクターです。でも彼女の遺書がまた普段とのギャップがあって……いいんですよ。
4Gamer:
……でも死なないと読めないわけですよね,それ。
渡辺氏:
そうですね(苦笑)。代々の遺志を継いでいくのが,本作のエモーショナルなところなので。例えば「俺の屍を越えてゆけ」とか「ロマンシング サガ2」が好きな人には,刺さるんじゃないかと思っています。
4Gamer:
ああ,分かる気がします。
渡辺氏:
とはいえ誰が主人公になるかは,プレイする人によって違うはずです。誰がラスボスを倒すことになるのかは,プレイヤー自身ですらコントロールできないわけですし,皆さんもぜひ自分でプレイして,自分だけの物語を紡いでもらえたらと思っています。
4Gamer:
はい。本日はありがとうございました。
ソロプレイやレガシー要素といった謳い文句のみならず,純粋なデッキ構築型ゲームとしても十分なやりごたえが感じられた「破宮のデクテット」。
冒頭でも紹介したとおり,本作は10月29日と30日に東京ビッグサイトで開催される「ゲームマーケット2022秋」で先行販売が行われる予定だ。いち早く遊んでみたい人は,A44のヨフカシプロジェクトブースに足を運んでみよう。またアニメイトやAmazon.co.jpなどの通販サイトでは,正式発売に合わせた予約受付もスタートしているので,こちらもお見逃しなく。
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