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型破りなインド系女性の生き様を描くADVゲーム「Thirsty Suitors」。ボリウッド風ターン制バトルを愉快にプレイ
Steamの「Thirsty Suitors」ストアページ
「Thirsty Suitors」は,文化や人間関係,家族からのプレッシャー,そして自分自身を表現することを題材にしたゲームだ。主人公の女性ジャラは,スケートボードを操る自由奔放なアメリカ気質が身についているインド系移民の二世で,失恋を機に生まれ故郷のティンバーレイクに帰ってきた。ジャラは,口うるさい両親や元カレたちに対応しながら,この小さく閉鎖的な町を飛び出した自分の過去と向き合い,自分が何者であるかを探り当てていくことになる。
本作は異なる3つのゲームで構成されている。スケートパークでさまざまなトリックを繰り出し,家族や友人たちの嫌味や諫言を自分なりに打破していく「スケートボード」,町を散策して出会う元カレたちと行う「ターン制バトル」,そして母と行う「クッキング」と,それぞれがほぼ関係のなさそうなゲームをプレイしていくのだ。
スケートボードは,空中でも方向を変えることができるなどリアル性はないものの,リトライや時間制限などはなく,比較的自由にさまざまなトリックをつなげてコンボにし,その連鎖ポイントでビッグスコアを狙っていくというカジュアルなプレイを楽しめた。
そして本作の真骨頂とも言えるのが,ターン制バトルだろう。今回のデモでは,長距離バスで帰ってきたばかりのジャラが,町のレストランで小学生の時に初めてできた恋人であるセルジオ(Sergio)と出会うシチュエーションをプレイできた。
セルジオは,この20年ほどで自分がいかにイケてる男になったかを未練たらしく話しかけてくるが,ジャラは「小学校3年生のときに無理やりキスしてきたくせに,学校中に言いふらさないでよ!」とか,「どんな会話したかなんて何も覚えてないわよ!」など,とにかく素っ気ない。一方,セルジオは,「ママはボクをセクシーだって言う。ママは間違ったことなんて言わないからね」と,マザコンらしさを匂わせながら,ボリウッド映画で耳にするインディアンポップ風のBGMに合わせて,常にステップを踏んでいる。
このラップバトルのように展開するターン制バトルのシーケンスが絶妙で,それぞれの会話を間に挟みながら,過去の人間関係がコミカルに明らかにされていくのが面白い。攻撃も,口撃による通常アタックに加えて,セルジオに「あなたのママを呼び出しちゃうわよ」といったセリフを使った「罵り」(Taunt)を,ヘルスバーの下にあるウィルポイントを消費しながら繰り出していく。
罵りには,怒りや冷酷,驚きなど,さまざまなスタイルが存在するが,デモをプレイして効果てきめんだったのは,セルジオのお母さんを呼び出して,スリッパで叩いてもらうコミカルなもので,お調子者のセルジオも自分のエゴを増幅させて,高級車の幻影を投げつけてくるなど反撃してきた。
セルジオとのバトルは,チュートリアル的な要素を含んでおり,“ジャラの過去のしがらみとの戦い”でもあるため,ペースそのものは非常にゆったりしていていた。セルジオとのバトルを10分以上も続けてしまったため,筆者のプレイ時間はタイムアップとなってしまったが,ジャラとセルジオの過去の恋愛談を聞いていると頬が緩んでしまい,実際に声を上げて笑ってしまうようなアニメーションも多かった。
今回プレイする時間のなかったクッキングも,空中を舞いながら包丁を取りに行ったり,ミキサーのボタンを押したりするという,なんとも無駄な動きの多さが目立つ,かなりハチャメチャ感のある描写が楽しかった。現時点では英語のみのサポートとなっているが,Steamストアページ(リンク)でデモが公開されているので,コミカルなボリウッド映画をプレイするつもりで挑戦してみてはいかがだろうか。
アメリカ的な自由とインドの伝統という2つの世界に生きる,移民二世たちの心情を率直に描き上げた「Thirsty Suitors」を開発するOverloop Games自体,アメリカ北西部,カナダ,そしてイギリスのロンドンなどに点在するインド系開発者たちが,リモートで作り上げている作品だという。
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