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ミドルハイ向けGPU「Radeon RX 7800 XT/RX 7700 XT」をAMDが発表。超解像技術「FSR 3」の最新情報も公開
また,AMD独自の超解像技術「FidelityFX Super Resolution 3」(以下,FSR3)に関する新たな情報も公開となったので,これらの概要をまとめて紹介しよう。
1440pに最適なRX 7800 XTとRX 7700 XT
RDNA3世代の「Radeon RX 7000」シリーズは,ハイエンド市場向けが「Radeon RX 7900 XTX」(以下,RX 7900 XTX)と「Radeon RX 7900 XT」(以下,RX 7900 XT),ミドルクラス市場向けが「Radeon RX 7600」(以下,RX 7600)といった具合に,ラインナップの上と下が製品化されていたものの,その間に位置付けられる製品がなかった。今回発表となった。RX 7800 XTとRX 7700 XTは,そのギャップを埋めるGPUだ。
演算ユニットである「Compute Unit」数は,RX 7800 XTが60基,RX 7700 XTが54基となる。上位モデルの7900 XTXとRX 7900 XTは,それぞれ96基と84基なので,これと比較すると約64%ほどの規模だ。リアルタイムレイトレーシングユニットのRT acceleratorsやAI処理向け演算ユニットのAI acceleratorsの規模も上位モデルと比べて約64%となっている。
AMDは明言していないのだが,RX 7800 XTとRX 7700 XTのGPUコアには,新開発の「Navi 32」を使用しているとの噂がある。それが正しいのであれば,RX 7800 XTがNavi 32のフルスペックで,RX 7700 XTはNavi 32の一部を無効化したGPUであろう。
イメージ画像からも分かるように,RX 7800 XTとRX 7700 XTは,複数のダイを1つのパッケージ上に搭載するチップレットデザインを採用する。GPUコアのあるGCD(Graphics Compute Die)の周囲に,MCD(Memory Cache Die)を4基配置するのが見て取れる。MCDは,1基あたり64bitのメモリインタフェースを有するので,RX 7800 XTの場合,メモリインタフェースは256bitとなる計算だ。一方のRX 7700 XTは,メモリインタフェースが192bitなので,MCDが3基に減っているのか,もしくは4基のうち,1基を無効化してと推測できる。
RX 7800 XTとRX 7700 XTは,ミドルハイクラスのGPUとしては,贅沢なグラフィックスメモリ容量とメモリインタフェースを備えており
また,いずれもTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)が200W台半ばと比較的低く,PCI Express補助電源コネクタが8ピン×2で済むという点にも注目だ。
そんなRX 7800 XTとRX 7700 XTだが,AMDによると1440p環境であれば,グラフィックス品質を高に設定して,主要な最新ゲームを平均60fps以上でプレイできると主張する。加えて,ほとんどのタイトルで,GeForce RTX 4070やGeForce RTX 4060 Tiといった競合製品を大きく上回るフレームレートが描画できるとのことだ。
RX 7800 XTやRX 7800 XTは,1920×1080ドットでのゲームプレイをターゲットとしたRX 7600から,順当に性能が向上しているようだ。狙い通りの性能が得られれば,一定の人気が出そうだが,そこは実機のレビューに譲ることにしたい。
FSR3でフレーム生成を実現
ネイティブ解像度の高性能化もサポート
続いては,FSR 3に関する新たな発表をまとめよう。
簡単におさらいしておくと,FSRは,AMD独自の超解像技術である。NVIDIAの「DLSS」(Deep Learning Super Scaling)とは異なり,AI技術を使用せずに,シェーダーのポストプロセスとして実装できるためにAMD製GPUに限らず利用できるという点が大きな特徴だ。
最初のバージョンである「FSR 1」では,同一フレーム内のピクセル再構成による超解像化を実装して,次のFSR 2では,超解像に前フレームの情報を使用するTemporal Upscalingと呼ばれる技術を盛り込んだ。現在は,Temporal Upscalingを使用すると生じる残像を低減した改良版「FSR 2.2」が多数のゲームに採用されている。
FSRの最新版となるFSR 3には,「Fluid Motion Frames」と呼ばれるフレーム生成技術を搭載するそうだ。DLSSでも「DLSS 3」でフレーム生成が組み込まれたが,そのFSR版と考えればいいだろう。
FSR3は,超解像とFluid Motion Frames,そして遅延低減技術の「Anti-Lag+」を組み合わせることで,高解像度と高いフレームレートを低遅延で実現できるとという。
もうひとつ,FSR 3には,新しいアンチエイリアシング技術により,アップスケールを行わないネイティブ解像度のまま,画像の高画質化を行う機能も追加するそうだ。これまでは,FSR=超解像という位置付けだったが,FSR 3からはネイティブ解像度での画質改善も可能になるわけだ。もちろん,アップスケールを行わない場合でも,Fluid Motion FramesとAnti-Lag+により,高フレームレート化と低遅延は実現できる。
RX 7800XTやRX 7700XTの場合,いくら1440p環境で0fps以上のゲーム映像を描画できるといっても,タイトルによってはギリギリ60fpsというケースもあるだろう。こうした場合に,FSR 3を利用すると60fpsを有に超えるフレームレートが得られるというわけだ。
AMDによると,これまでのFSRと同様に,FSR 3は多数のゲームデベロッパからの支持を得ており,ゲームタイトルへの実装も進みつつあるという。「アヴェウムの騎士団」と「FORSPOKEN」の2タイトルが近日中にFSR 3対応のアップデートを行うそうだ。
FSR 3の対応GPUが気になるところだが,AMDによると「Radeon RX 5000」シリーズ以降のGPUで利用できるそうだ。一方,AMD製品以外の対応GPUについては明らかになっていない。ただ,AMDは,「FSR 3は,これまでどおりオープンである」と繰り返していたので,現時点では,FSR 3もAMD製品以外のGPUでも使えるのではないかと予想している。
ドライバレベルでのフレーム生成も実装予定
このほかにも,AMDは,Radeon用ドライバソフトウェア「AMD Software」の新機能も発表した。ひとつめは,「HYPR-RX」という機能で,近日中に実装するとのこと。これは,動的な解像度変更によって対応ゲームのフレームレートを向上させる「Radeon Boost」,FSRとは異なり,ゲーム側が対応していなくてもドライバレベルで行える超解像技術「Radeon Super Resolution」(以下,RSR),そしてAnti-Lag+という3つの機能を,ワンクリックで有効化できるというものである。
実はこれまで,Radeon BoostとRSRは排他の関係で,どちらかを有効にすると一方が無効になる仕様だったのだ。Anti-Lag+も思うように有効化できないケースがあった。しかし,HYPR-RXの実装により,これら3つの機能を同時に利用できるようになるわけだ。Radeonユーザーにとっては大きなアップデートだろう。
加えて,HYPR-RXにドライバレベルでFluid Motion Framesを実装する予定だという。つまり,FSR 3に対応していないゲームでも,フレーム生成によってフレームレートが向上するというのだ。
ただ,AMDの担当者によると,ドライバレベルのFluid Motion Framesは,FSR 3とは異なり,ゲームエンジンからモーションベクタのデータが得られない制約があるそうだ。そのため,FSR 3に比べると,生成するフレームの精度や品質が落ちる可能性がある。
ドライバレベルのFluid Motion Framesが,どこまで実用になるかは使ってみないとなんとも言えないところだ。HYPR-RXと同実装というわけには行かないようだが,近日中の登場と予告していたので,Radeonユーザーは期待しておこう。
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