プレイレポート
[プレイレポ]カフェ経営×タワーオフェンス「アフォガート」は既存ジャンルの枠に留まらない,居心地の良いカフェのような新感覚が魅力
情報量が多すぎて「ちょっと何言ってるか分からない」なんてことになりそうだが,ひとつひとつの要素は既存のゲームにもあるものでも,複数が組み合わさることで未知のプレイ感覚を生み出している。Befun Studioが開発を手がけた本作の魅力をお伝えしてみたい。
タワーディフェンスならぬ“タワーオフェンス”
ゲームを開始すると,なぜか記憶喪失になったらしい主人公のために……という体裁で,まずは本作のタワーオフェンスパートのチュートリアルが行われる。主人公のアフォガートは大悪魔メフィスト(※美少女)と契約している魔女であり,人間の心の中に潜入し,「心の迷宮」で行われるタワーオフェンスを攻略して,人間に憑いた悪魔を祓うといった仕事をしているようだ。
「タワーディフェンスなら聞いたことがあるけど……」という人も多いだろうが,本作はその逆。自動で進行する味方ユニット(魔女)のルートを操作したり,道中の敵を倒して得られるエネルギー「パンタ」と引き換えに新たな魔女を召喚したりして,ステージ最奥にいるボスの撃破を目指す。
敵は進行ルート上にいるのではなく,その脇に佇んでおり,一定範囲内に入ると攻撃してくる。プレイヤーが召喚した魔女たちも,敵が一定範囲内に入ると攻撃を開始する。味方が倒されないように被ダメージを抑えつつ,タワーのように佇む敵をいかに攻略するか。このあたりが“タワーオフェンス”たるゆえんだ。
味方ユニットとなる魔女は,手持ちの「魔女カード」から召喚する。最初は所持カード数も少ないため,どれを召喚すべきか……と迷うことはない。敵を攻撃するための「力」,盾役としてダメージを肩代わりできる「戦車」,回復を司る「世界」などがあるが,最初は「力」と「戦車」だけでなんとかなる。
配置されたユニットは自動でテクテクと歩いていくのだが,敵に近づくと「力」は敵を自動的に攻撃する。敵から攻撃が飛んでくることもあるが,「戦車」がいればダメージを肩代わりしてくれるので,「力」は無傷でいられることも多い。「戦車」は体力が高いので,かなり耐えられるが,攻撃はできないという特徴がある。
一時的な記憶喪失状態も元に戻り,いよいよボスらしき強敵との戦いに挑むアフォガート。「アオイ」なる人物を救うための戦いに来ていたようだが,ここでは為す術もなく倒されてしまった。
いきなり始まるタワーオフェンスのチュートリアルだったが,とくに難しいことはなく,いたってシンプル。「シミュレーション系は苦手なんだよな……」という人も,難度イージーであれば,そもそもシミュレーションゲームの範疇なのかと迷うくらいにはカンタンなので,安心してほしい。じっくり考えたい場合は一時停止で全体マップを見回せるし,時間を加速して,魔女たちの進行速度を上げることもできる。
チュートリアルが終わると,記憶喪失云々の話自体がまるで夢だったかのように,場面はバスから降りたアフォガートとメフィストの様子に移る。アフォガートは魔女であり,悪魔のメフィストと行動を共にしていること。カフェ経営のためにアローラという町にやって来たこと。カフェの改装費等で借金を抱えているため,次の家賃支払日までにがんばってお金を稼がなくてはならないこと……などが明らかになる。
一気に情報量が増えるが,キャラクター同士の会話を通じて語られるため,プレイヤーも「アローラの町に引っ越してきたアフォガート」の視点で,本作の世界設定や置かれている状況を自然に理解できるはずだ。
ようこそ,「WITCHERY」へ
始まるカフェ経営生活,忍び寄る悪魔の気配
タワーオフェンスのチュートリアルが最初に来たが,本来はカフェにお客が来て,その心の中に入ってタワーオフェンスをするという流れになっている。
お客から注文されたコーヒーを,実際に作って出すのが,アフォガートの仕事だ。コーヒーの種類によってレシピが異なるため,最初は1杯のエスプレッソを出すにも,表示されるレシピを確認しながら「えーっと,まず豆を挽いて,水を入れて……おっと,カップを皿の上に出さないと」といった要領で,その手順にオロオロしてしまう。
最初のうちは少々面倒に思わなくもなかったが,エスプレッソはほかのコーヒーのベースとなることも多く,作る機会が多い。そのため,慣れてくると何も確認しないでサササッと手が動くようになり,「アイススターは確か,この後にアイスクリーム……」とか「ホイップクリームは生クリームを泡立て器に……」といったレシピの派生ツリーのようなものが脳内に組み上がっており,次第に手早く作れるようになっていく。この成長過程が,新人カフェ店員が手慣れていく過程を体験しているようで楽しい。
WITCHERYには,さまざまなお客が訪れる。ナタリーの次にやってきたのは,アオイという名の高校生。友人2人を連れて来店するが,アオイと友人の間に流れる空気には,油断ならない何かがある。
お客に合わせてコーヒーを作り,会話で交流を深めていく。そんなカフェの開店から数日が経ち,そろそろ慣れてきたかな……という頃に,魔女のセラが来店した。アフォガートとは旧知の仲のようだが,魔女には「領地」があり,1つの領地に魔女は1人。アローラの町はアフォガートの知らぬ間にセラの領地になっていたため,彼女にとっては「ワシのシマで何を勝手に店開いて居座っとるんじゃ,ワレェ」みたいなことらしい。
しかし,セラは3つの依頼をこなせば,ここでカフェを経営してもいいと言う。依頼を遂行すれば報酬がもらえるうえ,前金も支払ってくれるとのこと。家賃の支払いに追われるアフォガートにとってはありがたい話でもある。というわけで,アフォガートは昼間はカフェ経営,閉店後にセラの依頼をこなすべく町を歩き回る……大忙しな生活の始まりだ。
セラの話によると,グレイスキャッスル学院では突如,気を失う生徒が何人も出ているとのこと。家賃のため……いや,人々を救うために,本腰を入れて調査する必要がありそうだ。
タワーオフェンスパートも,少しずつ難度が上がっていく。序盤でも,「隠者」を使わないと絶対に突破できない場所があり,「力」ですべてを解決してきた筆者は「急に難しくなった!?」と大いに焦った。攻撃できる魔女カードは「力」と「隠者」だけだったので,「ああ,先に隠者を使えばいいのか」と気づいたのだが,振り返ってみるとメフィストがちゃんと助言してくれていた……。
居心地のいいカフェで,新作コーヒーを味わうかのようなプレイフィール
コーヒー作り,お客との会話,カフェ経営。このように聞くと,郊外の隠れ家的な立地で,ぽつぽつと訪れるお客を相手にゆったりとした時間が流れる印象だが,本作はけっこう忙しい。アローラの町には昼がないらしく,常にネオンが輝いており,サイバーパンクというほどではないものの,かなり都会的な町並みでもある。
ことごとく逆のイメージで攻めながら,そこへ「魔女」と「悪魔祓い」という要素をトッピング。高校生が抱える悩みが物語に絡んでくるというジュブナイル的な側面もあり,それらをスタイリッシュなビジュアルで表現した本作は,他に類を見ない個性を手に入れている。
ひとつひとつの要素は決して新しいものではないが,それらが組み合わさることで,まったく新しい味となる。まるで新作コーヒーのレシピを見せられたかのようだ。
いきなり大事件が起きるようなストーリーではないが,朝も夜もないアローラの町,魔女と悪魔が存在する不思議な世界,ネコ耳キツネ耳が当たり前の美少女たちといった設定なので,何が起きるかを予測できない。「この先,どうなるんだろう?」と次第に引き込まれていく。
大悪魔なのに能天気で明るく,どこか抜けていて人の良さそうなメフィスト。依頼を通じてアフォガートを経済的に支援してくれるものの,何かを企んでいそうなセラ。一癖も二癖もあるカフェのお客たち。いずれもキャラクターが立っていて魅力的だ。日本語ボイスも実装されている。BGMも実にオシャレなので,ビジュアルとサウンドとゲーム性のどれをとってもクオリティが高い。
タワーオフェンスのパートは本作のアクセントになっていて,そこをクリアすると一息つくという感じなのだが,一段落しても「……もうちょっとやるか」といったようについつい続けてしまう,居心地のいいカフェのようなゲームと言えるだろう。
“アフォガート”とは実在するスイーツの名前であり,本作の主人公の名前でもあるが,ゲーム自体からもさまざまな要素を混ぜ合わせた新作スイーツのような印象を受ける。既存ジャンルの枠に留まらない魅力を持つ本作が少しでも気になっているのなら,WITCHERYを訪れてみてはいかがだろうか。
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