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「Dead Space」クリエイターによる新作ホラーは"主人公の死"の表現に圧倒される。「The Callisto Protocol」試遊レポート&メールインタビュー
現在からおよそ300年後の未来。地球から遠く離れた木星の衛星カリストにある凶悪犯罪者専用施設「ブラックアイアンプリズン」を舞台に,謎多き物語と凶悪なクリーチャーとの死闘が描かれる。本作を手がけるのは,KRAFTONグループ傘下のStriking Distance Studios。2008年にリリースされたホラーアクションの名作「Dead Space」のクリエイターとして知られるGlen Schofield(グレン・スコフィールド)氏が率いる開発スタジオだ。
そんな本作のメディア向け先行試遊会が韓国のKRAFTONにて行われ,1時間半ほどゲームをプレイできた。実際に体験して分かったゲームの内容を,グレン・スコフィールド氏に実施したメールインタビューとともにお届けしよう。なお,今回プレイしたのはPS5版だ。
「The Callisto Protocol」公式サイト
“主人公の死”の表現が圧倒的。Dead Spaceのクリエイターによる硬派なSFホラー
今回の試遊は,主人公ジェイコブ・リーを操作し,施設の職員らしき遺体を調べてそのネームカードを集めながら,ブラックアイアンプリズンを探索していくというものだった。
基本は一本道だがプリズン自体はかなり広く,それがいくつもの区域に分かれており,キーが必要な扉や,電力が不足していて進めない場所がいくつもある。キーや機械の起動に必要なバッテリーを探したり,隠された道を見つけたりして先に進んでいく。“凶悪犯罪者専用施設”だけあってか(?),触れたとたん身体を八つ裂きにされる巨大で残虐なトラップなどもあって気が抜けない。
そして何より注意しなければならないのが,バイオパージと呼ばれるクリーチャー達だろう。アウトブレイクが起きた結果,囚人たちがこのように凶悪な姿に変化したようで,主人公の姿を見つけると襲い掛かってくる凶暴で残忍な存在である。人の形を残した一般的(?)なもの,壁や屋根を素早く移動するクモのようなもの,遠くから液体を吐いて飛ばしてくるものなど,さまざまな姿で変異したバイオパージがいる。
プレイヤーはビリビリと光るブレードを使用した近接戦闘と銃を使った射撃で戦うことになるのだが,バイオパージはかなり手ごわい。人型の一般的なバイオパージでも一撃のダメージが大きく,2,3発食らうと瀕死の状態となってしまう。左スティックの左右で攻撃をかわし,スティック下でガード。カウンターを決めるように攻撃を当てる……といった形で,いかに敵の攻撃を受けずに退治するかが重要となる。
凶悪なクリーチャーとの戦いを生き延びるうえで重宝したのが,グリップという特殊な武器だ。
これは銃のようにクリーチャーや一部のオブジェクトを撃つと,それを引き寄せて空中に浮かべ,さらに撃つことで狙った場所や遠くに飛ばすという“重力武器”である。敵を遠くに飛ばして距離を取ったり,トラップに放り込んで撃退したりできる。
公式の発表によると,“かつてブラックアイアンプリズンの看守が囚人を統制するために使っていた重力兵器”らしく,ほかにもこういった特殊な武器が存在するかもしれない。
バイオパージと対峙して最もブキミ,かつ震えるものを感じたのが,“しっかりトドメを刺さないと,凶悪な姿へと変異する”ことだ。倒したと思ったらバイオパージの体内からうねうねと不気味な触手が生えてきて,どんどん身体が大きくなる。もちろん,その攻撃もより激しいものになるのだ。
出てきた触手をすぐに撃てば退治できるのだが,焦れば焦るほどうまく攻撃を当てられず,そのうちにどんどん凶暴化していくなんてことに! とくに複数の敵を相手にしている状況で,1体また1体と変異体が増えていくときの追い詰められる絶望感は言葉にできない。本作の大きな特徴と言えるだろう。
演出面では,“主人公(プレイヤーキャラクター)の死の表現”を大きな特徴に挙げたい。クリーチャーに頭を掴まれ,床に何度も叩きつけられた挙げ句,あごから上を潰される。巨大なファンにすくいあげられ,胴体を真っ二つにされる。主人公にはシチュエーションに応じて,さまざまなさまざまな“死のパターン”があるのだが,どれも目をそむけたくなるほど凄惨でリアルなのだ。
激流に飲まれながら柱やファンを回避する,見つかると銃殺される警備ロボットから隠れて進むといったバトル以外のアクション要素も見どころだ。それらもなかなか歯ごたえがあり,それぞれの場面に応じた“死に方”も凝っている。
ゴア表現が好きな人であれば,初めてのシチュエーションではあえて一度死んでみる……というのがルーティンになるかもしれない。スキップはできないが,シーン自体は短くリスタートも早いため,繰り返し挑戦することは苦にならないだろう(精神的に堪えるかもしれないが)。
宇宙を舞台としたダークな世界観や不気味なクリーチャー達,超能力のような特殊な武器を使ったバトルなど,本作は全体的に「Dead Space」に近いものがある。体力は首の後ろに装着された装置で,残弾数は武器自体の表示で確認するといったように,マップはもちろん,体力や残弾数,アイテムのスロットといったUI表示がないというところも同様だ。これが絶望的な状況に没入できてとてもいい。
残虐なシーンや表現のオンパレードなので,とても人を選ぶゲームではあるが,そのゲームシステムや物語,グラフィックスの完成度はさすがといったところ。硬派なSFホラーゲームをプレイしたい人にはおすすめの作品だ。
なお,「The Callisto Protocol」はCEROレーティングの取得が叶わず,日本国内でのコンシューマ版発売は中止となった(詳しくは以下のメールインタビューを参照)。記事執筆時点(10月26日17:00),SteamストアページによるとPC版は日本語に対応するようなので,本作が気になる人は引き続きチェックするといいだろう。
グレン・スコフィールド氏メールインタビュー
4Gamer:
Striking Distanceの設立から3年が経ちました。現在のスタジオの規模,ゲームの開発状況を教えてください。
グレン・スコフィールド氏:
先日発表したとおり,「The Callisto Protocol」はマスターアップを終えており(関連ツイート),現在はダウンロードコンテンツの開発に取り組み,さらに次回作の計画を立て始めているところです。
4Gamer:
新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大がありましたが,それはどのような影響を与えましたか。
グレン・スコフィールド氏:
KRAFTONの支援のもと,最新鋭のスタジオを本格的にオープンしたのが2020年2月末なのですが, COVID-19はその約1週間後に世界をシャットダウンしました。世界中のほぼすべての人と同じく,それはもちろん私達にとっても大変なことでした。
しかし,私はチームの対応に誇りを感じています。私達は,困難な状況下でゲーム開発を成功させる方法を見つけたのです。数え切れないほどの技術的な問題を解決し,チームとしてどのように協力するかを工夫し,素晴らしいゲームを作り上げました。
パンデミック発生後,150人以上のスタッフが加わりましたが,チームでやり遂げたことは誇らしいことです。ゲームはもちろん,新しいスタジオ,新しいIP,新しいエンジン,新しいプラットフォームといったすべてを,世界的なパンデミックの中で作り上げたわけですから。これは間違いなく,一生忘れられない経験です。
4Gamer:
KRAFTONから,ゲームシステムや物語,表現などについての指示はありましたか。開発スタジオとしての独立性が,どの程度保たれているのかを知りたいです。
グレン・スコフィールド氏:
私がKRFTONと一緒に仕事をしたいと思った理由のひとつは,CEOのキム・チャンハン氏が,ゲームに完全なクリエイティブの自由を与えると約束してくれたことです。実際,彼はその言葉どおり私達をサポートしてくれていて,これ以上嬉しいことはありません。
KRFTONのおかげで,クオリティに100%集中することができました。ゲームのクリエイティブな判断はすべて私達に任せてくれましたし,モーションキャプチャスタジオの構築など,多くのゲームデベロッパでは手の届かないような,貴重なリソースも与えてくれました。また,追加サポートが必要なプロジェクトでは,制作チームやエンジニアリングチームからのサポートを惜しみなく提供してくれました。まさに素晴らしいパートナーです。
KRFTONは,開発者が品質と職人技を重視して働くことができる素晴らしい場所です。
4Gamer:
「The Callisto Protocol」のアイデアや企画は,いつどのような形で生まれたのでしょう。
グレン・スコフィールド氏:
アイデアが浮かんだのは2019年です。それ以前の約10年間,Activisionで「Call of Duty」シリーズに携わってきましたが,退社後に休暇を過ごしていたときでした。
そのころ,サバイバルホラーに戻りたくてうずうずしていて,想像できる中で最も怖くて抑圧的な舞台を考えていました。そこで思い付いたのが,人を罰するために作られた残酷な場所である刑務所でした。そして,それが地球から遠く離れた深宇宙にあったら,それはとても恐ろしいものになるだろうと。
当時は“メテオ・ダウン”と呼んでいたんですが,このアイデアが現在の「The Callisto Protocol」につながりました。それから数週間後,私はKRAFTONの協力を得て,コアチームと共にプロジェクトをスタートしました。
4Gamer:
ゲームをプレイしてみて,システムや表現から「Dead Space」に近いものを感じました。自身の代表作から影響を受けている部分,逆に大きく異なるという部分をそれぞれ教えてください。
グレン・スコフィールド氏:
どちらも私自身がクリエイターとディレクターを務めている作品なので,当然ながら私のクリエイティブなDNAを共有しております。
私は,ダークで重苦しいSFの世界が好きです。そして,没入感のあるUIやサウンドで深いゲーム体験を提供することや,挑戦的な表現を持ったホラーを制作することが大好きです。なので,2作品とも私のスタイルそのものです。
とは言え,私が「Dead Space」を制作したのはもう15年近く前のことです。ゲームのスタイルは似ているかもしれませんが,変わっている部分や進化しているところはたくさんあります。私自身がゲーム開発者として大きく成長しましたし,時代も変わりましたから。
ゲームプレイの限界に挑戦していますし,とくにバトルの部分はサバイバルホラーゲームとしてはかなり大きな進化を遂げています。ストーリーテリングは全く異なるアプローチを取っていて,SFホラーとしての深みのあるストーリーを提供することに重点を置いています。
4Gamer:
戦いが長引くとクリーチャーの身体から触手が生え,凶悪な姿に変異し強くなることには震えました。これはどういった考えをもって作られたのでしょうか。
グレン・スコフィールド氏:
ゲームプレイの特徴となっている「Mutation」ですね。アウトブレイクの元凶となるものが宿主を乗っ取り,さらに“致命的な存在”に変身するというものです。
弱点となる触手を撃てば倒すことができますが,長引いてしまうとさらに強敵になってしまう。この,時間に追われる緊張感や,複数の敵を相手にしなければならないときはどう戦うかといった戦術性を生む仕組みとなっています。
4Gamer:
状況によって変化する主人公のやられ方(死に方)の表現が実にリアルで,そのパターンもかなりの数でした。なぜここまで,主人公の死の表現をリアルに,そして複数用意したのでしょう。
グレン・スコフィールド氏:
プレイヤーに死の恐怖を自分自身のことのように感じ取ってもらいたいんです。
ただ,不思議なことに,プレイした人の感想を聞くと,よく「これが一番好き。面白い」と言われます。衝撃的かつ予期せぬ方法で迎える“さまざまな形での死”を見たいという人が多いみたいですね。そういった意味では,ゲームの攻略に失敗したとしても,それ自体を楽しめるようにもなっていると思います。
4Gamer:
過激な表現や描写によって,日本でのコンシューマ版展開が難航していると聞きました。これにはどのように対応されるのでしょうか。
グレン・スコフィールド氏:
CEROレーティングを取得することができず,残念ながら「The Callisto Protocol」のコンシューマ版は,日本での販売を断念することになりました。
プレイヤーが期待する体験を提供することができなくなるので,レーティングを取得するための表現の調整は行いません。日本のファンの皆様には,何卒ご理解いただければ幸いです。日本でゲームを予約された方には,返金手続きを行います。
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(C)2022 Striking Distance Studios, Inc. ALL RIGHTS RESERVED. STRIKING DISTANCE STUDIOS and THE CALLISTO PROTOCOL are trademarks or service marks of Striking Distance Studios, Inc. KRAFTON is a registered trademark or service mark of KRAFTON, Inc.
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