インタビュー
「Mictlan: An Ancient Mythical Tale」,日本在住のアーティストにインタビュー。失われつつあるメソアメリカ文明をリアルに描くアクションRPG
「Mictlan: An Ancient Mythical Tale」公式サイト
ゲーム開発を主導するアラルコン氏は,メキシコシティで生まれてサンフランシスコで育ったメキシコ系アメリカ人で,現在は日本在住だ。彼の名前で検索すると,ゲーム開発を行う以前,異なるさまざまな分野でキャリアを積んできた,ユニークな経歴が分かる。
メソアメリカの神話を題材にしたアクションアドベンチャー「Mictlan: An Ancient Mythical Tale」,新たなティザー映像を公開
Meta Studios Creative Agencyは本日,新作アクションアドベンチャーゲーム「Mictlan: An Ancient Mythical Tale」の,新たなティザー映像を公開した。スペインによるメキシコ征服の時代(16世紀頃)のメソアメリカを舞台にした,神話とファンタジー,そして史実を織り交ぜたようなタイトルだ。
4Gamer:
まずは,自己紹介をお願いします。
ギレルモ・アラルコン(以下,アラルコン)氏:
私はもともとミュージシャンですが,歴史にも興味があり,世界のさまざまな土地を訪れるうち,放浪生活みたいなことをするようになりまして。気づいたら,これまで98か国に行き,70か所ほど尋ねた頃には,古代遺跡に関する本まで出していました (と,本を見せてくれる)。
4Gamer:
すごいですね。その間,どうやって生計を立てていたんですか。
アラルコン氏:
音楽があったから,クラブで演奏しては小銭を稼ぐ感じで。あとは,知り合いや友人の家に泊まったりしていたので,それほどお金はかからなかったですね。音響機材の販売をしたり,かなり早くから仮想通貨に投資したりもしていました。その後,1つの場所に定住してみようと考え,ユカタン半島のジャングルのそばに土地を買い,そこで暮らしていました。
移動手段としては,歩くかヘリコプターを使うかしかないような場所でしたが,そこで撮り溜めた映像で何かを制作したいと思い,いろいろなところを回って,知り合いもいて住みやすそうだった日本にやってきたんです。4年くらい前のことですかね。
4Gamer:
それは,ゲームを作るためですか。
アラルコン氏:
いやいや。その頃はまだ何かの映像作品を作るつもりでした。映像をどう利用するかを考えるうち,「Unreal Engine」を使って遺跡をリアルタイムで3Dビジュアルにするというアイデアを思いつきました。
そのうち,新型コロナウイルス感染症が拡大して,自由に出歩いたり,渡航したりできなくなり,遺跡を紹介するより,作り始めた素材をゲーム化したほうが,より多くの人に見てもらえるだろうという考えが芽生えたんです。ボクが見てきた埋もれたメソアメリカの歴史を,リアルタイム映像を先に進めたインタラクティブなゲームとして残したいと。
4Gamer:
なるほど,それが「Mictlan」につながったわけですね。ほかの開発スタッフは日本にいるのですか。
アラルコン氏:
いえ,日本にいるのは4人ほどで,ソーシャルメディアを使ってコミュニティサポートなどをしています。プロジェクト発表後,LATAM(ラテンアメリカ地域)で大きな話題になりましたからね。
実質的な開発チームはメキシコシティにいて,ローカルでゲーム開発を行った経験のある人や,新しい才能など,現在で60人ほどの体制になりました。モーションキャプチャできるスタジオなども現地に作り,今では日本のチームがリモートで働いているような状況です。
4Gamer:
すべきことは多いですか。
アラルコン氏:
ええ。でもボクは熱中するとやり込んでしまうタイプなので,働くことはかまわないし,とくにメキシコや中米の先住民の歴史や生活をしっかり描きたいという使命を感じています。ボクにとってゲームは,物語や音楽を伝えられる映像メディアの一種で,これまでやって来た映像とは違う形で人々とコミュニケートできる最高のツールだと思っています。ボクが見てきたこと,それから伝えたいことを最大限に表現できるメディアですね。
4Gamer:
ゲーム開発の資金はどのようにしているのですか。
アラルコン氏:
これまで,ボクの資産と収入を使って来ましたし,メキシコ政府の文化振興の助成金ももらっています。コンシューマ機向けのパブリッシングについては大手プラットフォームホルダーと話をしており,LATAMに根ざしたゲームの開発に共感を持ってもらっている状況です。来年の春頃には,我々が作っているゲームのデモを見せて,より具体的なサポートを受けられるのではと願っています。
4Gamer:
ゲームの進捗状況はどれくらいでしょうか。
アラルコン氏:
今のところ,実際のロケーションを3Dスキャンしてフォトグラメトリで再現したり,100人分くらいのNPCをスキャンしたりしています。
アステカの神殿がどのような彩色だったのかを知っている人は少ないでしょうし,彼らの宇宙観や人生観はどのようなものだったのか,あるいは神殿で人の心臓を抜き出す生贄の儀式を行っていたことを知っている人がいても,それが何のためなのかまで知っている人は少ないのではないでしょうか。「Mictlan」はオープンワールドのアクションRPGで,アステカ文明という見すごされてきた文化をテーマにしたことで,新鮮に感じてもらえると考えてます。
4Gamer:
教育的要素も含めているわけですね。
アラルコン氏:
はい。ゲームとして面白くするのは当然ですが,本当の歴史には人々に訴える力があると思っています。アステカ文明は,LATAM地域のデベロッパでさえほとんど扱ってこなかったテーマだけに,多くのゲーマーに受け入れられるためにも,何が起こったのかをうまく見せる必要があります。
「Mictlan」では,プリーストやシャーマンといったキャラクターが儀式についてだとか,メソアメリカで広く使われていた薬草についてだとか,傷を負ったときや蛇に咬まれたときにどのように対処するのかといったことを主人公に語ります。それに基づいたサバイバルアドベンチャー的な要素も用意する予定です。400年前にユカタン半島に住んでいた人々や,スペイン人達それぞれのキャラクターにもこだわって,エンターテイメントでありながら,これまでのゲームとは比較にならないくらい史実に忠実なゲームを目指したい。アステカ文明同様,マヤ文明の土地までカバーした広範囲で冒険できるゲームにしたいのです。
4Gamer:
結局スペインに勝てなかった戦争を,どのように扱うのでしょう。
アラルコン氏:
歴史的事実として,メソアメリカの戦争は非常にスピリチュアルなもので,相手を戦闘で殺してはならず,必ず生け捕りにするといったルールで戦っていました。能力ある戦士は,10人や15人ぐらいを生け捕りにしていたのです。これをゲームでどのように再現するのかは難しいのですが,生け捕りの人数が多いぶん,例えばイーグル,ジャガー,ウルフといったランクを上がっていくシステムや,アステカ戦士としての誇りを捨て,愛する人を守り,復讐のために敵を手にかけるといったことなどで表現できるでしょう。
「Ghost of Tsushima」で描かれた,日本の武士の誇りを捨てて闇の戦いを選ぶシステムと少し似ているかもしれません。生贄をどう表現するのか,捕虜にした敵をどのように神殿まで運んでいくのかといったゲームメカニズムを調整です。
4Gamer:
いろいろなお話,どうもありがとうございました。
「Mictlan: An Ancient Mythical Tale」は,上記のようにPCおよびコンシューマ機向けに2025年の発売を予定しており,現在はサブスクリプションタイプのクラウドファンディングプラットフォーム「Patreon」で,Meta Studios Creative Agencyへの支援ができる。アラコルン氏が見せてくれた未公開映像では,ステルスに凝ったゲームシステムになっているようで,続報を楽しみにしたい。
「東京ゲームショウ2022」公式サイト
4Gamer「東京ゲームショウ2022」特設サイト
- 関連タイトル:
Mictlan: An Ancient Mythical Tale
- 関連タイトル:
Mictlan: An Ancient Mythical Tale
- 関連タイトル:
Mictlan: An Ancient Mythical Tale
- 関連タイトル:
Mictlan: An Ancient Mythical Tale
- この記事のURL:
キーワード
- インタビュー
- PC:Mictlan: An Ancient Mythical Tale
- PC
- アクション
- アドベンチャー
- Meta Studios Creative Agency
- Meta Studios Creative Agency
- ファンタジー
- プレイ人数:1人
- PS5:Mictlan: An Ancient Mythical Tale
- PS5
- Xbox Series X:Mictlan: An Ancient Mythical Tale
- Xbox Series X
- PS4:Mictlan: An Ancient Mythical Tale
- PS4
- イベント
- ライター:奥谷海人
- TGS 2022
- 東京ゲームショウ
Meta Studios Creative Agency K.K, all rights reserved
Meta Studios Creative Agency K.K, all rights reserved
Meta Studios Creative Agency K.K, all rights reserved
Meta Studios Creative Agency K.K, all rights reserved