プレイレポート
「キャプテン・ベルベット・メテオ ジャンプ+異世界の“小”冒険」プレイレポート。空想の世界で少年ジャンプ+のキャラクターたちと共闘!
本作は,「少年ジャンプ+」の漫画作品のキャラクターたちと共にさまざまな試練に立ち向かうタクティカルアドベンチャーゲームで,2022年2月16日に発足した集英社ゲームズの記念すべき第1弾作品だ。今回,発売に先駆けてプレイする機会を得たので,そのプレイレポートをお届けしよう。
なお,本稿はPC版でのテスト環境でのプレイになるため,フォントやボタン表示などがNintendo Switch版とは少し異なる可能性があるので,注意してほしい。
●「ジャンプ+」の登場作品とキャラクター一覧
「怪獣8号」日比野カフカ
「HEART GEAR」クロム
「スライムライフ」スライム
「地獄楽」画眉丸
「サマータイムレンダ」小舟潮
「姫様“拷問”の時間です」姫様&エクス
「GHOST GIRL ゴーストガール」クロエ・ラヴ&カイ・イォド
「SPY×FAMILY」ロイド・フォージャー
シンプルだが,歯応えアリ。空想の世界で戦う“タクティカルアドベンチャー”
主人公の少年・ダミアンは,家庭の事情により,フランスから日本へ引っ越ししてきたばかり。部屋によっては,引っ越し後の荷物もまだ整理しきれていない状態だ。
本作は,ダミアンの家の中を探索するところから始まるのだが,庭では飼い犬がなぜか吠えまくっていたり,風呂場でカサカサと動く黒い生き物が見つかったりと,さまざまな小事件が起きる。主人公のダミアンは「キャプテン・ベルベット・メテオ」となり,自身の空想の世界へと旅立ち,問題の解決を試みることになる。
空想の世界は,キャプテン・ベルベット・メテオと,そのサポートをするロボット“ジェイピー”が乗った宇宙船がとある星に不時着し,宇宙船を再び動かすためのエネルギー探しに出る場面から始まる。
まずは,サポートロボットのジェイピーと共にチュートリアルステージを体験することに。空想の世界では,“タクティカルアドベンチャー”と称された,シミュレーションゲーム風の画面になる。
一見すると,オーソドックスなシミュレーションRPGのような本作だが,その戦闘システムは少し工夫が施されている。
普通のシミュレーションRPGならキャプテン・ベルベット・メテオを移動→攻撃→待機させたら,次にジェイピーの行動を決めていくという風にユニット1つ1つを動かしていくが,本作は,味方全員の「移動ルート」と「最終的な停止位置」,そして「向き」を決め,決定ボタンを長押しすることで全員の行動が一斉に完了する。
各キャラクターは移動と攻撃しかできないため,向いている方向の攻撃可能範囲内に敵がいれば攻撃するし,いなければ,待機になるというわけだ。移動後に,複数ある攻撃手段の中からどれを選ぶか考えたり,キャラクターの持つ固有アビリティをどこで使うか考えたりする煩雑さがなく,プレイヤーが考えるべきことや操作は最低限に削ぎ落とされている。このシンプルさによって,スピーディーなバトル展開を実現している。
そしてチュートリアルが終わると,「ジャンプ+」からの登場キャラの1人目である,「日比野カフカ」が登場する。
この星の魔物を倒して先へ進むという目的が一致しているため,キャプテン・ベルベット・メテオは,日比野カフカと共闘することに。ジェイピーはステージ攻略のためのヒントを与える役になり,ここからはキャプテン・ベルベット・メテオと日比野カフカの2キャラを操作して進めていくことになる。
日比野カフカがゴリゴリの近接アタッカーなのに対し,キャプテン・ベルベット・メテオの攻撃手段は「メテオガン」という銃。移動力が足りず,敵のいるマスの隣接マスまで移動できない場合でも,多少離れた位置から攻撃できる。また,近接攻撃では届かない位置のスイッチを攻撃してドアを開けたりするギミックもあるので,そういう場所ではキャプテン・ベルベット・メテオの出番だ。
日比野カフカの参加により,タクティカルパートが本格化してくるわけだが,重要になるのが「アシストコンボ」と「パワーコンボ」だ。アシストコンボは,横に2人並ぶことで発動する広範囲攻撃技で,弱い敵なら一掃できる。
一方パワーコンボは,アシストコンボよりも範囲が限定されるものの,非常に強力な攻撃を繰り出せる。ボス級の敵には積極的にパワーコンボを狙っていきたい。
ただし,アシストコンボはいつでも発動できるのに対し,パワーコンボは敵を倒すと出現する「パワーオーブ」という黄色い玉を3つ取って,画面右上のゲージを溜めないと発動できない。
ユニットの攻撃手段は,単体攻撃とアシストコンボとパワーコンボ,この3種類しかないが,この3つのうちどれを使うかという選択が戦略性を生んでいる。
本作には1マスにウジャウジャといる小さな敵,1マスに1匹配置されている普通の敵,1匹で複数のマスを陣取っている大型のボスという大きく分けて三種類の敵がいる。
小さな敵は,その上を通過するだけで倒せる。例えば,キャプテン・ベルベット・メテオの右横に4マス連続でこの敵が配置されていたとして,左から4歩進んで行動を完了すると,最終位置までのルート上にいる4マスの敵はすべて「踏み潰した」ことになって倒せるというわけだ。
タクティクス系のゲームでは最終的な待機位置だけが重要で,そのマスまでをどう通ったかはさほど重要ではないことが多いが,本作は「移動ルート」にも意味があるシステムになっている。
小さな敵は大量に出現するため,移動による踏み潰しも重要だが,最も重要なのがアシストコンボで一掃することだ。アシストコンボは広範囲攻撃だが,キャプテン・ベルベット・メテオと日比野カフカが横に並びさえすれば無制限で発動でき,範囲内にいる小さな敵を全滅させられる。そして重要なのが,小さな敵は倒すと体力が回復するということ。つまりアシストコンボでまとめて倒すと,こちらの体力を大幅に回復できるのだ。体力ゲージが残りわずかなで大ピンチの状況であっても,アシストコンボを使えば一気に満タンまで回復することもあるので,ミスを重ねて不利な状況になったとしても,決して諦めないことが肝心だ。
ただし,アシストコンボの攻撃力は低いため,通常の敵を倒すには向いていない。通常の敵は単体攻撃もしくはパワーコンボを当てれば大抵一撃で倒せるので,使い分けが重要になってくる。
通常の敵は,小さな敵に比べて攻撃力が高く,一撃くらうだけで体力をかなり削られてしまう。通常の敵が周囲に3〜4体いる状態でターンを終えてしまうと,次の敵のターンでこちらの体力ゲージは一気に削られ,ほぼ負けると思ったほうがいい。
つまり,「通常の敵の攻撃をくらわないように立ち回りつつ,体力を削られたらアシストコンボで小さな敵を一掃して回復を図る」「移動ルートによる踏み潰しも駆使しながら,ターン終了時に周囲に小さな敵がいなくなるように努める」の2つが本作における基本戦略となる。
本作は,敵を倒しても経験値のようなものは入らず,戦闘によるキャラクターの成長要素はない。また,事前に敵の移動範囲なども調べることもできない。一見,シミュレーションRPGのようではあるが,どのマスにキャラクターを進めて,敵をどう仕留めていくかのみを考える,一種のパズルに近いゲーム性といってもいい。行動する前に長考するような状況はあまりなく,プレイヤーが考えるべきことが非常にシンプルに絞られているので,理解すればサクサク遊べる。
欲を言えば,ステージ終盤でやられてリトライをするとステージの最初からになるので,もう少しコンティニューポイントを細かく刻んでほしかった。1ステージはそこまで長くはないのだが,筆者はゲームシステムを理解するまで,結構な回数のリトライをすることとなった。
日比野カフカと行動を共にする最初のエリアは8ステージに分けられており,終盤にはボスクラスの敵がいる。ボスは現実世界で起きている問題がモチーフとなっており,最初のステージでは,異常に吠えていた飼い犬が凶悪になったようなモンスターが襲ってくる。無事ボスを倒すことでエリアクリアとなり,ダミアンは現実世界に帰還することになる。
空想世界の冒険を通じてダミアンは,犬も引っ越しで慣れない場所に来たことで不安だったことを理解する。そして、ダミアンが犬の気持ちを察して接すると,犬はピタリと吠えるのを止めた。このように,ダミアンは家の中を探索して何かしらの問題を発見しては空想の世界へ飛び,「ジャンプ+」のキャラと共闘してボスを倒して戻ってくる,という流れだ。
エリアごとに共闘する「ジャンプ+」のキャラクターは異なり,それによりステージの構成も変わる。最初のエリアで共闘した日比野カフカはパワータイプで,ステージ構成もとにかく敵を倒すものが多かった。しかし,「サマータイムレンダ」の小舟 潮(こふね うしお)と行動を共にするエリアでは,原作と同様の“影”と“ループ”が関わってくる。
潮のパワーコンボは日比野カフカとは違った性能で,パワーコンボ発動時は影に隠れて待機し,敵のターンになってから,カウンター気味に影から飛び出して周囲に回し蹴りをくらわせる,というものになっている。敵が移動してからの発動になるので,自身の周囲に大量の敵が寄ってきそうなときに有効だ。
細かい粗はあるものの,幅広い年齢層がパズルのようなタクティカルバトルを楽しめる
キャラクターやユニットごとに設定された移動力の分だけ,マス目を動かし,少しずつ敵に近付き攻撃していくというタクティクスゲームは,どうしても対象年齢層が高くなりがちだ。戦術が命であるため,じっくり思考しそれがうまくいったときに初めてプレイヤーに達成感が生まれる。言い換えると,少しのミスが致命的な敗因になり得る「高めの難度で,幾度となくリトライをすることが前提のゲーム」だとも言える。
しかし,本作はプレイヤーのやることを極限までシンプルに突き詰められているため,考えることが多いのは苦手という人にも訴求できていると感じる。味方が攻撃されて体力を削られても,敵を倒せば体力が回復するし,極端な話,やられさえしなければ,意外と挽回できることが多い。「死ぬこと以外,かすり傷」の精神を地で行く作品だ。
ただ,やや説明が足りないと感じる場面は多い。タクティカルパートではおそらく意図的に画面上から文字情報が取り払われており,メニュー画面等から気軽にチュートリアルの再確認ができないため,序盤でのジェイピーの解説を読み飛ばしていると,各ゲージが何を示しているのか分からなくなる可能性もある。
また,本作はオートセーブとなっているが,どのタイミングで保存されているのかが分かりづらいため,「今ゲームをやめたら,再開時はどこからになるんだろう?」と不安になる。
基本的には1ステージクリアごとに進行状況が保存されているようなので,やめるときは新たなステージの開始時にするといいだろう。また,テスト版では同じステージでリトライを繰り返しているとフリーズする現象もたびたび見受けられたが,集英社ゲームズによれば,パッチでの対応により製品版では改善されているとのことだ。
先述の通り覚えることは少ないが,タクティカルパートの難度はそこそこ高く,適当にやっていては絶対に先へ進めない。難度の設定もないため,ある程度の試行錯誤を重ねないと,大人でもリトライを強いられるだろう。
ただ本作のタクティカルパートは,ゲームシステムとしては画期的だとも感じる。これだけシンプルにしてもゲームが成立するんだという驚きと,各キャラクターごとにちゃんと個性も出ている。前述のように,やや難しく感じるステージもあるが,だいたい2〜3回ほどリトライすれば光明が見えてくるケースが多く,いわゆる「取り返しのつかない事態」に陥ることもない。“ライトでカジュアルなタクティカルゲーム”として,非常に洗練されている。
また,漫画のキャラクターが登場するゲームは,そもそもの購買ターゲットがその漫画を当然知っているであろう層であることが多いのだが,本作は,漫画に詳しい主人公ダミアンの視点ではなく,空想世界のキャプテン・ベルベット・メテオの視点で物語が進むのもポイントだ。
ダミアンとは違い,キャプテン・ベルベット・メテオは,「ジャンプ+」のキャラクターを知らないという設定らしく,彼らが現れても,毎回「なんか奇妙な人が現れた!」という反応を見せる。原作を知っている前提で話が進むのではなく,知らないプレイヤーにも問題ない形でゲームが進行していくのだ。
もちろん,知っている人は新たなキャラクターが登場する度に喜びを味わえるし,逆に,知らない人にとっては「元はどういう漫画なんだろう?」と,ゲームから漫画への誘導もありえる作品なのではないかと感じた。「ジャンプ+」のキャラクターたちが好きな人や,本稿を読んでで少しでも興味が出た人は,ぜひ一度触れてみてほしい。
「キャプテン・ベルベット・メテオ ジャンプ+異世界の"小"冒険」公式サイト
- 関連タイトル:
キャプテン・ベルベット・メテオ ジャンプ+異世界の"小"冒険
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