プレイレポート
[プレイレポ]新作アドベンチャー「Aka」は,退役軍人の主人公がスローライフに魂の癒しを求める,ただメルヘンなだけではない作品だ
本作は,退役軍人である主人公のレッサーパンダが,争いから離れ,自然豊かな小島で暮らしていくスローライフが描かれる。ゲームは見下ろし型視点で3Dキャラクターを自由に操作し,島の住民との交流や農作物の栽培を体験することが可能だ。本稿では,ゲームシステムや作品の特徴を紹介しよう。
シリアスな世界観の中で魂の安寧を求める物語
本作は,シングルプレイのアドベンチャーゲームとなっており,ゲームの開始とともにレッサーパンダの「アカ」が戦地を離れ,舞台の小島へ船で向かう過程が描かれる。
アカは,友人のソムから届いた手紙を頼りに,パイン島という小さいながらも自然が溢れ,穏やかな住民が暮らす島へ向けて出発。そうしてプレイヤーは,島へたどり着いたアカを操作し,住民との交流や道具の作成,島の探索を通じて,アカの過去や島民の心にふれていくことになる。
島では,住民のお願いや環境を改善するための活動がクエスト形式で展開される。基本的にクエストに沿って,斧やツルハシといった道具を作成していき,木材や石材の調達,島民のための薬の調合,農作物の栽培などをこなしていく。
クラフト要素はあるものの,作った農作物や道具を活用して連鎖的に新たな資源を生産するような状況にはならず,アドベンチャー部分に重点が置かれたゲーム進行の中で,島をめぐることになる。
例えば,トラバサミで足を怪我した狼のために,薬を作るべく森の中に生えているキノコを探したり,海岸に流れ着いた網状の廃棄物を拾ったりとアカの行動だけで完結するクエストが多い。
そういった活動の中で,島民同士の争いやアカが動物を殺めるシチュエーションはないものの,生き物に害を成す存在(先述のトラバサミや海洋ごみなど)が,そこかしこでプレイヤーの目につく。
ただ,最序盤のアカは何も道具を作れず,初期装備として刀を1本所持しているだけだ。そのため,まずは道具作りの材料を得るために,刀を振るって雑草を刈っていくことになる。
なお,島へ渡る前に合戦跡地のような場所が描かれており,冒頭でも紹介したようにアカは退役軍人でもある。そのことから,死や戦争が存在しないメルヘンな世界でないことは明らかだ。そして島民との会話の端々で,アカが軍人だったことへの言及もあり,この世界で起きた戦争の苛烈さとアカが抱えた心の傷の深さを間接的に感じさせるシーンも多く描写される。
そんな中,アカは金銭的な報酬がないにも関わらず(ゲーム中には通貨らしきものも出てこない),困っている島民へ手を差し伸べていく。そうしたストーリーで,クエスト形式の依頼を達成したとき,見返りにアイテムを獲得できる機会さえも少ないので,プレイヤーによっては徒労感を感じる場合もあるだろう。
しかし,そんなプレイヤーの感覚とは裏腹に,アカは住民から手渡される報酬がなくとも,軍人時代の名残である刀を草刈りのために使い,除去したトラバサミを溶かして金属で斧を作成,拾った海洋ごみをロープとして再利用するなど,生き物に害を成すものをも利用してクエストをこなしていく。
これは,島で住民の願いを聞き入れたり,環境を改善したりすることで,危害や争いの象徴を克服する行為として,物理的にも精神的にも二重に描かれているわけだ。
戦争で心に傷を負ったアカにとっては,ゲームシステム上の行動自体がトラウマ克服のためのセルフセラピーであり,自らの魂を癒やすための道のりなのかもしれない。
個性的なキャラクターとの交流で島生活を満喫
本作は物語としてだけでなく,ゲームシステムの進行としてもアカの癒やしを描いているが,もちろんプレイヤーの意思によってクエストと関係なく,島民と交流することも可能だ。
島には音楽好きな住民やカードゲーム好きな住民がいる。また自然に溢れたアカの住居周りとはまったく異なる,都市部のような場所にも行くことができ,そこでは図書館や帽子屋といった文化的な建物も立ち並んでいた。
図書館では,新たなアイテムをクラフトするためのレシピを入手でき,帽子屋では数種類の帽子を選んで自由に付け替えられる。もちろん住民が多い場所では,それだけ多くの交流を図ることになるが,そのやり取りはさまざまだ。
例えば,相手の音楽に合わせて太鼓を叩くリズムゲームや,街の発明家が作った迷路ゲームを遊ぶ,といったミニゲームを通じて島民とコミュニケーションを取るときもある。
さらに共通のカードゲームを使って,別々の島民と遊ぶことも可能だ。カードゲームは,自分と相手のターンが順番に繰り返されていき,ターンが回ってくるごとにコストを自動で獲得していくというルールになる。
そして,相手へダメージを与える効果や自身のライフを回復する効果を持つカードをデッキから毎ターン引いて,コストに応じて使用。最終的に相手のライフをゼロにすることでプレイヤーの勝利となる。
なお,クエストの達成や住民の頼みを聞くことによる報酬はあまりないと紹介したが,このカードゲーム用のカードが手に入る場合はある。プレイヤーにとっては,ストーリーを進めること以外の目標とも言えるだろう。
本作の先行体験レポートは以上となる。一見すると,ゲーム全体が非常にシンプルに感じられる作品だが,重みのある世界観と主人公の動機が,ストーリーラインとシステムにより,丁寧に織り交ぜられている。
キャラクターの愛くるしさやスローライフという単語にピンときた人はもちろん,登場人物による説明描写が少ない中で,ゲームシステムを通じて物語の意味を体験できる作家性の強いゲームが好きな人にもオススメしたい一作となっていた。
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