インタビュー
PC/CS「ソニックオリジンズ」開発者インタビュー。ソニックの原点4タイトルを遊びやすくアレンジ。“ミラーリングモード”などさまざまな遊び方も
1990年代にメガドライブにて発売された「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」「ソニックCD」「ソニック・ザ・ヘッジホッグ2」「ソニック・ザ・ヘッジホッグ3&ナックルズ」を,16:9の画面に対応させ,現代のプレイスタイルにマッチさせたルールを導入。発売当時に近いプレイフィールを備えたモードや,当時の開発資料,キャラクター名鑑などを閲覧できるモードなども用意され,新旧のソニックファンに嬉しい内容となっている。
4Gamerでは本作の開発に携わるプロデューサーとディレクターにインタビューを行う機会を得たので,ゲームの詳細や開発秘話などを聞いてみた。本稿ではその内容をお届けしよう。
「ソニックオリジンズ」公式サイト
残機を排した「アニバーサリーモード」はビギナーにも優しい仕様に。オリジナルと同じ感覚で遊べる「クラシックモード」も
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは,今回の「ソニックオリジンズ」を企画することになった経緯を教えてください。
鴫原克幸氏(以下,鴫原氏):
2020年に「ソニック・ザ・ムービー」が世界中のお客様からご好評いただき,昨年にはソニックシリーズが生誕30周年を迎えました。ここ数年でたくさんの方がソニックに触れてくださったことを踏まえ,改めて再確認していただくために,この「ソニックオリジンズ」の企画が立ち上がりました。
大橋宣哉氏(以下,大橋氏):
映画の影響が本当に大きくて,知名度が一気に上がったんです。ただ,ソニックの原点を知らない方も多いので,今回改めて新規タイトルとして提示させていただく,というのが本作のコンセプトです。
4Gamer:
セガさんのタイトルとしては,初代のソニック1やソニック2は,「SEGA AGES」シリーズなどで復刻されてきました。そことの棲み分けはどう意識されたのでしょうか。
大橋氏:
近年ではタイトルごとに復刻する形でソニックシリーズを発売してきましたが,今回は原点の4作品を1本にまとめて,さらに付加価値を用意することで,オリジナルやSEGA AGESなどでプレイ経験がある方も楽しめるようにしました。
4Gamer:
確かにメガドライブの初期シリーズが1本にまとまったタイトルは,2004年の「ソニック メガコレクション プラス」以来ですね。
鴫原氏:
そうなんです。SEGA AGESのように復刻タイトルとして単独でプレイする機会はありましたが,一つにまとまっていなかったので,初めてプレイしていただく方には1本で全てを楽しめる“ソニック入門編”としての役割を持たせています。
4Gamer:
具体的にはどんな内容になっていますか。
鴫原氏:
まずはソニックをあまり知らない方や,アクションが苦手な方に楽しんでいただくための「アニバーサリーモード」を用意しました。これはゲーム画面を16:9の比率にしただけでなく,ソニックの残機の仕組みを撤廃しています。それにより,何度ミスをしてもチェックポイントから再挑戦ができるようになっています。
4Gamer:
メガドラのソニックは難しいですからね……(笑)。
鴫原氏:
難しいんですよ,本当に(笑)。残機制でなくなったことは小さな変更に感じられるかもしれませんが,あらためてプレイする方でもその恩恵を実感できると思います。
4Gamer:
最近の復刻タイトルによくある,中断セーブや巻き戻しのようなシステムはないんですか?
大橋氏:
セーブは基本的にチェックポイントで自動的に行われる形で,今回はあえて中断セーブのような要素は入れていません。ソニックのチェックポイントはゲームの中でも象徴的な存在で,必ず安全なところに置いてありますから,本作でもそれを尊重することにしたんです。
4Gamer:
オリジナルのメガドライブ版をプレイできるモードもあるんですよね。
鴫原氏:
はい,当時のままの手応えで遊びたいという方に向けた,画面比率4:3の「クラシックモード」があります。またその他にも,ボスだけを連続してプレイする「ボスラッシュ」や,従来のソニックの画面を左右反転した「ミラーリングモード」など,本作ならではのモードも追加しています。
4Gamer:
「ミラーリングモード」は,これまでなかったタイプのスタイルですね。
鴫原氏:
単純にゲーム画面の左右を逆にしているだけなんですが,ソニックシリーズをやり込んでいる人ほど,新鮮に感じられると思います。スクロールが反対になることで,今まで見えなかったところが見えてきますし。
大橋氏:
聞くのと実際に遊んでみるとでは,かなり印象が違うんですよ。ドライブゲームなどにも左右を反転したモードなどはありますが,それ以上に新鮮な体験になると思います。左側に向かって進むアクションゲーム自体あまりないですし,さらにそれをあのスピードでプレイするわけですからね。
鴫原氏:
ステージ中にも左に向かって走るシーンはあるんですが,それでもリバースモードは感覚が全然違って,作っていてもビックリするほどでしたね。
4Gamer:
楽しみですね。ミラーリングモードはすぐに遊べるんですか。
鴫原氏:
ゲームとしては難しいモードなので,基本的には各タイトルをクリアすることでアンロックされます。ただ,予約特典のDLC「スタートダッシュパック」を反映させると,すぐに遊ぶことができます。
4Gamer:
「ソニック&ナックルズ」のロックオンシステムは再現されているんでしょうか。
鴫原氏:
ソニック3&ナックルズに関しては,分離させて別のゲームとして遊ぶ仕様は入れておらず,基本的には通しでプレイしていただくものです。ただし「ナックルズ+ソニック2」は,ソニック2のプレイヤーキャラクターをナックルズに変更することで楽しめるようになっています。ロックオンの仕組みがちょっと複雑なので,わかりやすくしました。
4Gamer:
ソニック1+ナックルズで遊べた「ブルースフィア」はありますか。
鴫原氏:
はい,ブルースフィアはソニック3のスペシャルステージですので,ソニック3&ナックルズのゲームモードの中で選べるようにしています。実は今回,当時のブルースフィアとは別に「ニューブルースフィア」という新しい仕様を入れたモードも追加しています。こちらは新しい効果のボールがステージ上に配置されるなど,オリジナルとはまた違った手応えのある内容になっています。
4Gamer:
それは嬉しい! ブルースフィアはロックオンシステムの一要素でもありましたからね。
そんなブルースフィアを含むソニックシリーズのスペシャルステージですが,やり直しが利かないなど,けっこう難しかった印象があります。難度はそのままなのでしょうか。
鴫原氏:
ご安心ください。本作ではスペシャルステージがリトライできるようになっています。本作にはリングとは別に「コイン」という概念がありまして,それを消費することで,スペシャルステージのリトライができます。コインはアニバーサリーモード内でリングを100個集めたり,1UPアイテムを取ったりなど,従来の1UPに該当する要素によって増やすことができるほか,ボスラッシュモードや,特定条件でのクリアに挑戦する「ミッションモード」などをプレイすることでも増やせます。
大橋氏:
コインは「ミュージアム」でも使用できます。こちらは開発資料やイラスト,あるいは新たに収録したアレンジ楽曲などを楽しむモードで,通常の「ノーマルコレクション」はゲームをプレイすることでアンロックしていくのですが,一部の「プレミアムコレクション」はコインによってアンロックする仕組みです。開発資料は今回収録した4作品に関するもので,初公開となるものもありますので,ぜひ全てをアンロックしてご覧いただきたいですね。
国内外のソニックファン心理を理解する総合プロデューサー飯塚氏。助言をゲームの要所に反映
4Gamer:
ソニックシリーズの総合プロデューサーである飯塚さん(飯塚 隆氏)とは,どのようなやりとりをして開発を進めたのでしょうか。
大橋氏:
飯塚は現在アメリカで仕事をしていますので,毎週ビデオ会議で開発に関する相談をしていました。
4Gamer:
開発にあたり,飯塚さんからはどんなオーダーがありましたか。
鴫原氏:
飯塚からは「ファンの気持ちはこうだから,ゲームはこうすべき」という,ソニックファン目線の助言を多くもらいましたね。例えば本作のアニバーサリーモードには,「ソニックマニア」から導入されたドロップダッシュが入っているんですが,我々はこれをメガドライブのソニックに入れていいものか躊躇していたんです。それを飯塚に相談したところ「入れるべきだ」と即答されたんです。
SEGA AGESのソニック1とソニック2には既に導入されているんですが,本作ではその2本と共にソニックCDとソニック3&ナックルズでもドロップダッシュが使えるようになり,結果としてプレイ感覚が進化した手応えがありましたね。
大橋氏:
ユーザーさんからの反応も,タイトル発表時に入っていることを明示したところ「安心した」「入ってないとダメでしょ」という声が上がっていて,改めて飯塚がソニックファンの心理を理解していると感じたんですよね。
4Gamer:
さすがですね。
大橋氏:
それともう一つ,ゲーム選択画面で,各タイトルのステージをイメージした島を3DCGで表現しているんですが,この画面も飯塚やソニックシリーズのスタッフと時間をかけて詰めました。3Dなので凝ったこともできるんですが,遊べるのはメガドライブのソニックですから,クラシックソニックに重きを置いた表現にこだわった方がファンに喜んでもらえるという結論になったんです。
飯塚はアメリカでコアなソニックファンに近いところにいますから,ファン目線の的確なアドバイスによって,本作もいい形にまとまったと思います。
4Gamer:
新しいファンだけでなく,昔からのファンも納得できる作りを目指したわけですね。
大橋氏:
はい,メガドライブのシリーズを作るからには,当時のファンをないがしろにできないですから。ソニックに長く関わっている飯塚やアメリカのスタッフの意見やアドバイスは大変参考になりました。
4Gamer:
本作に収録したタイトルについてですが,メガドライブ時代にソニックシリーズは本編以外にもいくつかタイトルが出ていて,過去にはそれらを収録したコンピレーションもありました。今作で本編以外のタイトルを収録する予定はなかったんでしょうか。
鴫原氏:
今回はあくまでオリジナルのストーリーをプレイしていただきたいという意図がありましたので,収録するタイトルは4作品に絞りました。
大橋氏:
冒頭でもお話ししたように,ソニックの原点というコンセプトがありましたので,他のタイトルを入れるプランは企画の段階からなかったですね。
4Gamer:
それでもソニックCDの収録はファンとしては待望の出来事でした。
大橋氏:
ストーリーの時間軸として2番目に来るタイトルなので,外せなかったです。本作には時間軸順に遊べる「ストーリーモード」があって,それをプレイすることでソニックの原点となる物語を通して遊べます。
鴫原氏:
今回,タイトルごとに新たに作り起こしたアニメーション映像があるんですが,ストーリーモードをプレイすることで,それらがタイトルの合間に挿入される演出があります。
4Gamer:
ソニックCDにオープニングアニメーションが入っていましたが,ああいった感じですか。
鴫原氏:
あそこまで長いものではないんですが,各タイトルのストーリーをつなぐ短いアニメーションを見られるんです。これにより,ソニック1からソニック3&ナックルズまでを一つの物語として楽しんでいただけます。
大橋氏:
そのソニックCDのオープニング/エンディングも入っているんですが,当時の画質では見づらいので,最大4Kの解像度までリマスターした映像を入れました。あの映像を高画質で見られるのは,けっこう感動すると思いますよ。
4Gamer:
スピード感とサウンドが素晴らしい映像なので,大画面で見られるのはいいですね!
大橋氏:
ソニックCDはこれまでリマスター化の機会がほとんどなかったですからね。ストーリーモードで通してプレイできるのも,4タイトルを収録した仕様ならではのものなので,じっくりと楽しんでいただきたいです。
4Gamer:
全体の物量がかなりありそうですが,開発で苦労されたところはどこですか。
先ほどお話しした通り,飯塚をはじめとするアメリカのスタッフとのやりとりや,開発の一部をアメリカのチームにお願いしていることもあって,物理的に遠いところにいる仲間と一つのタイトルを作っていくのが大変でした。
4Gamer:
昨今の情勢でリモート環境などが整い,遠距離での仕事もやりやすくなったという印象がありますが,そうではなかったと。
大橋氏:
私も最初はそう思ったんです。ただ,物理的に近い場所なら恩恵を受けられるのですが,時差がある場所は,これまでとあまり変わらないんです。メール一つとっても返答には時間がかかりますし,休日の設定なども違いますから,レスポンス的なところで苦労することは多かったです。
4Gamer:
ちなみにアメリカではどのような開発作業をされているんですか?
大橋氏:
アメリカでは今回収録するソニック3&ナックルズのベースとなる部分の開発が先に進められていました。それと並行する形で他の3タイトルを国内で開発しつつ,全タイトルに各モードを組み込んでいきました。
単なるコンピレーションにとどまらない,ビギナーにもシリーズを遊び尽くしたファンにもやり応えのある内容に
4Gamer:
今回収録されるさまざまなモードを解説していただきましたが,とくに推したいモードや要素などはありますか。
大橋氏:
私としては,新規に追加したストーリーモードのアニメーションと,ソニックCDの高画質のオープニングはぜひ見ていただきたいです。これらは「ソニックオリジンズ」ならではの要素で,とくにストーリーモードはアニメーション映像を含め,シリーズを通しで遊ぶことができる,これまでにないタイプのコンテンツですので,ぜひ楽しんでいただきたいです。
鴫原氏:
まずはメインモードのアニバーサリーモードを推したいんですが,個人的にはミュージアムも見ていただきたいです。この「ソニックオリジンズ」で初出の資料やイラストもあるので,コインを貯めてコンプリートしてほしいですね。
4Gamer:
コンプリートは大変ですか。
鴫原氏:
ミッションモードをプレイすれば,コインを集めるのはそれほど難しくないです。得意なミッションを見つけていただいて,それを集中してプレイすることで,比較的楽にコンプリートを目指せるのではないかと思います。
4Gamer:
追加コンテンツについても伺いたいのですが。
大橋氏:
高難易度ミッションや,メニュー画面にキャラクターが現れる演出などが入手できる「プレミアムファンパック」と,ミュージアムモードに収録タイトル以外の楽曲が追加される「クラシックミュージックパック」がありまして,これらを同梱した「デジタルデラックス」も同時発売になります。
鴫原氏:
プレミアムファンパックは,よりゲームを楽しむための追加コンテンツで,主にキャラクターに付随した演出やミッションを追加したものです。一方でクラシックミュージックパックは,「カオティクス」「ソニックスピンボール」「ソニック3Dブラスト」という,メガドライブで発売されたタイトルの楽曲が追加されます。とくに「カオティクス」は,けっこういい曲が多いので,ぜひ聴いていただきたいですね。
4Gamer:
今後それ以外の追加コンテンツを発売するプランはありますか。
大橋氏:
現時点で新たなコンテンツを追加することについては未定ですが,発売後にユーザーさんからのご意見やご要望などを参考に,今後についても検討していきたいですね。
4Gamer:
最後に,発売にあたりソニックファンにメッセージをお願いします。
大橋氏:
この「ソニックオリジンズ」は,ソニックの原点に初めて触れるという方はもちろん,メガドライブの頃からソニックを楽しんでいるコアなファンの方にも納得していただけるタイトルになっていると思います。コンピレーションと聞いて「はぁ」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが,盛りだくさんなコンテンツを用意して,オリジナルのシリーズでは体験できなかった部分も必ず楽しんでいただけると自負しています。シリーズ作品をすでに遊び尽くしたという方もぜひ,本作でさらなるやり込みに挑戦していただきたいです。
鴫原氏:
「ソニックオリジンズ」というタイトルが表しているように,これ1本でソニックの原点がわかるというのが最も大きなポイントです。4作品がただつながっただけではなく,それぞれをさらに楽しめるゲームモードも用意して,これまでのファンも初めて遊んでいただく方も十分に楽しめる大ボリュームの内容となっていますので,ぜひプレイしていただいて,ソニックの原点を確認してください。
4Gamer:
ありがとうございました。
インタビュー収録日:2022年6月2日
「ソニックオリジンズ」公式サイト
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