連載
レトロンバーガー Order 78:心が折れそうになりながら苦難を打開するゲームが発売されたので,やろうぜ「Breakout: Recharged」編
従順ならば奴隷にならざるを得ない。
(Disobedience is the true foundation of liberty.
The obedient must be slaves)
「ウォールデン」などの自然文学で知られる19世紀のアメリカの作家/哲学者・Henry David Thoreauは,こう述べました。短絡的に捉えると無法や造反を奨励するようにも感じますが,もちろんそうではありません。要するに,降りかかる困難や抑圧に屈せず,出来うる限り己自身の道を歩むべく反抗を続けてみよう(エレファントカシマシ)ということです。
そんなわけで,エルデの地に待ち受ける数々の困難との闘いをやっていきましょう。隔週連載の「ELDEN RING」プレイ日記・エルデンバーガー。第1回は「疾風怒濤の素寒貧,“狭間の地”に降り立つの巻」です。
嘘です。
スチールのボールがダダッダー!
うそよね〜ん(松本人志さん)なのですが,エルデ生活は実際に素寒貧で始めました。
なので,しばらくは「ELDEN RING」と水だけで生きていきたいところですが,そうも言ってられませんし,つまみ食い的に「ソルクレスタ」や「THE KING OF FIGHTERS XV」,「アーケードアーカイブス デンジャラスシード」といった他の新作も,ちょいちょいプレイしています。いえ,先週が休載になって今週にズレ込んだのは,それらが原因ではなくて事故的なアレです。
その他につまみ食いしているタイトルの1つが,Atariから2月10日に発売された「Breakout: Recharged」です。本作はAtari(旧)から1976年にリリースされたアーケードゲーム「Breakout」をリメイクしたもので,2020年5月の「Missile Command: Recharged」,2021年9月の「Centipede: Recharged」,同年10月の「Black Widow: Recharged」,同年12月の「Asteroids: Recharged」に続く,“Recharged”シリーズの第5作となっています。
「Breakout: Recharged」のイメージビジュアルは,囚人がハンマーで煉瓦の壁を破壊しているというもの。Tim Lapetino氏によるAtari 2600版のパッケージアートでは,「Breakout」はテニス選手,同作のボツ版では古代の戦士(なかなか高価だけど月額制のKindle Unlimitedでも読める「Art Of Atari」に掲載。Atariファンサイトのインタビュー記事でも低解像度のものを見られます),続編の「Super Breakout」は宇宙飛行士となっていましたが,本作では囚人というわけです。伝統的と言えるほどに一貫性がありませんが,弾道ミサイルや怪虫ならまだしも,“パドルでボールを弾いてブロックを壊す”ゲームに一貫したキャラクターを見出せという方が無茶ですね。
囚人と言えばフロム・ソフトウェアです。「DARK SOULS」や「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」は牢屋からスタートしますし,「Bloodborne」では人さらいに倒されると地下牢に放り込まれます。プレイヤーキャラクターが収監されないタイトルでも,しょっちゅう牢屋と囚人が出てきます。
「DARK SOULS」の系譜に連なるタイトルや,それをオマージュしたソウルライクゲームの特徴の1つが,難度の高さです。「Breakout: Recharged」も基本的に残虐非道(褒め言葉)な設計で,とくにアーケードモードの“リチャージ”は残機ゼロという,「SEKIRO」の狼さんもビックリの仕様となっています。別のルールだと,"クラシック”は自機+残機2でスタートしますが,強化アイテムが出現せず純粋なパドル操作の腕前が求められます。両設定をマッシュアップした"クラシックリチャージ”もありますが,どのみちアーケードモードはエンドレスなので,「死ぬまでの時間が長引くだけ」と言えますね。
タイトーが「アルカノイド」で採用したようなアイテム要素や特殊ブロックなども搭載されていますが,基本的にはオールドスクールなスタイルとなっていて,例えば「タイミング良くボタンを押すことで強化ボールに変化」や「ゲージを溜めて必殺技を発動」などは存在しませんし,イメージビジュアルの囚人も登場しません。日本人がこういうリメイクをやるとしたら,何らかの必殺技やキャラクターを入れるのが定番ですが,欧米とのセンスの差(現Atari本社の拠点はフランス。本作の開発会社は,カナダのAdamvision StudiosとリトアニアのSneakyBox)を感じられて,なかなか興味深いところです。
ただレベルデザインはあまり洗練されておらず,例えば「弾を撃ってくるブロック」は,その発射タイミングとボールの軌道によっては「何をやっても死ぬ」というシチュエーションを発生させます。パドルの接触位置でボールの反射角度を変えられる"ちゃんとした”設計ですので,ボールをコントロールしきれるならそういったシチュエーションも回避可能ではあるものの,そんな神プレイヤーにはそうそうなれません。
アーケードモードは割と瞬殺されるので,大多数のプレイヤーにとってはチャレンジモードの50ミッションを攻略することが実質的な"本編”となるでしょう。チャレンジモードのミッションは難度にムラがあり、楽勝で初見クリアできるものがある一方で,例えばUFO状のブロックがどんどん画面下に迫ってくる「エイリアンの侵略」は,ボールの反射角度を3回ミスったらゲームオーバーがほぼ確定という高難度ぶりです。
ソウルライクゲームは,苦難に何度も挑戦して解法を見出し,打開するというのが面白さのキモです。「Breakout: Recharged」の高難度ミッションも同様で,「瞬間瞬間にパーフェクトをキメ続ければ殺(と)れる! 冷たい谷の踊り子よりよっぽどラクショーだって! マジ! マジでさ! ンの死ぃッ!!」と頭頂から蒸気を噴き上げながら楽しめます。
そんなわけで「Breakout: Recharged」は,実質ソウルライクなゲームと言えるでしょう。「ブロック崩しをソウルライクと言い張るのは無理あるだろ……」と思うかもしれませんが,その場合は必要なステータスが不足していると思われますので,"狂人の智慧”などを使用して啓蒙を高めましょう。建物の外壁にへばりついているウニョウニョした何かも見えるようになりますよ。
ダイヤモンドのカッターでダダッダー!
ただ,頭頂から蒸気を噴いて,第三者からすれば「じゃあやめれば……?」みたいなピキピキ状態になりつつゲームをプレイすることが,健康に良いわけがありません。「Breakout: Recharged」も,ソウルライクゲームも,格ゲーも,弾幕シューティングゲームも,頭頂蒸気状態になりがちですが,そういったゲームは大抵"毒”です。
ですが毒は,ものによっては微量なら薬となるもの。「ELDEN RING」の生肉団子だって,食べると毒に侵されつつも体力が回復します。つまり,適度なブチギレゲーミングは健康に良い。
毒と言えば「ELDEN RING」のディレクターである宮崎英高氏が,海外メディアに対して「気付けば毒沼を作っている」という"毒沼愛”を語ったとか。毒沼は定番のブチギレポイントですが,それがあるからこそ宮崎氏のゲームは健康に良い的な何かがソレして,困難を打開したときにスゥーッと心地よいのでしょう。たぶん。
と言うか,むしろ毒にも薬にもならないようなものこそ,思考停止という悪影響を脳に及ぼすものです。ぬるま湯の脳味噌で環境に対して従順に生きるのも,ある意味では幸せな生き方かもしれませんが,"攻略”を是とするゲーマーならば満足できないはずです。世の中いろいろと……本当にいろいろとある昨今ですが,怒りと不服従の中指をおっ立てて,健康に励んでいきましょう(ただ“何でも反対”みたいなのは,むしろ最悪なほど不健康かつ思考停止の極みなので,お気をつけて)。
ちなみに「Breakout」にとっては"親”と言える,Atariの原点的なタイトル「Pong」は,今年の11月29日で50周年を迎えます。誕生から半世紀という大きな節目ですので,Atari的にも何かしらのアクションを用意しているはずです。座して待ちましょう。「アルカノイド」もモダナイズ版が年内発売の予定なんだよな〜と思ったりしつつ,次回は3月12日の掲載予定です。
- 関連タイトル:
Missile Command: Recharged
- 関連タイトル:
Centipede: Recharged
- 関連タイトル:
Black Widow: Recharged
- 関連タイトル:
Asteroids: Recharged
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Breakout: Recharged
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