プレイレポート
伝説のRPG「ライブアライブ」がリスペクトに溢れるリメイクでついに復活。二十数年の時を超えて,SFCの名作はいかなる進化を遂げたか
その良さが語り継がれてきた,伝説の名作
オリジナルの「ライブ・ア・ライブ」は,1994年にスーパーファミコンで発売されたRPGだ。「原始編」「功夫編」「幕末編」「西部編」「現代編」「近未来編」「SF編」「中世編」「最終編」の9編からなるオムニバス形式で,キャラクターデザインとして小林よしのり氏,藤原芳秀氏,青山剛昌氏,石渡 治氏,皆川亮二氏,島本和彦氏,田村由美氏といった小学館の看板作家たちが参加して話題を呼んだ。発売後は「チェッカーバトル」と呼ばれる独特のバトルや,随所に仕込まれた隠し要素などの細かい作り込み,そしてカンフーものや潜入もの,SFホラーなどさまざまな物語をターン制RPGとして表現する工夫が,ゲームファンから高く評価されたタイトルである。
しかし,当時の「ライブ・ア・ライブ」は“隠れた名作”扱いだった。オリジナル版でディレクションを担当した時田貴司氏は,4Gamerのメールインタビューに“シリーズ化できなかった反省”があると答えている。その理由は「『ファイナルファンタジーVI』と『クロノトリガー』の間,しかも『MOTHER2 ギーグの逆襲』の翌週発売という発売時期の関係から,スーパーファミコン後期の激戦に敗れた」(時田氏)からだという。
スーパーファミコン時代はRPGの黄金時代でもある。時田氏が挙げたのはいずれもジャンルの金字塔ともいえるタイトルで,ユーザーの限られた購買力を奪い合うライバルとしては,相手が悪かったとしか言い様がない。
時が経ち,「ライブ・ア・ライブ」のリメイクを望む声は根強かったものの,小学館の看板作家たちが参加していることもあり,ファンからは難しいのではないかと考えられていた。
想像力を刺激するドット絵スタイルはそのままに,原作へのリスペクトが込められたリメイク
そんな「ライブ・ア・ライブ」が,プロデューサー時田氏のもとでリメイクされ,「ライブアライブ」としてよみがえった。今回,発売を前に製品版と同等のものをプレイしてみたが,ドット絵やコマンド選択式RPGの良さが再評価されている今だからこそのリメイクであると感じられた。
ビジュアル面で印象的なのが,ドット絵の良さを残した「HD-2D」の手法だ。ドット絵と3Dグラフィックスによる光などの演出効果を融合させたHD-2Dは,当時のテイストを残しつつ,本作の世界を広げている。想像力を刺激するドット絵と,HD-2Dならではの演出によって,2022年にスーパーファミコンの新作を見ているような,不思議な気分にさせられるのだ。
例えば幕末編の冒頭,邪悪な領主の棲む尾手城が雷に照らし出されるシーンは,オリジナル版では画面の明滅で表現していたが,リメイクでは遠くに雷が落ちるのが見える。
また,西部編の序盤では,主人公が町に踏み込んだ際,カメラアングルを通常の見下ろしから人の目線に変えて,うだるような日差しの中で静まりかえる町の不気味さが描写される。つまり,オリジナル版に存在した演出を強化したものだけでなく,当時は不可能だった新たな演出が加えられているのだが,これがドット絵に組み合わさって,うまく融合しているのだ。
幕末編の冒頭。遠くに落雷が見える |
カメラアングルを変えて,そびえ立つ尾手城を描写 |
西部編のボス,O・ディオがガトリング砲を放つシーンも印象的だ。ガトリング砲は食らうと即死間違いなしのとんでもない技だが,リメイクでは轟々と炎を吐く迫力満点の演出が加えられている。まるで,スーパーファミコン版を遊んでいた時に脳内に展開していたシーンを再現しているかのようだ。キャラクターたちのドット絵も,服装のディテールや仕草がより細かく描写されるようになっている。HD-2Dの世界で彼らが活躍する様は,ドット絵の箱庭か舞台劇を見ているようにも感じられ,ドット絵の良さを再認識させられた。
夜明けの太陽を背に,ならず者クレイジーバンチが現れる |
唸りを上げるガトリング砲は迫力満点。そりゃ,こんなものを食らっては即死だろう |
その一方,戦闘を始めとしたさまざまな部分に対し,ゲームを分かりやすくするアレンジが加えられている。本作の戦闘はチェッカーバトルと呼ばれる,シミュレーションRPG風のシステムだ。マス目に区切られたフィールドでキャラクターたちを動かすと「行動ゲージ」が上昇し,これが最大になった者は,攻撃などのコマンドを入力できるようになる。
そして,攻撃できる範囲は銃なら直線上,剣は自分の周囲など技によってさまざまで,また,後方から攻撃するとダメージが上昇する。つまり,敵味方が入り乱れて行動する中,できるだけ有利な位置取りをしつつ戦わなければならない。ボスによっては即死級の技を使ってくるため,油断は禁物だ。オリジナル版では行動ゲージや敵のHPは隠されていたが,今回は画面に表示されるようになっている。
また,幕末編では時間とともに切り替わっていく合言葉や,西部編の残り時間といった要素も,リメイクでは分かりやすく表示される。加えて,シナリオのプレイ中に別のシナリオへ切り替えることも可能となった。2022年のゲームとして,しっかりと遊びやすくなっており,スーパーファミコンでプレイした人も新しい発見があるはずだ。
今回,リメイクを通して久しぶりに本作に触れたわけだが,変更点だけではなく,オリジナル版の良さも再確認できた。本作はそれぞれのエピソードに工夫が凝らされた,尖った作りになっているのだ。
功夫編は,老師が弟子を捜し,自らの技を伝授していく物語である。3人の弟子全員を大成させてやりたくなるが,1回の修行で弟子と稽古(模擬戦)ができる回数は4回しかない。1回ずつ均等に戦うとして,残りの1回を誰に割り振るか。野盗として不遇の日々を送って来た素早さ自慢のレイか。巨体ゆえに蔑まれてきたが体力なら一番のサモか。それとも,自分が弱いと知りつつならず者に立ち向かった根性が光るユンか。人となりと能力を天秤に掛けて,心は迷うことになる。
老師は,自らの技を伝えるべく弟子を求める |
弟子の1人,レイは素早さに天与の才を持つが,盗賊として日々を暮らしてきた |
サモはその巨体ゆえに蔑まれてきたが,老師に出会って拳法修行に励む |
ユンはならず者に脅されてスリをさせられていたが,勇気を振り絞ってその境遇を変える |
弟子は3人,模擬戦で稽古をつけられるのは4回。どう割り振るか迷ってしまう |
稽古するとレベルが上がり,そこで老師が使った技を覚えていく |
そして,稽古を経て弟子は成長していく。稽古で自分が使った技を弟子が覚え,次にはこちらに仕掛けてくるのだから,嬉しいものがある。功夫編の技は「特定属性の攻撃を受けると,返し技として自動発動する」ものが多い。技と技の応酬が行われる様は,まるで功夫の組み手のようだ。単に技名が拳法っぽくなっているだけでなく,ターン制RPGのシステムで功夫らしい戦いを表現する工夫がなされている。スペックが限られていた当時だからこそのアイデアと言えるだろう。
西部編は,ならず者に襲われる町を守る2人の男の物語である。寂れたサクセズタウンは,ならず者のクレイジーバンチに襲撃される直前。凄腕ガンマンであり主人公のサンダウン・キッドと,彼を追う賞金稼ぎマッドドッグは,ひょんなことから町を守ることとなる。
しかし,敵は荒くれ。まともに戦っては勝ち目がない。2人は,町に罠を仕掛けて敵の数を減らす作戦を採用し,罠の材料を求めて町中をかけずり回る,クレイジーバンチが攻めてくる夜明けまでに,どうにかすべての準備を整えなければならない。どれだけのアイテムを見つけられるかが勝負で,適切なアイテムを適切な町の人に割り振ることで敵の数を減らし,決戦が楽になる。
そして,時間が過ぎるごとに不気味な鐘の音が鳴り響く。シナリオ開始からすぐに物語へ引き込まれる,キャラクターと舞台設定の巧みさが光り,探索結果が決戦の難度に関わってくるというインタラクティブ性も面白い。リメイクでは前述の通り時間経過が表示されるのに加え,罠アイテムを誰に仕掛けてもらうかのヒントが出るというアレンジで,さらに遊びやすくなっている。
町の中にはさまざまなアイテムが転がっており,罠にすることができる |
罠アイテムは,町の人に頼んで仕掛けることができる。リメイクではヒントが表示される |
幕末編の主人公は,忍者おぼろ丸だ。単身敵の城に潜入し,囚われた重要人物を救出しなければならない。ここではステルスもののエッセンスが加えられており,おぼろ丸はボタン一押しで隠れることができる。立ちふさがる者をことごとく倒して百人斬りを目指すも良し。隠れに隠れて誰も殺さず進むも良し。さらに任務を放棄して抜け忍になるも良しと,自由度が高い。
合言葉の仕掛けも印象的だ。時間が過ぎるたびに鐘が鳴り,合言葉の正解が変わる。合言葉を間違えれば戦うしかないわけで,不殺を目指している場合は心臓に悪い。リメイクでは,鐘が鳴ったときに「どの合言葉が正解か」をおぼろ丸が呟いてくれるのだが,それでも回答時はドキドキしてしまう。城の中にはいろいろな隠し要素も仕込まれており,繰り返し遊ぶのが面白いシナリオだ。
幕末編の主人公・忍者おぼろ丸は,城に潜入する危険な密命に挑む |
「隠れ身の術」を使うと身を隠せる。不殺には欠かせない |
異色なのがSF編だ。地球外生命体・ベヒーモスを運ぶ宇宙船で怪事件が起こり,クルーが1人ずつ消えていく。ここでの主人公は,作られたばかりのロボット・キューブ。傍観者としてのキューブを通し,クルーたちのドラマを眺めるという構造がユニークだ。
クルーたちは運命共同体ではあるものの,その関係は良好とはいえない,危機の中でも互いに傷つけ合う彼らを見ていると,何ともやるせない気分になってくる。脱走したベヒーモスに接触すると,抵抗することも許されず即ゲームオーバーになってしまうのもシビアで,まさにSFホラーだ。
このシナリオで印象的なのが,リフレッシュ・ルームとそこに置かれたゲーム「キャプテンスクウェア」にまつわる演出である。キャプテンスクウェアは,チェッカーバトルを存分に楽しめるゲーム内ゲームとなっている。タイトル画面で,主人公のキャプテンスクウェアがグルグル回りながら飛び出して来る様は,スーパーファミコンゲームの定番演出だ。これはリメイクでもそのままで,当時の雰囲気が伝わってくる。
また,リフレッシュ・ルームでクルー同士が反目し合う中,キャプテンスクウェアの陽気なBGMが鳴り続け,争いの悲しさが強調されるという演出もオリジナルを踏襲しており,ここにも演出における工夫が光る。
脱走した宇宙生物ベヒーモス。接触したら即座にゲームオーバーになってしまう |
宇宙船のクルーたちの関係は良好とはいえない |
以上のように本作は,想像力を刺激するドット絵の良さが再認識され,コマンド選択式RPGの良さが再評価された2022年だからこそのリメイクである。演出や台詞も,かなり細かいところにまで手が入れられており,例えば,西部編でサンダウンとマッドドッグが敵の待ち伏せを見破るシーンも,リメイクでは敵が隠れている荷車や荷物が追加され,より自然になっているといった具合で,リスペクトと愛が感じられる。
豪華声優陣の熱演も見どころだ。特に幕末編・尾手院王役の若本規夫氏,そして西部編・サンダウン役の大塚明夫氏とマッドドッグ役の古川登志夫氏がハマっており,ファンならずとも必聴だ。オリジナル版を遊んだ人はもちろん,未プレイだが噂を聞いたことがあるという人にもぜひ遊んでもらいたい。
「ライブアライブ」公式サイト
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Gosho Aoyama, Yoshihide Fujiwara, Osamu Ishiwata, Yoshinori Kobayashi, Ryouji Minagawa, Kazuhiko Shimamoto, Yumi Tamura