2022年6月24日,再びフォドラの歴史が動き出す。コーエーテクモゲームズより発売されるNintendo Switch用ソフト「
ファイアーエムブレム無双 風花雪月」は,2019年に発売された「
ファイアーエムブレム 風花雪月」をベースに,ありえたかもしれない「Ifの物語」「Ifの戦史」を描くタクティカルアクションゲームだ。
先日掲載した
ファーストインプレッションでは,システム周りの情報を中心にまとめたが,今回は実際の戦いの流れなどを交えつつ,より詳細なプレイ感をお伝えしていこう。
なお,本稿ではある戦闘をピックアップして説明しているので,若干のネタバレが含まれている点はご容赦いただきたい。
関連記事
戦いは決戦に至る前から始まっている
本作は各章を順にクリアしていくタイプのアクションゲームだが,ステージ(クエスト)の順番は固定ではなく「進軍マップ」を使い,戦場を選んで進めていく。
各章は戦いの大局を決める決戦(メインクエスト)と,その周辺で起こる前哨戦(サブクエスト)によって構成されている。サブクエストをクリアして支配地域を広げ,メインクエストの地域に隣接することで,メインクエストに挑めるという仕組みだ。
やや簡易だが,国取りゲームのような雰囲気も味わえる
|
サブクエストはおおむね10分程度で終わる小規模な戦いとなる。もちろんサブ要素なので,すべてをクリアする必要はなく,章をクリアしたあと「前哨基地」から改めてプレイすることもできる。
ただ,サブクエストのクリア後には,メインクエストでの戦局を左右する要素「作戦」を実行するために必要なリソース「作戦資源」を獲得できるほか,周辺の「調査地点」を調べることで,選択できる作戦が増えることもある。サブクエストをしっかり攻略するほど,メインクエストで多彩な展開を楽しめるわけだ。
作戦資源はキャラクターを説得して自軍に加える場合にも必要になるので,獲得しておいて損はない。
メインクエストをクリアしたときに得られる「名声値」は,サブクエストを残したまま早期に攻略したほうが多く得られる。どちらを優先すべきか悩ましいところだ
|
事前にしっかりと作戦資源を集めておくと,メインクエストではさまざまな作戦を選べる。たとえば,レスター諸侯同盟編のエピソード「デアドラ防衛戦」では,自軍の戦力をアップする,敵の砦の耐久力を減らす,敵将バルタザールを説得するなど,さまざまな作戦が存在する。
集めた作戦資源が少ないと,同時に実行できる作戦は限られてくる
|
作戦を選んだら,次はマップを見ながらユニットを配置していく。ここで自軍ユニットと敵の相性を確認できるので,基本的には相性のいいユニットを選んで配置すればいい。
この戦いでは,帝国軍は槍を装備する兵種「ソシアルナイト」を主体にして攻めてくるので,槍に対して有利に戦える斧を装備する兵種「ブリガンド」などを出撃させるのが有効だ。
ヒルダを配置したところ。有利に戦える相手を意味する青いアイコンが多数表示されている
|
ちなみに剣・斧・槍は三すくみの関係(じゃんけんのグー・チョキ・パーのようなもの)であるため,槍に対して不利な剣を使う兵種はこのマップでは活躍しにくいということになる。だがユニットとともに戦う「騎士団」を配備することで,この相性を改善することが可能だ。
主人公シェズを配置。はじめはマップが不利な相手を示す赤いアイコンで埋め尽くされていたが,斧を持つ「同盟戦士隊」の騎士団を配備することでアイコンが消えた
|
|
同様に,弓・拳・魔法も三すくみの関係になっている。敵の「拳闘士」が配置されているマップの南西では,弓を装備する兵種「アーチャー」などが有利に戦える。
同盟軍なら弓兵種を得意兵種とするクロードやイグナーツが適任ということになる
|
このように,実際に戦闘が始まる前に相性のいいユニットを配置し,またマップのどのあたりで戦わせるかを,おおまかに考えておくと戦いを有利に進めやすい。敵とのレベル差やパラメータの差はあまり気にしなくてもいいので,とにかく相性を意識したい。
さて,引き続き「デアドラ防衛戦」の流れを追っていこう。戦闘はまずマップ北東の港で始まる。街の港には「烈女」の二つ名を持つダフネル侯ジュディットが陣取っているが,絶え間なく投入される帝国軍のソシアルナイトの攻撃を受けて苦戦中だ。
……とのことだが,急いで救援しなければならない
|
遠征軍は,かつての学友であるフェルディナントとベルナデッタが率いている
|
まずは港から敵を一掃するために全軍を二手に分けて,それぞれが有利に戦える相手を倒していく。
主人公も「同盟戦士隊」を配備したことで互角以上に戦える
|
|
ほどなく港の奪還には成功したものの,すぐに帝国軍の伏兵がデアドラ市街地(マップ北西部分)を攻撃し始める。港への攻撃はおそらく陽動であり,同盟軍は西と南から挟撃を受ける形になってしまった。
筆者はここで一瞬迷ったが,ジュディットがまだ港を支え続けられるだろうと判断し,戦力の大半を市街地に向かわせることにする。市街地での戦闘を速やかに終わらせ,返す刀で南側の敵を叩くという構想だったが……。
「一斉攻撃」など,全軍に一斉に指示を出すこともできる。圧倒的な戦力差で攻めれば,プレイヤーが直接操作しなくても敵を速やかに倒せる
|
しかし,市街地にはさらなる帝国軍の援軍が投入され,市街地の守りの要となる関所へと殺到してくる。
一方,港側でもジュディットが南からの攻撃に徐々に押され始めたので,市街地に向かわせたユニットと,港に残したユニットを交互に切り替えて操作し,帝国軍の猛攻をしのいでいく。
街から金品を奪った盗賊を追撃するサイドミッションまで発生。これでは戦力がいくらあっても足りない
|
主人公シェズは特殊能力「無間の瞬動」を使って味方が占領した砦に瞬間移動できる。そのため急な状況の変化にも対応しやすい
|
その後も一進一退の攻防が続いたが,帝国軍は市街地に切り札となるドラゴンナイトを投入。自軍でドラゴンナイトに対して有利に戦えるのは主人公だが,あいにく市街地からは離れた位置で戦っていた。無間の瞬動を使って駆けつけるべきか……。
などと対応を考えていると,そこに同盟五大諸侯の一角・ゴネリル家の嫡子,ホルストが登場。東方の異民族パルミラに睨みを効かせていたはずの彼が,デアドラの窮状を知って馳せ参じたのだ!
ホルストはプレイヤーが操作可能。操作キャラクターをホルストに変えれば,市街地の戦局を一気に変えることができる
|
|
これで市街地はなんとか守りきれると思いきや,帝国軍はさらなる奥の手を隠していた。魔道砲台による砲撃がはじまり,市街地に火の手が上がる。こうして領都デアドラをめぐる攻防戦はさらに激しさを増していった……。
こんな具合に,本作のメインクエストでは劇的な戦局の変化が次々に起こり,息つく暇もない激戦を楽しめる。
ちなみに戦闘が始まる前の作戦選択で「舟橋」を選んでいれば,市街地から砲撃地点付近までのショートカットが可能になり,一気に魔道砲台に攻めこむこともできる。選んだ作戦によって展開が大きく変わるので,いろいろな作戦を試してみたいところだ。
そしてアドラステア帝国側のルートをプレイする場合など,攻守の立場を変えてこのデアドラを訪れることもあるだろう。その場合はどんな作戦,布陣で攻めることになるのかを考えるのも楽しい。
戦史もの・軍記ものとしての魅力もアップ
以上のように,本作は「無双」シリーズのタイトルながら,「ファイアーエムブレム」らしい戦略や戦術を楽しむゲームとしてもしっかりと作り込まれている。
全体的なストーリーに関しても,戦史もの・軍記ものとしての面白さにより重きが置かれており,たとえばレスター諸侯同盟編なら,アドラステア帝国の侵攻に対応する有力諸侯たちの離合集散が細かく描かれる。諸侯がそれぞれの利益を追求して同盟,もしくは帝国を利用するという描写は原作にもあったが,「ファイアーエムブレム無双 風花雪月」ではまた違った展開が用意されているのでぜひ期待してほしい。
クロードの立場や行動はチェーザレ・ボルジアや孫権といった歴史上の人物を思い出させる
|
同盟と帝国の戦いにおいて重要な役割を果たすグロスタール伯。髪型からわかるとおり,金鹿学級のローレンツの父親だ
|
またアドラステア帝国は中央教会と対立し,ファーガス神聖王国は中央教会とセイロス騎士団を保護するという具合に,各勢力の基本的な立ち位置は変わらないものの,原作のどのルートとも異なる流れで歴史が動いていく。そのため,どの勢力でプレイしても先の展開がとても気になる。
青獅子の学級・シルヴァンの父であるゴーティエ辺境伯にも印象的な場面が用意されている
|
大きな歴史の流れは変わろうとも,帝国の将ラディスラヴァやランドルフ,雷霆(らいてい)のカトリーヌのように,原作を彷彿とさせる行動をする人々も多い。その運命は……
|
|
敬愛するジェラルト団長とともに活き活きと戦うアロイス。口の滑らかさもいささか増したようだ
|
|
そうした大きな歴史の流れが丁寧に描かれるようになった一方で,おなじみの黒鷲,青獅子,金鹿の生徒たちの関係も支援会話や,外伝などで掘り下げられていく。こちらも詳しくは実際にプレイしてのお楽しみだが,支援値を上げて支援会話を発生させたり,キャラクターを説得して仲間にすることで外伝シナリオを発生させるなど,「ファイアーエムブレム 風花雪月」らしいキャラクター同士のからみは本作でもしっかりと楽しめるだろう。
極度な面倒くさがりのリンハルトと,甘え上手なヒルダの支援会話。果たしてどちらが一枚上手(?)なのか
|
外伝より,ローレンツの謝罪を制止するラファエル。彼の眼差しはすでに未来に向かっている
|
キャラクターの育成やクラスチェンジに関しては,原作よりもかなり自由な印象を受けた。レベルやパラメータよりも兵種や武器の威力のほうが戦闘結果に強く影響するため,魔法が得意なキャラクターをソシアルナイト等にクラスチェンジさせても問題なく活躍させられる。
各キャラクターにはおすすめの兵種が決まっているが,操作が合わない場合など,使いやすい兵種にクラスチェンジさせるのもアリ
|
各キャラクターが持つ個人スキルによって「吹き飛ばした相手を引き戻してさらに攻撃する」「発生した絵の具の色によって異なる属性ダメージを与える」など,同じ兵種でも若干違ったアクションになるのも面白い。
一度吹き飛ばした敵を手元に戻してさらに攻撃するリシテア
|
|
イグナーツは敵を吹き飛ばすと絵の具で追加攻撃できる。絵の具の色はランダムで,色によって属性ダメージが変化する
|
本作が主に「ファイアーエムブレム 風花雪月」のファンに向けて作られたゲームであることは確かだ。
一方で,原作ではあまり活躍の機会がなかった人物や,設定上存在だけが語られていた人物たちがより活き活きと描かれるようになったことで,「ファイアーエムブレム」シリーズやコーエーテクモの歴史シミュレーションなどが備えている,軍記もの・戦史ものとしての魅力も兼ね備えた作品に仕上がっている。
「ファイアーエムブレム 風花雪月」をプレイしたことがなくても,歴史ドラマなどを楽しめる人であれば,本作から入ってみるのもアリかもしれない。その後は,ぜひ「ファイアーエムブレム 風花雪月」も遊んでみてほしい。