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[GDC 2023]生成系AIの進化は止まらない!? 「Roblox」でもプラットフォーム内ゲーム開発のサポートにジェネレーティブAIが活躍
社名と同じ「Roblox」(PC / Xbox One / iOS / Android)というサービスについてはご存じの人も多いだろうが,プロやアマチュアがゲーム内のツールを使って,自分好みのゲームを作り出せるという,UGC(ユーザー生成コンテンツ)型のオンラインゲームプラットフォームだ。サービス開始は2006年と古いものの,COVID-19の巣ごもり需要によって一時は爆発的な人気を博し,2020年後半には1億2000万もの月間アクティブユーザー(MAU)を獲得。アメリカでは9歳から12歳までの子供の3分の2,16歳以下の子供の3分の1がプレイしているという大人気プラットフォームに成長した。
現在ではグローバルに支持層を広げており,コラッツァ氏は最新データとして月間アクティブユーザー(MAU)は6700万人であることと,非ゲーム系コンテンツを含めて6万作相当の“エクスペリエンス”が日々公開されているという。そのことでプラットフォームのアップデートも頻度を増し,最近ではゲーム会社がパートナーとして本格的な作品を提供するほどになっている。収益が見込めるコンテンツ制作者(会社)は270万人(社)に達し,この2年で10億ドルにも及ぶレベニューシェアがあったという。
この講演に合わせるかのように,Robloxがアメリカ時間の3月20日にアナウンスしたのが,開発ツールのスイート(ソフトウェア群)「Roblox Studio」への生成系AIの統合だ。今回発表されたものは2種類のオープンβ版で,1つは「AI Code Assist」という会話式言語の入力システムであり,コンテンツクリエイターが「3x3のグリッドの赤いオーブを作成して」(-- create a 3 by 3 grid orbs) と書き込んだり,「オーブに近付くと赤くなって0.3秒後に爆発する」(-- make orb turn red and destroy after 0,3 seconds)などと書き込んだりすることにより,そのコードを書き加えてくれるというものだ。英文のみに対応しているAI Code Assistだが,コードを学習するというよりも,個人制作者の多い「Roblox」において,彼らのプログラミングの補助的な役目を担うことが目的であるとコラッツァ氏は語っていた。
もう1つは「AI Material Generator」というテクスチャージェネレーターであり,単にイメージを生成するのではなく,「ピンク色の溶岩」(Pink Lava)のイメージに加え,ノーマルマッピング,ラフネス,そしてメタルネスの4つのPBR(物理ベースレンダリング)によるマテリアルを作り出してくれるという。
気になるのは,Roblox Studioでは「どこまでAIによるゲーム開発を受け入れるのか」ということであるが,コラッツァ氏は「具体的なロードマップは提示しない」としながらも,すでに3Dモデルを作り出すジオメトリ生成系AIの開発に着手していることを話し,さらにその先には「全てのゲーム開発」も担えるAIアウトプットの誕生も匂わせていた。これには,現状の2Dマテリアルに加えて,アバターや3Dアセット,テレイン(地形),オーディオ,さらに特定ジャンルのコーディングまでを担う「Large Language Model」の開発を行った上で,それらを統合する「Unified Large Language Model」に進化させていく必要があると述べていた。
そして,セッションの最後では「ChatGPTは,実際にアプリを自動でプログラムできるところまで進化していく兆候はすでにある」と話しており,Robloxでは肯定的に生成系AIを用いていくことを誇示していたようだった。
セッションの聴衆から,Q&Aで「いつになると完全なゲームが自動生成されますか?」という質問を受けたコラッツァ氏だが,「1年後と言って,実現しなかったら来年のGDCで馬鹿にされるかもしれない」と皆が笑ったところで,「2年後にしておくよ」と言い放ち,おそらくそのスピード感を予想だにしていなかった会場がシーンとなったのが印象的だった。プログラマーがほとんどであろう参加者たちも,「自分の仕事がなくなっていく」ことに危機感を覚えたのかもしれない。
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(C)2022 Roblox Corporation.
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