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“ちょっと極まりすぎている”仲間とともに,予定調和を脱したタイトルを作りたい。「野狗子: Slitterhead」トークライブレポート
「野狗子: Slitterhead」クリエイターの外山圭一郎氏と作曲家の山岡 晃氏にインタビュー。謎多き“ホラー×エンタメ”作品に込めた思いとは
Bokeh Game Studioが開発中の「野狗子: Slitterhead」とは,果たしてどんなゲームなのか。同作クリエイターの外山圭一郎氏と,音楽を担当する作曲家の山岡 晃氏に話を聞いた。インパクトのあるタイトル名とトレイラーで話題となった同スタジオのデビュー作は,どういった経緯で誕生し,どんな思いで制作されているのかをお伝えしよう。
[プレイレポ]「野狗子: Slitterhead」メディア向け試遊会インプレッション。人間に憑依し,身体を使い捨てながら謎の脅威と戦え
2024年6月22日,Bokeh Game Studioが11月8日に発売を予定している「野狗子: Slitterhead」のメディア向け試遊会が行われた。この試遊会は国内初のプレイアブル出展となり,ゲームの序盤と中盤を体験できた。
プロの中でも“ちょっと極まりすぎている”仲間とともに,予定調和を脱した作品を作る
「SILENT HILL」「SIREN」「GRAVITY DAZE」といった作品を手がけた外山圭一郎氏率いるBokeh Game Studio。そのデビュー作が2024年11月8日に発売される「野狗子: Slitterhead」だ。
トークライブでは,外山圭一郎氏(CEO / クリエイター),山岡 晃氏(作曲家 / 音響監督 / ゲームデザイナー),吉川達哉氏(キャラクターデザイン)が,本作にかける思いを語った。
本作は混沌の街「九龍」を舞台に,意識体「憑鬼」となり,謎の敵・野狗子(やくし)に立ち向かうアクションアドベンチャーだ。
憑鬼には記憶も肉体もないが,生物に憑依することができ,一般人や協力者である人間「稀少体」に憑依しながら野狗子と戦う。一般人の身体を使い捨てにしながら戦うとなると最初こそ抵抗があるが,プレイするうちにそうした感情が麻痺してくるという,尖りに尖った内容だ。
なんとも型破りなゲーム内容なだけに,6月8日に開催されたSummer Game Fest 2024での注目度も高く,ぜひプレイしてみたいという飛び込みでの依頼が多くあったと外山氏は語る。
ゲーム開発費の高騰から作品がどうしても保守的になりがちな中,本作は「得体の知れなさの中に昔のゲームのような雰囲気があって気になった」という声が多かったそうだ。
外山氏が山岡氏,吉川氏の両名と仕事をするのはずいぶん久々で,山岡氏とは1999年の「SILENT HILL」から25年ぶり,吉川氏とは2017年の「GRAVITY DAZE 2」から7年ぶりだそう。
外山氏は,山岡氏と「SILENT HILL」のあともずっと仕事をしたいと願っていたそうで,今回のオファーは満を持してのことだったという。
山岡氏は,外山氏と一緒に仕事をすることで,「自分の中にある新しいものを引っ張り出してもらえるのではないか,という期待があった」と語った。
山岡氏にとって外山氏は,ゲーム音楽を作っていくうえで悩んでいたときに,自分のものを引き出してくれた恩人だそう。今回の「野狗子: Slitterhead」でも新しいものを引き出してくれるのではないかという思いがあったのだという。
「野狗子: Slitterhead」での音作りについて山岡氏は,過去に手掛けた「SILENT HILL」よりも先にあるものを実現できたのではないかと語る。
「SILENT HILL」で外山氏と組んだ際には「音楽やサウンドデザインだけではない,ゲームに寄り添うこと」を心がけていたそうだが,「野狗子: Slitterhead」でも,バトルであれば戦いが楽しくなるように,カットシーンであれば没入できるように……とゲーム内容とマッチした音作りを進めていったという。
「野狗子: Slitterhead」はその独自性が人を惹きつけているため,音楽も予定調和的なものにするのではなく,そこからどれだけ離れたものにするかというやりがいがあったそうで,こうした作品の音作りに携われたのは有益な時間だったと山岡氏は語った。
続いて吉川氏にオファーした理由について語られた。外山氏によるとそれは「野狗子: Slitterhead」独特の難しさが関係しているという。
本作では,九龍に住む当たり前の人間である一般人と,憑鬼に取り憑かれても自分の意志を保つ稀少体という正反対のキャラクターをデザインしなければならない。外山氏は「この難題に答えられるのは吉川氏しかいない」と考えて依頼したそうだ。
吉川氏は「野狗子: Slitterhead」の概要を聞いた際,「自分が最も役に立てるのはクリーチャーデザインではないか」と考えたが,外山氏からの依頼にはキャラクターデザインも含まれていた。
特に稀少体のデザインは,誰がどう見ても特別なヒーローであることが分かるが,九龍の雑踏でも目立ちすぎないようにする,という相反した要素を同時に満たさなければならなく,難しい仕事だったそう。これまでの経験値を生かした仕事であり,本当にやりがいがあったと吉川氏は振り返った。
吉川氏にとってプレッシャーはあったものの,外山氏のスタイルと相性が良かったこともあり,仕事はのびのびとできたという。
吉川氏によれば外山氏のスタイルは,「締めるところは締めて,伸ばすところは伸ばす」というものだ。
デザインについてガチガチに縛るのではなく,キャラクターを良くしていく部分は吉川氏に任せ,それでいてスケジュールに基づいた取捨選択はしっかりしていくれたそう。吉川氏もできあがったデザインを見せる際にうれしさや楽しさを感じつつ,仕事を進められたと語った。
そんなふたりに対し,外山氏は「吉川さんにはOKというものがない。本当の正解は吉川さん自身もタッチできない上のほうにあり,本当のプロのこだわりを実感した」「山岡さんは天才過ぎて,こちらがどうこういう余地がない。山岡さんはずっとゲームを見ていて,一番いいものを作ってくれている」と満足げに語り,プロの中でも“ちょっと極まりすぎている”人たちだと賞賛を送った。
しかし,仲良しチームとしてものを作っているわけではない,と外山氏。お金やビジネスだけの間柄でなく,それでいてなあなあな関係でもない。自分たちがクリエイティブに面白がってものを作っていけば,プレイヤーも絶対に「野狗子: Slitterhead」を面白がってくれる。ゲーム制作の根本にあるのはこういった考えなのではないかと語った。
最後に外山氏は「これまでの自分を振り返ると,ずっとその時にないもの,唯一無二の何かにこだわってきた。こうしたスタンスでゲームを作り続けていくことが目標だし,将来的には次の世代に託したい」と今後の展望について語り,トークライブを締めくくった。
尖ったゲームシステムと,血しぶき舞い散る爽快なアクションを体験できたものの,野狗子の正体や憑鬼の過去などまだまだ謎の多い「野狗子: Slitterhead」。2024年11月8日に迫った発売日への期待が大いに高まったトークライブだった。
「Bokeh Game Studio」公式サイト
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(C)2021 Bokeh Game Studio Inc.
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