インタビュー
[インタビュー]「ソニックフロンティア」,総合プロデューサーの飯塚 隆氏に聞く。シリーズが“第3の進化”を遂げた背景,そして今後の展望
4Gamerでは,東京ゲームショウ2022でも飯塚氏のインタビューを行っているが,今回は現在の手応えや,長時間を試遊に基づいた質問,そしてソニックシリーズの今後の展望などについて聞いてきた(試遊レポートは後日掲載予定)。
なお,本日はストーリーの執筆を担当したイアン・フリン氏への合同インタビューも掲載しているので,ぜひこちらも目を通してほしい。
[TGS2022]「ソニックフロンティア」制作者インタビュー。クラシック,モダンに続く第三世代ソニックに込められた思いとは
ソニックチームが世に問う,まったく新しい形のソニック「ソニックフロンティア」。国内では初のプレイアブル出展が行われたTGS 2022の会場で,シリーズの総合プロデューサー飯塚 隆氏と,「ソニックフロンティア」ディレクターの岸本守央氏にその制作意図などを聞いた。
[インタビュー]「ソニックフロンティア」ストーリー担当は筋金入りのソニックマニア。“夢の仕事”だったシナリオ制作やその手法を聞いた
セガが2022年11月8日の発売を予定している「ソニックフロンティア」。同作のストーリー執筆を担当したイアン・フリン氏への合同インタビューが,ハワイでのメディア体験会にて行われた。古くからのソニックマニアで,今回の参加を「夢の仕事」と語るフリン氏にシナリオ制作のポイントやその手法を聞いた。
「ソニックフロンティア」公式サイト
選択肢のある「オープンゾーン」だからこそできたソニックの多彩なアクション
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。飯塚さんはgamescom,東京ゲームショウ,Brasil Game Show 2022,そして今回のハワイと,国内外のイベントを訪れてきたそうですが,「ソニックフロンティア」の反応はいかがですか。
飯塚 隆氏(以下,飯塚氏):
おかげさまで,どのイベントでも遊んでいただいた方にとても好評でした。gamescomはそれほど大きなブースではなかったんですが,業者日で試遊に1時間半待ち,一般公開日は最長で3時間待ちとなり,セガの出展タイトルの中でもダントツの注目度でした。
メディアの取材でも「出展タイトルの中で,3本の指に入る注目タイトルだ」と言っていただきました。東京ゲームショウにも連日,試遊台に長蛇の列ができていて,日本ゲーム大賞のフューチャー部門をいただいています。
ブラジルはゲームの出展ではなく,「Sonic Symphony」というコンサートを開催し,「ソニックフロンティア」の楽曲を演奏して映像も流しました。
ブラジルにソニックファンが多いことは聞いていましたが,実際に行ってみると本当に熱がすごい(笑)。私のサイン会もやらせていただいて,人が並びすぎたため,途中で終わることになってしまったのが残念でしたが,ソニックの人気を体感することができました。
4Gamer:
国によってファン層は違いますか。
飯塚氏:
いえ,国ごとに違うことはなく,小さいお子さんから,私より年上じゃないかと思える方まで幅広い印象です。日本でしか売ってないようなTシャツを着ていたり,別の国のイベントで配ったノベルティのバッグを持っていたりと,すごく熱心な方も多いですよ。
4Gamer:
最新作の「ソニックフロンティア」は,まったく新しいゲームデザインを構築されていることに感動したのですが,開発を振り返っていかがでしたか。
飯塚氏:
本当に大変でした。試遊してもらった方にはお分かりいただけると思うのですが,こんなゲームはなかったですよね(笑)。世の中に存在していなかったゲームというのは,我々の自負するところで,開発に携わったクリエイターが,常に試行錯誤を繰り返したチャレンジの結果です。
開発の初期段階からテストプレイを何度も実施して意見を聞いたり,プレイの様子を貼り付いて見たりして,そのフィードバックを逐一反映してきました。それを繰り返して,「ソニックフロンティア」のゲームデザインが完成したんです。
4Gamer:
TGS 2022のインタビューでは,ソニックシリーズの「第3の進化」を目指したとおっしゃっていますが,それを実現したということですね。
飯塚氏:
第2の進化形であった「ソニックアドベンチャー」(1998年)を作ったときは,私の頭の中に完成形があって,それをどう形にするかで苦労しました。「ソニックフロンティア」は誰の頭の中にも完成形がなく,テストを重ねて暗闇から何かを拾い出すように,模索を繰り返して目指すべき方向を見つけていく作り方になったんです。
そのため,生みの苦しみはとてつもなく大きいものでした。本当に苦しんだ岸本(岸本守央氏。「ソニックフロンティア」ディレクター)には,改めて感謝するとともに,プレイヤーの方にも評価していただきたいところです。
4Gamer:
ゲームを実際にプレイしましたが,スキルなどによってソニックのアクションが増えています。ソニックシリーズは比較的シンプルな操作のタイトルが多い印象なので,今回の仕様はかなり思い切ったものですね。
飯塚氏:
簡単操作で遊べることは,ソニックシリーズの売りの一つではありますが,「ソニックアドベンチャー」以降もいろいろな能力を持たせて,攻略性のあるアクションにチャレンジしてきました。
それが今一つ成立しなかったのは,多くのタイトルが「ハイスピードアクション」というプラットフォームでソニックが動いていたため,何をやっても速く走ることの邪魔になってしまうことになったからです。攻略性のある敵などを出しても,プレイヤーにとってストレスの対象となり,どんなに面白いアクションを考えても,うまくできなかったんです。
4Gamer:
「ハイスピードアクション」と両立させることが,大きな壁になっていたんですね。
飯塚氏:
「ソニックフロンティア」では,プレイヤーが自由にアプローチすることで,遊び方を選択できるゲームデザインにしました。島の中で敵である「守護神」が現れたときに,戦っても戦わなくてもいい。ただ,守護神との戦いが面白くなければ,それを回避する方向を選ぶようになります。プレイヤーに遊びの選択肢を設けるなら,戦いを面白くすることが絶対条件です。そのためにスキルツリーでいろいろなアクションを追加したり,ボスの攻略方法がそれぞれ違ったりするといったゲームデザインが生まれました。
全てのスキルを覚えなくてもゲームは進められますし,守護神は倒さなくてもいいけど,バトルは面白いですし,勝てば見返りが手に入る。そこはプレイヤーが自由に選んで,進めてもらうという形です。
4Gamer:
スキルの中でも「サイループ」(ソニックの走った軌跡で囲むアクション)は,他とは性質が異なります。攻略のカギになったりもしますが,どのようにアイデアが生まれたのでしょうか。
飯塚氏:
これは単純明快な話です。従来のようにソニックがまっすぐ進んでいくのではなく,360度自由に移動できるフリーローミングスタイルだからこそのアクションを考えた結果,生まれたのがサイループでした。
敵を攻撃するだけでなく,島のさまざまな物を囲んでみることで新たな発見があるというコンセプトです。
4Gamer:
怪しいところがあったら,とりあえずサイループで囲んでみようということですね。
飯塚氏:
光っている場所,目立つ場所に限らず,枯れ葉が積もっているようなところでも何か発見があるかもしれません。
4Gamer:
サイループはバトルでも役に立ちますね。
飯塚氏:
通常の攻撃が効かないような敵をサイループで囲むと,攻略法が見つかることがあります。フリーローミングならではの要素なので,いろいろと試してほしいですね。
4Gamer:
サイループで∞マークを描くと,ソニックのブーストが無限になるという,ちょっとした裏技もあります。こうしたものは,他にもあるのでしょうか。
飯塚氏:
いえ,最初はいろいろなネタを作ったりもしたのですが,あまりやり過ぎると面倒くさくなっちゃうんですよ。そうならない程度の軽いものだけです。
「ソニックとプレイヤーのシンクロ」を追求し,右も左も分からない感覚を共有する
4Gamer:
ソニックの仲間は登場しますが,ストーリー上の存在であり,基本的に操作するのはソニックだけ。アバターが存在した前作「ソニックフォース」とは対照的ですね。
飯塚氏:
もちろん,テイルスやナックルズをはじめとするキャラクターで遊びたいという方も多く,その方向を追求する責任はあると思っています。ですが,本作では「プレイヤーとソニックとの一体感」を追求することにしました。
ソニックは突然飛ばされてきて,右も左も分からない。未知の島にたった1人,目の前に現れる敵が何者なのか,謎の少女がなぜ自分の邪魔をしてくるのか,何も分からない。プレイヤーもソニックとまったく同じ気持ちになり,彼と同じ発見をしていく。そんなシンクロする感覚が欲しかったんです。
そこに仲間が現れると,展開によっては謎が謎ではなくなる描き方をせざるを得なくなり,趣旨が変わってしまう可能性があります。そのため,今回はプレイアブルキャラクターをソニックにフォーカスして,仲間を助けていくストーリーを設定しました。
4Gamer:
確かに,冒頭から何もかも分からない展開でした。ソニックどころかエッグマンまでも,とんでもないことに……。
飯塚氏:
まさに,それがソニックと同じ気持ちです。「カオスエメラルドを集めろ」という天の声に従ってみるけど,なぜ集めなければいけないのかは分からない。ゲームを進めていくことで,それが少しずつ紐解かれ,何が正しくて何が悪いのかが分かってくる。これが,「ソニックフロンティア」のストーリーの面白いところだと思います。
4Gamer:
メインフィールドは自由に動ける「オープンゾーン」,これに対して,ソニックらしいリニアなプラットフォームアクションが展開する「電脳空間」が存在します。シリーズ作品のステージをモチーフとしていますが,どのような意図があるのでしょうか。
飯塚氏:
オープンゾーンの島で自由に行動するという新しい体験を味わえる一方で,従来のリニアなアクションも遊べることは,当初のコンセプトから想定していたことです。マップ上に無数に存在する「ポータル」から電脳空間に移動して,それらのステージを連続して遊ぶだけでも,1本のゲームとして満足できるようにしようと考えていました。
ただ,過去のシリーズ作品をモチーフとすることは,最初の企画からではありません。ストーリーを考えていく過程で,電脳空間が「ソニックの記憶がデジタル化された世界」という設定が生まれ,それならば皆さんの記憶に残っている印象的なステージのレベルデザインをモチーフにしようと。ちょっとしたイースターエッグ的な設定なんですね。
4Gamer:
「グリーンヒル」や「ケミカルプラント」「スカイサンクチュアリ」など,メガドライブ時代のステージもあって驚きました(笑)。
飯塚氏:
ステージ自体は最新のソニックシリーズに則った設計なので,誰が遊んでも楽しいものになっていますが,見た目やギミックはオリジナルを知っている人であれば,さらに楽しめる仕掛けを意識して構築しています。
ソニックとプレイヤーの気持ちをサウンドによって高める映画的な演出
4Gamer:
オープンゾーンは静かだけど,決して穏やかではない独特の雰囲気,その中でもバトルではBGMが変わる演出があります。一方で,電脳空間はスピード感にマッチしたノリノリの楽曲。サウンドも非常に印象的でしたが,サウンドディレクターの大谷智哉さんにはどのようなオーダーを出したのでしょうか。
飯塚氏:
サウンドは基本的に大谷に任せていますので,その内容やクオリティは彼のセンスによるものです。「ソニックフロンティア」というゲームの雰囲気を楽曲でも大事にしてほしい,ということは伝えました。
先ほども話しましたが,プレイヤーとソニックは何も分からない状態から始まり,得体の知れない不安があったり,懐疑的になったりと,シンクロした心情が湧いてくる。それをBGMで盛り上げるという映画的な演出ですね。BGMとして楽曲が背景で鳴っているだけではなく,シーンに合わせて音楽でも主人公の心情を盛り上げてほしい,というのが一番のオーダーでした。
オープンゾーンのサウンドはあまりソニックらしくはないんですが,ボスとのバトルでは「さあ行くぞ!」みたいな盛り上げを見せる。さらに電脳空間のスピーディなステージでは,従来のソニックらしい勢いのある楽曲を聞かせる。これが大谷のサウンドデザインならではの演出ですよ。
4Gamer:
ボーカル入りの曲も効果的に使われていました。
飯塚氏:
メインテーマでボーカル入りの曲を使うことは一般的ですが,今回はあえて常套手段を一旦忘れて,とにかくゲームに沿った曲作りをしています。シチュエーションに合わせて曲を増やしていたら,いつの間にかものすごい曲数になってしまい,大谷自身も驚いていました(笑)。
4Gamer:
サントラがCD6枚組になるくらいですからね(笑)。
得体の知れない恐怖を強調し,形状や攻撃手段などから敵を探ることを面白さに
4Gamer:
守護神や巨神などは,シリーズ作品の敵には見られない無機質で奇妙なルックスをしています。デザインの意図を教えてください。
飯塚氏:
これまでのソニックの敵とは違うことを強めた結果,今回のデザインになりました。エッグマンが作ったものではない,一見して何者か分からない。ミステリアスでありながら,統一感も持たせた姿です。
ボスに関しては,できる限り攻略に関連するアイデアを盛り込んでいて,そこに付随するデザインになっています。敵とのバトルは単に硬いとか柔らかいだけでなく,その形状や動きなどを見て,最適な攻略方法を発見していく楽しさを強調しているので,「ここが弱点だ」という表現はあまり出していないんですよ。
4Gamer:
確かに,明確に分かる弱点はなかったですね。事前のヒントなどもありませんでしたし。
飯塚氏:
今の時代,攻略方法が分からないからと言って,ゲームを止めてしまうことはほとんどないですよね。検索すればヒントは見つかることから,ゲーム内では何も教えず,自分で倒し方を見つける楽しさを採用しました。
4Gamer:
一方で,ソニックのスキルによるアクションは徹底的に解説しています。いつでも反復練習できる仮想空間まで用意されているくらいです。
飯塚氏:
敵の攻略法は調べれば見つけられますが,アクションは理解できないとずっと分からないままです。攻略に必須なアクションがあっても,それに気づかなかったり,忘れてしまっていたりすると,それを使わずにゲームを進めていくことになるので。
プレイスタイルに選択肢があるとはいえ,固有のアクションを使って進むところもあるので,そこであきらめてしまう人がいるかもしれない。プレイヤーがそんな状況に陥ることを阻止するために,アクションをしっかり教えていく必要がある,というのがテストプレイを通じて学んだことですね。
第3の進化を遂げたソニックシリーズ。新旧のスタイルを継承し,新たなタイトルに挑む
4Gamer:
第3の進化を遂げた「ソニックフロンティア」がいよいよリリースされますが,最後にこれからの展望をお聞かせください。
飯塚氏:
ソニックシリーズが第3の進化を遂げたことは間違いありませんが,第1世代と第2世代が完全に置き換わるわけではありません。3Dアクションのソニックが好きな人も,横スクロールのソニックが好きな人もいます。「ソニックアドベンチャー」をリリースした後も,2Dソニックは出ていましたからね。
それは今回も同様です。ソニックが第3世代まで進化したというのは,「3つめのゲームスタイルが生まれた」という意味です。
4Gamer:
さまざまな世代にファンを抱えるソニックシリーズですから,新旧のファンの期待に応える展開を期待したいです。
飯塚氏:
30年もシリーズを続けていると,どのソニックが好きだったのかは,お客さんの世代によって変わってきます。特定のスタイルが好きな方もたくさんいて,シリーズが進化を遂げたことで「遊ぶゲームがなくなる」と嘆く声も聞かれますが,近年も「ソニックマニア」や「ソニックオリジンズ」といった2Dソニックをリリースしています。
これからもシリーズを支えてくれたファンの要望にできる限り応えつつ,第3世代まで進化したソニックのロードマップを考え,新しいタイトルに挑んでいきます。
4Gamer:
今後のソニックシリーズも楽しみにしています。本日はありがとうございました。
「ソニックフロンティア」公式サイト
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ソニックフロンティア
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