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ボドゲから新規IPの創出を狙う「ヨフカシプロジェクト」の勝算とは。ゲームマーケット2021秋会場で話を聞いてみた
第1弾タイトルとなる「まっぷたツートンソウル」(税込3850円),そして第2弾「魔警オルトロス」(税込5280円)を手始めに,クラウドファンディングサービスであるMakuakeでの先行予約販売をスタートした本プロジェクトは,開始日の11月11日から1週間強で当初の目標金額を達成し,ボードゲームファンの注目を集めている。
かたやポップなデザインの会話コミュニケーションゲーム「まっぷたツートンソウル」と,かたやバディを組んで犯罪者逮捕を狙うデッキミキシング・ボードゲーム「魔警オルトロス」。一見すると,まったく共通点のないタイトルのようにも見えるが,この二つをプロジェクトのローンチタイトルに選んだ背景には,どんな思惑があるのだろうか。
コナミデジタルエンタテインメントのプロデューサー・門井信樹氏とドロッセルマイヤー商會の渡辺範明氏に会場で話を聞いてみた。
「ヨフカシプロジェクト」公式サイト
Makuake内「ヨフカシプロジェクト」プロジェクトページ
新規IPの創出を目指す「ヨフカシプロジェクト」
4Gamer:
本日はお時間をいただきありがとうございます。「ヨフカシプロジェクト」はKONAMIとアニメイトグループ,そしてドロッセルマイヤーズの協業プロジェクトとのことですが,まずはこの座組について,経緯をお聞かせください。
門井信樹氏(以下,門井氏)
元々はKONAMIとアニメイトで始めたプロジェクトなんです。スモールスタートしたコンテンツを大きく育てて成功した先行事例があって,それをゲームでもやってみよう,というのがそもそもの発端でした。
4Gamer:
なるほど。音楽や舞台などを起点にした事例がいくつか思い浮かびます。それをゲームにも当てはめたいということですか。
門井氏:
はい。今は一般的に,デジタルゲームって一つ作るのに簡単に数10億円はかかりますし,かかる時間も数年がかりになってしまいます。そういう事情もあって,新作や新規IPは年々少なくなっているんですね。
なら,どうしたら新規IPを生み出しやすい環境を作れるだろうかと考えたとき,小さいところからはじめてコンテンツを広げていく方式ならどうだろうかと考えました。
渡辺範明氏(以下,渡辺氏)
スモールスタートの利点は,チャレンジがしやすいということです。大規模な予算をつけようとすると,どうしても成功例のあるスキームであることが求められますし,それは同時にライバルも多いということになります。似た方向性で競争することを考えたら,成功する可能性はさらに下がってしまう。
4Gamer:
ええ,よく分かるお話です。
渡辺氏:
でも小さく始めるなら数が打てますし,個々のコンテンツでは冒険もできます。きちんと顧客に向き合いながら育てていく。そうしたもののほうが,コンテンツとしては健全だと思うんですよね。
門井氏:
お客さんに提示して,反響をもらいながら軌道修正し,また新しいものを提示していく。そうしたサイクルでやってみようと思ったとき,その最初の一歩として,自分がアニメイトさんに提案したのがボードゲームでした。幸いにも先方の反応もよくて,じゃあボードゲームに明るい人とプロジェクトを進めていこうとしたときに,白羽の矢が経ったのが……渡辺さんだったわけです(笑)。
渡辺氏:
KONAMIさんやアニメイトさんとしては,例えば音楽だったり舞台だったり,ボードゲーム以外の選択肢もあったはずなんです。でもボードゲームを選んでもらえたのなら,ドロッセルマイヤーズとしては応えるしかない。そういうわけでプロジェクトに参加することにしました。
門井氏:
あくまで新規IPの創出が目的なので,キャラクターの個性を強く打ち出したものになるだろうという予感がありました。でもだからといって,ゲームの部分をおろそかにすることはできません。それならプロに任せるべきだということで,ゲームデザインの部分はドロッセルマイヤーズさんにお任せしています。
渡辺氏:
オファーをいただいたときには,すでに「Kaiju on the Earth」(以下,KotE)の企画が動いていて,似たようなことはすで考えていました。競合の可能性も考えましたが,最初の立脚点が違うんですよね。
KotEは販売元がアークライトであることからも分かるとおり,最終的にはゲームそのものを売るのが目的です。一方,ヨフカシプロジェクトの目的はIPを育てることだから,スタート地点は同じでもゴールが違う。それならKotEで得た知見も転用できるし,面白いと思いました。
4Gamer:
新規IPの創出とは,つまりボードゲームを起点としたメディアミックス展開が狙いという理解でいいのでしょうか。アニメやコミック,あとはデジタルゲームとか?
門井氏:
そうですね。まだ世に出たばかりではありますが,皆さんからの評価を受けて,すでに色々なご提案はいただいていますし,我々からも絶賛営業活動中です。可能性はいくつも考えられるので柔軟に,アジャイル的に進めていければと思っています。
渡辺氏:
製作委員会などでがっちり座組を固め,あらかじめ引かれたスケジュールに沿って進んでいくプロジェクトではなく,お客さんの反応を見ながら育てていくスタンスなので,むしろ健全だと思いますよ。逆に言えば,この先どうなるか分からないということでもありますけど。
4Gamer:
現時点での感触では,どんな方向に伸びそうかとかいった予感はありますか?
門井氏:
向き不向きはタイトルごとに違うので,それぞれのタイトルで伸びる方向は異なりそうだな,と。これはアニメ向き,これはデジタルゲーム向きという風に,それぞれ個性が出てきそうな感触です。「まっぷたツートンソウル」は配信番組にも向いてそうですし,一方「魔警オルトロス」はアニメ向きと,それぞれの方向に育てていけたらと思っています。
渡辺氏:
どれも世界観はしっかり作り込んであるので,どんな風にも手を広げていけるようにはなっています。最初はライトノベルを一冊同梱しようという案もあったくらいです。コストの折り合いがつかなくて,結局諦めたんですけど。
4Gamer:
そういえば,公式サイトの製品情報に,シナリオがクレジットされていました。ボードゲームでは珍しいなと思ったものです。
門井氏:
それぐらい設定を作り込んでいるんです。「魔警オルトロス」なんて,それこそアニメ化できるくらいに。最初の段階でバイブル的なものがあれば,後にも続けやすい。
渡辺氏:
ドタバタラブコメの「まっぷたツートンソウル」では主題歌も作りましたし,聞いてもらえたらゲームのイメージがすぐに掴めると思います。これは商談の場でも,「これならアニメにできるんじゃないか」というように,判断の材料にしてもらう意味もあるんですが。
4Gamer:
なるほど。しかしボードゲーム発のIPというと……こちらは前例があまり思いつきません。果たしてうまくいくでしょうか。
渡辺氏:
ボードゲームに既存のIPを乗せたケースは数多くありますが,その逆はあまりないんですよね。でもそれをやっていかないと,いつまでもボードゲームが一次コンテンツにはなれない。現状では,BakaFire Partyさんの「惨劇RoopeR」や「桜降る代に決闘を」が一番うまくいっている……というか似た方向性を感じています。
門井氏:
これはボードゲームに限った話ではありませんが,少人数で作った作品のほうがエネルギーの詰まったものが生まれやすいと思うんですよ。そして後から広げるには,そうしたコンテンツのほうが向いている。その逆は難しいんですけど。
4Gamer:
確かに漫画やライトノベルからアニメ化,ゲーム化して大ヒットというのはままありますが,その逆はあまり聞かないですね。
門井氏:
ゲーム原作でのコミカライズやノベライズ,アニメ化の成功例も,もちろんないわけではありませんが。そこへ行くとボードゲームも,漫画やライトノベルと同じく少人数で作るものですし,可能性は十分にあると思っています。
渡辺氏:
関わる人数が増えると,どうしても会議が増えて,製作委員会のようになっていく。ヨフカシプロジェクトも3社が関わっているので,そのように見えるかもしれませんが,プロジェクト自体に予算がついているので,タイトルごとに企画を通す必要がないのがポイントです。だから,現場は自由にものづくりができる。
門井氏:
「まっぷたツートンソウル」にせよ「魔警オルトロス」にせよ,ボードゲームの単体企画だったらまずプロジェクトとしての判断は難しかったなと思います。だけどIPの創出にはこういった取り組みが必要だと会社に理解してもらえているからGoが出せる。チャレンジできる。そういう座組なのがいいところですね。
ローンチタイトル「まっぷたツートンソウル」「魔警オルトロス」について
4Gamer:
では今回出展されている2タイトルについて,詳しく聞かせてください。 「まっぷたツートンソウル」はコミュニケーションゲーム,「魔警オルトロス」はデッキ構築型対戦カードゲームとのことですが,このジャンルを選んだのはなぜでしょうか。
渡辺氏:
「まっぷたツートンソウル」は,「シリーズ第一弾なので幅広いお客さんがプレイしやすいシンプルなゲーム性で,題材としてはラブコメものを」というKONAMIさんからの要望から生まれたタイトルですね。それに合うゲームをと考えていったときに浮かんだのが,会話主体のコミュニケーションゲームという切り口でした。
一方,「魔警オルトロス」はキャラクターを強く打ち出して,いわゆる“カップリング”が楽しめるものとして制作しています。キャラクターごとにデッキがあるんですが,これを組み合わせてバトルする仕組みです。それなら刑事のバディものがいいんじゃないかということで,目指すべき体験から逆説的に考えて生まれたタイトルということになります。
門井氏:
渡辺さんによると,「まっぷたツートンソウル」はとくに女子大生ウケが良かったらしいです(笑)。
渡辺氏:
ああ。それは制作中にボードゲームカフェでテストプレイをさせてもらったときの話ですね。たまたま居合わせた大学生のグループに遊んでもらったら,「ずっとこれだけ遊んでたい!」と言ってもらえて自信につながりました。このゲームのシステムは,実は以前にドロッセルマイヤーズから出した「アダムとイブ」の変則ルールがベースで,その発展形になっているんです。だからメカニクスには自信があったんですが,想像以上にフィットしました。
4Gamer:
なるほど。では,最初からこの2タイトルで行くというのは決まっていたわけですか。
門井氏:
実は「まっぷたツートンソウル」だけでローンチする案もありました。でも,それだとこのプロジェクト全体が,最初のタイトルのイメージに引きずられてしまう可能性があると思ったんです。バリエーション豊かなタイトルを生み出していこうという企画なのだから,そのメッセージを打ち出す意味でも,最低でも最初は2タイトル揃えたかった。
渡辺氏:
なので続くタイトルも,ジャンルで言えばぜんぜん違ったものを考えています。すべてのお客さんに全タイトルを買ってもらわないといけないとも思っていなくて,それぞれのタイトルごと固有のファンが付いてくれるのが理想だと思います。
門井氏:
キャラクターものが好きな人だったら,シリーズ通して買っても楽しめると思いますけどね。プロデューサーの立場からは,あまり緻密な――いわゆる競技性を重視した通好みなゲームにはしないでほしいというオーダーは出しました。そのあたりは「魔警オルトロス」のゲームデザインを担当された木皿儀隼一さんにもお伝えしていて,気楽に楽しめる,でもしっかり作り込まれたゲームになったと思います。
4Gamer:
アートワークの面ではいかがでしょう。とくに気をつけたことなどはありますか。
渡辺氏:
やはりキャラクター性の表現ですね。とくに「魔警オルトロス」は,キャラクターごとにカードのデザインが異なっています。ポップなものから水彩画風,水墨画風,古文書風と,フォーマットだけじゃなく絵柄から違うので,そこでも個性が表現されているという。
門井氏:
イラストという意味では,アニメイトさんがプロジェクトに参画されているのも大きいです。例えば「まっぷたツートンソウル」のキャラクターデザインを担当された寺田てらさんは,アニメイト側から提案いただいた方で,こういう機会でなければ組む機会がなかったかもしれません。実店舗で日々お客さんと向き合いってるアニメイトさんだからこそのチョイスだと思います。
4Gamer:
分かりました。ではヨフカシプロジェクトの今後の展開について,今の時点でお話しいただけることはありますか。続くタイトルも準備中とのことでしたが。
門井氏:
まずは「まっぷたツートンソウル」と「魔警オルトロス」で遊んでいただいて,楽しんだ頃に新しい情報が出せればと思っています。
少なくともこの2タイトルで終わるプロジェクトとかではないので,しばらくこの「ヨフカシプロジェクト」とお付き合いただけたらありがたいです。
渡辺氏:
自分からすると,数か月単位で展開するヨフカシプロジェクトはとんでもないハイペースですけどね。KotEは“半年から1年に1本”の速度感ですし。
門井氏:
やっぱり熱いうちに展開したいので。それぞれ独立したタイトルでもあるので,テンポよく出していきたいと思っています。
渡辺氏:
確かにラインナップは揃えたいですね。この先ずっとそのペースはさすがに僕もしんどいですが,ラインナップが出揃うまではハイペースでがんばります(笑)。
門井氏:
あと,このヨフカシプロジェクトに加わってくれる企業さんからのご連絡もお待ちしています。もちろんアニメイトさんやドロッセルマイヤーズさんとはがっちりタッグで行きたいと思っていますが,意外とオープンな取り組みなので。
渡辺氏:
今後のメディア展開がガチガチに決まっているわけではないですし,一緒にやっていこうというところは,気軽に声をかけてもらえたら嬉しいですね。今後の展開についてのアイデアもありましたら,ぜひ。
門井氏:
逆提案みたいなものでも構いませんし。ご連絡,お待ちしております。
4Gamer:
最後に,この記事を読んでいるボードゲームファンに向けたメッセージをお願いします。
門井氏:
まずは,現在Makuakeで行っているプロジェクトの支援をぜひよろしくお願いします。最終的にはボードゲームコミュニティの外に広げることを目指したプロジェクトではありますが,その最初の一歩を支えてくれるのは,やはりボードゲームファンだと思っています。そこを蔑ろにするつもりはありませんので,ぜひ応援してもらえたら嬉しいです。
渡辺氏:
今実際に,現在進行形でMakuakeのプロジェクトを支援してくださっている方々も,やっぱりボードゲームファンが多いですしね。目の肥えたゲーマーのプレイにも充分耐えうる作品に仕上がっていると思いますので,そこはぜひ信頼して,一度遊んでみてください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「ヨフカシプロジェクト」公式サイト
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