プレイレポート
入念な計画とチームの連係がモノを言う和風ストラテジー「Shadow Tactics: Blades of the Shogun - Aiko's Choice」プレイレポート
なお,Aiko's ChoiceはShadow Tacticsの拡張コンテンツ(DLC)のような立ち位置の作品だが,スタンドアロン版となっており,プレイするのにShadow Tacticsは必要ない。したがって筆者のようなシリーズ未所有の新参者でも,問題なくプレイ可能なので安心してほしい。
江戸時代を舞台に,個性豊かなメンバーが困難すぎるミッションに挑む
本作は江戸時代の日本を舞台に,個性的なメンバーが揃ったチームを率い,さまざまなミッションに挑んでいく。リアルタイムで時間が進んでいく,画面見下ろしタイプのストラテジーであり,プレイヤーは主人公となるチームメンバーを個別,あるいは一気にまとめて操作しながら,ステージをクリアするまで順次更新されるタスクをこなすことになる。
タスク自体は「ある場所に全員で到達する」や「○○を助ける」といったシンプルな目標であることが多いが,それに至るまでには多数の妨害や困難が待ち受けており,容易に達成はできない。端的に言って本作はかなり難しく,ゲーム開始時にイージーからハードまで難度を選べるのだが,筆者はノーマルで挑戦したらまったく歯が立たず,イージーでも数え切れないほど死んでやり直すことになった。
その理由は,本作が「真正面から戦うとほぼ勝負にならない」というステルスを重視したバランスながら,「単に隠れてプレイするだけでは,まったく先に進めない」という作りになっているからだろう。具体的には序盤のステージでも,見張りとなる敵の数はかなり多く,その視野も想像以上に広い。配置も絶妙で重要な場所は死角がほぼないような形になっており,ステルスゲームの定番となる「まずは近場の見張りを無力化し,力業で突破口を作る」といった作戦を採ろうにも,むやみに実行するとほぼ間違いなく暗殺の現場を目撃されてしまう。
ステージの作りも「先へ進むには,敵の警備が厳重な場所を抜けるしかない」場所が多く,単に視界から外れるタイミングを計れば先に進める……なんて“ヤワ”な構成にはなっていない印象だ。操作テクニックだけでは,すぐに限界が来るだろう。
一応,視界に入ってもすぐに見つかるわけではなく,ある程度は逃げたり隠れたりする猶予が用意されている。それでもムリヤリ事を進められるほど余裕があるわけではないし,一度バレればあっという間に敵は警戒モードになり,大軍が押し寄せてくる。本作はひとりでもチームメンバーが倒れればゲームオーバーなので,逃げ切れなければそこでやり直しだ。
パッと見て「ここは警戒が緩そうだ」などと直感に基づいて安易に行動すると,まず間違いなくしっぺ返しが来る。本作は敵の動きにランダム性がほぼないために,配置や動きなどがかなり練り込まれているようで,無計画に進められる場所は相当に少ない。
というわけで本作を進めるにあたっては,“忍びの動き”が必要になる。それは「事前調査」と「チームワーク」だ。どちらが欠けても,おそらく序盤のクリアすらままならないはずだ。
事前調査のほうは簡単で,メニューの「確認」からステージの好きなところに画面を移動させて,敵情をあらかじめ確認しておけばいい。本作は移動可能な範囲ならどこにでもカメラを移動させ,敵の配置や視界を容易に調べることができる。敵は基本的に視界を動かしながら停止しているか,同じ場所を巡回していることが多い。まずはどの敵に対応し,そして突破口をこじ開けて任務を進めるかの,大きな判断材料になるはずだ。
もう一つのチームワークは,チームメンバーの特徴をしっかり掴み,任務で活用することだ。本作ではゲーム開始時点から,くノ一であり芸者への変装を得意とするアイコ(愛琥),忍者として優れた機動力を発揮するハヤト(隼人),そして武士として剣術を得意とするムゲン(武源)の3人を操作することになる。
彼らはそれぞれ特徴がまったく異なり,アイコは前述のように変装が得意なので,衣装さえ手に入れればバレずに好きな場所に移動したり,見張りに話しかけて気をひくことができるが,力が弱く戦闘や死体を移動させるのは苦手だ。逆にムゲンはパワータイプであり戦闘は得意だが,忍びであるアイコやハヤトのように壁を登ったり屋根伝いに移動することはできない。3人のできること,できないことには大きな差があるのだ。
つまり単に目的地にたどり着くだけなら,アイコやハヤトのほうが頼りになる。だが,いざ戦闘となれば,ムゲンの力を発揮させなければ勝利はおぼつかない。機動力に勝り,敵の視界をくぐり抜けることを得意とした忍びを先行させ警備の穴を作り,他のキャラがその強みを生かせる場面を作り出す。そういったチーム力を生かす“工夫”が本作の核であり,プレイの醍醐味と言えるだろう。前述のように難度は高いが,だからこそ,作戦が決まったときの嬉しさはひとしおだ。
ハードルが高いからこそ,悩んで作戦を立てる価値がある
前述のとおり“作戦”が重要な本作だが,単にそれぞれのキャラが個別に活動するだけでは,越えられない壁もある。例えば,根本的に「死角がない」場合だ。忍びのキャラが先行できても,「誰かひとりでも警備を倒せば,ほぼ確実に別の敵に目撃されて即バレる」といった状況では,警備の穴を作ること自体が困難となる。そして本作において,それは序盤ですら決して珍しいシチュエーションではない。
そこで役に立つのが「Shadowモード」だ。これはチームのキャラに“動作を予約”しておいて,任意のタイミングで発動する,という機能。チームの人数分だけ予約しておけるので,忍者2人に同時に2か所で暗殺を予約し,その隙に高所に移動できない武士のムゲンを進入させる,といったまるで映画のようなチームプレイが可能になるのだ。
もちろん,あくまで“予約”である関係上,タイミングや発見しきれなかった脅威などの問題で,常に上手くいくとは限らない。あるキャラがスムーズに動かず,(ゲームオーバーから)計画の練り直しなんてこともしばしば。とはいえ失敗して気がつくことも相当に多いので,こういった試行錯誤も案外楽しいものなのだが。
このように本作の難度は相当なものだが,とにかく簡単にクイックセーブができ,やり直しにストレスがかかりにくいようになっている。一定時間を過ぎるとセーブからの時間が画面上に表示され,まるで「お前こんなにセーブしてないけど大丈夫か?」と言っているようだ。進行上,中途半端な場所で記録すると困ることもあるのだが,それ以上に簡単に死が待っている作品でもある。ここは素直に「ちょっと進んだらセーブ」を繰り返し,死んだらそのミスを糧にする,というプレイをオススメしたい。
世界設定やグラフィックスは一見,純和風だが,敵のボスが珍妙な格好で頭に日の丸の扇子をのせていたり,当たり前のように満開の桜の中に鯉のぼりがはためいていたり,時代的にまずあり得ないような単語を含むセリフが登場人物から飛び出してきたり……と,昔の海外映画に出てくるような(結構)ズレた日本といった感じだ。
ただ,これはこれでちょっと懐かしく,味があって筆者は嫌いではないし,吹き替えの日本語ボイスそのものはクオリティが高い。それにこういった違和感を楽しめるのは日本人ならではだと思うので,あえて堪能したいところだ。
作品全体としては,やはり難度の高さがまず印象に残る。敵陣の事前調査は重要だが,それだけでは突破口が分からないこともあり,そういったときは死んで糸口を見つけるトライ&エラーが攻略のカギとなるだろう。リアルタイムストラテジーがとくに得意ではない筆者は,前半だけで何度も何度もゲームオーバー画面を見ることになった。そういった点で,若干好みが分かれそうな作風であることは間違いない。
ただ,それだけに攻略のしがいがあるのは間違いなく,歯ごたえのあるゲームを求めるゲーマーにはピッタリのはずだ。また難しいだけに,作戦が想定どおりにハマった時は非常に気持ちがいい。興味があれば手にとって,困難な作戦に挑んでみてほしい。
「Shadow Tactics: Blades of the Shogun - Aiko's Choice」公式サイト
- 関連タイトル:
Shadow Tactics: Blades of the Shogun - Aiko's Choice
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